ゲヘナに舞い降りた堕天使 作:シファー
3ヶ月前───
「お姉ちゃんっ!どうしよう…どうしよう!セイアちゃんが死んじゃったって…」
「落ち着きなさい、ミカ…セイアは生きているわ…今は本当に眠っているだけよ…今頃ミネ団長が匿っているはず…」
「えっじゃあなんでティーパーティーにまで死亡報告がっ…」
「『敵』の眼を欺くためよ…アンタ達は…アンタもアズサも『敵』に利用されていただけなの」
「慣れないことなんてするもんじゃないわね、セイアへの意趣返しくらい自分の手でしなさいよ、らしくない。だから妖怪ババア如きにつけこまれるんだわ。アズサは優しい子よ。『敵』に『セイアを殺せ』って指令を受けていたのに、
それに背いてセイアの偽装死に協力したの。」
ミカを抱えて、セイアとミネの反応がした付近に降り立つ。
「ここってヨハネ分派系列の病院?」
「そうみたいね───」
「ルカさん、お久しぶりです、ミカ様、たとえセイア様と同じティーパーティーであろうとも今は
セイアを匿っていることを隠そうともしない。ルカまでがここに居る時点で察しているらしい。ミカが「襲撃者」について漏らそうとするが今言っても拗れるだけだ。答えようとするミカを制して、率先してルカが答える。
「『襲撃者』も利用されただけの下っ端に過ぎないの『黒幕』は結構面倒臭い相手だし、それを今ここで1から説明する気は無いわ」
「私は友達、ミカは同僚の見舞いに来ただけ…これじゃ不満?」
「不満ですね…そもそもミカ様はセイア様と仲が悪かったではないですか」
「ミネ…貴女は行き過ぎた部分はあるけど大して想い入れの無い他人を案じそこまで労れるその信念は評価しているわ。こんな形で友達のこと殴りたくないの。私の妹は優しいから仲の悪い同僚でも心配出来る良い子なの。分かったら退いてくれないかしら?」
「恐怖」を漏らしながら、ミネに退くように勧告するルカだが、ミネは顔色1つ変えずに
「ダメですね」
「この分からず屋がァ!吐いた唾飲み込めると思うなよ小娘ェ!」
そうして殴りかかるルカだが戦いは3分程度で終わった。ルカ相手に分単位粘れる時点でかなりの強者であることの証左でもあるが。ルカの意識を断つ攻撃は根性だけで耐えられるものでなく。ミネは健闘虚しく倒れた。
「ごめんなさいミネ、暫く寝ていてね…」
「ミネ団長強かったね、ツルギと同レベルじゃない?
「神秘はそこまでじゃなかったけど、鋼のような意志の強さとタフさは少し怖かったわ…」
ミネをおぶって院内に侵入する。全員視えないように細工して。
「セイアは…多分こっち」
「ほへー迷わずに真っ直ぐ行くよねえ、お姉ちゃん居て本当に良かったよ」
しかも人が少ないルートを使っている。適当な椅子にミネを寝かせて、そのまま向かう。
やがてセイアの眠る病室に辿り着くが───セイアは病室のベッドですやすやと眠っていた。
「ほら、セイアよ、ミカ…顔色も良い…身体は全然ピンピンしていそうね、寧ろ心配して損したわ…繋がれているのも栄養剤の点滴だけ…」
「良かった…良かったよぅ…セイアちゃん生きていた…あれお姉ちゃんセイアちゃんに何を…?」
自然な動作でセイアにルカが触れる。
「ちょっと私の
「私にも前にやったことのあるアレ?凄く気持ち良いけど、身体びっくりするんだよね、セイアちゃんの貧弱ボディで大丈夫なのかな?」
「大丈夫アンタよりゆっくりやるから、それに身体弱い子に神秘分けるの初めてじゃないし…」
「
「う”ッ!」
「あれお姉ちゃん!?今セイアちゃんが唸って…」
「単に身体が反応しただけでしょ。
───その日の夜…
「あれ…ここは
「───ということは…」
「やれやれ君がここに来るのは久しぶりだね我が友よ…
「私は元々ティーパーティーに入る気は無かったの…内定はしていたけど、どのみちミカに譲る気だったわ…」
「でも…それは無理になった。君は価値を示しすぎたんだ、だからトリニティも辞めてしまった。さぞハナコあたりとは話が合いそうだ、ね」
「誰かが引き止めないと、そのうちあの子もトリニティ辞めるわよ…」
「そうか…それはまた寂しくなるね…」
「私はトリニティ辞める理由が増えすぎていたからね、あの子みたいに別に見限ったわけじゃないわよ?」
「別にトップなんて誰がやっても変わんないんだしさ、トップ1人が乱心して誰も止められないようだったらその組織構造に問題があるし、有能な頭が常に居なきゃ成り立たないような組織も問題がある」
「…キヴォトスが特殊過ぎるんだろうね、乱世の時のトップと平時の時のトップは必要な能力の要求値に雲泥の差があるけど…キヴォトスは常に乱世みたいなもんだからどこでも常に有能なトップが求められる」
「君は言っていたね…『連邦生徒会は欠陥だらけの組織だ』って…」
「私は現場の方が向いているし…あんたら3人がきちんと協力出来れば私なんて別に必要ないのよ」
「それが君が知っている『歴史』なのかい?」
「!?…ええそんなもんよ」
「フ…君の珍しい動揺した顔を久々に見れたな…妙にキヴォトスや
「…まあそんなところね」
「むう、つまらないね…明らかに反応が淡白になっている…」
「別に絶対バレたくない秘密とかじゃないし…」
「君は『先生』をお迎えするためにずっと連邦生徒会長と準備をしていたんだろう?」
「まあ、そんなところね…今回”繋がった”のは多分私が貴女に
「外の私の身体がびっくりしたと思ったら何ということをしてくれるんだい」
「お陰で早く起きれそうになったんだからいいじゃない、起きたら次は
「ああ、また4人で───」
結論から言うとセイアは数日後に目覚めた。ミカは「人殺し」の十字架を自身が背負わなくなったことよりも、純粋にセイアの無事を喜んでいた。やっぱり優しい子だ。泣きながらセイアを抱き締めるミカにセイアは目を白黒させていたが。
まあ仲が微妙だった同僚が突然そんな態度見せたら戸惑うしか無いだろう。馬鹿力でセイアを絞め殺しそうになって私が止めることになったのはご愛嬌だが。その後はセイアの復帰は隠したまま匿った。
もう病院に居る必要も無いので場所は移したが。私はナギサもびっくりなほどの数のセーフハウスを持っているので*1その1つに匿っている。ミカやミネもちょこちょこ上がり込んで様子を見に来ているが。
泣き腫らすミカを見てミネは私達に謝罪した。
───
「裏切り者…ねえ…ナギサ…そんなものは貴女の頭の中にしか居ないよ…やらかしていたのがミカだから私も悪いんだろうけどねえ…先生、ごめんなさい、まずは
影に先生を飲み込んで強制転移させる。姿を消していたルカとセイアとミカがナギサの前に現れる。
「ルカさん!?セイアさんも!?」
「それじゃあ私達の『本当の敵』について話すわね…」
───
「ええ、ルカさん貴女の話を纏めると───セイアさんを襲撃したのはあの白州アズサさんで…切っ掛けはミカさんからの指示で『少し痛い目見せる』程度のつもりが彼女の後ろに居た『黒幕』は『ヘイロー破壊爆弾』なる物でその命を本当に狙っていた、と!?」
「ええ…アズサは本当は殺したくなかったからセイアからの『提案』をあっさり受けて普通の爆弾で意識不明になってたんだけど…」
「つい最近覚醒して今はこの通りもうピンピンしているのさ」
「ナギサ…アンタはミカが狙われるの警戒していたみたいだけど、順番で言えば『次』はアンタだったはずよ?向こうはミカのこと『都合よく踊ってくれる便利なお人形さん』とか思っていただろうから、ミカは最後だったでしょうしね…」
「セイアちゃん普通の爆弾で深手負うとか貧弱過ぎない!?びっくりなんだけど!」
「私を君達と一緒にしないでくれ…それにルカから
「「「調子乗んな」」」
「そこまでは無理に決まっているでしょう?」
「流石にセイアちゃんに戦闘で負ける気はまだまだしないかな?」
「病み上がりで頭もボケているんですか、セイアさん?…それでミカさんが例のアリウスをこっそり支援していたと…」
「もうそっちはとっくに手を切らせたけどね…でもアンタ達にも姉としては文句言いたいのよ」
「セイアもナギサも、ミカが『アリウスと仲直りしたい』って言ったら『出来っこない』って切って捨てたでしょう、『一考の余地もない』みたいな感じで。本当に考慮にも値しないことだったかしら?
「まあ現実的な話をすると私達の代だけで全てを解決するのは難しいでしょうね、無理にこっちに引っ張ってきても『何様だ』ってなるだろうし、トリカスは絶対差別するでしょうし…」
「でも、全解決は難しいからって、何もしないのは違うでしょう。せめて次代に繋げられる『種』を撒くくらいのことは考えても良かったんじゃないかしら?」
「う…」
「ごめんなさい、ルカさん、ミカさんも…後ほど真剣に考えてみましょうか…」
「アズサを受け入れるのは良い手だと思ったわよ…アリウスのような環境で育ったにしてはアズサは善良な心を保てられているし…スクワッドが根は良い子達なのねきっと…」
「お姉ちゃん錠前サオリは…」
「あの子は悪い子じゃないけど放置していたら悪いことはする…いやさせられる子よ、まあこのまま野放しには出来ないわね」
「ぶっちゃけると私は今ミカのふりして、アリウスに接触している…人間とは不思議なものでね私が『肉体年齢の操作が自由』ってことは知っていても、翼の偽装は人前でしたことがないから『そこだけは誤魔化せない』って誰もが思い込んでいるのよ」
「違うのかい?」
「違うわよ。両方とも前の白い翼にも出来るし、その気になれば翼そのものを消すことも出来るわ。」
「ナギサ…条約締結は出来ないでしょう…それだけは謝っておくわ、今の内に。会場はアリウスに襲われるだろうから…セイアもごめんなさい、ベアトリーチェを排して情勢が落ち着くまではまだ隠れていて」
「ナギサが進めていた補習授業部は普通に進めなさい…退学とかをチラつかせるのは無しで、アズサとハナコには特に必要な場所だからね」
「ハナコが?何故だい?」
「友達作りよ。天才のあの子にも色眼鏡を掛けない善良な子達と交流を重ねられるであろう場所はあの子の掛け替えのない宝物になるでしょう」
「大体あそこまでの天才を怪しいってだけでみすみす追い出したら為政者として無能もいいところよ、ナギサ…」
「お姉ちゃんが『天才』って言う程ってどんくらい?」
「頭脳だけなら連邦生徒会長並み…でしょうね、まあ会長は訳分かんないオーパーツの知識やらミレニアム生顔負けの工学知識も有ったからそのへんまでは及ばないでしょうけど…」
「「そこまでっ!?」」
「アンタのお気に入りのヒフミやセイアのお気に入りのハナコにとっても良い場所になるから、妙な妨害はしないでね…」
「ミカ…アンタアズサを適当なクラスに入れてお金をあげるだけで放置していたでしょう…」
「補習授業部ではがっつり私がフォローはしておくから、アンタも自分で始めたことには責任持つようにしなさい」
ティーパーティーのお部屋ではミカはルカちゃんに膝枕されていました。