ゲヘナに舞い降りた堕天使 作:シファー
ワカモは
「へえいい建物ですわね。あの女の言う通りになってしまったのが…少し気に食わなくはあるのですが…」
不愉快な気持ちがあるのは当然だ。未来を見透かしたように自分の気持ちを言い当てたのだ。だがそのへんも先生は勿論のこと、ルカへの興味で打ち消された。
「あら、いらっしゃいワカモ、施設案内、受付嬢さんはきちんと出来ていた?」
「ええ、何故か何も無い所で転びかけていましたが、概ね理解り易くて良い案内でしたよ」
ユメパイはこの前の騒動の時は休みだった…タイミング良かったのか悪かったのか判らんが、まあ受付嬢1人居ただけでどうにかなる騒ぎでもなかったから珍しく間が良かったのだろう。
あの後は
まあ慣れるまでは私がフォローすればいいし。最初期は入部してくる生徒が多く、案内の仕事もそれなりにあるだろう。本来受付から離れるのも良くないが、まだ人はあまり来ないので今はまだ大丈夫だ。
「そんじゃまあ
アンタがここで真面目に働くなら『保護観察』って扱いである程度好きにさせてあげられる。本来の刑期もここで消化出来る。大好きな先生の傍で、ね。居住区も完備されているし、申し分のない環境だと思うけど?」
「『あの方と顔合わせられる自信がまだ有りませぇん』なんて気色悪い乙女()チックな反応は要らんからね、
断言してもいいけどあの人はそのうち滅茶苦茶モテるようになるから、最初期の今の内に他の子達よりも強い立場形成出来れば、今後有利に立ち回れるわよ?」
「…どうしてそんなに良くしてくれるのですか?」
「アンタは確かに血の気の多いところあるみたいだけど根は悪い子じゃなさそうだからね、まあ10代の貴重な時間、恋に生きようとしている間くらいは後押ししてやってもいいかな、って思っただけよ
それと実利的な話で、私は普通に学生している身だし。まあ高3の範囲なんて既に学習済みだし、いくら休んでも問題ない立場とはいえ現役の風紀委員だしね。いつも先生の傍に居られるとは限らない。
これから先生は色んな問題に巻き込まれることになる。私達にとってはちょっと痛い程度の荒事でも、銃弾一発でお陀仏のクソザコナメクジの身体で進んで鉄火場に突っ込んでいくこともあるだろうから…私が居ない時の護衛任せたいの、アンタには。」
「ええ、あの方のためと言うのなら…確かに承りましたとも…」
「ほら先生に紹介するから、行きましょう」
───
「〝あれ、ルカ、そっちがもしかして?〟」
「ええそうです、この前の騒ぎの時に脱獄した…こぉら私の背に隠れるなアンタの方がデカいんだから全然隠れられていないでしょうがぁ!仮面で顔隠しているのに何が恥ずかしいんだお前はぁ!?」
「〝あはは、仲良いんだね〟」
「いや、まだ2回しか会っていないんですけど…」
「そぉの
「〝うん、よろしくね、ワカモ〟」
「はぁう!?」
だだだーと走って部屋を飛び出すワカモ。
「おい、こら、なんでいきなり逃げてんのよ」
「速ッ!?いえだってだってぇあの方が
こいつもう面倒臭いな…私がこれから面倒見なきゃいかんのだろうか…実力者かつ暇人だから迷わず引き入れたんだけど…
「はあ、もう後はユメちゃんに任せるから居住区は彼女に案内してもらいなさい」
そうしてユメパイにバトンタッチしてワカモを預け執務室に戻る。そして遠目で眺めていた、ユウカ、ハスミ、チナツらを先生に聞こえないようにして集めて会話する。
「それで『先生に惚れている』っていう予備知識無きゃ訳分かんない動きに見えただろうけど、それ前提だとしっくりくるでしょう?どう、上手くやっていけそう?」
「私は…少なくともああやって人間味が有るところが見れたのは好印象でしたよ。仮面被っているから表情判んないですしね…まあ副委員長の人物評価を疑っていませんが…」
チナツがまず答える。
「貴女が実力者と認めているって…どのくらいのものですか…?」
ハスミも聞いてくる。
「うんまぁ1年の頃のツルギよりは強いかな?今じゃ良くて善戦ってところね、ヒナちゃんやネルあたりとでも似たようなモンだと思うわよ?」
「ちなみに貴女なら?」
「10秒くらいで倒せるわね」
「その力量差で『実力者』と評せるんだからつくづくアンタのバケモノっぷりは浮いているわよね…」
ユウカが呆れた様子を見せる。
「そんくらいじゃないと『最強』なんて呼ばれないって」
「…まあ彼女はルカさんが居れば大丈夫でしょう。一番脆弱な部分である先生を狙うことはあの様子じゃなさそうですし…」
ハスミが纏める。
それから数日後───
「へえ、それじゃ最初の依頼はアビドスからの救援要請を受けるんですね?」
「〝うん、あそこのことはルカやユメもよく知っているんでしょ?〟」
「まあ、あそこはユメちゃんの母校だし、トップは私の親友ですからね…」
「んじゃユメちゃんも呼んできましょうか」