ゲヘナに舞い降りた堕天使 作:シファー
トリニティと犬猿の仲にある不良の巣窟のゲヘナに転入したというのに彼女の名声は堕ちるどころか上がるばかりだ。
腕っぷしだけで回るほどキヴォトスも単純な世界ではないが、それでも荒事が日常茶飯事のこの都市では「最強」の称号は一定の価値を持つ。1年生の頃から実力者として有名だった。
何せ個人での「飛行能力」というものは唯一無二の物だからだ。それでいて当時でも各校のエース級と同等以上だったらしい実力も有り、その広範囲に渡る移動能力で他学園の自治区に現れては不良たちを度々シバいていたらしいのだ。
治安維持活動にはなっていたので、各学園も彼女の行いに強くは言及出来なかったらしくなし崩し的に連邦生徒会長がヴァルキューレと同等以上の権限を彼女個人に与えたらしい。
今考えれば
そしてかつては「ゲヘナ最強」と名高かった空崎風紀委員長…今ではホシノの親友でもあり人格者と分かっている彼女だが、その彼女が「自分以上」と評したルカ…
「それってもうキヴォトス最強じゃないのか?」と言われるようになるまで時間はかからなかった。実際彼女の戦いぶりを一度でも見た者達は満場一致で彼女を「最強」と称する。
寧ろアレに「ある程度は対抗出来る」という彼女が「トップレベル」と称す4人、剣先ツルギ、空崎ヒナ、美甘ネルにホシノらがおかしいのであって。
「ホシノやルカ抜きで対立することが有ったら絶対に逃げろ」とも忠告されているし。シロコは強い人の話を聞くだけで眼を輝かすのを止めて欲しいのだが。
自分は人伝にしか聞いていない「隕石粉砕事件」の時に、初めて見せた彼女の全力はホシノですら知らなかったらしいがシロコは「真の
二つ名も異様に多いし…【ゲヘナの女帝】【空の女王】【韋駄天】【ミス・アンチェイン】【
なんにせよそんな彼女が
頭は間違いなく良いけど余り
そもそも所属している風紀委員会は上司のはずの生徒会組織と折り合い悪いらしいし…ゲヘナに対する帰属意識も低そうだし。寧ろ数だけでいえばまだまだ
今眼前では定例会議が開かれていて、先生とユメとルカにも参加してもらっている。金策の話になりおふざけの方向になってきて「大きい学校のスクールバスを拉致って生徒を確保しよう」なんてホシノが言ったことによりホシノに集中させた殺気が屋内を蹂躙した。
「へえゲヘナとトリニティのバスを…ねえ…それをこの私の前で言うとかホシノ私にぶっ殺されたいの?」
「うへ…じゃあミレニアムは…」
「それやるとネルが喜々として出撃してくるわよ。貴女にも興味持っていたから洒落にならないバトルが勃発するわね…」
「ミレニアムのC&Cは…個々の実力なら貴女達アビドスの面々も決して負けていないけど向こうは荒事専門ということもあって連携されたら勝てないでしょうね…『貴女達のチームワークが悪い』という話でなく。向こうは専門家だからねえ」
実際に戦ったことがある者ばかりなのだろう。自身の情報を掴まれることを全く苦にしておらず、各勢力の主力部隊の実力を正確に量れている。単なる脳筋の
「うへえ
「ヒナちゃんとは大分タイプ違うけど案外仲良く出来るかもよ…血の気は多い方だけど、本質的には面倒見の良い子で優しいし…向こうもちっちゃいし」
「ちっちゃいは関係無いでしょーがっ」
ホシノがプンスコするが、バスジャック案なんて出されたことに比べれば可愛いものだ。
「ちなみにまた『隕石返済』は…?」
シロコから多少マトモな案が出るが、それは駄目だろう。
「アレは駄目…というかもう無理。ミレニアムも1年前ほど予算無いし。リオ会長がやらかしていて…ミカもアレ以来能力の制御訓練はきちんとしているみたいだけど、普段は人間大サイズくらいしか喚べないし…アレくらいのを喚ぼうとすると制御難しいんだろうね、
普通に危険。あの時以上のが来て私でもどうにも出来ないのだったらそれでキヴォトスに大きな被害出たら誰も責任取れないでしょう。何よりシロコ貴女私の妹を金儲けに利用する気?」
先ほどよりドスの効いた声と殺気が覆う。少し乗り気の態度を出していたセリカにも殺気がぶつけられているらしく、顔を青くしている。一番きつそうなのは勿論シロコだが。
「ん、少し提案してみただけ。本気で反省していたあの人を利用する気は私も無い、ごめんなさい」
「うん、いいのよ、取り敢えず言ってみただけ、よね?」
シロコが謝るとすぐに殺気は収まったらしい。ニコッとルカが笑うと室内の雰囲気も戻る。蚊帳の外だった先生やユメ、ノノミらは気付いてもいない。対象を選んで殺気を絞るとかやってることがまるっきり創作内の達人みたいだ。
「それじゃ本命、銀行を襲うの」
シロコがまた変なことを言い出す。肝心のルカは「ふーん良いんじゃない?」くらいの態度だ。
「ちょっとちょっとぉ!?なんでルカさん反対しないんですかぁ!?」
「えー襲う場所によってはさっきまでの案よりマシだし。アレシロコの病気みたいなもんだし。『アイデンティティ捨てろ』なんて私でも簡単に言えないし…」
「へー覆面No.6に7、私とユメちゃんの分もあるんだありがとうねえ」
「ん!2人を仲間外れにはしない…!」
「ひぃん!?私は加担しないよぉ!」
「まず止めてくださいってユメちゃん…」
「ごめん、アビドスが賑やかなのが嬉しくって…」
少し涙を滲ませてユメが言う。ルカはユメをナデナデしている。先生とホシノとノノミもほっこりしている。というかホシノとルカがシロコを睨んでいる。「ユメ先輩悲しませんじゃねえぞオルァン?」みたいな感じだ。
───
そうしてセリカのバイトを追っかけて
「ふーん面白い話しているのね貴女達。カヨコ?『今日の襲撃任務』ってなんのこと?」
「ルルルルルるルカぁ~!?なんでアンタがココにいんのよーっ!?」
ルカがそそくさ席を移して便利屋の方につく。
「しぃーっ声を抑えなさいバカアル。『アビドスが
「カヨコ…アンタがブレーンなんだからきちんと止めなさいよ」
「…進言くらいはしたよ」
「ああもう、そこそこ儲けているはずなのになんで一杯を四分割とか情けないことしてんのアンタ達、この場は私が奢ってやるからもう好きな物を頼みなさいっ」
「やったーありがとルカちゃーん」
「そのまま退いてくれたりとかは…」
「す・る・わ・け・な・い・で・しょ。この場でぶち殺すわよ?アビドスの子達はねえずっと健気に廃校に抗って真面目に頑張っているの。それを『キヴォトスを支配したい』とかいう下らないカイザーの野望に巻き込まれて、ずっと苦労してんのよ。」
「え、カイザー?」
「自分たちの雇い主のことも知らないのかアンタらは…私の『カイザー嫌い』知っているでしょ…ちなみにホシノはヒナちゃんの親友よ、今から連れてこようか?」
「空腹のままとか締まらないし、どこかのコックも『腹いっぱいになった略奪者には容赦しない』とか言っていたし遠慮なく食べなさい。後できっちりぶちのめしてアゲルから♡」
アルはもうずっと白目で主にカヨコが応対している。カヨコは深い溜息を