ゲヘナに舞い降りた堕天使   作:シファー

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第12話 対決!風紀委員会

 ホシノはカイザーの建物に居る黒服を尋ねていた。

 

「ようこそ小鳥遊ホシノさん…ククク…前に会った時より随分神秘が強くなったようだ…訓練で多少は伸びることはあっても貴女のソレは既に別物…やはり()()は興味深い…

貴女への興味が無くなったわけではないが、生徒でありながら、まるで『生徒を導く者』…いや自分自身を使って実験も続けている、研究者(われわれ)のような面もある…そのノウハウを効率化して生徒に伝えている…

さながら『もう1人の先生』のようだ…しかも真っ先にその『先生』に会いに行ったのが彼女となれば…」

 

ホシノの視線が険しくなってくる…

 

「私の親友や先生に手出しするようなら…!」

 

「フ…既に追放されたとはいえ私達の元同志が以前彼女にちょっかいをかけようとして、大火傷をしましてね…我々とて命は惜しい。『恐怖』を自身の確かなチカラとして制御し完璧にモノとしている()()への興味は尽きませんが…」

 

「へえ気付いていたんだ…ゲマトリア(アンタら)のことただの研究者気取りのごっこ遊びサークルだと思っていた。人格はドブカスって評価は変わんないけど、能力だけは見直さなきゃいけないかな…」

 

ホシノの影からルカがもぞもぞと出てくる。

 

「ルカちゃん!?一体どうやって…!?

 

「影に潜む能力…一体どれだけ多彩なんでしょうかね、貴女の能力は…」

 

「『ルシフェル』の別名は『光を掲げる者』…少々強引な解釈だけどね、反転した私は光とは正反対の『影を操る力』を使えるようになったの。ハ…『至高の堕天使』の力がたかだかフィジカルギフテッドと『恐怖』だけなわけないでしょう。」

 

まだ他にもあるし、能力。

 

「飛行能力と戦闘力を考慮すればそれらだけで充分すぎるんですけどねえ…やはり貴女も、わ「入らないわよ」まだ言っていないんですがねえ…」

 

「私が『研究者』っていうアンタらに近い視点を、持っているのは認めるわ。でも倫理観をドブに捨てたような連中と轡を並べる気は毛頭無い。近くこの地に訪れるであろう、木っ端の色彩如きアンタらの手を借りるまでもない。

お前らは『大人が子供を利用する』云々以前に、人間として最低だから。ソレを捨てたら、原始時代の猿や獣以下に堕ちてしまうでしょう、人間(わたしたち)は。『崇高だ、なんだ』と高尚ぶって知的に振る舞おうとしても隠しきれない、腐臭がすんのよ。

おあつらえ向きの異形集団のゲマトリア(アンタら)に言っても詮無きことなのかもしれんけどね」

 

「クク…嫌われたものです…私自身は直接貴女に何かをしたことは無いんですがねえ?」

 

「好かれる要素が有るとでも?アンタでもマシな方ってホント、どうかと思うわよ?好奇心の中にも見え隠れする、実験動物(モルモット)を観る無機質な視線…私が気付かないとでも?恐怖に染まっている方がまだ可愛気があんのよ

それと、妖怪ババア(ベアトリーチェ)…アレは私が必ず殺す…『震えて待ってなさい』と伝えておいてもらえるかしら?私はアンタらみたいなのを同じ『人間』にはカウントしないから手を下すのを躊躇わない…せいぜいが『害獣駆除』よ」

 

「…しかとその伝言承りましたとも。ホシノさん。彼女を連れてきてくれたお礼として借金は減らしておきましょう。とはいえもうかつての半分も無いようですが…カイザーの方はその方に敵視されているようなら泥舟でしょうし、先生も居るのならどうとでもなるでしょう」

 

そうしてホシノは、ルカと建物を後にしたのだが───

 

「───ねえ、ルカちゃん…怒ってる?」

 

「あぁ・たぁりぃ・まぁ・え・でぇ・しょぉ・がぁ」

 

ぐにぃとホシノの頬が両側から掴まれぎりぎりと引き伸ばされる。ちなみに握力は3桁を余裕で越えている。

 

「いひゃい、いふぁい、ふぃふぁい。ひょっっへひぃっふぁふぁいふぇ~」

 

自分を大事にしないところは正史(ほんらい)より大分マシになったはずなのだが、自分以外を大切に想いすぎて、自身を軽視してしまう部分が健在なのは頂けない。

ある意味では美点と言えるかもしれないが、それで一番傷つくのはその大切な者達だというのに。そのあたりはまだまだ浅慮な子供だ。

先生とかも最後の最期では「大人の責任」とか言って生徒のために「そう」しそうなところがあるのだが、相談する時間も相手も居る状況で真っ先に自己犠牲は駄目だろう。別にこちらはホシノのリアル緊縛シーンなんて見たくないのだ。

 

黒服(アイツ)も言っていたでしょう?カイザーなんて既に泥舟だから…取引相手にも値しないし…アンタがカイザーの雇われになって私がアビドスの皆と乗り込んできたらどうすんの?

皆当然のように『ボコってでも連れ戻す』ってノリになるわよ?私も当然追従するしね…後のことは『私達S.C.H.A.L.E(シャーレ)の大人』に任せなさい。あ、でも、後でアビドスの皆に、ユメちゃんと先生にヒナちゃんも呼んで説教だから」

 

「うへぇ!?なんでヒナちゃんまでぇ!?と言うか先輩に自分のドジ以外で泣かれると心にクルんだよぉ~ヒナちゃんも涙目で睨まれると心痛くなるし」

 

「あら…なら貴女には効果的で丁度良いじゃない…再犯率0になるかもだし、それに自分が大切に想われているくらいの自覚があるなら、もう阿呆なことはすんじゃないわよ」

 

───

 

 

便利屋はアビドスを撤退する前に最後に柴関ラーメンに寄っていた。

 

「ここのラーメンは本当に美味しいねえ~立地が悪いからお客さん来ないのかな?」

 

「ルカちゃんといいハルナちゃんといいアビドスの次に縁があるのはゲヘナの子達なのかねえ~そう言ってくれるのは嬉しいよっ」

 

「ハルナってまさか…」

 

「ええ、そうよ、ここは美食研の行きつけでもあるの…流石に遠いから、休みの日にジャンケンで勝った子1人だけを私が抱えて連れてきたりしてるんだけどね」

 

目立たない席にホシノと2人で座っていたルカから声がかかる。無論フウカに手出し出来ない処置をした後にだけど。そのフウカを連れてきたこともある。というかそれが一番楽だ。

 

「ルルルルカぁっ!?」

 

「やぁ~この前ぶりだねぇ便利屋の皆さん」

 

ホシノもアビドスに攻めてきた便利屋に思うところが無いわけではないが、先程まで自分がなろうとしていた「所詮は大人に利用される側の子供」と思うと途端に凄く冷静になれる。

 

「流石に食事の場で争うほど無粋な輩じゃないでしょう、アンタたちも…そんなことしていたらそれこそハルナに殺されるからね…取り敢えず早めに食べて勘定しなさい、少し騒がしくなりそうだから」

 

「「「「「え?」」」」」

 

「身内の不始末みたいなモンだけど…流石にアンタら庇えそうにないからね…」

 

そう言うなりルカはホシノと勘定を済ませて、そそくさと出ていってしまう。

 

「はあ、イオリに…チナツもいるのか…まあ『このへんアビドスじゃなくてカイザーの土地だから侵攻した』って言われたら反論しにくいんだけど『カイザー嫌い』は公言しているからなあ…」

 

「ヒナちゃんは?」

 

「居ない…けどもっと遠くから近付いてきているっぽい」

 

「うへー沢山人が近付いてきているのは私も判るようになったけどヒナちゃんの方はまだ全然だよぉ、他の子より気配おっきいのは近くに居れば理解るんだけどねぇ」

 

「私くらい極まれば戦闘にも応用出来るけど、中途半端なのは敵に知られていると逆に利用され兼ねない程度の小技だし…そんなとこまで真似しなくてもいいわよ」

 

ぞくぞくと風紀委員がやって来る。騒ぎを聞きつけて対策委員会の面々もやって来た。まあここ学校から近いし。

 

『アレはゲヘナ風紀委員会です!』

 

とアヤネが言うと一斉に私に視線が集中する。ちなみに便利屋は撤退していった。

 

「まあ皆緊張しなくて大丈夫だよ…部下のやらかしにお灸を据えるのも上司の役目…だしね…はあ…非番なんだけどねえ」

 

そうして対峙する2つの勢力───

どちらが”上”かは言うまでもない。

怒ったルカの姿を視認した瞬間に風紀委員会側はガクブルだ。

 

「それでー?雁首揃えて、アビドス付近にまで侵攻してきた理由はー?イオリぃーチナツぅー『アビドス付近の問題はデリケートだから騒ぎ起こすな』って忠告したわよねえ、はああんなに眼かけて色々教育してあげていたのになのに なんでこんな真似すんの?

お前らのこと助けてやれないよ、もう潰すしかなくなっちゃうよ?」

 

「それはっ規則違反者の便利屋を捕まえにっ…」(チナツお前もなんか言い訳しろっ)

 

「もう逃げられたのに?…ふぅん私の忠告より便利屋如き木っ端を捕まえることの方が大事かぁ…へぇーそっかぁ…」

 

((恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い恐い────────────ッ))

 

殺気に「恐怖」が乗ってズシンと物理的な重圧となり風紀委員会を威嚇する。経験の少ないチナツ以外の1年生は何人も泡を吹いて倒れている。2年生以上は他ならぬルカ自身によって鍛えられているのでなんとか立っているが。

 

「チナツ…『S.C.H.A.L.E(シャーレ)の一員としてアビドスに暫くかかりきりになる』って私言ったわよねえ…」

 

『そこまでにしてもらえますかルカさん』

 

「安全圏から偉そうに私に意見すんじゃねえN()o().()3()()()()風情が…その破廉恥な横乳もいでやろうか?【乳呼吸女】め…!」

 

『なんですかその呼び方は!?そもそも私の格好は普通です!』

 

イオリがブフォと吹いているが無視する。おっと前世のミームがつい出てしまった。

 

「浅はかな企みで、『私達の先生』を拉致ろうとしやがっていたなテメェ…しかも『私が鍛えた子達』を使って…」

 

「〝え、私?〟」

 

『そもそもゲヘナに転入する前から連邦生徒会長とつるんでコソコソと動いていた貴女がっ…風紀委員会に入った後でもずっとつるんでいたではないですかっ!

その怪しげなS.C.H.A.L.E(シャーレ)にっ…最強の貴女が躊躇いなく入り込んでいる時点で怪しさ満点なんですよっ!』

 

「ふーんだ、プライベートの付き合いまでどうこう言われる筋合いは無いわねえ、そーいうのまで口出しされるの面倒だからトリニティから転校したのに…

ゲヘナと目の敵にしているトリニティくらいしか視界に入れていないアンタとは違って、こっちはもっと大きな視点から見てんのっ」

 

『ぐぅっ…条約締結前に不確定な要素はなるべく排除したかったのにっ…』

 

「エデン条約…ね…そもそもアレって雷帝さんの動き牽制するために連邦生徒会長が立案したやつでしょう?会長自身も本気で締結出来るなんて思っていなかったわよ、アレ…立案して流布した時点でそもそも目的は果たしてんの。

もう雷帝さんが卒業しちゃった時点で用済みだしあんなん。『私の友達』が本当に意味のあるものを放置して宙ぶらりんにして無責任に失踪するわけないでしょう?本気で殺すわよ?

そもそも今のトップのマコトが締結するつもりなんて無いのに上手くいくわけないじゃん、ナギサやヒナちゃんには悪いけどね、アンタも当初は『ヒナちゃんの負担減らすため』とか健気に思っていたんでしょうけど…

()がぁこの2年間で鍛えた風紀委員会は一応3年生の私らが今すぐ抜けてもなんとか回るくらいまでには教育出来た…前のアンタと同じポジでNo.2になるであろう、チナツがこの蛮行を止めるように進言出来ていなかった時点でまだまだ不安はあるけどさあ…一般委員の底上げもかなり出来たし…

マコトに『アリウスと組むなんてどういうことだ』って問い詰めてみたら、面白い反応すると思うわよ?アイツ地頭良い割にとにかく浅慮だからね、深く考えずにその場の思いつきのライブ感で生きているんでしょうよある意味ゲヘナ生らしくて面白い奴だから、

馬鹿で最低でもこれ以上本気で締め付ける気にはなれないのよねー」

 

というかミカはあんなに責められたのにアイツだけはアフロギャグで済まされるとか絶許である。結局割食っているのは真面目なヒナちゃんとかだけだし。

 

「その話…私も詳しく聞きたいわね…ルカ…」

 

「あらヒナちゃん連絡してからかなり早く着いたわね…その様子じゃもう?」

 

「ええ…()()()()()ようになったわよ…」

 

『アコはすぐ兵を退かせて…『私の友達』と…ルカやホシノとも話さなくちゃいけないから…懲罰はその後でね』

 

天雨アコの命運は尽きたのであった───

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