この素晴らしい世界に福音を!~……いやいやいや!? 俺、乗るとか無理だから!?~ 作:李忠成
ミサトさんが運転する車は、爆発と煙の中を猛スピードで突っ走っていた。てかこの人、運転荒すぎじゃない? 警察いないの?
「シンジくん、よく来てくれたわね!」
「えっと、はい……」
思わず敬語。美人の迫力って怖い。いやマジで。
ミサトさんはポケットからガラケーを取りだしてどこかへか電話をかけた。
なんでガラケー?
喋っている内容はよく分からないがサードチルドレンだかなんだか言ってるのは聞こえた。
「……了解、すぐ連れていきます」
そう言ってミサトさんがガラケーを閉じた。ってか、何この世界……技術は爆弾バンバン撃てるのに、通信は平成初期レベルなの!?
「よかった……間に合って」
運転席のミサトさんが、安心したようにそう呟く。
いや、間に合ってないでしょ!?
巨人、めっちゃまだそこにいるけど!?
爆風で標識飛んできてるんだけど!?
「シンジくん。第3新東京市に来るの、何年ぶり?」
「え……と、さんね……あ、いや……えーと……」
誰かシンジの履歴書くれ。
何年ぶりとか知らねえし、こっちは異世界から急に転生(?)したばっかなんだよ!
「お父さんからは何も聞いていないの?」
「え、お父……?」
「お父さんが、あなたを呼んだのよ」
そうだった、確か封筒に「シンジくんへ」って手紙あったな。
あれ書いたの碇シンジのお父さん?
ドォォォォンッ!!!
「きゃっ!」
外でまた爆発。
見ると、巨人に向けて軍の攻撃が全く効いてない。
なんかバリアみたいなやつで全部弾いてる。
「えっ!?ノーダメ!?なにあれ!?デストロイヤーの結界みたいの!?」
「A.T.フィールドよ」
「えぇ!?あれ名前ついてんの!?フィールド!?じゃあどうすんの!?核とか使わないと無理じゃない!?」
「……使うわよ」
「え!?マジで!?ほんとにやるの!?この世界こわっ!?」
すると、車の後方からまばゆい光。
地平線の向こうが一瞬、白く光って――ズゥゥゥンッッ!!!
「ひょおぇぇぇえ!?何今の!?俺また死んだ!?」
車が転覆して、天地が入れ替わった。
俺とミサトさんは何とか車から這い出した。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫、生きてるわ。ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!?」
ミサトさんは壊れた車を見て叫んだ。
「まだローン半分以上も残ってるのにぃ...」
……この人もこんな感じか?。
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地上ではキノコ雲みたいなのがゆっくりと立ち昇っていた。
核……撃ったよね今。
マジで。
普通に。
「ま、待って待って……これヤバいやつでしょ!?普通に死ぬじゃん!?俺、もう蘇生制限とかかかってるからダメなんだってば!!」
「落ち着いて、シンジくん。爆心地からは離れてるから、放射線の影響も少ないはずよ」
「“少ないはず”って!!あんた命張るタイプの美人なの!?安全確認、ふんわりしすぎでしょ!!」
っていうかなんで俺だけこんな目に。
アクアのせいだよな、完全に。
やっぱあいつ後でしめる。
「でも、やっぱり……効かないのね」
ミサトさんがぼそっと呟いた。
見ると、例の巨人が、普通にピンピンしてた。
バリア張ったまま、ズンズン進んできてる。
「えっ、マジで!?核無効!?やっぱ魔王より強くない!?アレ、倒すことできるの!?」
ミサトさんは何も答えず、車は地下トンネルの奥へ進んでいく。
車内はしばし沈黙。
ってか、これ完全に誘拐ルートだよな。
俺、知らない世界で、知らない女に連れてかれて、気づいたら兵器と巨人が戦ってるし、親父は謎の組織のボスみたいだし……
――あれ?なんかこれ、ひょっとして“エヴァ”ってやつじゃね?
……いやいや、俺エヴァ見たことねぇし!?
知識ゼロだぞ!?
誰か、早くマニュアルくれ!!
「着いたわ。ここがNERVよ。あなたの父親の職場」
ミサトさんがハンドブレーキを引いた音が、やけに重たく聞こえた。
この世界、異世界よりもやばいかもしれない。
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「遅かったわね、葛城一尉。時間も人手もないときに」
「ごみん、迷っちゃって」
「その子が例の男の子」
「そ、マルドゥックの報告書によるサードチルドレン」
受付ロビーで出迎えたのは、白衣の女性。
クール系美人だ。
あと何かの不幸を背負ってそうな顔してる。
原作に出てきそうな雰囲気の人。
っていうか、このネルフって施設、見た目が完全に悪の秘密基地なんだけど。
あと照明が暗い。
なに、予算削減?
俺たちは赤い水をゴムボートで移動して行った。
なんの水だ?これ
「初号機はどうなの」
「現在B型装備のまま冷却中」
「それホントに動くの? まだ一度も動いたことないんでしょ?」
「起動確率は0.000000001%オーナインシステムとはよく言ったものだわ」
「それって動かないってこと?」
「あら失礼ね、ゼロではなくってよ」
初号機、エヴァのことか。
まて、この流れ嫌な予感がする。
エレベーターに乗って地下へと降りていく。
シン…いや、俺の心臓がドキドキしている。
緊張? いや違うな。
これは完全に「ろくでもない予感」だ。
「君のお父さんが待ってるわよ」
待っていたのは高所から見下してくる中年男性。
ポーズと視線の威圧感が魔王級。
おまけに名乗りもせず、いきなり言い放った。
「久しぶりだな、シンジ」
おい父親よ、
それは本当に久しぶりに会う息子に対しての1言目か?
なんかもっと感動的なシーンじゃないのか?
「……出撃」
何を?とはとてもじゃないけど聞けない。
「出撃ぃ!? 零号機は凍結中でしょ!……まさか、初号機を使うつもりなの?」
「ほかに道はないの。碇シンジ君、あなたが乗るのよ」
……はい?
え?何今の?さらっと言ったけど今、完全にヤバい単語出たよね?
エヴァってあのロボだよな?
乗るの?
俺が?運転免許いらない?
エヴァってこんな急展開なの!?
訓練とかシュミレーションとかないの!?
ミサトさんがこっちを見てる。
リツコさんもこっちを見てる。
ゲンドウも……サングラス越しなのに、見透かされてるような視線を感じる。
ねぇ、ちょっと待って!?
ホントに待って!?
俺、引きこもりだったんだけど!?
今さっきまで!
「なんでこうなった……」
俺の心の声が、ネルフ本部の静寂に虚しく響いた。
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