彼は本当によく出来た弟子だ。誰かに自分の技術を伝える事は長年の夢だったが、教える程に上達していく様を見るのは本当に楽しいものだった。
瞑想していても感じられる強い気配。わたしの師匠を思い出させる小さな姿。誰かに習う機会が無かったのか、実戦だけで身につけていた釘使いは粗削りながら野生みを感じる力強いものだった。
しばらくしてまた訪問してくれた時には兄弟達の技を身につけ、更にわたし達の師匠からもその実力を認められていた。弛まぬ努力のもと、会う度に強くなっていく姿も素晴らしいものだった。
わたしの家の片隅に突然生えた喋るキノコをじっと見つめている時もあったが、あれの話が理解出来ていたのだろうか? 独特な言語で呟くキノコは彼に話をした事で満足したのか、そのままどこかへ去って行った。キノコも彼もそこだけは謎な奴らだった。
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何を考えているのか分からん奴だが、強さに対する渇望だけは本物だったのだろうと思っている。その様子は兄弟達を連想させる物だった。
自らの情熱を示せと提示したジオは迷わず払い、スパルタ気味の指導には素直についてくる。戦いの基礎は元から身につけていたようだが、習得していた奥義からしてメイトーに習ったのだろうか。もしそうなら辛抱強くもあるようだ。おれの家の裏手にある案山子でも追加で自主練習をしていて、本人に言うつもりはないが、ただ習うだけで終わらないところに好感を覚えた。
案山子よりも更に奥で何か気になる物でもあったのか、恐ろしく深い穴をぶち抜いたりもしていたが。あまり他者に干渉する性格ではないようだが、それはそれとして遠慮のない奴である。
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我が強い弟子だったと思う。目的がはっきりしていたとも言える。自分にはそれしかないと思い込んでいた過去の自分を思い出させるが、それよりも更に突き詰めたような、たとえ他の物を見てもぶれる事はない真っ直ぐさ。それが不思議と素直さや好奇心と同居していた。
芸術には興味がないと言うより、どうしても力を求めていたのに長々と違う話をしたものだから、少々焦れていたのかもしれない。兄弟達とは異なり、とうに釘は置くと決めたからと渋るわたしにも彼は指導を求めた。この場所に来たのも、偶然ではなく誰かから情報を得て真っ直ぐ目指して来たのだろう。
指導を終えれば多少は絵や彫刻を眺めていた。焦りが落ち着いたのか、指導に絵を使った事で興味が湧いたのか。試しに筆を持たせてみたところ、しばらく描くものに悩んだ後、見慣れぬ何かを描き始めた。好きな物や心に浮かんだ物を描けばいいと言う言葉に反応しての物だったが、あれは一体何だったのだろうか。明るい色で描かれたムシのシルエットのようにも見えたが、その形に思い当たるものはない。筋は良さそうだったから、下手で謎な物になっている訳ではなさそうだ、と思って見ていると、突然はっとしたように真っ黒に塗り潰してしまった。
その後、流石に借り物でこの内容はバツが悪かったのか、その上から白い輪郭で誰かを描いていた。こちらはどこかで見たような気もするが、色は真っ黒のまま、あの狂気の病のように目だけが燃えるようなオレンジ色で塗られている。
流石に病に冒された知り合いについて無遠慮に聞ける筈もなく、当たり障りのない感想を言うに止める。だが、一瞬だけ描かれたあのシルエット。それも燃えるようなオレンジ色だったが、何か関係があるのだろうか? そんな物は無かったと言わんばかりにすんとしてしまった彼からは、結局何も聞き出せはしなかった。