授業が終わり、定刻を知らせる鐘が鳴るのと同時に、椅子を引く音や教科書を閉じる音があちこちで響きはじめた。
そんな中、1人の男子生徒が教室の片隅で声を上げる。
「なあ、お前ら、学園の七不思議って知ってるか?」
授業が終わると同時に、生徒の一人がそんな話を持ちかけてきた。興味を引かれたクラスメイトたちがざわざわと集まり、にわかに盛り上がる。
「夜中に一人で廊下を歩いてると、どこにも繋がってない扉が現れるんだってよ!」
「そんで、その扉を開けたら二度と戻ってこれない……とか?」
「こえー!誰か試してみろよ!」
「ばーか、迷信に決まってんだろ笑!」
「七不思議ってことは、あと6個はなんなんだよ」
わいわいと騒ぐ男子たちを横目に、ヴィクターはリアーナと離席し教室を後にする。あんな噂話より、次の授業に間に合うかどうかの方がヴィクターにとってはよっぽど重要なことだ。
「ヴィクターは七不思議とか興味ないの?」
「ない。あったら学園の治安終わってるしな。」
つまらなそうに答えて、あったら面白いんだけど、と付け加える。
彼女は「そっか」と少し残念そうに笑った。
廊下には、次の授業へ向かう生徒たちが行き交っていた。
石造りの校舎特有のひんやりとした空気の中、ヴィクターは足早に歩く。隣では、リアーナが何か考え込むように俯いていた。
しばらく沈黙が続いた後、彼女はぽつりと口を開いた。
「ねえ、ヴィクター。ヴィクターは私のこと…どう思ってる…?」
「なにそれ。……同級生…だろ。」
リアーナの話の意図が読めずヴィクターは眉間に皺を寄せて怪訝そうに彼女に顔を向ける。
リアーナはヴィクターの表情を見て横に目を逸らす、彼女はまた少し間を置いてこう続けた。
「じゃあさ、もし私が消えちゃったら…ヴィクターは私のこと探してくれる?」
「は…?」
ヴィクターは足を止め、彼女の腕を咄嗟に掴んで引き留めた。
「……何だよ、それ。冗談にしては笑えないんだけど。」
その言葉に、彼女は微かに驚いたように目を見開き、少し後ろを振り返った。だがすぐに目を伏せ、あえて笑顔を作るように言った。
「ほら、変な話聞いちゃったから、本当にあったら怖いなって、……ごめん、忘れて」
ヴィクターは手を放すことなく、しばらく彼女を見つめた。その不安げな表情に、少しだけ心がざわつく。
しばらく見つめ合ったあと、リアーナは少し悲しそうに笑い、ぱっと前を向いていつも通りに歩き出す。
ヴィクターは腑に落ちないまま、その背中を追いかけた。