エンディングの終わりは読者の皆様の中に解釈をしていただきたくて、ある程度の余地を残しておきました……
ですがやはりその後が気になるというお声と、作者の中で考えていた裏のお話がいくつかあったので今回お出しすることにしました。
追加エピソードは2、3話程度を予定しています。
ほとんどは他愛のない日常になると思いますが、彼らのエンディングの後を是非お楽しみください。
<>→「」に変更しました
第零話 Begining
イズマ・コロニーで生活を始めてから一月が経った。
停泊していたジオンの船は去り、ここには平穏が訪れた……と言っても良いだろう。コロニーとしては一つだけ深刻な問題を抱えているみたいだが、そちらは上がなんとかしてくれる事を祈っている。
ドゥーは働き口を探すのには苦労していたものの、何とか日々を食い繋ぐ程度の金銭は稼げている。こう言う時にハロの身体は不便だと思うが……この小さな身体のお陰で維持費に電気代位しかかからないのは、不幸中の幸いと言えるだろう。
「ねぇ、どうしたの?」
<いや、この一月あっという間だったなって思っただけだよ>
「忙しかったからね、それでもすっごく幸せだったよ。これが普通……なんだね」
これ位の歳の子が日銭を稼ぐために日々を生きているというのは、日本生まれの俺としては『普通』とは言い辛い。それでも、命のやり取りも人体実験も無く毎日を生きている。自らの足で世界を巡り、お腹がすいたら美味しいご飯を食べられる。それだけの生活が、酷く愛おしいものに感じる。
ところでこのイズマ・コロニーが抱えている深刻な問題とは、俺たちの所為……と言っても良い。それは防衛力の深刻な不足だ。キシリアの暗殺計画もシャリア・ブルが居なければ遂行されていたし、少なくないMSがあの時サイコガンダムによって叩き落とされた。
それにより、MS・パイロットと共に増強が必要だと判断した上層部は……民間から才能のある人材を発掘しようと躍起になっているのだ。キシリア派とも言えるここの市長は、ニュータイプの発掘に重きを置いているらしい。
「さぁ、早く行こっ?」
<分かってる、走ると危ないぞ?>
「うん、子供じゃないんだから大丈夫だよ!」
そう言って目の前のビルへと駆けていくドゥー、本当に健康に育ってくれてお父さんは嬉しいよ……そして、向かっていった建物の前の看板には『シミュレーション第二会場』というポスターが張られていた。そう、パイロット集めの集大成とも言えるのがこのパイロットテストシミュレーション、なんと格落ちではあるものの……サイコミュまで備え付けられていると言う代物なのだ。
これにより搭乗者のパイロット、NT適性を測り……見込みがあるものは好待遇で迎えてもらうことが出来るらしい。勿論、今更ドゥーを軍人にさせるつもりは無いのでサイコミュは起動させないように何度も言いつけてはある。
更に、仮想敵として用意されたサイコガンダムは自機操作が出来る。そう聞いたドゥーはここ一月で1番のやる気を見せた。何故か
受付を済ませ、簡単な質問を済ませたドゥーは待ちきれないという様子で椅子に座って足を振っている。辺りを見回すと彼女と同じくらいの年齢の子供が家族連れで見えるのは、今が大体夏休みに当たる期間だからだろうか。子供が一人浮いているような事態にならなくて良かった。
やはり機材が高価なだけあって、警備の数もそれなりに多いらしい。そんな事を思っているとその警備の内の一人がこちらに向かって走ってくるのが見える。一体何かトラブルでも……?
「なっ、ドゥー……お前なのか!?」
どうやら見知った顔だったかららしい、褐色の肌に金髪の髪が似合う青年は……今は警備服にそでを通していた。俺達に何か不審な点があると思われていたわけじゃなくて良かった、特にこの現地の身分証は偽造したものだし。それにしても彼が生きているとは思ってはいたが、こんな所で出会うとはな……
「あれ、ゲーツじゃん! やっぱり生きてたんだね」
「サイコガンダムは爆発したはずじゃ……まさかそっくりのクローン? これだからムラサメ研は……!」
錯乱した様子のゲーツ君だが、まぁ無理もない。他から見れば死んだようにみせるための自爆だったのだから、万が一にでも生きていると察せられる方が事態としては不味い。それこそ軍警とあの灰色の幽霊すら騙し切らなくてはいけなかったのだから。
「判断が遅いのは相変わらずだね、ゲーツ」
「おっ、お前本当にドゥーなのか……!?」
何時もの様子の軽口の応酬と交信により、ようやくドゥーが本物だと理解したらしい。こっちもまさかゲーツ君がこんな所で警備員をやっているとは思ってもいなかったわけだが。
「サイコガンダムの件は……すまない、俺にもっと力があれば……」
「過ぎた事は良いよ、皆こうして今を生きてるんだから」
<久しぶりだなゲーツ君>
「なっ、えっ……はぁっ!?」
「ゲーツうるさい」
「ああ、すまない……えっ、俺が悪いのか?」
百点満点のリアクションをありがとうゲーツ君。まあ
積もる話もあるだろうという事で、この仕事が終わった後に何処かご飯でも行くことになった俺達2人と1体だったが、今回ここに来た彼女の目標はあくまでパイロットシミュレーター……強いて言えばサイコガンダムだ。
「俺は、今はここで会場の案内と警備の仕事をやってるんだ」
「へぇ、早く案内してよ。久しぶりにサイコガンダムと一つになれるんだぁ……」
それが待ちきれないらしいドゥーは、ゲーツ君に対して早く案内するように急かしている。だけどいくら急かしても、順番が回ってこないと乗れるわけじゃないんだぞ?
<良いか、サイコミュは起動するなよ?>
「りょーかい! 分かってるよ!」
そんな俺達を見て、申し訳なさそうに口を開いたゲーツ君が告げたのは……彼女にとって、あまりにも残酷な事実だった。
「申し訳ない、水を差すようで悪いが……精密機器が多いからハロの持ち込みは出来ないんだ」
「………………えっ?」
正しく絶望の二文字といった顔で固まったまま、ドゥーはその場に立ち尽くしていた。今彼女は、俺と離れるかサイコガンダムを諦めるかの……二択を迫られていた。またここでも彼女に選択を強いるなんて、運命って奴は何て残酷なんだろう……
VR用の機材に乗ると同時に、リュックから俺を出したドゥーはハロの身体を膝の上に乗せ───私服のセーターの中に仕舞い込んだ。いくら監視カメラがあって離れたくないからって、これは流石に健全な大学生だった俺からすれば厳しいものがある。
「あなたと一つになってる……初めからこうしておけばよかったんだね」
<なんか、自尊心とかそういうものが無くなっていくから止めてくれ……>
危ない扉を開きかけているドゥーを必死に説得しているが、何処か恍惚とした表情で操縦用のコントローラーを握っている彼女に言葉が届いているのかは怪しい所だった。頼むから変な趣味に走らないでくれよと、俺には祈る事しか出来ない。
実際の期待のセレクト画面には確かにサイコガンダムの姿があった。まあ見た目だけは似せてあるが内部構造は……あれ、しっかりと武装も用意してある。機体は爆発させたものの、映像は残っていただろうからそこから研究したのかな。上はどうやら本当にサイコガンダムと渡り合える人材を探しているらしい。
ステージはこのイズマ・コロニーをモチーフに作りこまれていて、実際と似たような市街地戦を体験できるらしい。そんな訳で実際にドゥーの駆るサイコガンダムが───動き出す。
「あはっ、すっごく良い……サイコガンダムに包まれていて、あなたを包んでいるなんて……」
<どっ、ドゥーさんや?>
敵機体は何体か選べるものの、その最高難易度に位置していたのはサイコガンダムだった。それにしてもよく実装出来たなと思う、民間人に被害が出ていればこうはならなかったのではないだろうか。
敵機のサイコガンダムとこちらの駆るサイコガンダム、スペックが同じならばパイロットの質が勝敗を分ける。それなら、読み取った程度のAIに俺達が負ける道理は───無かった。それは良いのだが、問題は……敵も味方も膝の上もサイコガンダムという状況に、この子が『待て』を出来る訳が無かったという事だ。
「あはっ、キラキラが───来る!」
<サイコミュは使うなよって約束したよなぁ!?>
何時か見た淡い光がサイコミュから放たれている、それもこんな市街地のど真ん中で。現場は騒然としているし、ゲーツ君も心配してこちらに走ってくるのが見える。ああ、でもそこまで大きな規模じゃなさそうで良か……良くないが?
「何をやってるんだドゥー!?早くコックピットから離れ───!」
こっ、こんな倒錯的な感情でゼクノヴァが起きるなんて思ってもいなかった……!
そんなのまるでテク───
世界がキラキラに包まれていく中で、そんな事を思った。
大きな音と供に、何処かの地面へと投げ出された俺たち。暗くて辺りの様子は見えないが、地面は冷たくすべすべとしていた。
「ドゥー無事か?ここは一体……」
「うーん、暗くてよくわからないけどゲーツでしょ? 重いんだけど……」
「一体何の話だ!? 俺は何もしてないぞ!」
物音を聞きつけてやって来たのだろう、誰かが部屋の明かりをつけたようで視界が晴れる。そこに広がっていたのはコンクリートの床と困惑した顔のおじさん、そして見覚えのあるロゴだった。それはとてもとても……見覚えのあるロゴ。
「こっ、子供!? 何処から入って来たんだ……!?」
「入って来た? 違うよ、僕たちはえっと───てくのッ!?」
不味い不味い、思想が漏れてたのはもう今更だけど。こんな小さな子にそんな事を言教えていると勘違いされれば警察行きは免れない……! 慌ててドゥーの
「てっ、
「おっ、おじさんじゃ判断できないから……上の人呼んでくるね?」
明らかに困惑した様子のおじさんを見送って、ようやく一息つく。人が3人侵入しただけなら不審者だと思うけど、こんな大きなVRマシン毎転移して来たと言うのだから……あながち嘘とも言い切れない……3人?
「へぇ、そういう顔してたんだ」
「なっ、誰だお前……!?」
「俺か? 俺は───」
「───サイコガンダムだよ」
時はキリスト世紀
極東の島国でその日、運命の歯車は───確かに動き出した。
あれからあの会社の偉い人やこの国の偉い人がやってきたり、なんか偉そうな人達が沢山やって来て一悶着あったものの……俺達の正体は秘密裏に国が面倒を見てくれるらしい。流石は日本だ、俺の戸籍があったのとVRの機材がこの時代でありえないモノだったのも大きかったのだろう。
ただし、絶対にメディア露出や住んでいた県の近くには近づくなとお達しを受けていた。理由は簡単で、この時代にまだ……5年前の俺がいるからだ。タイムパラドックスとかそう言うのは怖いよね……
何か影響を与えた瞬間に俺が存在しなくなりそうで怖いが、この世界に結果として『
そんな訳で俺たちは今、3人で一緒に一軒家で生活している。文化の違いを感じることも多いが、それでも子供が勉学に専念できる世界のなんと素晴らしい事だろうか……
「ボクもエクバ?って奴やってみたいな。ねっ、良いでしょ?」
「俺は少し料理用品を見てくる、ドゥーを頼んだぞ」
「しょうがないなぁ、少しだけだぞ?」
買い物に来ていた俺達だったけど、帰りのゲームセンターに置いてあった懐かしい機体を見つけてドゥーが立ち止まった。
やはり、MA乗りとしてかは分からないが、サイコガンダムには強い執着があるみたいだ。百円硬貨を何枚か渡して、ドゥーの後ろで見守る事にする。
「あっちょっと待て、アカウント名は本名で登録しちゃダメだぞ」
「えー? じゃあナナミの名前にするね?」
「そっ、それも良くないなぁ……!?」
まぁ、名前が『七』に『海』で『ななみ』だからって、
「サイコガンダム……は」
「使われてるだろうなぁ」
やっぱり人気のある機体だしね。
「思いつかないなぁ……」
「最近印象に残ったこととかどうだ?」
「あっ、シャリア・ブルは
「なっ、長いし汚い。もう少し短くした方が良いぞ?」
意外と負けず嫌いなドゥーをなだめつつ別の名前を促す。まあ俺もあのままやってれば勝ってたと思うけどね?俺達サイコガンダムは最強だったんだから。
「短く……シャリア……ドッグ……じゃあ、ブル・ドッグなんてのはどう?」
「───ッ!? あっ、あぁ……良い名前なんじゃないか」
あぁ、何となく疑問が腑に落ちた気がするよ。
「そう? あなたがそう言うのなら、きっと……そうなんだろうね」
始まりの日、あの輝きに憧れたのは当たり前だったのかもしれない。
「キラキラ出来ると良いなぁ……」
「きっと出来るさ、俺が保証するよ」
あれはきっと、
この展開、何人かは予測されていた方いましたね……ニュータイプだ……
もう少しだけ日常を描く予定なので少し待っててください
大分毛色が違うけど、今日新作を投稿したので興味があればそちらも是非是非。
(大分人を選びそうですが)
https://syosetu.org/novel/375930/
ゲーツ君がどうなったか気になるという声も多かったので、後日談とか設定集とか
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いる
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いらない
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どっちでもいい
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閲覧用