とにかくジオを沢山手に入れる。手に入れなければ王にはなれない。
王と言ってもどっかの国の天辺とかそう言う話ではない。ただ、俺の同族曰く、それが俺達の王たる証であるらしい。もっとも、俺はそこまでの大金を持った事はないし、それが具体的に何を指すかも知らない。けれど、こう言う話は大体知らなくてもその時が来れば一目で分かるもんだ。
魅力的なチャームを作ってそれを売る。そうすればジオが手に入るし、買った奴らがまだ見ぬ同族に語りかけるように作ったこのチャームを持ち運んでくれればいつかその答えも引き寄せられるだろう。
でもまあ、単純にジオを沢山持ってるのはいい事だ。王とまでは言わずとも、ジオを持ってる奴が偉いと言うのは共通のルールである。持ってない奴はどうしようもない程惨めだし、そんな奴を上から眺めるのはいい気分だった。
こつこつとチャームを作っては通りがかった奴に売る事が日常となって久しくなった頃、少しの変化、俺にとっては大きな変化が訪れた。
「エゥアアアッ!?」
こいつは同族じゃない。ただ以前にチャームを売った客の1体に過ぎない。しかし、そのチャームの1つが変わっている。俺のチャームを全部買った後も思い出したように顔を出す欲深い奴だと思っていたが、こんな物を手に入れるとは……。
いや、こんなに取り乱すもんじゃない。だが、この匂い……このすごくイイ匂いが俺に語りかけてくる。俺を高揚させるどこかの誰かの匂い……こいつは一体どこでこれを手に入れたんだ?
気付いたら目の前のこいつが困惑していたらしい。何を考えているのか分からん奴だが、これが何なのか聞きたいのはこっちだと言わんばかりに引いているように見えなくもない。
もっと……もっと沢山あれば何か掴めそうな気がする。あいつが立ち去っても、あの匂いの事ばかりを考えていた。
◇
あーあ、とっても残念。あの下から漂って来ていた匂い、私を呼ぶ匂い、私の為の贈り物。結局あの可愛いおチビさんが渡してくれたのは1つだけ。それもジオを渡して取り戻したと思ったら、そのまま私達を呼ぶ碇も壊されてそれっきり。
とってもイジワルなおチビさん。沢山の匂いを纏いながら、自分自身の匂いを持たないおかしな子。あの子だったらきっと贈り物を作った者まで私の匂いを運んでくれると思ったのに。これではもう2度と会う機会はないのでしょうね。
私の王、団長は深く眠っている。燃え続ける悪夢の炎に焼かれながら、儀式によって育てられた子をつぎはいで、また儀式をやり直す為に。いつか本当に儀式が完遂される時まであの炎に繋がれて、ずっとその時を待っている。
私の王はただひとり。でも、私の為の贈り物、私にやさしくしてくれる誰か、私を求めてくれる誰かが欲しい。特別で、とっても素晴らしい贈り物をくれるのなら、その者の記憶は私の心の1番近くに留めてもいいのに。