ゲヘナに舞い降りた堕天使   作:シファー

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if2 並行世界からこんにちは①アビドス編

 

「あれ…ここは…」

 

気が付くと砂漠に横たわっていた。

 

「アビドスかな…?そうだ確か箱舟でいきなり眼の前が真っ白になったと思ったら…」

 

そうだ、アトラ・ハシースの箱舟で最終決戦よろしく、先生と私、各校の精鋭メンバーで乗り込んだのだが、勝ち目がないと判断したのかクロコ達と向き合った段階で箱舟ごと自爆紛いのことをされてしまったのだ。

私だけなら離脱も出来たのだが、皆が居たから後ろ髪引かれて結局何も出来なかった。かろうじて先生だけはなんとか下に転移させられたと思うんだけど…

 

「くそう…プレ先生があんなことするはずもないし、クロコも同じく…無名の司祭の仕込みかなもし次見つけたら撲殺してやる」

 

あいつら徹底的に私を避けているみたいだしな、こちらの先生の前にも現れたことないし…今までは消極的だったけど今後は積極的に狙った方が良いかもしれない。

 

「ゲマトリアより生理的にイヤなのよね、あいつら…」

 

「ん…」

 

「およ、気が付いたかい、クロちゃん」

 

「…よく知っている場所とはいえ、貴女と2人きりとはね…そのクロちゃんていうのなに?」

 

「あだ名よあだ名、アビドスの皆みたいに『もう1人のシロコちゃん』じゃ長いし、普通に呼んだらこっちのシロコとごっちゃになるからね、それより私達だけじゃないよ…」

 

私がクロコの隣をちょいちょい指をさすとそこにはユメパイがすーすー寝息を立てながら寝転んでいた。

 

「んぅ…」

 

「あれ…うそっ…生徒会長っ…!?」

 

「箱舟には居なかったのにねえ、私がマーキングしまくっていたせいで引っ張られちゃったっぽいな…悪いことしちゃったね、それより気付いた?ここさっきまで私達が居たキヴォトスじゃないよ…」

 

明らかに空気が違う。赤い空だった残滓も皆無だ。

 

「───なんでその人が生きているの…?」

 

そういやまだ会ってなかったか…しかし凄いストレートに聞いてくるな…転生者(わたし)じゃなかったらイミフだぞ…

 

「さてねえ…『ケンカ』しなかったんじゃない?」

 

話しながら大人モードに戻って、ユメパイをおんぶする。

 

「取り敢えず高校の方目指そうか、私はともかく、ユメちゃんとキミだけなら今がいつであっても受け入れてくれるだろうし」

 

影に3人全員飲み込んで高校付近に転移する。

 

「とうちゃーく、凄いでしょ?」

 

「ん…ALONA要らず…1人でこれ出来るのおかしい」

 

「んあ?あれルカちゃん?」

 

「お、ユメちゃん起きたかい」

 

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 

少女説明中──────

 

「えーとルカちゃんの話を纏めると、ここはさっきまで私達の居た世界とは別の世界で、そっちのシロコちゃんが元居た世界とも違う…と?」

 

「そうね…そっちのシロコの素性はブリーフィングの時に話したでしょう?まあだからアビドスに居る時は大人しくしていると思うわよ。それに前居た世界への戻り方の目処は立っているから、気になること片付けてから戻りましょうかね」

 

「…なんで私のこと知っていたの」

 

「『箱舟』に関する知識が有ればアンタの正体くらい自ずと絞れるわよ…何より色彩に多少歪められていようが、シロコの神秘を私が間違えるはず無いし…」

 

「ん…アビドスの生徒でもない貴女に色々知られている感じがするのは気持ちが悪い…」

 

「…あの、もしかして、シロコちゃんてルカちゃんのこと知らないの?」

 

「…ん、会ったこと無いだけかもしれないけど…でもこんな目立つ人存在したなら流石に知っていたと思うし…」

 

少し前まで居たキヴォトスではどこに居てもルカの話題が聞こえていたのだ。

 

「ユメちゃんには前に言ったでしょう?私はこのわたしだけ、ですよ…」

 

「…ルカちゃんの居ないアビドスとか想像するのも恐いんだけど…」

 

「別に私が居なくてもそれなりに上手くいっている時もありますよ…」

 

でもタイトルに「奇跡」とか付いていたくらいだから原作は相当幸運な世界線なんだろうなあ。

クロコとかまさに「上手くいかなかった世界」の人間だろうし。前に聞いた話ではプレ先世界のミカは先生の死亡確定が宣告された直後に反転して暴走した挙句、ヒナと相打ちになって死亡したそうだ。

アビドスの皆の詳細も聞きたかったが、まあ「知識」で概ねその末路について知っている。本当の意味でアビドスの一員ではない私が興味本位程度で掘り返してはいけない話題だろう。

 

「そんじゃまあ見たところ私達の頃と時間にあんま差異は無いようだし全員居るみたいだこれから皆に会いに行きますけど、ホシノだけはユメちゃん見たら情緒不安定になるかもしれませんから気を付けてくださいね。

暴走したら私が取り押さえますから、あとクロは向こうのシロコに喧嘩売らないでね」

 

そうして勝手知ったるアビドス校舎にするする入っていく。大きい学校と違って入場を管理するような部署は存在しないので、特に障害もなく、すんなりと現在の生徒達がよく集まっている対策委員会の会議室(元生徒会室)まで辿り着いた。

そしてすぱぁんと音を立てて横開きの扉を開けると

 

「私が来た!」

 

と宣言する。

 

「!!!!?───連邦生徒会…!?」

 

一番に反応したホシノがそう漏らす。ちなみにルカとユメがよく着ているS.C.H.A.L.E(シャーレ)の制服は連邦生徒会の物と同じデザインだ。

 

「───ユメせんぱ…い!?」

 

ホシノ以外のメンバーはあんぐり口を開けて呆然としている。シロコだけはクロコに注目しているが。ユメパイは「やっほーホシノちゃーん」とか能天気に挨拶しているが、一番に立て直したホシノが

銃を構えてこちらに突撃してきた。半ばそれを読んでいた私は銃を蹴り上げて取り上げ、ホシノの顔面を掴んで締め上げる。得意技のアイアンクローだ。

 

「おいコラ、落ち着きなさいよ、バカっ」

 

「ぐがああああああああああああああっ!うるさいっ今まで何にもしてくれなかった連邦生徒会が…!死んだはずのあの人の偽者を連れてきてどういうつもりだっ!」

 

「えっ私偽者ぉ!?死んだのぉ!?」

 

がびんっとショックを受けているユメパイ。

 

「まーある意味じゃそこのホシノからすれば偽者かもしれないけど…私からしたら紛れもない本者よ。私達だけの大切なユメちゃんだわ」

 

まあこの話突っ込みすぎるとクロコの地雷踏むからあんま掘り下げる気無いんだが…こちらのホシノ達は私からすればたとえ同位体であろうと、「友人によく似た別人」に過ぎないのだ。それでも親近感は当然有るが。

 

「…シロコ先輩どうみる?」

 

「ん、あの前会長っぽい人のことはよく分からないけどあのホシノ先輩じゃない方のピンク髪の人、無茶苦茶強いと思う。今まで会った中で一番。私にそっくりなあいつもかなりデキそうだし…」

 

「じゃあ力でどうこうは分が悪いわね」

 

「全部聞こえているわよ、セリカ、シロコ。私の知っているあの娘達より随分血の気が多くて蛮族じみてるわね」

 

ルカの知るアビドスの面々はルカに教育された面も当然有るが、ルカの前だと比較的に大人しくしているだけだ。結局どの世界でも根っこの部分は大差ないのだ。

 

「このまま()っても誰も得しないわよ。私達の話聞くの?どうすんの?」

 

「皆さん、落ち着いて…話し合いましょうっ…!」

 

「もっと早くその言葉を聞きたかったわね、アヤネ…」

 

まあホシノが真っ先に飛びかかったせいでついていけなかったのだろう。掴んでいたホシノを無造作に離す。

 

「ぐえ」

 

影の中からソファーを取り出して、ユメパイを座らせる。転生者よろしくアイテムボックスの如く沢山物を収納出来るので重宝している能力だ。

 

「ほらホシノはそこでユメちゃんに膝枕でもされてなさい。その人が紛れもない『梔子ユメ』なのはアンタのよく視える眼なら分かるでしょう?」

 

取り出したティーセットからお茶菓子を用意して配膳する。膝枕しているユメパイとされているホシノの横に私が座り残りの4人が向き合う形だ。

 

「…!凄い美味しいお茶…!これは、トリニティの…?」

 

「あ、分かるう?流石お嬢のノノミは舌肥えているわねえ、私は元々はトリニティ出身だから融通してもらい易いのよ」

 

「トリニティでのルカちゃんの人気凄かったもんね…」

 

「連邦生徒会のトリニティ出身の役員に貴女のような方は在籍していないと記憶していますが…」

 

「それは当然ね。居たらびっくりするわ、ミカが入るのも有り得ないだろうし…」

 

連邦生徒会の役員はHPを見れば現役の在籍メンバーくらいすぐ判る。アヤネならそれくらいは当然チェックしているだろう。

 

「まずは自己紹介をしましょうか。私の名前は聖園ルカ。前の所では『連邦生徒会副会長』を担っていたわ。あとゲヘナの重鎮の1人でもある。んで他の2人は…」

 

重鎮どころか実質的なトップだけど。S.C.H.A.L.E(シャーレ)の立場も混乱させるから省く。まだ発足していない時期だろうし…

 

「えっと皆知っていてくれてたら嬉しいんだけど梔子ユメです。アビドスの…『卒業生』ですっ今は、連邦生徒会の所属ってことになるのかな…?」

 

ルカが頷くと、にっこりユメが笑い

 

「今は連邦生徒会の『ある部署』で『ある人』の秘書をやってますっ」

 

ホシノは「え、この人が?」という顔をしている。

 

「…砂狼シロコ…」

 

セリカは「え?今の自己紹介?」とか言っている。他の面々は驚いていない。というか予想通り、といった感じだろう。セリカだけが鈍い。これは騙され易そう*1

 

「私達の事情を軽く説明すると…私達は『ある場所』で戦っていたの…ちなみにシロコが敵側。まあ自分の意志じゃなかったんだろうけど…でユメちゃんは私サイドで、後方で待機していたんだけど…

んで、恐らく敵の罠に嵌って『私達の世界』とは別の並行世界の1つであるここに飛ばされてきたの。ユメちゃんは完全に巻き込まれ、ね。

ちなみにそのシロコはまた、『私達の世界』とは別の世界の人間よ。『私達の世界のシロコ』もまた別に居るわ…」アヤネとノノミはすんなり理解し、ホシノとシロコもなんとかついていけているようだ。

セリカは「え?シロコ先輩がさんにん?」とか唸っている。まあキヴォトスの娯楽って結構微妙だし…SFで定番の「並行世界」もすんなり理解出来んか。

 

「…つまり私が知っているユメ先輩が生き返ったとかじゃなく…」

 

後輩の前でユメパイに甘えるところを見せたくなかったのか黙り込んで寝たフリをしていたホシノが口を開く。

 

「そうね…『こっちのユメちゃん』は砂漠で彷徨うようなこともなくずっと全然ピンピンしてたわよ。貴女のは…『唯の不幸なすれ違い』じゃあ片付けられないか…」

 

「ゴメンね…ホシノちゃん…勝手に先に死んじゃって…でもホシノちゃんだけでも一緒に居てくれたのなら、『こっちの私』も幸せだったと思うよ?」

 

「私の知っているユメ先輩じゃない」とか色んな考えがこんがらがった結果───

 

「うっわあああああああああああああああああああああああああん」

 

ホシノの感情は涙腺と共に決壊した。

 

ホシノは「ごめんなさい、ごめんなさい」とユメパイの胸の中で泣きながら繰り返しユメパイはそんなホシノを撫でてあやしながら「ごめんねえ…」を繰り返す。

 

「皆…場所変えましょうか…話し合いなら私とアヤネだけでも大丈夫でしょうし…」

 

そう言うや否やアヤネの手を引いて退室するルカだったが、シロコもセリカもノノミもクロコもついてきた。

 

「あらやだ皆気遣い上手」

 

「ホシノ先輩は…会長に別れを言うことも出来なかったんだと思う…それって凄く辛いことだから…」

 

おい、クロコ止めろ。お前が言うと凄くおっもいんだよ。

 

「ま、後はユメちゃんに任せれば大丈夫でしょ。私達のチームの『癒し』担当だし」

 

 

 

*1
超失礼




司祭達は「やったぜ!異世界放逐成功!」とか喜んでガッツポ取ってます。でも案外簡単に戻れます。
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