一般通過異世界転生者:あなた   作:ID:Am88n712

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ちょっと遅れました、ごめんなさい



一般的な異世界転生 青年期編 7

 

 

 あなたの喉をひと口分のハーブティーが滑り落ちていく。ディアが用意したそれはいつもと変わらず逸品で、心を落ち着かせるにはちょうど良い。特にほのかに甘みを帯びた爽やかな香りがあなたの背中を押してくれる。

 

 そうして、あなたは口を開き、相談事を口にする。

 

 あなたの目下の悩みは、メナによる花嫁修業に関してだ。嫁入りなど論外だと考えているあなたにとってこれはこの上なく無為であり、また苦痛でもある。

 

 家族の労力的にもよろしくない。メナはあなたのためにと献身的に教育を行ってくれているが、これは全くの浪費と言って差し支えない。あなたにかかずらう時間からメナを解放すべきだという考えも、あなたの中にはあった。

 

 

 

 なのでこれをやめさせる、つまりはメナを納得させる方法についてあなたは探らなければならないのだが……それならば、いっそもっと根本的な部分から手を入れてはどうかと考えた。

 

選択肢分岐
街を出るにはどうすれば良いか相談する

 

 花嫁修業が無駄なのは嫁入りする気がない事もあるが、そもそもとしてあなたがルワ・ザンガラを離れて旅に出たいと願っている点が最も大きい。

 

 この街で暮らさない人間が、この街で家庭など持てるわけがない。

 

 よって、必要なのは旅立ちのための説得だ。ただ憧れだけを胸に抱えた現状から足を踏み出し、家族を納得させるに足る、旅をしながら生きていくための手段と理由を用意しなければならない。

 

 特に前者の、手段についてだ。

 

 あなたの家族はあなたを大事にしてくれている。愛する娘が何の展望もなくただ旅に出たいと言っても許される道理はない。

 

 憧れで押し通すことも出来るだろう理由と異なり、こちらが提示できなければ話にならない。でなければ家族との話し合いはこじれにこじれ、最終的にヤレカ頼りで家出に踏み切る未来に繋がりかねなかった。

 

 

 

 という旨を、あなたはマイアへと打ち明けた。

 

 その結果、返ってきた言葉は。

 

「あら、やっと自分の口から言ったわね」

 

 そんなものだった。

 

 

 

 その反応にあなたは戸惑う。

 

 ルワ・ザンガラを離れたいなどと、あなたはマイアの前で一度も口にした事はない。だというのに、マイアは「そんな事とっくに知っていましたが?」という態度である。

 

「そんな事とっくに知ってたわよ。ま、良く隠してた方だと思うけどね」

 

 そして実際そう口にもした。

 

「これでも私はフィナ=ルウェイン(城爵令嬢)です。伯爵家が主催する領都の社交場に定期的に顔を出してるのはあなたも知ってるでしょう? めんどくさい貴族の付き合いで揉まれてるのは伊達じゃないのよ」

 

 マイアは得意げにおとがいを持ち上げ、鳶色の目を細めて笑った。ついでとばかりに栗色の髪を手で払いながらの渾身のドヤ顔を見せつけてくる。

 

 あなたが内心に秘めていた外界への憧れなどとっくにお見通し。いつ自分に打ち明けてくれるのか待っていたのだと。

 

 

 

「ふふ。で、ほんとのとこは?」

 

 ただ、そこにヤレカが口を挟む。

 

 顔こそ自分の分の砂糖菓子をちまちまかじって堪能していた笑顔のまま、しかし声色にはからかいを乗せて。

 

「……なによ。本当も何もないけど?」

 

「ふぅん。それなら良いんだけど。ところで話は変わるんだけど冒険者組合と領主さんって結構親密にやってるよね」

 

「話変わってないじゃない。……はぁ。ヤレカのそういう勘の良さは何なのかしらね」

 

 そうしてあなたに知らされたマイアの見抜きの種は単純なものだった。

 

 ガドである。あなたが持つ外界への憧れを数年前から知る彼が、どうやらマイアに教えていたようだ。

 

 思い返せばガドは城爵家で管理されている伝書鳥を利用していた事もある。それがなくとも、街の様々な困り事を解決する冒険者組合は、立場としては公共施設に近い。領主との繋がりが無いと考える方が不自然だ。

 

 

 

 ただ、そうなると気になるのはガドがマイアに伝えた理由だ。

 

 あなたの願望はデリケートな話題である。前世と違って個人情報の保護などという概念は今世にはほとんどないが、かといってただの雑談で語るような話題でもない。そのあたりの不要な口の軽さがガドにあるとも考えにくい。

 

 なので、あなたは疑問を口にした。

 

 何故ガドはマイアにあなたの事を教えたのか。率直に、マイア本人へと問いただす。

 

「そうね。じゃあ答え合わせといきましょう。ディア、史料展示室に行くわよ」

 

 その答えはこの場ではなく、場所を移してからもたらされるようだった。

 

 

 

 

 

 ジェウェス城爵家が管理する、ルワ・ザンガラの歴史と文化をまとめた展示室にあなた達は進入した。

 

 先頭は灯りを掲げる使用人のディア。その次にマイアが続き、最後尾にあなたとヤレカが並ぶ。

 

 もうすっかり慣れたものだ。この数年、知りたがりにして学びたがりのあなたはマイアが忙しくない時期を見計らっては何度もここに足を運び、内部の史料を読み漁ってきたものである。

 

 そのため、どこに何が置かれているかは把握していた。

 

「もう説明するまでもないけど、これが街の始まりね。この地方を荒らし尽くした魔物の氾濫と、その侵入路であるザンガラの発見。そして旅の聖者タンバシャ様と彼に付き従った戦士達の戦い」

 

 訪問者をまず出迎えるのはそれだ。

 

 崩れた崖と、そこから伸びるザンガラ(岩礁)の道。来襲する数多の魔物に槍を構えて対峙するタンバシャを模した人型を中心に構成されたジオラマである。

 

 近くにはタンバシャの像と、彼が振るったとされる槍のレプリカも展示されている。

 

 

 

「タンバシャ様の献身によって出来た崖崩れの跡に、戦士達は石を積み上げて砦としてのこの街を作った。このあたりもあなた達には今更ね」

 

 順路に従って進めば、次に目に入るのは街がどのように組み立てられたのかを示す資料だ。

 

 ルワ・ザンガラは、その名の通りルワ(砦)である。海の向こうからやってくる脅威を退ける事を第一に、居住性を犠牲にして戦闘行為に最適化された街だ。

 

 そのために道という道は例外なく入り組み、迷路のような様相を描いている。また、あらゆる道には投射魔法による攻撃が行えるように狙撃点が準備され、入り込んだものを確実に仕留めるための構造をしている。

 

 例を上げるならばあなたの屋敷とてそうだ。

 

 ドーナツ状の構造は中心に武器などの物資を集積するためで、窓などの開口部が塞がれない最大の理由はそこから槍を放つため。劣勢となれば魔法で窓を塞いでしまえば最低限の籠城も行える。

 

 徹頭徹尾、ルワ・ザンガラは戦士の街なのだ。

 

 

 

「だからこそ、エルヴァーの侵略も跳ね返す事が出来た、と。……まぁ、相手が引いてくれなかったらと考えると嫌な未来しか見えないけど。厄介な魔物の相手は現地の蛮族にやらせておく方が良いってとこでしょうね。業腹だけど、その辺りの見極めは流石に覇王と呼ばれるだけはあるわ」

 

 その次はかつてこの街を襲った戦火について。

 

 圧政により溜め込んだ怨恨を端とした小王国ロットの蜂起と、ロット王エルヴァーの野心に率いられた戦火の拡大。その果てに大陸西部を飲み込むに至った王国の飛躍はルワ・ザンガラにも手を届かせた。

 

 そんなエルヴァーの軍を退かせたのは堅牢な砦の守り……だけとは残念ながら言い難い。

 

 攻勢の勢いを削がせる事は出来ただろうが、優れた攻城兵器によって砦が追い詰められたという記録がハッキリと残っている。まともに戦闘が推移していればルワ・ザンガラは敗北し、王国軍によって占領されていただろう。

 

 その未来を覆したのは、戦場に解き放たれた魔物の存在だ。

 

 魔物が軍の隊列をかき乱し、その隙を突いた決死隊がエルヴァーの喉元まで辿り着いたために、街の歴史は今も存続している。

 

「エルヴァーは命からがら逃げ帰ったかも、なんて前は言ってたのに?」

 

「からかうのはやめてくれる? ……あの頃は子供だったのよ」

 

 その詳細は正式な記録には残っていないが、おそらくは交渉により見逃されただけだ。

 

 魔物の存在を教え、砦の民はこれを食い止めるための防壁だと示し、街を攻め落とす事に益はないと伝えた事で。

 

 

 

 そして、その後の歴史について記す区画にあなた達は入っていく。

 

 そこには。

 

「……わざわざ語らないといけない事はもうないものね。ルワ・ザンガラの歴史はこれだけ」

 

 大したものはなかった。

 

 エルヴァーの侵略の後、ルワ・ザンガラは王国の辺境として組み込まれた。一帯を領地として獲得した伯爵家、その配下として当時の戦士長が貴族の地位を与えられる事となる。

 

 史書に残すべきと言えるような大きな事柄はそれで終わりだ。

 

 後は今日まで変わり映えのない日々が続くのみ。唯一、戦士達の尽力のおかげかザンガラを通ってやってくる魔物の数は減少し、いつしか年に数匹を数えるのみとなったと文字で記されている程度だ。

 

 なので、そこから先は文化の紹介に場所を取っている。

 

 街の者が着る衣服とも呼べない腰巻や胸帯、その素材となる毛皮の本来の持ち主ブージェの剥製、信仰される神ジナバルへ捧げられる祭事をはじめとした季節ごとの行事についてなどなど。

 

 

 

「そう、侵略の後、この街は何も動いていない。200年近くもよ? 魔物と海獣を退けて、魚を採って、石を積んで……そうして、昨日と変わらない今日をずぅっと続けてきた」

 

 史料室の最奥部にて、足を止めたマイアは彫像を見上げた。

 

 それは異形の生き物をかたどった石の像だ。土管にも似た筒状の、毛のない胴。そこから伸びた脚は左右非対称に九本と奇妙な数で、昆虫めいた構造と外骨格を持ちながらもその末端には人のそれに似つつも指が四本しかない手がついている。尾は長く、節くれだって、先には槍を思わせる毒針を持つ。

 

 最も特徴的な頭部はブヨブヨとした肉塊じみていた。目も鼻も見当たらず、顔らしきものの中心にぽっかりと口腔だけが暗い穴を覗かせている。動物というよりも、グロテスクな食虫植物を拡大したような作りだとあなたには思えた。

 

 あなたは現物を見た事はないが、かつて一帯を荒らしに荒らし、今も年に数度ザンガラに現れるという魔物の似姿である。

 

 

 

 それを前に、マイアはフンと鼻を鳴らした。

 

「……話にならない怠惰ぶりだわ。魔物が大挙してきた時代ならわかるわよ。こんな化け物と年中戦っていたなら、明日の事なんて考えていられない」

 

 そして、ギリリと歯ぎしりを響かせる。

 

 組まれた腕には力がこもり、愛用のケープは強く握り締められて深いシワが刻まれる。マイアが背を向けているために確認は出来ないが、きっと眉間にも同じだけのものが現れているのだろうとあなたには確信できた。

 

「でも今はもう違う。魔物は減って、代わりにブージェは増えたけど脅威の度合いは大違いよ。民の生活にも、街全体の財政にも余裕が生まれてる。なのに──伝統だからと思考を止めて、この街はずっと同じ日々を過ごしてる」

 

 そこに籠められたのは、明白な憤怒だ。

 

 感情の向かう先は民……ではなく。

 

「しかも、それを率先して良しとしたのは私の先祖とくるわ。……もう魔物は来ないから、中庭の武器庫は取り壊して代わりに花でも植えましょう? 頭の中身を虫にでも食われたのかしらね。良くもまぁ恥ずかしげもなくルウェイン(砦の長)を名乗れたものだわ……!」

 

 彼らを率いて停滞に舵を切った、自身の父祖にだ。

 

 

 

 しばしの間、史料室にはマイアの荒い息だけが響いた。

 

 ディアは彼女に諫言することも無く静かに灯りを掲げ、ヤレカもこのような時に不要な言葉を挟む性質ではない。

 

 そしてあなたは、マイアの心の底に隠されていた激情に初めて触れ、その熱量に対しかける言葉が見つけられずにいた。

 

 

 

「……一度あった侵略の、二度目が無いなんて誰にも言えないわ。魔物が減った理由だって解明されてない。平和に寝ぼけた今の街にかつての大群が再び襲いかかってきたなら、当時と同じやり方で退けられるような保証もない」

 

 やがて、独力で自身を落ち着けたマイアが続きを語る。

 

「強くならないといけないのよ、この街は。昨日よりも強固な明日を作らないといけない。タンバシャ様と戦士達に胸を張って誇れる、不落の要塞を築き上げなければならないの。そのためにお父様と私はなんでもすると誓ったわ。もっと多くの富を、知識を、武器を。200年の停滞をぶち壊して、不足を埋めるために」

 

 薄氷の上の平穏を、巌にそびえ立つ磐石のそれに変える。そのために人生を捧げると決めたのだと、マイアは語った。

 

 

 

「……ま、とはいえ無理にも進められないんだけどね。街を守るために民に猛反発されてたんじゃ本末転倒でしょう? だからまずは、皆の意識を変えないといけない。差し当たっては、昨日と違う明日を過ごしても良いんだ、ってね」

 

 と、そこでマイアの声色が緩んだ。薄く硬い刃のような雰囲気はかき消え、普段の勝気な女性としての空気をまとう。

 

 そうしてマイアは続けた。

 

 今のところ、街の改革を過度に急ぐ必要はない。王国の、そして伯爵家の統治は多少の不備はありつつも安定したもので、戦火の気配は見られないという。海の様子にもおかしな変化がないのはあなたも知るところで、魔物の大襲来が喫緊に迫っているような事もなさそうだ。

 

「完全な改革の終わりは私が寿命で死んだ後になるでしょうね。私のひ孫か、その子供か。……気が遠くなる話だけど、だからこそ今、できるだけ早いうちに始めないと」

 

 そういう話であるらしい。

 

 

 

 

 

 さて、そこで話は戻る。

 

 つまり、何故ガドがあなたの事をマイアに伝えたかだ。

 

「簡単に言うと、組合に長期依頼を出してるのよ。改革の協力者探しをね。まさかあなた達が網にひっかかるとは思ってなかったから、あんまりな都合の良さに驚いたけど」

 

 おかげで思考を誘導する必要と手間がきえ、素直に交友を深めるために数年を費やせたと彼女は言う。

 

「ふぅん。領主って大変だねー」

 

「そ、大変なのよ。……謝罪はしておくわ。あなた達には親しみを感じはしているけれど、同じだけ打算と責務で関係を繋げてる」

 

 ヤレカがのほほんと言い、マイアが気まずそうに目を伏せて返す。

 

 それにあなたが加えて口を開く前に、マイアが顔を上げてあなたを見た。

 

「だから、あなたも私を利用するといいわ。あなたにはその権利がある。街を出るための大義名分が欲しいなら、さぁ、私に売り込んでみなさい」

 

 

 

 あなたは一旦言葉を引っ込めて、考えた。

 

 今知らされたマイアの目的。それを利用してあなたの願いを叶えるための道筋を。

 

 

ランダム分岐/自己アピール

教養技能か社交技能で判定

 

あなたの社交技能 レベル8

アピール実行難度 レベル5

成功率80%

 

1〜2で失敗

3〜10で成功

 

1d10=1

 

 

「…………???」

 

 しかし、あなたは首を傾げた。

 

 はて、どうすれば良いのだろう。

 

 マイアは街を変えようとしている。そのためにまずは住人の意識を変えなければならない。その発端となるのは街でも一目置かれている者である事が望ましく、つまりはあなたの父イシャバが狙い目で、尖兵として適任なのはイシャバの実子であるあなただ。

 

 そこまではわかる。

 

 ……だがその先が繋がらない。

 

 父を説得する代価として、街の外の仕事を用意してもらう? しかしそれでは旅ではなくただの移住にしかならない。

 

 

 

「…………んん」

 

 あなたが考え込む前で、マイアは咳払いをした。

 

 答えは明白でしょう。さっさと口にしなさい。ちゃんと受け入れてあげるから。

 

 なんて言葉が聞こえてきそうな態度である。

 

 

 

 そんなマイアを前にあなたの目は泳ぐばかりだ。これだと確信を持てる回答が全く思い浮かばない。

 

「……まさかとは思うけど、わからないとか言う?」

 

 そうしてついに直接催促されて口にしたあなたの返答は、やはり的外れなものだったようだ。

 

 

 

「……お嬢様」

 

「待って。待ちなさい。大丈夫だから。……え、大丈夫? ほんとに?」

 

 咎めるようなディアの一言に、マイアは数度深呼吸をして心を落ち着かせようとしているようだ。

 

 どうやらやらかしたのだと、あなたにもハッキリと分かる。

 

 不安から横を見れば、ヤレカはどこか優しい目であなたを見ていた。いや、より正確に言えば……残念な子を慈しむような目だ。慰めるようにそっと肩に添えられた手は、幼な子の頭を撫でるものにも似ている。

 

 

 

「ふぅー……。えぇとね。あるでしょう、こう、もっと。あなたが外界をその目で見てきて、イシャバ様にこの街との発展の差異を伝えて現状を理解してもらうとか。それが終わったら、ここらの荒地でも育ちそうな作物を探す旅に出るとか。……そうしたら私も城爵家の事業としてあなたを支援できるわけでね?」

 

 言われて、あなたも理解する。

 

 確かにその路線ならばマイアとあなた、双方の目的を満足させる事ができるだろう。領主の娘であるマイアに上から諭されるよりも、実の娘がその目で見た事を伝えられる方がイシャバも飲み込みやすいという理屈立てで、あなたの旅立ちに大義名分が与えられる。

 

 少し考えれば簡単な事で、何故自分で気付けなかったのかと羞恥が遅れてやってきた。思わず両手で顔を覆いたくなるあなただが、覆水盆に返らず。後悔は先に立たないのだ。

 

 

 

「お嬢様。人選に私情を挟むべきではありません」

 

「分かってる。分かってるわよ……」

 

 ディアが一歩進み出て、マイアに諫言する。つまり、あなたでは能力に不足があるのではないかと。残念ながら、失態を見せつけたばかりのあなたに言い返す術はない。

 

 

分岐

マイアからの好感度が低くない

 

 

「……要は、能力が証明されれば良いんでしょう?」

 

 だがそれでも、マイアはあなたを見放さずに居てくれたようだ。

 

「試験をしましょう。ちょうど頼み事があったわけだし、内容もちょうどいいわ。……いい? これに合格したなら、私は城爵家としてあなたの旅立ちを支援する。イシャバ様の説得もこちらで請け負うわ。……だから次はしっかりやりなさいよ」

 

 キッと顔を上げ、ディアを一瞥してからあなたに詰め寄る。

 

 友人の夢を応援したい。けれど抱いた責務が無償での奉仕を許容しない。そんな葛藤が見て取れる(ついでにそこそこの呆れとかなりの心配も含まれた)瞳を前に、あなたはコクコクと頷くほかなくなるのだった。

 

 

 


 

 

 

「ふふ。やっちゃったね」

 

 やってしまった、とあなたはヤレカに同意する。

 

 砦からの帰り道、あなたの背中はしょんぼりと丸まり、気力がまるで感じられない。正解を言い当てられていれば一足飛びに夢を叶える道に踏み出せたというのに、失態を犯して転げ落ちたのだから当然というものだ。

 

 あなたの頭をグルグルと、どうしてあの時は頭が回らなかったのかと後悔ばかりがこだまする。今更考えてもどうしようもない事なのだが、だからとすぐさま切り替えられるわけもない。

 

 帰路が独りではないのがせめてもの救いだった。

 

 ふらつく足取りに任せるままにヤレカに寄りかかれば、ヨシヨシと慰めの手が頭を撫でてくれる。その優しさに沈む自分を情けなく思う気持ちもありはしたが、今ばかりは癒しが欲しいのも正直なところだ。

 

 

 

 さて、そうしてしばらく歩くうちに、あなたはほんの少しだが気力を取り戻した。

 

 幸いな事に、あなたの道は完全に閉ざされたわけではない。

 

 マイアの温情により、試験という形であなたのチャンスはまだ残されている。これに合格さえしてしまえば、あなたはどうやら大手を振って故郷を旅立てそうだ。

 

 しかも、街全体に貢献する形で。これならば親不孝にもならないと納得でき、あなたが罪悪感に苛まれる必要もなくなる。およそ考えうる最良の出立となるだろう。

 

 となれば、落ち込んでばかりもいられない。

 

 この機会をしっかりとモノにして、今度こそ夢に踏み出すのだとあなたは決意を新たにした。

 

 

 

 あなたはヤレカに寄りかかった体を戻し、自身の頬を叩く。

 

 試験の内容はこうだ。

 

 マイアの主導する改革、そのいずれかに協力し、なんらかの成果を出す事。

 

 現在、この街で進んでいる改革はいくつかある。あなたが目にしたものでは料理祭での新規レシピ開拓や、街の外の畑での作物増産、学校教育などだ。その他にもいくつかあり、例えば漁具や武器の改良、服飾文化の浸透、外界との交易拡張などが挙げられる。

 

 いずれも一朝一夕には終わらないだろうものだが、それは良い。何も完了させろとまではマイアも求めてはいない。

 

 そもそもとして、現状は改革を実行するというよりも、昨日と違う今日を過ごしても良いのだと住民の意識にすり込む段階だ。過度に押し進めるよりも、むしろゆっくりと歩むべき時期である。

 

 単に、どれかに参加して一定の能力を示す事ができれば合格とみなすとの事だ。反対する住民の説得に当たっても良いし、実務に従事しても良い。

 

 

 

 あなたに与えられる報酬を考えれば、挑戦しない手はない。

 

 街で進む改革のうち自身が参加すべきものはどれかと、あなたは帰路を歩みながらヤレカと相談を交わした。

 






現在のあなた
性格/混沌・中庸
良くも悪くもルールに縛られる事を嫌う
所持金/6
面倒見+1
知識欲+3
戦闘意欲+1
好奇心+4
勤勉さ+2
運動技能レベル10
教養技能レベル5
社交技能レベル8
諜報技能レベル5
戦闘技能レベル4
魔法技能レベル13
鑑定技能レベル5
家事技能レベル1
加工技能レベル1



やる気ボタン → 評価

コマンド?

  • 新規レシピ開拓
  • 畑の作物増産
  • 学校教育への参加
  • 漁具や武器の改良
  • 服飾文化の浸透
  • 外界との交易拡張
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