設定忘却の転生者が仮面ライダーになったようです ~2次元世界へLet's Go~   作:フォボス

16 / 18
第10羽 まだ姉になれない爛漫少女

「私、春からこの町の学校に通う事になったの」

 

心愛はコーヒーカップをゆっくりと置き、自身の話をしてきた。

 

「へぇ…」

 

「はぁ…」

 

俺と智乃は次の発言を促すよう相槌を打つ。

 

「でも下宿先探してたら迷子になっちゃって」

 

俺達へ視線を向けた心愛の表情は笑顔だが若干照れくさそうな感じに捉える事ができた。

 

良い笑顔するよな、心愛は。是非俺のお嫁さんに… といかんいかん。

この展開はもしかして。

 

「その下宿先は何処ですか?」

 

俺は展開を知っているも質問する。

 

「香風さんちって所なんだけど、この近くの筈だけど知ってる? 香る風って書くんだけど…」

 

「香風はうちです」

 

真顔でそう伝える智乃。

うん、確かに此処である。というか他所でも同じ読み方の苗字は居るだろうと思うけれど香る風と言ったら此処に間違いは無い。

 

「うぇ~?!」

 

心愛が途端に驚いた表情で叫んだ。

 

人間の適応力って凄いよね。もう唐突なのは慣れたわ。

 

心愛は席から智乃の元へと近づき、智乃の儚く小さな手を上から握って笑顔で上下に振る。

智乃は目を見開き、なすがままとなっている。

頭部に乗って静観していたティッピーはぴょんぴょんと智乃が動く毎に跳ね返ってる。

 

微笑ましいなぁ… ところで心愛さん、俺にはやってくれないんです?

そのお手手を俺の手に重ねるだけで良いんです! もし良ければ下の…げふんげふん。おっと、妄想の世界に行く所だったわ…

 

心愛は智乃の両手を開放すると智乃は右手を上へ掲げ、頭部に居るティッピーを擦る。

 

「私は智乃です。ここのマスターの孫です」

 

「私は心愛だよ。よろしくね、智乃ちゃん」

 

「僕は…」

 

「あっ、この方はただのアルバイトです」

 

「智乃よ… 自己紹介させてくれ… と言うか、ただのアルバイトって酷くないかい?」

 

せめて夫のアルバイトです、とかさ。いやそれだとおかしいな。アルバイトさんになっちまう。偉大なアサシンであるアルタイルさんみたいにカッコいいと思うけどさ。

 

「はぁ…」

 

智乃は鬱陶しそうな表情で溜息を出す。

 

「では、改めまして。僕は智乃の夫の…」

 

「違います」

 

「即答しないでく… おいおい冗談だよ、そんな怒った表情しないでくれよ…」

 

不機嫌そうな表情になってきたので冗談は止めておくか。不機嫌な顔も好きです、はい。しかしそんな嫌がらんでも…

 

「僕は静汰と言います。此処で下宿しています」

 

「静汰くんって言うんだ~ 下宿しているという事は先輩って事になるのかな? よろしくね、静汰くん」

 

「よろしくお願いします、心愛さん」

 

「私の事は心愛で良いよ~ 後、他人行儀なのは嫌かな~」

 

「まぁ、仕事ですからね… ん、分かった。では心愛、よろしく」

 

「うん!」

 

「後は高校の方針でね、下宿させていただく代わりにその家でご奉仕しろって言われるんだよー」

 

「ご奉仕…(ごくり)」

 

俺は呟かずにはいられなかった… だってご奉仕だぜ… メイドだぜ… メイドさんと言えば、おはようからおやすみ(意味深)まで貴方の暮らしを堕落させる事のできる偉大な職業なんだぜ! 独身宅に1名メイドさんが居れば間違い無く孤独死は免れるだろう。子作りもできるし少子化も無くなるんじゃね?

 

客観的に見て気持ち悪い表情をしていたと思われる俺を見ていた智乃は心底失望したように視線を向けている。

 

「静汰さん、気持ち悪いです」

 

「気にしている事を正直言うよな…」

 

まぁ、でも現実はそんな甘くない訳で… つか本物のメイドとか見た事無いけどな。2次元に影響受けると誰でもこう思うはず。知らんけど。

 

「まぁ、でも家庭内の事は智乃で十分に思えるし… やはり仕事上でのテーブル拭きとかお客さんの受け答えとかが主体になると思うが、智乃はどう思う?」

 

「そうですね。家事は一人で何とかなってますし、お店も十分、人手が足りてますので何もしなくて結構です」

 

「いきなり要らない子宣言されちゃった…」

 

左右の人差し指同士の先を合わせ落ち込む心愛。

 

「よし良ければ、僕のメイドさんに…」

 

「駄目です」

 

「何故なんだ智乃。別に良いじゃないか。働かないといけない方針なんだから仕方無いと思うんだけど」

 

「静汰さんが集中的にセクハラしそうなので駄目です」

 

「僕がそんな事するわけ無いだろう?」

 

俺は大仰に両手を広げ、無実な事をアピールをする。

 

しかし智乃には効果が得られないのか首を横に振る。

 

「今までの行いが全てです」

 

「…ごめんなさい」

 

謝るしかなかったようです。

 

「えっ、取り敢えず挨拶がしたいんだけどマスターさんは留守?」

 

心愛にもスルーされる俺の立場って一体…

もしかして気を遣わせちゃったのかな?

 

「祖父は去年…」

 

智乃は陰りのある表情で顔を背けた。

 

「あっ… そっか… 今は智乃ちゃんと静汰くんで切り盛りしてるんだね」

 

智乃のそんな姿に深刻そうな表情の心愛。

 

「いえ、父も居ますし、静汰さんの他にバイトの子がもう一人…」

 

話している途中で心愛は智乃を抱きしめた。

心愛は涙を浮かべている。

 

「私を姉だと思ってなんでも言ってっ!」

 

「んぉ…」

 

羨ましいッ! 俺を真ん中にして挟んでくださいッ!!

 

そっと智乃を抱擁から解放し、両手を優しく握る心愛。

 

「だからお姉ちゃんって呼んで?」

 

心愛よ… 深刻そうな表情で言ってるけどそれが目的だろ。

 

「じゃあ… 心愛さん…」

 

「お姉ちゃんって呼んでっ!」

 

顔を智乃へと近づける心愛。真剣そのものである。

 

「…心愛さん」

 

智乃は若干頬を赤らめ、心愛の顔を見つめている。

 

「お姉ちゃんって呼んで!」

 

「心愛さん、早速働いてください」

 

「任せてっ」

 

「…智乃、お兄ちゃんって呼んでくれ」

 

「嫌です絶対に」

 

「……(白目)」

 

智乃の嫌悪感で純粋に傷ついた俺であった―――――――――――――――




連続投稿であります! 暫く空けた分という事で。しかし全然暇が無いのですよ… 溜め息出ますわw
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。