ある放浪者の備忘録   作:名もなき放浪者

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霊媒師と魔法と好奇心

 遠ざけられた力。各地の塚に縛られ、多くはその入り口も塞がれた。周囲からソウルを集め、調整し、恐ろしい魔法を作り出す者として、怖がられるのも当然と言えたし、同時に彼らとの接触を恐れられてもいたのだろう。彼らは復讐や破壊、叫ぶ事すら許されてはいなかったのだから。

 とは言え、そこまで詳しく事情を知っている訳ではない。分かるのは彼らが長い影を持つ事、彼らもまた縛られている事、そして我々のように周囲からソウルを集める術を持つ事だけだ。

 

 ある時、偶然にも彼らの内の1体が塚を訪れた。長く閉ざされていた入り口が、近くで何かが暴れた事で崩落して開いたのだ。直後に現れたそれは彼らの中でも特に奇妙で小さい者。底知れない何かを感じた為、何の説明もなく魔法をくれてやったのだが、思ったよりも内に対する衝撃に不慣れなようだった。

 魔法を受け取った衝撃で気絶してぴくりともしない。構造的には十分な容量があるように見えたのだが、多くの意思を持つソウルに振り回されたか、ソウルが持つ光にやられたか? 或いは目測を誤って力を込めすぎたかもしれぬ。このままふらふらと出て行かれても困るし、気絶したそれを奥へ運んだのだが、こんなおぼつかない存在さえこの不快な空気に満ちた場所は恐れたようで、この場所を閉ざす柵が降りてしまった。抱え持った感覚では見かけ以上に軽く小さな存在だと言うのに。なお、何も事情を知らぬ本人は、見ているこちらがうっかり寝てしまう程に倒れていたのに、その柵にキレる程度には元気で威勢が良く、なかなかに見所のある性格なようだった。

 

 だが、一通りキレて落ち着いたのか、或いは単に出ようとしただけだったのか、その後は大人しかったし、後日魔法を手に入れる度に顔を出しに来た。

 魔法の取得となれば基本的に各地にいるわしの親類に会う事になる。それで魔法を受け取れたとして必ずしも生きているとは限らない訳だが、この小さな友が洞穴内を旅して彼らを思う機会を与えてくれるのは良い事だ。時に彼らが遺した影と友自身のエッセンスによって魔法を歪める事もあるが、それによって孤独に死んだ彼らが少しは報われたのならそれで良い。小さな影は何か言いたげではあったが、語る事ばかりが良い訳ではない。

 1度だけ我々の同族の魂が結晶化したと思われるチャームを見せてきた事があったが、それについては何も言わなかった。魔法でも影でもなくチャームとなるほどに擦り切れた者についてなど。

 

 小さな影は随分と好奇心が強かった。魔法以外でも多くの移動スキルを手にして塚を再探索していた事もあったし、夢見の釘も当然のように他者へ振るっていた。魔法に変化がある度にここへ戻って来たのも好奇心故だろう。最後に会ってからしばらくして洞穴内の悪しき空気が消え去ったが……、友にとって1番話を聞きたかったのは、塚の天井近くに生えていたあの植物のように様々な真実を囁く存在だったのかもしれんな。はたして光り輝くあれは小さな影を前にして何か語っただろうか?

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