ゲヘナに舞い降りた堕天使 作:シファー
天雨アコと聖園ルカの仲は大分改善していた。アコはアビドスの件の直後、ヒナとルカの2人がかりでの折檻は受けていたが、チナツからも進言されて一度冷静になって考えてみると、
今のゲヘナで、いやキヴォトスで彼女を敵に回すのは思いっきり自殺行為だと気付いたからだ。風紀委員会に入ってからは例の配信も控えていたため、トリニティ時代ほどの人気は無くなっていたが、ゲヘナ内ではその能力と行動で常に存在感を示してきた。
万魔殿アンチが最近学内で多いのも、羽沼マコトが彼女を敵視しているからだという。大抵の生徒からナチュラルに「様」付けされているし…というか委員長含めた幹部全員に慕われているのだ。これで自分だけ反対派とか有り得ないだろう。
委員長と対立しているのならともかく、常に彼女は委員長を立てている。誰よりも気安い仲だし…そもそも彼女が風紀委員会に所属しているのも委員長の存在が大きな理由だという。「親友の彼女の負担を減らすために」という意志で体制改善をしてきたという。
普通は思って実行はしようとしても実現は出来ない。戦闘力は全一、頭も良い、教導能力だけでも非常に価値がある。トリニティ出身という割には彼女は旧体制を壊すことに躊躇が無い。
政務能力も普通に高いし、いくら粗探ししても出来ないことが見つからない。「超人の相方も超人」というのは誇張でも何でも無かった。
人格者とも有名だし、その能力の高さからどんな組織でも求められるだろう。下らない嫉妬に駆られなければ。そもそも彼女と張り合うのが間違っているのだ。
一番優れているのは戦闘力だが本当に満遍なく様々な分野に精通しているのだ。
特定の分野の
あの万能性も「会長を退屈させないために色々頑張った結果」らしいが。行動の根底に常に「大切な誰かのために」という原動力が有るのだ。それを知っている近しい者達ほど彼女の虜になるだろう。
こんなことを知れるようになったのもアコがルカに頭を下げたからだ。ルカからすればマコト相手だったら下げた頭を踏みつけただろうし、ベアトリーチェだったら踏み砕いていたところだが、
精神年齢は自分より大分歳下の少女が自身の非を認め頭を下げてきたのなら、それを突っぱねるほどルカも狭量ではない。
元々能力の高さは認めていたのだ。知力に反比例して感情的になり易い部分は明確な欠点だが、10代の少女にそこまでを求めるのは酷だろう、と。ルカはあっさりアコを許した。
キャンキャンうるさい時もあるが暗躍して味方の足を引っ張るような陰険なマネはしないし、人格も元々高評価だ。
「お茶会」の参加も許されルカは割と自然なノリでポンポン重要な情報を口にするので、アコにとっては非常に有益だった。
情報部より精度が高い上に割と個人レベルの内情とかまで…トリニティとゲヘナを除いても他学区だけで「友達100人」とかリアルで実現しているような女だ。
しかも有力な学校の上層部との繋がりは大抵押さえている。確かに「視野の広さ」が全然違う。
お茶会が終わったら「お楽しみ映像」の時間だ。刺激の強い映像はお茶会中に流すと吹いてしまうので、最後と決まっているのだ。
会議室のモニタから映像が流れる。
『こぉらぁああああああああああああああルカぁあああああああああああああああヒナああああああああああああ出せえええええええええええ』
「「「「ぶふぅ!?」」」
映像の中では檻の中のマコトが格子を掴んでガクガク揺らしていた。どうみても無駄な足掻きなのにその様子はとても滑稽である。
「ちょwwwwウケるwwwwなんで…お2人はわざわざ地下牢の近くでお茶をぉっ?」
「そんなん煽るために決まってるでしょうが」
「ぷっ…委員長も結構ノリいいですねwwww」
イオリは爆笑しているがアコやチナツも口に手を当てて笑いを堪えている。
「いえ、私もルカの言う通りにしただけだしマコトの方をなるべく見ないようにして笑い堪えるの必死だったのよ…直視していたら絶対この時のお茶吹いていたからね、くふっ」
「くすくす良い気味ですねっ羽沼マコトッ…」
「まあ、そんなこんなでこの通りマコトは卒業直前まで収監しておくことにしたから。それで次期議長のイロハは私が教育しておくことにしたから。No.2候補のイブキちゃんもね。
マコトからはマジで『上手い手の抜き方』しか学んでいないみたいだし…暫くは風紀委員会は私の『分身』任せになるかな、ここ最近は多かったけど。
アイツが居なくなれば、万魔殿との関係も改善出来るでしょ。私達が居る間は今くらいの力関係でも問題無いけど、本来軍部が行政機関より力持ちすぎるの良くないことだからね。そのうち正式な謝罪の場を設けさせるから、謝罪されたら素直に受入れなさい。
大丈夫、イロハはマコトみたいな下らない理由で騙し討ちとかはしないし、イブキちゃん近くに置いておけば、不誠実なマネは出来なくなるからね。今に『万魔殿支持率ひっく』とか笑えなくなるわよ。イブキちゃんが表に出てくるようになれば…」
「アコはチナツへの教育…お願いね?」
「分かりましたぁルカさんっ♪」
「現金なモンだよ…ちょっと前までは反抗的だったのに…」
「なぁにか言いましたかぁ?イオリぃ?」
基本的にゲヘナ生には似合わない真面目な生徒の集団である、風紀委員会はユーモアの類はあまり挟まれない。そのあたりも含めてルカは貴重な人間関係の潤滑油になっていた。
アコはルカが居なかった頃より明確に風紀委員会が好きになっていた。