設定忘却の転生者が仮面ライダーになったようです ~2次元世界へLet's Go~ 作:フォボス
図書館から出て空を見上げてみれば西日が射し、暗闇になる前兆であった。この瞬間ってのは2次元でも綺麗だな…
「さすがに野宿するのは… 宿泊用具無いしな」
はぁ…と溜息が出てしまう。
その気になれば能力で造れそうだが、なんか横着は駄目な気がする。でもどうしようか。
地味に悩んでいる俺を他所に周りに居る家族連れやカップルはそれぞれ目的の行き先へ向かっている。くっそう! そりゃ、この世界でも居るよなー
俺に彼女が居ればこの光景を見ても微笑ましいなーと思ってしまうんだろう。だが、現在も彼女居ない暦=年齢の俺にとっては焦燥しか感じない。
はぁ、俺を好きになってくれる女子(おなご)は居らぬのか…
木組みの家と石畳が多く見られるこの街を歩いていると俺はある看板に目を奪われる。
1匹のうさぎがコーヒーカップ側面に小さな手をちょんと置かれている可愛らしい造りであるその看板下には『RABBIT-HOUSE』と書かれている。
「…… おぉ…」
物語でスポットを当てられる一つ… この喫茶店の名はラビットハウス。
此処にあったのか… 偶然見つけちゃった。
「入ろうかな… でもこの時間はバータイムか?」
ラビットハウスでは日中は喫茶、夜はバータイムという切り替え経営を取っている。
バータイムではチノのお父さんが出ているはずだ。ごちうさでダンディでカッコいいイケメン男性と言えば分かるだろう。絶対勝てる気がしない。
「…財布はあるか」
ズボンの後ろポケットから黒い財布を取り出す。折り畳みであるその財布を開けた。
もうこの世界では使用しないであろうカード類――――――メイトやゲマ、あな等のポイントカードも見える。ポイント溜まってたのにな…
渋々小銭や紙幣を確認する。315円しか見当たらなかった。おぅ…
落胆する俺。金欠だ…
ん? 待てよ。というかこの世界で日本円は使えないんじゃないか?
連続で突きつけられる事実に思わず嫌そうな顔をしてしまう。
「どうしようか…」
そう呟いた瞬間、玄関の扉が外側へ徐々に開かれていく。
「おや?」
扉が完全に開くと店内からチノの父親―――――――『香風 タカヒロ』が出てきた。視線は俺に向かれている。わっ、イケメンが居る(おる)! 眩しい! 焼かれる!
と内心思って微動だにしなかった俺を見ていたタカヒロは「ん?」と小首を傾げる。
「どうかしたのかい?」
「あっ。……いえ、中に入ろうとしたんですが、持金があんまり無くて諦めて帰ろうかなと」
「初めて見る顔だね? うん、中へどうぞ」
タカヒロは店内へ入るよう促す。
(えっ、良いの? お金無いのに? 注文できないけど…)と疑問を持った表情になっていた俺の顔を見てタカヒロは苦笑する。
「はは、気にしないで大丈夫だよ。今だけ無料でコーヒー1杯だけなら出せるから」
「そんなキャンペーンが? すみません、お邪魔します」
俺はラビットハウスの店内へ入る。店内はレトロチックな造りでちょっと暗めの明るさが優雅な雰囲気を醸し出している。
奥側にあるカウンター前の席へ俺は座った。カウンター後部には収納棚があり、数々のコーヒー豆やコーヒーカップ、ウイスキー、ワインにカクテル等置かれている。アニメで思ってたけどほんと小洒落たお店だな。
タカヒロはカウンター内へ入り、コーヒーを作る器具を机に置く。
「これは何て言うんですか?」
道具へ指を指す俺。
「あぁ、これはサイフォンだよ。水が入っている下の容器を加熱するとコーヒー粉が入った上の容器へ温められた水が移動するんだ。そしてコーヒー粉と合わさったら加熱を止めて数分置くと出来たコーヒーが下の容器に戻るという仕組みだ」
なるほど、サイガフォンの親戚みたいなもんかー 違うね!
初めて見るその器具はなんだかロマンを感じる。
タカヒロはサイフォンを使用しコーヒーを作っている。これだったら俺も簡単に作れそうだな。
サイフォンのガラス容器を取り外し、コーヒーが下の容器へ行った事を確認したタカヒロはコーヒーカップへコーヒーをそっと注ぐ。
湯気と共にコーヒー特有の鼻腔をくすぐる良い香りがしてきた。
「さぁ、出来た。どうぞ」
タカヒロはコーヒーカップを俺の目の前に置いた。この動作だけでもエレガントやで…
「ありがとうございます。では頂きます」
俺はコーヒーカップの取っ手を持ち、口の近くに持っていく。あぁ、香りはほろ苦い香ばしさで安定してる。コーヒー豆に詳しくは無いが、それでも良い豆を使用している事は明白だな。
コーヒーカップに口を付け、コーヒーを少しづつ飲んでいく。なかなか美味い。目が覚めていくようだ。
「お気に召したかい?」
タカヒロがそう訊ねてくる。
「はい、とてもおいしいです。気に入りました」
率直すぎる俺の言葉にタカヒロは「そうか」と微笑む。
「あの、ラビットハウスは何年前から経営してるんですか?」
「何年くらい前からか… 此処は親父の頃から経営していて今は私が継いでいるという形だ」
「そうなんですか。しかし、この雰囲気好きですね。何か安心してしまいます」
「それはありがとう。あぁ、ところで君、お金が無いと言っていたと思うんだが、学生なのか?」
「えっ、はい」
反射的にそう答えてしまった。いや学生なの…か? 現在は学校に通ってないから学生ではなく無職か…?
「そうか、なんだったら此処で働いてみないか? アルバイトとして」
「えっ、良いんですか?」
「あぁ、歓迎するよ」
「でも俺、アルバイトするの初めてで…」
そう、俺はアルバイトの経験は無く、やりたいなーとは薄々思っていたのみで行動に移さなかったという過去がある。ごちうさのキャラと関わるわけだから三日坊主にならないとは思うけど何か心配だな…
「大丈夫だ。そう難しく考えなくて良い。此処では日中は喫茶、夜はバーテンダーと切り替わるのだけど、君には日中の喫茶で働いてもらう予定だ。私は夜にしか出ないが、日中は私の娘ともう1人が代わりに出ている」
「そうなんですか」
知らないように装う俺。私の娘はもう名前知ってるし、もう1人ってのは理世の事だろう。しかし3人目である、あの子も働いているはず…
(あっ…)と俺は思い出した。その3人目は『ご注文はうさぎですか?』1話冒頭で下宿先が分からず、偶然見つけて店内へ入ったこの店が下宿先と判明。学校の方針で働くという流れになっていたではないか。
って事はだ、今現在居る時点で『ご注文はうさぎですか?』アニメ、原作の本編前なのか? もしかしたら俺がその3人目で本来の物語における、あの子が出ない可能性があるわけだが…
「後、何日かすれば此処へ下宿予定の子が来るんだけど、女の子のようだから、男手は個人的にはありがたい」
じゃあ俺があの子の代わりというわけでは無さそう。良かった。あの子が居ないとごちうさとして駄目な気がする。
「分かりました。此処で一生懸命働きます」
「引き受けてくれて助かるよ。では明後日から頼む。そうだ、君は何処に住んでるんだ?」
…どうしよう。
「えっと、両親が他界していて今は祖父母の計らいで一人暮らししています。ですが此処から結構遠いのでどうしようかな…」
苦し紛れの嘘を付く俺。必要な処置である事には変わらないけど胸が痛むな。
「なら君も此処へ下宿するかい? まぁ、部屋自体は狭いんだが…」
「そんなの気にしないです。下宿良いですか?」
「うん、では生活用品とかはこちらで用意しておくよ。……あぁ、もう夜遅いから今日は泊まっていけば良い」
「そうですね… ではありがたく泊まらせてもらいます」
「部屋はまた後で案内するから今はゆっくりしていると良いよ」
タカヒロはカクテルグラスを優しく拭きながら言うのであった―――――――――――――――
別サブタイ『主人公ラビットハウスへ立つ!!』 ようやくラビットハウスへ偶然に来れましたね。タカヒロさんマジイケメソ。ほんとカッコいい… 抱かれたい(ポッ
次はタカヒロさんの娘との初対面です~