ある放浪者の備忘録   作:名もなき放浪者

6 / 18
復讐か取り立てか

 まったく酷い目に遭った。いや、先に手を出したのはこちらなのだけれど、いくら騙しやすそうだからと言って、あんな気色悪い子と関わるんじゃなかった。

 最初に会った時、随分素直で不用心な子だと思った。あんな子供が危険なハロウネストを歩くなんて、すごく腕が立つのだろうか。いや、そんな筈がない、きっと無鉄砲にこんなところへ来てるだけで、すぐに命を落とすんだろうと思っていた。

 しかし、意外にも死ななかったし、預けられるジオの量からして、順調に探索が進んでいるらしい。どこぞで子供が死んで丸儲けなんて想定は外れたが、ほどほどのところで行方を眩ませればかなりの儲けになるだろう。

 だが、意外にもあっさり子供と再会する事になる。表情のない顔からは、偶然見つけたのか、わざわざ探しに来たのかは分からない。無言で見つめる様子からは、怒っているのかいないのかも。ただ、ここで懐のジオに気付かれては大損だ。懐にはこの子供以外から得たジオもあるし、詫びまで合わせて寄越せと言われては困る。もうここにジオはない、と説明したのだが、おもむろに釘の腹を打ちつけられた際に懐のジオが零れ落ちた。

 そこから先は当然の流れである。あんなのでも怒ってはいたのだろう。見かけよりも力のある子供に打ち据えられ、手加減により怪我はなかったが、手加減のない取り立てにより懐のジオを全て失う羽目になった。

 出せるだけ出して満足したのか、何故か子供は宙を見ている。それから見えない何かに頷いた後、ようやく子供は立ち去って行った。

 

 

「あっははは!」

 急にチャームを付けて呼び出されたと思えば、どこか困った様子の友が私を見上げ、その後ろで邪な気配を持つムシが反省の色もなく座り込んでいた。

「つまり、友を騙したこのムシを勢いだけで締め上げてしまったと!」

 肯定。確かに友は感情を制限されており、基本的に怒りなどとは無縁だ。それでもこのような蛮行に及んだのは、もしかすると行き場のない恨みでも抱えていたのだろうか? 生まれた時から、いや生まれる前から周囲の都合で奪われ続け、それに対する恨みの感情さえも奪われた。それが偶然にも、別件で奪われた事に復讐し、取り戻せる状況に巡り合った。

 つくづく我が友は面白い。これ程強い意思を抱けるのなら、ただのムシであれば相当に大きな怒りの炎が収穫出来たかもしれない。今でも多くのエッセンスを持っているのかもしれないが、おそらく呪いを解けたとしてもそこにあるのは緋色ではなく影色のエッセンスだけだろう。流石にこんな大きな虚無を緋色に染められる気がしないのがとても惜しい。本当にただ役目もなく打ち捨てられていただけの存在なら団員に引き込むのに!

 そのムシにとっては自業自得であるが、とんだとばっちりでもある。しかし、面白いものは見れたが、こんなムシにいつまでもかかずらうのは友の為にならない。運良く思わぬ儲けになった事だし、今回の事はすっぱり忘れてしまえと促して、我々はその場を後にしたのだった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。