この素晴らしい世界に福音を!~……いやいやいや!? 俺、乗るとか無理だから!?~ 作:李忠成
でかい。とにかくでかい。
巨大な格納庫の中央に、そびえ立つ人型兵器。
顔、怖っ。
目、光ってんだけど!?
しかも、こっち見てる気がするんだけど!?
気のせいじゃなくてガチで怖い!
「これが……エヴァンゲリオン初号機よ。君が乗る機体」
「……え、乗るって、これ?」
「そうよ。君ならできるわ」
なぜそう断言できる!?
俺、こいつの取説すら見てねぇんだけど!?
このカズマさん、高校中退ヒキニート歴3年、資格ゼロ、勇者(自称)!
運転免許も持ってないぞ!
ゲンドウがまた高いとこから、無慈悲に言い放つ。
「エヴァに乗れ」
...聞いたことあるフレーズ。
「ちょっと待って!?説明ゼロで兵器に乗れって!?俺そういうのマジ無理なんですけど!?ちゃんと“導入”とか“チュートリアル”とか挟んでくれよ!?」
「時間がない」
「俺にも心の準備ってもんがあるんだよ!!」
そのとき、施設が大きく揺れた。
なんかまた上で爆発したっぽい。
てか、さっきの巨人こっち向かってきてるの!?!
「仕方ないわね……あの子を使うしかないわね」
リツコが通信機を操作すると、別の扉が開いた。
――担架に乗せられた少女が、傷だらけの状態で運ばれてくる。
「うわっ……マジか……」
顔色が悪く、呼吸も荒い。
正直、見るのがつらい。
でも、俺の中の“人間”としての倫理観が叫ぶ。
いや無理だろあれ、戦わせたら死ぬって!
「あの子をエヴァに乗せるのか!?」
「そうよ。ほかに方法はないわ」
ゲンドウがこちらを見下ろしながら、再び言う。
「乗れ。お前が乗らないなら、彼女が乗る」
卑怯だろそれは!
「……わかったよ。乗ればいいんだろ……!」
思わず言ってしまった。
いや、あの子に戦わせるくらいなら、俺が乗る!
でもできれば説明書欲しい!
「はぁ……もう、完全に流されてるじゃねーか俺」
でも仕方ない。
ここで見捨てたら、カズマさんの株が地に落ちる。
よーし、やってやる!
見せてやるぜ、元異世界勇者の底力を――!
「しょうがねぇぇなぁぁあぁぁぁあァぁあぁぁぁあぁぁあぁっっっ!」
……とりあえず、ロボってどこから乗るの?説明頼むマジで。
__________
「エヴァ、リフトオフ準備。パイロット、プラグスーツへの着替え完了しました」
いやいやいや、なんだこのボディスーツ!?
何このストレッチマンみたいな格好!?
ピッチピチすぎて俺の尊厳がどこかへ旅立ったんだが?
ていうか、見た目完全に罰ゲームだろこれ。
「君は初号機に乗って、使徒と戦うのよ」
「え、マジで……?」
完全に他人事のように言われたけど、俺もう逃げ場ないよね?
選択肢:「乗る」しか出てねぇんだけど。
で、案内されるがままに、細長いカプセルみたいなのに乗せられる俺。
ちくしょう!
原作知識があれば俺TUEEEEができたかもしれないのに!
「エントリープラグ挿入、開始」
ズズン……と重たい音を立てて、俺が乗ったカプセルがエヴァの背中にズブズブと入っていく。
あ、なるほど、これが「操縦席」ね。
なんか思ってたのと違うけど。
「LCL注入」
「ちょ、待って!?水!水入ってきてんだけど!?息、息でき……」
できた。
できちゃった。
意味が分からん。
「LCLは肺から酸素を取り込めるわ。落ち着いて」
落ち着けるか!
何この超技術!?
完全に現代日本じゃないな!?
「シンクロ開始……、ハーモニクスには異常なし、暴走ありません」
「これって、どうなの?」
「まあまあね、一応動くことはできるわ葛城一尉」
「そう……構いませんね」
「ああ、使徒を倒さねば、我々に未来はない」
「発進!」
いきなり過ぎませんか!?
落ち着くまもなく発進された俺は流れのままに地上へと運ばれた。
「ぎょえぇぇえー!!」
ものすごい振動とともに、俺を乗せた機体が地下から地上へ射出された。
スピード感、振動、目に映る風景――全部が初めてで全部が怖い!
「視界クリア、外部接続良好。シンジ君、目標は正面よ!」
「え、あれ!?あのデカいヤツ!?っていうかあれマジで敵なの!?巨神兵じゃん!バルス待ったなしじゃん!!」
ビルの隙間から見えたのは、巨大なヒト型の怪物。
おそらく“使徒”ってヤツだ。
デザインが攻撃的すぎて逆に笑えない。
RPGだったらラスボス張れる風格だぞ!
「エヴァンゲリオン初号機、リフトオフ!」
「シンジ君、今は歩くことだけを考えて」
歩く、歩くねぇ...
「うわっ……動いた……歩くって思ったら、エヴァも動いたぞ……」
すごい。
怖い。
楽しい。
怖い。
感情がジェットコースター。
でも――これが“シンクロ”ってやつか。
「歩いた!」
何やら発令所から騒がしい声が聞こえる。
何?俺は歩くかも分からない兵器に乗らされて敵と戦わされてるの?
え、アレと戦うの?
ホントに?
でも、どう戦えばいいのか全然わからねぇ!
「武器は!?マニュアルは!?誰かチュートリアルやってくれよ!」
「落ち着いて、相手の動きを見て――」
ミサトさんの声が聞こえるけど、そんな余裕ねぇよ!?
向こうの怪物、普通に歩いてくるし!
でっけえ手がこっちに――
「来たぁぁぁぁ!!」
バゴォォォン!!
「ぎゃああああああああ!!!」
俺が叫んだと同時に、エヴァの頭が思いっきり殴られて地面に倒れ込んだ。
視界がぐるぐる回ってるし、体にも痛みが走る。
え、これ夢じゃないの?
痛いって何!?
ロボットだろ!?
「パイロットの神経系にフィードバック反応……!」
「フィードバックて何だよぉぉおお!?痛いの?これ今からずっと痛い系なの!?ヤダヤダヤダ!」
地面に倒れて身動き取れない。
動こうにも、体が言うことをきかない。
え、まさかここで死ぬの?
オープニングから?
画面がぐにゃぐにゃと歪んで、遠のいていく視界。
「もう無理……助けてアクアー!アクア様ー!」
ズガァァァン!!!
使徒の拳が、初号機の顔面を直撃。
俺ごと地面に叩きつけられた。
「ぐわああああああッ!!?」
頭に響く衝撃。
視界がグルングルン回ってる。
痛い!ってか、めっちゃ痛い!
ねぇ!?
なんでロボに乗ってんのに痛いの!?
仕様おかしくない!?
「シンジ君!?落ち着いて!あなたの体じゃないのよ!!」
ミサトさんの声が聞こえるけど、もう無理、限界。
スキルも使えないこの世界、マジで詰んでる。
「……ダメだ、俺じゃ……ムリだ……」
もうやだ。
ニートに戻りたい。
アクアを殴りたい。
帰って面白おかしく過ごしたい。
そんな逃避的な思考を最後に、俺の意識は暗転した。
◆ ◆ ◆
「初号機、再起動……!?いや、これは……!」
モニターの中で、沈黙していた初号機がピクリと動いた。
装甲の隙間から蒸気が吹き出し、目が――光る。
「エヴァンゲリオン、暴走状態に移行!」
「自律制御を超えてるわ……もう誰も止められない……!」
ズズン――!!
倒れていた初号機が、ゆっくりと立ち上がる。
その動きは機械というよりも――獣だった。
ズシャアアアア!!!
エヴァの咆哮とともに、使徒へと突撃。
腕で受け止め、膝で崩し、頭を掴んで地面に叩きつける。
その様子を、モニター越しに見るネルフの面々はただ呆然としていた。
だが、その中の一人――碇ゲンドウの表情だけは、わずかに口角を上げていた。
「やはり、そうなるか……」
◆ ◆ ◆
俺(カズマ)はまだ、深い眠りの中――
この後、目覚めた時に地獄を知るとも知らずに。