俺が、俺達が(サイコ)ガンダムだ!   作:天野ミラ

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設定集に書いてあることは強いんだよね、理論上は。
結局はパイロット次第という事だと思います。
話の構成的にここまでやる必要があったかどうかで言うと無いんだけど……
どうしても書きたかった。


第三話 テストバトルのサイコガンダム

「うぅ、これはここに置いて……っと」

 

 初めて会ってからというものの、ドゥーはずっと俺のコックピットの中にいるようになった。最早住んでいるといっても過言ではない位に。本人曰く「ここがボクの本当の身体だから」だとか。言っていることはさっぱり分からないが……知らない場所で誰か話し相手が居るというのは、俺としてはありがたかった。

 

 自分の身体の中にいる少女が居るというのは未だによく分からない。それでも慣れというのは怖いもので、こんな状況に順応し始めていた自分が居た事に驚いた。

 

「あっ、着替えないと……」

<せめて更衣室を使ってくれないか?>

「……面倒くさいし」

 

 こういう場合を除いてだが。そう言ってドゥーは制止を振り切ってその場で服を脱ぎ始める。俺は無機物だ、おれは無機物だ……誰が何と言っても俺は無機物なんだ……

 冗談を抜きにしても、唯一の信頼?している相手から『そういう目線』を向けられれば、彼女はたちまち居場所を失ってしまうだろう。だから、そういう事は決して考えてはいけない。

 

<飯をまだ食べて無いだろ、少しでもいいからちゃんと食べないとダメだぞ?>

「め、面倒くさい……」

 

 コックピットの中の彼女の手足は細いし、あばらも浮いているというのにこれ以上食事を抜くのは良くない。健康な精神は健康な肉体に宿るとも言うし、育ち盛りの子供にとって食事は非常に重要だ。

 

「ここに持ってきてもいい?」

<ちゃんと食べるなら良いぞ、あまりこぼさないようにな>

 

 そして一緒に過ごすうちに気付いたのは、彼女はサイコガンダムやキラキラとやらが絡まない事になると途端に面倒くさがりになるという事だ。それは勿論、自分の身体に関しても例外ではない。切るのが面倒くさいのかもっふもふの白髪は頭頂部で束ねられてなお足元まで伸びているし、生存に必要な事すらおざなりになりがちだ、目元のクマも酷いし。

 俺の目が黒い内はそんな事は許さない、まあ俺の顔は赤いし目は黄色なんだけど。

 

「うっ……」

<消化器官が弱ってるなら、ゆっくりにした方が良い。焦らずゆっくり噛んでから飲み込むんだぞ>

 

 えずいたドゥーに声を掛ける事しか出来ないのは、大きな身体の明確な欠点だった。実験の副作用か、それともサイコミュの起動のせいかは分からないがドゥーの身体の状況はあまり良くない。それに俺の知るアニメでは強化人間の末路は大抵が碌でもないものだった。本格的に動きたいが、俺にはそれを外部へと伝える手段がない。

 

 ドゥーに実績を作らないと。この研究所で発言力を持てるだけの……

 実験は成功したんだという実績を。

 

 

 

 

「サイコガンダムのテスト運転ですか、データは欲しかったのですがどうして急に?」

「性能テストをするべきだ───とサイコガンダムが言ってる」

「それは……流石はあのドゥー(二番目)と言うべきでしょうか、流石の順応率です」

 

 相手方との利害の一致と言うべきか、テスト運転は簡単に決まった。目標は試験用のMSの破壊と出力の確認。相手のMSは自動操縦で兵装も大したものは無いという話だったが、そんな状況だからこそ全力で圧倒的な戦果を挙げなければいけない。

 

 

 屋外の演習場へと輸送されてきた俺とドゥー。この広い宇宙に向かって飛び出していけば一時ばかりの自由を得ることは出来るのだろうが、俺とドゥーだけじゃ連邦の捜査の手からは逃げきれない。脱走した強化人間の末路など言うまでもないだろう、だからこそ自由になりたいなら手段を考える必要がある。

 

 いつもと違って、ぴっちりとしたサイコスーツに身を包んだ俺のパイロットは特に緊張した様子もなく自然体で操縦席に座っている。変に緊張したりしてないのは良い事だ、緊張や焦りはいざという時の判断を狂わせるから。

 あれからずっと差しっぱなしになってしまっているサイコミュの起動キーのロックを外すと、コックピットが一瞬妖しげな紫色の光に包まれる。今まではカメラや計器越しにしか感じていなかったドゥー・ムラサメと言う少女の存在をより身近に感じる。

 

「───あはっ、良いッ……すっごく良いよ!」

<ど……ドゥー!?>

 

 いつものダウナー気味な彼女の姿は鳴りを潜めて、いきなり興奮しだした彼女に困惑を隠しきれない。サイコミュが悪い影響を与えてるというよりも、彼女の中にある二面性が顔をのぞかせたとも言えるのかもしれない。

 

「サイコガンダム───出撃するよッ!」

<さ、サイコガンダム出撃するッ!>

 

 遠方に見えるのは球体型の非人型MS。これは俺も知っている、所謂ボールと呼ばれていたMSだ。

 ジムのセットで運営されていたイメージがあるが……何故かジムの姿はない。これを如何に、どれだけ派手に撃破するかだが……やりかたは出来ている。

 

 ところで、豹変したドゥーに少し驚いたが俺も───

 

「さあ、キラキラで遊ぼ───」

<行くぞ、ドゥー!今は俺がッ、サイコガンダムなんだッ!>

「えっ?う、うん……」

 

 ───コントローラを握ると人が変わると知人には良く言われる。

 

 見た目の変化にこそ驚いたものの、俺のよく知るサイコガンダムと一点を除けば武装の性質に差はない。メイン兵装の胸部の5連装ビーム砲と、指部に取り付けられたビーム砲。変化点と言えばリフレクタービットの代わりに装甲のパージが出来る事だ、折角の『硬い』というサイコガンダムの強みを完全に殺している。ムラサメ研は普通じゃない。

 

 胸部にある5連装のビーム砲はアーマーのパージとともに2連装へと変化し、残りの3つはパージされて飛んでいくらしい。本来はパイロットであるドゥーの『感情の高鳴り』が必要らしい装甲のパージだが、ここには二人のニュータイプ(暫定)がいる。恐らく使えるはずだ、2人のテンションが上がれば。

 

「あはっ、あの時よりずっと動かしやすい!」

 

 ゆっくりと身体が動いてサイコガンダムが地上を歩き始める。あの時と言うのは試験の時の事を言っているのだろう。俺の方はと言うと、自分の意志とは別に身体が動くという事象が何処かくすぐったい。

 

 今はマニュアル式の操作だが、FCS等の管制機器はこちらで動かせそうだ。それに完全にサイコミュでの操作にした場合や、機体の一部ならこちらで動かすことが出来ると思う。

 

<ここから奴を狙うぞッ!>

「えっ、こんな遠くから?」

 

 はるか遠くに見えるボールへと狙いをつける。相手も動いている以上は、こんな距離から撃てば偏差で碌に当たらないのは目に見えている。しかし自分の身体を動かしていた時間より、VRに潜っていた方が長い俺にとって……緑ロック(ロックオン外)だからというのは、当たらない理由にはなりえない。

 

 指先から放たれた光条は見事にボールの移動先に突き刺さり、大きな爆炎を引き起こす。

 

「凄い、キラキラでもないのにこんな事が……?」

<勿論だ、どんどん行くぞ!>

 

 2人の共同作業で、次々とアウトレンジからボールを撃墜していく。サイコガンダムを操縦するのではなく、コックピットに誰かを乗せて戦うのがこんなにも楽しいなんて知らなかった。

 

 少し単調になりつつあった現状を憂いてか、それとも元から出撃予定だったのかは分からないが……見た事がありそうで無いようなMSが一機出現する。『あれ』のお披露目にはうってつけだろう。

 

<行くぞドゥー!感情を高ぶらせるんだ!叫ぶぞ!必殺技の名前を!!!>

「ひ、必殺技……?」

 

 感情の高鳴りを感じる、きっと二人ならあれが出来る。

 そう確信した俺は最後のダメ押しに必殺技の名前を叫ぼうとして───

 

<サイコ───>

「あのさ」

<どうした、ドゥー?>

「これ、ボクが居る必要ってあるの……?」

 

 ───しまった。つい身体が動くのが楽しすぎてパイロットを置き去りにしてしまっていた。これじゃあモビルアーマー失格だろうが。初心者を置いてけぼりにしてしまうのは、界隈の悪い癖だ。

 

<ドゥー……すまなかった、そうだよな>

「なっ、なんであやまるの?」

<あぁ、えっとつまり……俺たちは二人で一人なんだ>

「ボク達は二人で……一人」

 

 俺はドゥーが居なければ動く事すら出来ない。ドゥーはサイコガンダムの心臓になるために生まれて来たと言っていた、それをムラサメ研の洗脳の結果だとも思っていた。だが、俺はその意味を、サイコガンダムの心臓と自分を自称した彼女の真意を……ようやく理解したのかもしれない。つまり……

 

<行こうぜ心臓(相棒)!俺だけじゃない、()()でサイコガンダムなんだ!>

「……そっか、大人たちが言ってた心臓って……そういう事だったんだね*1

 

 2人の感情が、同じ方向を向いているのを熱く感じる。今ならきっと───行ける。今ならきっと何処までも、何処までも高く───飛べる。

 

「サイコ───!」

<───ファンネルッ!>

「ふぁ、ファンネルって何?」

 

 身体からパージした装甲が空中へと散開していく、一度見たきりの猿真似ではあるものの……二人ならきっと出来ると確信していた『ビットのマニュアル操作』。

 

 胴体から放たれた全力のビーム砲は一見すると見当違いの方向へ飛んでいき……反射する事───6度。正面から放たれた筈の『それ』は、直上からガンキャノンもどき(軽キャノン)に突き刺さり大きな爆発を起こす。

 

<……ファンネルでは無かったな>

「……そっか」

 

 結果として、実験の成果は研究員のお墨付きをもらうことが出来たので良しとしたい。決して実戦とは言えないものだったけど、俺達のテストバトルはこうして終わった。

 

 

 

 テストが終わり、流石に疲れたらしいドゥーを乗せて工廠へと戻る俺の足取りは軽かった。まあ、50mもある以上軽い事は無いんだろうけど。テストが満足のいく結果に終わったというのもあるが……あれだけ動いてドゥー本人にそこまで負担が無さそうな点だ。やはり一人で動かすはずのサイコガンダムを二人で動かしているからだろうか?

 

 工廠に辿り着いたはいいものの、俺のパイロット様は一向に出てくる様子が無い。

 

「……つ、疲れた。ボクもう寝ていい?」

<サイコスーツを脱いで、身体を清めてからにしないとダメだぞ>

「えっ、えぇ……でも眠いし面倒くさい……」

 

 調子が悪い……という訳では無いのだろう。あれだけ派手にはしゃぎ回ったというのに、MS関連が絡まなくなると急に面倒くさがりになったというだけで。寝かせてあげたいところではあるが、流石にサイコスーツを着たまま寝ようとするのは見過ごせない。

 

<ほら、さっさと起きて!まずは姿勢を起こさないと始まらないでしょ!>

「えっ、えぇ……」

 

 ようやくその場で立ってサイコスーツを脱ぎだしたドゥー。この場で脱ぐのはこの際もう良いだろう。これを着たまま下に行くのも疲れそうではあるし。ただ、着替えながらこちらに話しかけてきた内容は……衝撃のモノだった。

 

 

「なんか……サイコガンダム(あなた)ってお母さんみたいだよね。ボクにお母さんが居たらこんな感じだったのかなぁ……」

 

 あまりにも重たいジャブが差し込まれたが、それと同じくらいショックを受けた見過ごせない一言があって突っ込まざるをえない。正直、記憶を消去されていそうな強化人間である以上、そうなってるのは想像はついていたし。

 

<お兄ちゃんじゃなくてお父さんでも無くて、お母さん……?>

「うん、そうだよ。なんでお兄ちゃんなの?」

 

 俺は彼女の母になってくれるかもしれない男性だったらしい。

 いやもう男性ですらないんだけど。

 

 

 

 


 

 

 あの後、研究者は大騒ぎだった。順調……というより、現時点であそこまでのデータを出すことが出来るのは想定外だったとか。ただ、その原因が精神面にあるという推論に彼らは頭を悩ませていた。サイコガンダムが自我を持っているなんて、ボクの頭を開いても分かりっこないから。

 そんな試験が終わって数日、ボクはある事を伝える為にブリーフィングルームを訪れていた。

 

「これ以上の投薬や実験は必要ない、操縦者は既に完成の域へと達したって」

「それも、もしかして指示だというのですか?」

「うん、そうだよ」

 

「サイコガンダムが───そう言ってる」

 

*1
違う




次回 第四話『本当の戦争』
……お楽しみに

業務連絡ですが、遂にジークアクスの次話が今日の夜公開されます。
その内容如何によっては、この小説が消えるかもしれませんが……
正史に救いがあったとしたら、その方が幸せですよね。
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