ゲヘナに舞い降りた堕天使   作:シファー

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第37話 前口上

今更当然のことであるが──────今回捕らえられたアリウス生は全体の半分ほど。基本的に彼女らはテロ未遂犯である。

スクワッドはアズサの身内ということで贔屓はされているが…それでも基本的な扱いは変わらない。コンプラだのプライバシーだの最近はうるさいので、四六時中監視しているわけにはいかないが。

最低限アズサとの「面会中」の間くらいは監視カメラを起動されている。電子機器の知識がまるで無いから、彼女らもほぼ警戒していない。

 

「アズサちゃん、ご家族とも変にギクシャクしていないで良かったです…」

 

「ふ…ふんっまあ仲悪いのよりは良いほうが良いに決まっているからねっ仮に悪くなっても私達が元気づけてあげればいいでしょっ」

 

「んもぉ~素直に『アズサが嬉しいと私も嬉しい』って言えば良いと思いますよっ?カワイイですねえ、コハルちゃんっ」

 

年齢ほぼ同じなのに、そうやって無理にお姉さんぶるハナコも相当カワイイと思うんだけどね。

 

「なんつーか、素直に従ったの私にビビったからって感じだったけどね…ちょっと複雑…」

 

「私も最初からお姉ちゃん前面に出せばサオリ達も完全に従ってくれたのかなあ…」

 

やはり暴力!暴力は(ry

 

「まあ言葉でどうしても止まらない相手にはチラつかせるしかないかもね…実力行使は出来るだけ最終手段にしたいけど…」

 

「〝まずは対話のテーブルについてくれなきゃどうしようもないからね…本当に頼りにしているよ〟」

 

「それに暴力の世界に生きてきた彼女達にはルカちゃんの強さは効果覿面でしょうね…アズサちゃんが懐いているのも大きいでしょうが…」

 

 

スクワッドへの懐柔はそこそこ上手くいっていたがアリウスとは当然彼女らだけではない。

 

さて、今更言うまでもないことだが…私はS.C.H.A.L.E(シャーレ)の設立にガッツリ関わっている。

いくら超人の会長とはいえ1人で建物の手配等も含めて、大きな権限を持つ組織を連邦生徒会から直前まで秘密裏に設立させるのはそれなりに重労働だ。

まあだから先生のことを直接彼女から聞いていたわけじゃないが、その段階から助手として関わっていたということでS.C.H.A.L.E(シャーレ)は結構私好みの改造がされていたりする。

ぶっちゃけアリウス生を置いているのもそのあたりの場所だ。連邦生徒会からもその存在を認識されていなく、

トリニティとゲヘナの上層部のほんの僅かしか認識していない彼女達は基本的に「社会的に存在しないもの」であり、政治的には非常に微妙な立場だ。

だからヴァルキューレに預けることも出来ないし、トリニティでは単純に牢が足りないから一時的な措置だがS.C.H.A.L.E(シャーレ)預かりになっているのだ。

普通の居住区に置くわけにはいかない。というか流石にそちらにまで閉じ込められるような機構は組み込んでいないし…

地下2階と3階に「特別」居住区を造ってあるのだ。地下1階までは普通に誰でも入れる。

それに地下3階分の天井の高さを持つ広大な演習場。コハルやアズサらへの教導もここで行った。

壁自体も頑丈に出来ているが「バリア」を起動すれば最上位クラス同士の戦闘が行われても完全に建物を保護出来る。

シッテムの箱のようにバッテリーの残量も気にする必要が無いので便利だ。まあなんというかやはりネルあたりにとってもお気に入りのスポットで、

ここで既に何回かヒナやホシノとも戦っている。多分ゲームのスケジュールでのマップで表示されたら結構別物になっていそう…

収容…ではなく保護した人数は総数の半数程度らしい70人くらいだが、ベアトリーチェに忠誠…というよりは恐怖で従っている者が大半ではあるが…

だからといって奇襲を逆に待ち伏せの騙し討ちで返り討ちにされた彼女らが大人しくすんなり従うわけもなく…反抗的な者達を中心に実力差を分からせた。

1人1人相手にするのも面倒だから10人単位とかだが。武器もきっちり返した上で。

 

 

そうして迎える調印式の当日、私聖園ルカは───

 

「見てください、彼女こそが!この式典の象徴!『ミスエデン条約』ことキヴォトス最強!二校間の架け橋である、聖園ルカ様ですっ!」

 

なんか立派な王様のような衣装を用意され参加させられていた。威厳のあるらしい大人の姿で。一応「ゲヘナの形式上のトップが他に居る」ということくらいは知られている。

だが「羽沼マコト」の名前を知っているのは各学園の上層部がぼちぼち、と情報通の一部の者だけである。多分私の存在で正史(ほんらい)より存在感薄くなっている。

というか私が上司として扱っているのがヒナだけなので「ゲヘナのトップ?それってルカ様には劣るけど滅茶苦茶強いらしい空崎ヒナさんじゃないの?」というのが割と罷り通っている。

マコトも一応公の場では上司として扱っているのだが、バカな振る舞いをして相手に不快感与えたら容赦なくど突いているし。

まあアレに好き勝手させていたらハスミみたいなのが各校の上層部に増えちゃうし…なんかそれで私が「マコトの保護者」扱いされているのには納得いかないのだが。

そのへんと更に実力も踏まえて「陰の頭」だの「実質的なトップ」だの言われているのだろう。

というか私がゲヘナに転入したことも「エデン条約を見据えてのことでしょう?『和平の使者』だったはずがゲヘナまで掌握してしまうとは流石ルカ様ですおほほほほ」とか一般トリカスに言われてしまう始末。

まあ時期を省みれば状況証拠が揃いすぎてて、否定するのも最早面倒臭いのだが。

もっと酷いのは「ゲヘナを潰すための布石なんでしょう!流石ルカ様だ!」とか言っているのまでいるらしい始末。流石にそこまでのは私の耳に直接は入ってこないが…

正史(ほんらい)ならニ校間で睨み合っている例のスチルの場面なのだろうが、私も居るということで「恫喝の笑み」ではなく「自然な笑み」に取り繕おうとして、どちらも変な笑顔にばっかりなっている。

そんな様子を───()()()()()()()()()()()()()()()

 

「はーやっぱりこんなん上手くいくわけないのよねえ…締結してもゲヘナのチンピラ共は平気で破るだろうし…」

 

具体的にはこの前のハルナみたいな奴だ。ヒナと私の存在が在っても後先考えないバカは後を絶たない。

 

「あのぅ…なんで居るんですか…?」

 

「ああ、映像のアレ?当然ミカじゃないわ私の()分身よ。幻影じゃなくて実体もあるの。強さもヒナちゃんの半分程度あるからなかなかのもんよ」

 

「『影』に絡めればなんでも出来るのか?」

 

「大体その認識に近いかな。私は他の使い手を知っているからね。そーいう具体例があるとイメージし易くなるの。大切なのは『自分なら出来る』って信じ込むことだね。」

 

まあ空想上の存在だが。キヴォトスも存在した以上、どこかの並行世界に存在してもおかしくないけど。

 

「これから予定通りベアトリーチェが来ると思うから私は所定のポイントで待機しているわ。ネル…皆…スクワッドの見張りと護衛は任せたわよ」

 

「応、任せとけ、お前はこっちの心配せずに好きにやれや、しかしお前をそこまで怒らせる馬鹿は哀れだがくたばっても同情は出来ないな…」

 

最後までこちらの担当はC&Cか対策委員会かで揉めたのだが、見張りまで兼任するならその道のプロということでこうなった。ホシノ達対策委員会は会場警備と先生の護衛に回した。

 

垂れ流しのテレビの映像では既に会場が襲撃されている。ミサイルが2発撃ち込まれたみたいだがミレニアムに依頼した迎撃装置で、迎撃済みだ。

 

「流石エンジニア部…碌にテスト出来なかったのに良い仕事するわね…じゃあ行ってくるわね…」

 

地下演習場──────

 

空間が裂けて異形の女が現れる。

 

「ここがS.C.H.A.L.E(シャーレ)ですか…?妙な場所ですね、情報ではこんな場所は存在しないはずですが…」

 

「ここは秘密裏に造らせた地下演習場よ…そしてお前の墓場でもある」

 

「聖園ルカっ!?馬鹿なっお前がここにいるはずはっ…」

 

「ああ、会場のアレ?影武者みたいなもんよ、私が見えるとこに居ないとアンタも来るかどうか分かんなかったからねえ結果はご覧の通りのこのこと1人で来たわけだ」

 

「アツコをこちらで押さえた以上、会場が襲撃されるかは微妙だったんだけど、用意した以上は陽動として使いそうだったからねえ」

 

「思いつく限りで一番最悪なケースは『ヘイロー破壊爆弾』を抱えたアリウスの自爆兵を会場に大量投入させるパターン…ゴルゴンダと取引をしてそのへんは最初の1個以外渡さないようにしたからねえ」

 

「ぐぅ!?そのせいかァ!」

 

「それでアンタの顔だけは表向きにも手配させたからね…アツコの奪還に乗り込んでくる時はゴルゴンダの空間技術を利用しようとすると思ったわ…」

 

「奴がすんなりと力を貸したのはッ…!」

 

「まあそーいうこと『お話』は済んでいたの…アイツはゲマトリアの『同志』には一応仲間意識持っていたみたいなのに…アンタは常に『自分が1番自分こそが至高』とか『自分以外の全てが道具』みたいな傲慢な態度を隠そうともしなかったから…

『より有益な相手』が見つかればそら真っ先に切り捨てられるでしょうよ…信頼出来る手駒も存在しなかったから結局自ら乗り込んでくるしかなかった…」

 

「フフ…だが…お前自らがここに居ていいのか…?」

 

「ああ、残り3発の?大丈夫よ、私は最強だけど信頼出来る仲間も沢山居るの、貴女と違って」

 

「何っまさか予言のっ…!?」

 

「んーんセイアじゃなくて私が”視た”の、まあ普通に生きているけどね」

 

式典会場、通功の古聖堂では───ミサイルはここまで全て迎撃されていたので、正実は予定通り参加者の避難誘導をしていた。アリウス生達はまだ攻めてきていない。ミサイルに巻き込まれない程度の距離を開けて待機していたが。

捕縛した半数以外の残り半数がほぼ全て投入される予定だったが、ミサイルが不発に終わっていたので動けなかったのだ。複数用意されているのも見透かされて、ここまで完璧な対応をされている。

エンジニア部製の迎撃装置は2機までしかなくクールタイムに入っている。その間の対応は──────

 

「3発目はアリスが迎撃しますっボスと先生に与えられた任務はきっちりこなしますっ光の剣とこのっ『超遠視スコープ』が有ればっ…!」

 

エンジニア部製のメカメカしいゴーグルを装着したアリスが意気込む。

 

「捕捉しましたっ光よっ!」

 

アリスのレールガンが3発目も迎撃する。

 

「さて、4発目…きっちり仕事は果たしましょうか」

 

ヒナが飛び立つ。(本物の)ルカは流石に見ていないだろうが、先生やホシノ達からの視線を感じる。あの人達が褒めてくれるのなら自分はいくらでも飛び立てる。

ミサイルはかなり速いが方角さえ割り出せていれば、今の自分の能力なら充分対応可能だ。

宙空に舞うヒナの手にある終末デストロイヤーから終幕:イシュ・ボシェテが撃ち出される。ルカの影響で射程も大分延びたそのEX技で迎撃される。

そうして最後の5発目はクールタイムが終わった迎撃装置のミサイルで、結局全て迎撃してしまった。

 

「どっどういうことだっ予備の物まで全て迎撃されてしまったぞっ!?」

 

「マダムとの連絡も取れないっどうすればいいというんだっ!」

 

「単なる陽動の捨て駒なのに…哀れなモンねえ、スクワッドがいればもーちょいマシだったのかもしれないけど…マトモに指揮出来るの殆ど居ないのね…」

 

「じゃっツルギ…皆ここは任せたわよ。今の私よりはツルギの方が強いし…」

 

「ああ…ありがとうルカさん」

 

 

地下演習場──────

 

「5発全部不発だったみたいねえ?慎重なアンタのことだから予備くらいあるとは思ってたけど、あそこまで多いとは思ってなかったわ。10発以上あるようだったら、流石に私も迎撃に出ていただろうし…」

 

というか当初はそのつもりだった。自分用の光の剣はこのために作らせたのだ。射程の長いヒナが飛行能力を習得したから私抜きでも充分だったのだ。まあ分身でも2発程度までなら十分対応可能だったが。

 

「まあミサイルなんて高価な兵器アンタ1人じゃあの数が限界でしょうよ」

 

「グッ…アレはキヴォトスの従来の対空防御システムでは対応出来ないはずッ…!」

 

「エンジニア部に『最高の物を用意しろ』って依頼しただけよ。高額な依頼料もしっかり工面してね…この私とその仲間達を相手にするのに、あの程度で足りるわけないじゃない」

 

「さ、前口上はもう充分でしょう」

 

「おあつらえ向きの広い場所用意してやったんだから、変身しなさいよアンタも、出来るんでしょ?」

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