片田舎の兎も剣聖になるのは間違っているだろうか?   作:Nm

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幕間

 周囲は現実に起こったことを理解できずに、ただ、静寂が支配していた。

 

「審判、判定を。」

ベルが審判に声をかける。

 

「そ、それまで、勝者、ベル・クラネル。」

審判は気が付いて判定を下した。

 

「ありがとうございました。」

ベルはただただ静かに礼をして、下がっていった。

 

 

 

「きっ、決まったー、勝者はヘスティアのベル・クラネル、まだ、レベル1にもかかわらずオラリオ最強を下したー、レベル差を覆したまさに常識を覆した瞬間に我々は立ち会ったー!」

 

「えっ、ええーー!!」

 

「剣聖の弟子とんでもなさ過ぎっ!」

 

「あっ、ありえない!」

 

神々だけでなく人もまた、常識が変わった瞬間をまだ理解できないでいた。

 

 

 

「やっぱり、すごいな~、ベル君。」

ヘスティアがようやく緊張を解いた。

 

「ヘスティア!」

美豆良(みずら)を結わえた男神と黒髪長髪のローブを着た男神がやってきた。

 

「ミア、タケ、君たちも来ていたんだね。」

ヘスティアが二柱(ふたり)に寄る。

 

「おめでとう、ヘスティア、ヘスティアのの子はすごいなぁ、あの、猛者(おうじゃ)に勝ってしまうとは・・・。」

長髪の男神ミアハが驚きながらも祝いの言葉を送る。

 

「おめでとう、ヘスティア、ヘスティアの子、ベル・クラネルといったか、あの若さで達人の域に達するとは、本人も素晴らしいが、指導した剣聖もすごいな!」

美豆良(みずら)を結わえた男神、タケミカヅチは興奮気味で話していた。

 

「あ、ありがとう二柱(ふたり)とも、タケは落ち着いてくれ。」

 

「これが落ち着いていられるか、恩恵のレベル差は1であっても絶対だったのが、ベル・クラネルがその常識を覆したんだ、武神としてたぎってくるぞ。」

タケミカヅチのテンションはさらに高まる。

 

「タケミカヅチ、ヘスティアが困っているからその辺にしたらどうだ?」

ミアハもタケミカヅチに落ち着くようたしなめる。

 

「それもそうだな、すまん、ヘスティア、興奮してしまった。」

 

「構わないよ、タケ、こればっかりは仕方ないよ。」

ヘスティアが苦笑しながら言う。

 

「これから、ヘスティアは忙しくなるぞ、確か、ロキやペレの子供たちにも指南しているのだろう、指南依頼はもっと増えるだろう、いつまでも、とどまっていると神々が殺到してくるだろう、早く、ベル・クラネルに会ってあげるといい。」

ミアハがこれから起こるであろうことを話し、この場の離脱を提案する。

 

「そうだな、とりあえず、この場は下がったほうがいいな、うんと、ほめてやるといい。」

タケミカヅチもミアハの意見に賛同する。

 

「もちろんだぜ、僕はベル君の主神(おや)なんだから。」

こうして、急ぎ早でヘスティアは席を後にするのだった。

 

 

 

(ふぅ、何とか勝てたが、猛者が魔法を使わずに、フィジカルで制圧してきたら、こっちのカウンターも読まれて、耐えられて、潰されるところだった、ちょっとでもミスれば、負けていたのは僕だった、レベル差が絶対じゃないけど、レベルを上げることで手札も増やしておきたいな。)

ベルは控室への通路を歩きながら反省とこれからのことを考えていた。

 

「それに、先生からいただいた剣も無茶させてしまったな、これは、早く鍛冶師にメンテナンスしてもらわないと。」

ベルは剣の柄をいたわるようにそっと撫でた。

 

パチパチパチ。

 

「おめでとう、と言っておきましょうか。」

拍手をして黒のドレスをまとった銀髪の女神、フレイヤが眷属を伴い現れた。

 

「ありがとうございます、今回はこのような機会を賜り、ありがとうございました。」

ベルが最敬礼で礼をして、今回の試合のことでも礼を言う。

 

「今回は負けちゃったけど、次は、負けないんだから、それで、聞きたいことがあるのだけれど?」

フレイアはさりげなく次回の対戦を予約し尋ねた。

 

「何でしょうか?」

 

「オッタルとの試合でどうやって勝ったの?」

 

「あれは、猛者の最大限の力を利用し、僕の最大の力を乗せたカウンターで迎撃しました。」

 

「どういうことかしら?」

 

 

 

「あの場面ではベル・クラネルの勝機はオッタルの力を利用したカウンターしかなかった、いかに、ベル・クラネルの技量が達人級でも、恩恵の力はまだ弱い、直接攻撃しても、猛者は堪えなかっただろう?」

ベルの控室に向かう途中、タケミカヅチが試合の解説をする。

 

「確かに、人体で脆い首筋に攻撃しても、猛者は立っていたな。」

ミアハが思い出す。

 

「でも、途中で猛者が剣を上に構えたとき、ベル君の攻撃を受けて気を失いかけていたよ?」

 

「それはベル・クラネルと猛者とのスピード差が圧倒的だったからできたことだ、いかに、猛者といえども、無防備な頭部に一発だけでなく何発も放てば頭部に衝撃を与えれるだろう、それで、意識を絶てればよかった、しかし・・・。」

 

「猛者は意識を取り戻し、魔法を使った最大限の力でカウンターも粉砕しようと思ったのだろう。」

ミアハが後に続く。

 

「でも、あんな威力、ベル君がぺしゃんこにならなくてよかったぁ~。」

ヘスティアがあの場面を思い出し、ぞっとしていた。

 

「だが誤算があった、ベル・クラネルの技量が長けていた、そして、最後は猛者の攻撃を乗せた、自身の攻撃でカウンターを決めて意識を絶った、普通の攻撃では猛者の意識を絶つには足らない、だが、猛者の最大の力が乗った攻撃なら猛者自身にもダメージは入る。」

 

「つまりは猛者の盛大な自爆のようなものということかな?」

ミアハがかいつまんで結論を言った。

 

「語弊はあるが、おおむねそんな感じだな。」

 

「へ~、そんなからくりがあったんだ、解説ありがとう。」

のんきにヘスティアが答えた。

 

 

 

「最後はオッタルの盛大な自爆とは、皮肉ね。」

 

(((((((この兎、どんな心臓している!)))))))

 

術理を理解してもなお、驚愕するフレイヤファミリアの団員達だった。

 

「それで、お願いがあるんだけど?」

 

「何ですか?」

 

「私の子供たちにも指南してもらえないかしら?」

 




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