ゲヘナに舞い降りた堕天使   作:シファー

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第34話 スクワッド1

 補習授業部はボーナスタイムのような時間に突入していた。もう試験に追われるプレッシャーはなく、全員がこの集まりを気に入っていたので、文句は出なかった。

S.C.H.A.L.E(シャーレ)の3名は全員が慕われていたし、元々対外的にも、狐以外の3名はキヴォトスでも人気者のS.C.H.A.L.E(シャーレ)の「顔」だ。

特にルカに関しては、殆どの者に羨まれる。最初は「とっとと1抜けして正実に復帰よ!」とか息巻いてたコハルにとっても遠くなってしまったはずの憧れの人との再会後の時間は夢のようなひと時だった。

今では「もっと長引いて」とまではっきりと思っていた。現金なものである。全員がトリニティ生の補習授業部の面々同士はたしかにいつでもすぐに会えるのだろうが、「トリニティでルカ達と会う」のはもうこれっきりだろう、という予感はしていたし、実際にほぼ間違っていない。

S.C.H.A.L.E(シャーレ)には当然全員が入部したが、部員が増えてきて最近ようやくS.C.H.A.L.E(シャーレ)も当番制が導入された。ルカは先生が居るオフィスとは別の場所に居ることも多いが、その場合はよく人に囲まれている。

慣れた場所でほぼ每日顔が合わせられる今の環境は理想的なのだ。アズサは自身の本来の立場と背景を全員に打ち明けた。ルカにバレている時点でどのみち変わらない、と思っていたし、「その程度で自分達の関係に今更罅が入るはずもない」と信頼したのだった。

ルカからの「作戦」の概要もある程度は伝えられている。本来ヒフミは物騒な作戦とは切り離されて然るべき立場だったのだが、「他の3人ががっつり参加するのに1人除け者は無いだろう」ということで、

きっちりS.C.H.A.L.E(シャーレ)のメンバーとして組み込まれた。基礎能力が劇的に向上し特級のEX技(異能)に目覚めたコハルは今や正実にも重宝される確かな「戦力」だ。アズサは元々ゲリラ戦のスペシャリスト。

更にそこに向上した基礎能力が加われば、単騎での「スクワッド打倒」すら不可能ではない。

 

 

「うん…ナギちゃんは今夜間違いなくそこにいるよ…正実は動けなくしたし、大丈夫でしょう、アズサちゃんに手引きさせて合流させるからよろしくねっ☆S.C.H.A.L.E(シャーレ)も、撤退したし余裕でしょっ☆」

 

ベアトリーチェの方針的に通信機器の類の使用は最低限に抑えているアリウスだが、流石に地上に出てくれば0というわけにはいかない。ルカはミカとしてアリウスとやり取りをして手引きしていた。

 

「見事なまでの役者っぷりだね、まあ通信越しじゃ騙されて当然だろうね」

 

「そもそも声が同じですし、姿までミカさんと同じにされたら、私でもちょっと見破れる自信は無いですね…」

 

「ミカが私のフリは無理だけどその逆なら余裕ってわけよ。お姉ちゃんは偉大なのだ」

 

「むぅー姿以外なら私でもお姉ちゃんの真似出来るよっぷんぷんっ」

 

ティーパーティー殺害の作戦を故人(さつがいずみ)のはずのセイアと今回の標的(ナギサ)が横で聞く。傍から見れば喜劇以外のなにものでもない。勿論アリウス…というかベアトリーチェにとっては悲劇だったのだが。

 

アズサとサオリのいつもの会合場所のトリニティ近郊の廃墟。式典会場を襲撃する作戦のためにフルメンバーで集結していたスクワッドの面々だったが───

 

「ふんふん、サオリにミサキ、ヒヨリにアツコ…全員居るね…いやあ漏れが居たら面倒なことになってたから全員居て良かったよ」

 

「ミカ!?アズサお前が連れてきたのかっ桐藤ナギサの件には我々は参加しないぞ?」

 

「いや、違う、この人はそもそも───」

 

ミカ?がぱちんと指を鳴らすと───

 

「なっ!!??動けないっ!!??」

 

「秘技影縫いってね…格下にしか効かないけど…じゃあ、そのまま、まずミサキとヒヨリは退場してもらいましょうか…」

 

「いつ見ても酷い技だ…空崎委員長クラスでもなければ問答無用で拘束されてしまうのだろう、それは…」

 

ミサキとヒヨリだけ影にぞぶぞぶ呑まれて姿が消える。

 

「なんなのこれえええええええええええええええええええええええ…」

 

「うひゃああああああああああああああああああああああああああああ…」

 

とぷんと鳴って消え去る影の沼に呑まれ一瞬周囲は静寂に包まれるが…

 

「おのれ2人をどこへやったァ!?」

 

拘束が解かれたサオリが銃を抜いて撃とうとするがそれも、遅い。その女は一瞬で距離を詰め、サオリの抜いた銃を掴み握り潰す。圧倒的格上───

そのままサオリにビンタがかまされて距離が開く。

 

「ぐぶはっ…誰だお前は───ミカじゃないだろう…」

 

「およ?心当たり無い?本当に?」

 

「だから言っただろう、師匠(マスター)…マダムは…ベアトリーチェは恐らく貴女を恐れている…1年生の頃の貴女の情報は2年前までは頻繁に伝えられてきたが、貴女が2年生になった年からさっぱり降りてこなくなったんだ…

『アリウスの手駒じゃどうにも出来ない、伝えるだけ無駄』と判断してもおかしくない、あの女なら…サオリその人はミカじゃない、1年以上前まではその人の情報も伝えられていただろう仮想敵の要注意人物として…」

 

「なんだとっ…じゃあ私が今まで会っていたのはっ…」

 

「一体いつから私が聖園ミカだと錯覚していた?」

 

「!?」

 

「まあ騙す気は…勿論満々だったけど”入れ替わって”からは『私がミカだ』なんて名乗ったことは一度もないんだけどねえ、双子って入れ替わりネタは鉄板じゃん?体格に差が無い昔はよくやっていたし…」

 

基本ボロが出てバレる時はミカからで、ルカからバレたことは皆無だ。お姉ちゃんは偉大なのだ。

 

「では、改めまして…聖園ミカの双子の姉、聖園ルカでございます。巷では『キヴォトス最強』とも呼ばれています。長い付き合いになるかそうでなくなるかはあなた方次第でしょうが…先の2人ならご心配なく、意識を落として拘束しているだけですので」

 

いっそ憎らしくなるほどの見事なカーテシーをするルカ。タイミング的にふざけているとしか思えないだろうが。

 

「おお…本当にお嬢様だったんだな…」

 

「ぶっ潰すわよアズサ?」

 

「済まないっ…ミカもだが貴女達はあんまりお嬢様っぽくないからな…」

 

「まあ、構わないわ、自覚あるし…」

 

「それで…私とアツコだけを残したのはどういうつもりだ、聖園ルカ」

 

「そうね…降伏勧告と…貴女達がこのままいいように利用されて切り捨てられるのも忍びないから…一応『立ち位置』だけは知っておいてもらおうかなっと」

 

「「?」」

 

「まず、サオリ…貴女は『スクワッド』の誰かが捕らえられてそのまま処刑されそうになったら、抗うわよね?それがたとえ虚しい結果になったとしても…」

 

「当然だ」

 

「じゃあなんでみすみすアズサの手を汚させようとしたのっ優しいこの子は絶対気にして引き摺るに決まっているでしょうがっ!」

 

「だがっ…マダムに『裏切者』と判断されて処断されるよりはマシだっ!」

 

「はあ…まあ私は『人殺しは幸せになる資格はない』なんて綺麗事言うつもりはないから…その件はもういいわ、あの妖怪ババアがどうしても恐いのなら私がその首取ってきてあげるから」

 

「その邪魔な仮面剥いじゃいましょうかまず…」

 

ルカが指を鳴らすとパキンと音が鳴ってアツコの仮面が割れる。そして地面に落ちる前に溶けるように消え去った。

 

(はかり)アツコ…貴女は…『ユスティナ聖徒会』を使役するための重要なパーツでアリウスのロイヤルブラッド…そうよね?」

 

「YESね…手話限定か早く貴女の声聞きたいわね…あと、このままいくとその後死ぬわよ?」

 

「何故だっ…!?」

 

「何故も、何も元々あいつの予定っぽいし…なんか儀式の生贄にして神秘吸い取って自身が上位存在に進化するため、なんだってさ」

 

「スクワッドに手駒としての価値がそこそこあったから今まで自由にさせていたんでしょうけど、それもなきゃ今頃檻の中だったでしょうね」

 

「サオリ、アツコ…」

 

「まあ、あのマダムならそれくらいやってもおかしくない、おかしくはないが…お前が真実を言っている確証は無い…」

 

「圧倒的格上の師匠(マスター)がお前らを騙す意味なんてないぞ…それに手駒じゃなくて対等な仲間だが、そういった戦友も彼女には非常に多い…」

 

「アンタらも『虚しい、虚しい』言うだけじゃなく『家族を想い遣れる気持ち』があるならアズサみたいに抗ってみなさいな」

 

サオリもそれなりの実力者だ。眼前の相手が今まで会ったことのないレベルの相手ということくらい判るし…アズサの言う通り騙す意味も無い。

 

「分かった…降伏しよう」

 

その後のことは語るまでもない。

他のアリウスの生徒達は待ち構えていたルカ達に一網打尽にされて捕らえられた。

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