ゲヘナに舞い降りた堕天使   作:シファー

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第32話 夜の街で

 先生には裏切り者云々の序盤をナギサから聞かされてしまったため、ある程度の事情を話さざるを得なかった。ハナコには補習授業部の「当初の目的」とアズサの背景、セイアの生存など大体のことを話した。

まあこれが中途半端な頭の出来の奴なら「何でこいつはそこまで知っているんだ」と疑心暗鬼に陥ってしまうものだが、ハナコの頭は中途半端な域にはないので、かなりの情報を渡した。自分より頭の良い奴との情報共有は基本である。

私との付き合いが長い者は殆どが私の持つ情報量の多さに対して「探るだけ無駄」と諦観の域にある。先生は割と早くその域に達した。素晴らしい順応力である。ハナコはセイアから私のことを聞かされていたのか最初から疑う様子も無かった。

普通の学校ならどう考えても不条理なテストの点数による連帯責任性は敢えて残した。順当にいけばヒフミ→アズサ→コハルときて、ハナコはコハルと同時か最後になるのだろうが、

コハルに仲間が減って自分だけが残されるプレッシャーは重すぎるかな、と思ったのだ。出来るだけ絆を深める時間が増えて欲しいという個人的な我儘もある。

これくらいの理不尽では憤ることのない善良な子達かつ全員の相性が良いと判っているから出来る暴挙である。

 日中アズサにイジメから助けられた生徒のお礼をマリーが伝えてくれた一幕もあったが、私の存在には目を剥いていた。ほぼ初対面でコハルのような形での面識もない。アズサのトラップは拳骨と共に解除させたので、そのへんのドタバタは無かったが。

ヒフミとハナコの夜のやり取りも無くなった。ヒフミがナギサに翻弄され、ハナコによってナギサが脳破壊される可能性が無くなったのは感無量である。この依頼が始まってから、何回か、セイアの居る別荘に招いて4人で泊まったりもした。

まあ時間が時間だけにお茶会はしなかったが。食事は基本、合宿場で私が多めに料理を作ってそれを持ち込んだりする形だ。セイアやナギサから「もっとかまえ」みたいな気配がするんだよな、結構。

ハナコの私へのスキンシップが増えて、コハルやミカが瞠目したりもしたが。雨が降った日は素早く私が洗濯物を取り込んだので「水着パーティー」も無くなった。

停電がした段階で、仕方なく私の能力の1つを披露した。手から光を生み出して部屋を照らす。どこかの別荘に連れて行くことも考えたけど、影の中に入るのトリニティ生的には少し気持ち悪いらしいからな。

「光」を操るEX技(のうりょく)は「影」より前から私が使えた能力だ。反転した後でも失われなかったのは僥倖だった。ミレニアムとの関係を深めたのも、光学を学びたかったからだ。

ぶっちゃけ影を使わなくても光学迷彩で隠密も可能だ。結構高い制御力を求められ神経使うから最近はあんまり使わないが。太陽拳よろしく目潰しも出来るし、攻撃にも使えるし、普通にかなり強い能力で気に入っている。

私の速度が滅茶苦茶速いのもこの神秘が関係していると思う。かつては「目指せ光速、ピカピカの実」とか阿呆なことを目指していたりもした。普通に身体が耐えられるわけがないので目指してはいけない域だろう。

 

「凄い!セイアちゃんから聞いていましたが『生徒の中では誰よりも神秘に精通している』というのは本当なのですねっ」

 

「こんなん周囲を照らすだけの大道芸レベルのものよ、電気が有れば基本使わないし…」

 

「でも優しい光で…凄く落ち着きます…」

 

「本当…ルカ様みたいに優しい温かな光…」

 

ちょっと照れるがトリニティ生なら大体似たような感想になるらしい。ちなみに攻撃に使うとゲヘナ生特攻っぽい。

 

その後は話に花を咲かせてハナコが覆面水着団に言及するが…コハルに変態呼ばわりされてボロクソに言われた。ヒフミとユメパイはあうあうしている。

 

「別に本物は水着なんて着ていないわよ…覆面は被っていたけど…」

 

まあおふざけのノリで付けた名前だしなあ…

 

「えっそれじゃ名前詐欺じゃないですか!?許せない犯罪者集団ですねっぷんぷんっ」

 

「どう思いますかボス?」みたいな感じでヒフミに目配せをする。ヒフミは焦ってぶんぶん首を振る。ここで首を掻っ切るジェスチャーをするくらいのノリの良さをその内見せて欲しいぜえボスぅ…

 

───

 

停電が復旧した後、ハナコの提案で夜のお散歩に出る補習授業部とS.C.H.A.L.E(シャーレ)の7人。深夜のスイーツ屋に全員で入る。そこに先客で限定パフェを食べるハスミが居た。

 

「ハッスミぃ夜にいっぱい食べるの良くないわよぉー?出来もしないダイエット宣言なんてして昼間に食事制限なんてしているから夜に我慢出来なくなるのよ」

 

「大体アンタ普通に健康的で細いじゃない。どこが絞る必要あるの?」

 

「ぐぬっ…それは貴女が居ない時の羽沼マコトがっ…」

 

「あ…しまった最近は結構大人しかったから油断していた…」

 

不意にそう呟くと店外に1人で出ていってしまう、ルカ。

 

「あらあら?」

 

「ルカ様?」

 

「ルカさん?」

 

その少し後に正義実現委員会の仲正イチカから「アクアリウムに展示されているゴールドマグロを()うために美食研究会が騒ぎを起こしている」という報告がハスミに上がる。

 

『はあ…そちらは放置して大丈夫でしょうイチカ。誰よりも頼りになる援軍が向かったようですから』

 

───夜の空から最強の堕天使が舞い降りてくる。

 

「おい馬鹿共。『S.C.H.A.L.E(シャーレ)に入るならメシたらふく食わせてやる代わりに騒ぎは起こすな』って忠告したよなァ?」

 

ルカは便利屋や美食研究会の面々とも確かに友達であるが現行犯を逃すほど甘い対応はしない。基本秩序側の人間なのだ。

 

「あああああ!?『トリニティに居る』って聞いていたからちょっと嫌な予感はしていたけれどおおおおおおおお!?」

 

「フッルカさん…たとえ貴女相手であろうと私の食への探求の邪魔はさせないですっ」

 

「んー!んああん!あむんんー!」

 

「フーちゃん待ってて今助けるからね?」

 

美食研究会はそれなりに強いが、まあ所詮「それなり」である。ルカ基準だが。フウカとゴールドマグロを超高速で奪還して、未だに呼吸が出来ないマグロの方を超速でアクアリウムに戻す。

 

「ふう。これで魚は死なないはず…」

 

「さあ馬鹿共裁きの時間だ」

 

20秒と経たずに全員が倒れ伏す。いつも不憫なジュンコだけはちょっと手加減したが。やがてS.C.H.A.L.E(シャーレ)としてゲヘナ風紀委員会に美食研を引き渡すことになる。

 

「フーちゃんごめんね、最近こいつら割と大人しかったから油断していたわ」

 

「ううん、いいのっいつもありがとうルカちゃんっでもハルナのことも『友達』って言ってる割には容赦ないよね、いつも…」

 

「公私混同を副委員長の私がしちゃダメでしょういくらゲヘナとはいえ…そんなことしていたら同僚たちに見限られちゃうじゃないの」

 

「そうね…そういうところが貴女の美点でもある。今回はこいつらが一方的に悪いから、そこそこ仲が良くても容赦なく捕らえた…のね、もし本当に已むを得ない事情があったのなら庇ったのでしょうけど…」

 

風紀委員長として美食研を引き取りにヒナが到着する。

 

「こいつらに基本んなもんねーからっ容赦なく引っ立てちゃってヒナちゃんケラケラあ、マコトの馬鹿シバけた?」

 

「ええ…『例の件』にも言及してね…」

 

「ごめんね、忙しい時期なのに…私だけ別のことしていて…」

 

「いいのよ…大切な幼馴染や妹さんのためでもあるんでしょう?きっちり依頼を完遂してから憂いなく戻って来なさい」

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