ある放浪者の備忘録   作:名もなき放浪者

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herとかhisとかから考察している


封印の解除、尖塔にて

 どれほど強い光に照らされようと、わたしの光、わたしの愛する王はただひとり。彼が作り上げたこの国、彼が作り替えたムシ達。その全てをわたしは描きあげる。

 彼より賜りし1つ目の仮面。その時からわたしはわたしになって、一途に王を想い続けている。長い衣が擦り切れても、心はずっとあの頃のまま。わたしに釘は振るえないが、筆によってその偉大さを描く。そのお姿が見えずとも、わたしは都の姿に王を見る。

 都が病に侵されていく。わたしの愛した都が変わり果てていく。それでも王は手を尽くされている。いかなる犠牲を払ってでも、ハロウネストは永続する。わたしの全てを捧げる事でそれに貢献出来る事は本当に喜ばしい事。纏わりつく甘い光を振り払って、わたしはわたしの意思で眠りにつく。

 王のため、ムシ達のため。わたしは永遠の眠りを選ぶ。

 

 

 夢見の守護者とは何らかの特別な理由で選出された存在である。そうでなければわざわざ取引をしてまで獣者ヘラーを守護者にしたりなどしない。教師モノモンもあの特異な場所にしかいない特殊な種だ。では、監視者ルリエンはどんな存在だったのだろうか。

 ルリエンに関する情報は酷く少ない。本人の思念や遺言、従者から読み取れるのは盲信的な程の忠誠心ぐらい。あとは、塔のあちこちに飾られた絵と、眠る部屋にあった描きかけの絵から、おそらくは画家であっただろうと言う事。王と都を誰よりも愛し、全てを捧げたムシである。

 ところで、ハロウネストの王は国民から神のように信仰されていた存在である。確かに王は力ある古の存在だが、その大きな姿を捨て、つかみどころのないまま神聖視された。各地の建物などの造形や小像から分かるように、芸術がそれを支えていた。

 おそらく夢見の守護者の立場上真実を知っていただろうに、ルリエンは熱心に信仰し続けた。心を読んでさえ、一切の混じり気なく。その想いを絵にする様子は、側から見れば最も忠実な司祭のようなものだっただろう。

 

 思い出せと古い光は言う。誰も訪れない頂に、古びた石像が立つ。ハロウネストの民は自分達こそが最初の文明だと語る。その存在を知るのはもはや王家の関係者しかいない。かつて自分が読んだ碑文のように、皆そう教えられたのだ。だから、古い光は真実を囁く。怒りをもって何重にも隠されたハロウネストの歴史を語り続ける。長い時の果てに、己の声に耳を澄ましたり、己を信奉したりする存在達を認識出来なくなっても。

 

 女王を守る女騎士を埋め、身を隠した女王を埋める。

 王に尽くす司祭を埋め、神と崇められた王を埋める。

 

 ついぞ病に侵されなかった彼ら。しかし、彼らも順に死んでいく。光はそれを待っている。

 どれほど悲劇的な構造だろうと、戦う事しか出来やしない。それは何も考えず、無情に斬り捨てる事がせめてもの慈悲かもしれない。封じるにせよ、討伐するにせよ、真実を語る光に直接触れ続けながら、その時は一切の同情も許されないのだから。

 

 自分には先程吸収し殺した彼のように、知りながら信じる事が出来るだろうか? ……ただ、何故か封印に関しては出来ないと思った事がない。疑問に思わなかったのが不思議な程に。単純な戦力面であれば多少不安を覚えた事も多い。しかし、病に抗う事がどれほど大変な事かずっと見てきて、あの選ばれた器でさえ病に侵されたと言うのに、その一点だけは出来ない訳がないと思っている。理屈で考えるとおかしいようにも見えるが、白いレディも穢れとは無縁だと言い切っているのだから、このまま信じるべきだろうか。

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