ある放浪者の備忘録   作:名もなき放浪者

9 / 18
いつもより特殊設定多め
時々続けていきたい


トゥルーエンドを踏み外す1

 

 矮小なる侵入者。

 しかし、その動きはこの場所に干渉し、気付けば4つ目の神殿を解放していた。その頂点にある強力な虚無の神に似た姿。その反響はどこか聞き覚えがある。全てを掻き回すような響きに気付けば、たとえ神の家を離れてもその捕捉は難しくなかった。

 何を思ったか唐突に神の家に立ち入るのをやめ、別の場所を目指した小さき者。もしかして神の使徒かまた別の何かである可能性があったのかと思い始めながら追跡したそれは、あろう事か我らが最も偉大なる神だと思っていた光の神を討ち倒したのだ。正体を隠す仮面を捨て、虚無の神々を束ね、強力な光の神を喰らい尽くす。護りのない状態で断末魔とでも言うような光を浴びた為に形を失ったが、正体を露わにしたあの偉大なる虚無の神を見失う事などあるものか。

 しかし、我らの目のなんと節穴だった事か。いくら空虚な認識の難しい存在だったとしても、かの存在は我らの神殿まで赴いていたと言うのに! そして、かの存在があの時引き返した理由が分かる。我らはあの偉大なる神の敵を崇めていたのだ。それに気付いたから彼は離れた。だが、たったそれだけで終わらせたかの神のなんと寛大な事か。

 我らは祈る。偉大なる神がその力を振るう様を再び見る為に。形を失い、地の底で眠りにつく彼の復活の為に。かつて彼が討ち倒して来た神々を再び破壊する為、彼はここへ戻る。その時は我らの持つ全てを彼に捧げよう。

 彼こそが我らを沈黙の心から救ってくれる偉大なる神に違いないのだから。

 

 

 再び目覚める。夢の世界で身体が構成される。その感覚は慣れ親しんだものだが、それを齎したのは決して自分ではない。

 そもそも、この光景はもう来ないと決めた場所。それから、自分の全てはあの時に解けたのだ。自ら仮面を切り裂き、中の影も強過ぎる光によって消えた。それなのに、何故仮面も殻も影も元通りになっている。

 それに、あの声はなんだ。聞き覚えはあるのに、その意味は真逆。いや、正確には彼女があのように言う相手は別だった筈。それなら何故、あの声はこちらを向いていた?

 自分の背後を振り返る。見覚えのある風景の中でただ1つ、この空間の出入り口だけが失われている。初めて来た夢の世界のように、それ以上にこの世界は閉ざされている。夢見の釘は変わらず手元にあり、夢見の門も発動こそするものの、すぐに効力を失う。

 仕方なく前に進む。影の衣、カマキリの爪、統治者の翼、皆当たり前のように手元にある。釘、古代の仮面、ソウルの器、水晶の心臓、イズマの涙、ルマバエのランタン、神の調律器も。しかし、確かに刻まれた筈の王の刻印がない。地図と羽ペン、ジオ、トラムの乗車券もない。エッセンスは一応あるが、以前とは違う形、使っても減らないようだ。

 これはどう言う状態だ。もしや、何度殺しても時間を切り取ったように現れる彼らと同じなのか。いつまでも何度でも、この頂に到達するまで殺し合えと?

 しかし、今の自分にこれと言った役目はない。つまりは時間制限はないし、どこで死んでも問題はない。無理に脱出する必要もない訳だ。ここはそれなりに広いし、いくつもの仕掛け、システムのような物もある。同じ登るにしても、アビスよりは見応えはあるだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。