仮面ライダーガヴに改造されたビッキーが行くシンフォギア 作:バースデー
仮面ライダーガヴおもしれ〜
……二次創作作ろ!(決意)
その結果がこれです。
――この歌を、あなたに。
その夜、私は、夢の中にいるような時間を過ごしていた。
ツヴァイウィングのライブ。
天羽奏さんと風鳴翼さんが繰り出す歌声が、眩しい光と轟く音に包まれて、会場全体を震わせる。
私は、観客の一人としてその場にいた。
何千、何万という人たちの中で、ただ一人のように、私は歌に心を奪われていた。
胸が熱くなる。
心が震える。
――ああ、やっぱり私は、歌が好きだ。
歌が誰かの心を動かすその瞬間が、たまらなく好きだった。
けれど。
――あの日、私は死んだ。
突然、ステージが爆音と共に崩れ落ちた。
悲鳴。逃げ惑う人々。
そこに現れたのは、光の粒子に包まれた異形の影――ノイズ。
ただ触れるだけで、人を死に追いやる怪物。
私は知らない誰かの手を掴み、とにかく必死に走った。
生きなきゃ、逃げなきゃ。そう思っていた。
でも――。
「っ!」
爆風に弾き飛ばされて、地面に転がった。
立ち上がったその瞬間、目に映ったのは、ノイズに追われる人たちの姿だった。
――あれは、さっき手を繋いでいた子かもしれない。
思考よりも早く、私の体は動いていた。
「……守らなきゃ!」
その一心で、私は駆け出した。
ただの女子中学生の私が、無力なことなんて、分かっていたのに。
――そして、胸に鋭い衝撃が走った。
何かが、私の身体を貫いた。
呼吸が止まる。世界がぐらりと揺れる。
その中で、どこか遠くから声が聞こえた。
『……生きるのを諦めるな!』
『いやだ、やだよ奏! かなでえっ!』
『思いっきり歌うと、……が……んだ』
断片的な声が、遠のいていく。
目の前が、黒く染まっていく。
「あ……れ……私……死ぬの……?」
意識は、音もなく深い闇の底へと落ちていった――。
*
「融合症例に、このデータを?」
「うん。多分、役に立つよ。ご主人様が残した“ガウ”のデータ、まだ統合が不完全なんでしょ?
だったら、もっと実験して、精度を上げればいい。
ご主人様も、そうして研究を積み上げてたんだから」
*
〜二年後〜
「うて…撃てェ‼」
迫り来る極彩色の〝災害〟を前に、男達―――特異災害対策機動部一課の構成員達が銃の引き金を引く。
一発当てられれば、確実に葬る事ができる凶器の雨あられ。
だが、弾丸は当たらない。
「ーーーーー」
“ノイズ”――それは、古くから世界に現れては、人類を幾度となく蹂躙してきた災厄の象徴。
その姿は人型から獣やブドウの様な物、ビルにすらも匹敵するほどまでに巨大な物まで様々である。
そして、それらの個体全てに共通する、一つの事実があった。
奴らは異なる位相に存在し、こちら側に現れない限り触れる事も叶わず、そして一度でも人間に触れさえすれば、その人間を炭化させ、殺してしまう。
正に、次元の違う“天災”と言うに相応しい存在。
通常の兵器であれば、容赦なく蹂躙されその後には死体も残らない。
人間であれば関わる事すら叶わない程の存在。
だが、男達には逃げると言う選択肢は無い。
もし仮に、この怪物を通してしまったならば、その毒牙は街とその住民へと振るわれる。
そんな事は許されない。
故に、男達は必死に抵抗を続けていた。
「クソッ!ダメだ!」
隊員の一人が根を上げる。
これまでに雨あられと打ち込み続けていた弾丸は、ノイズの足取りに何の影響も与えていない。
災害が手を伸ばし、男達が死を覚悟してその瞳を瞑った、正にその刹那。
PoppinGummy!juicy!
――その瞬間、世界が震えた。
鉄と雷がぶつかり合ったような轟音と共に、ノイズの腕が吹き飛んだ。
灰色の街に弾ける残骸。目を見張る隊員たちの視線の先に、それは立っていた。
その姿は人型。しかし、そのフォルムは人間のそれとはあまりにも異質だった。
紫黒の装甲に包まれた身体。
鋭く光る黄色の双眸。
耳のように尖った頭部の突起と、獣脚のような脚部がオオカミを思わせる。
その姿はまさに――。
「化け物……」
誰かが呟いた。
それは正しかった。色彩こそ鮮やかでも、その姿は凶悪で、あまりにも禍々しい。
まるで、災厄に抗うために造られた別の災厄。
だが、その“化け物”はその声に反応を返すこともなく、ただ無言でノイズへと歩み寄る。
野獣のように低く腰を落とし、身構え、獲物を狙う。
理性も感情も、すべてはその仮面の奥に隠されていた。
――大地が砕けた。
紫の装甲が地面を蹴る。
その瞬間、舗装が爆ぜ、石片が宙を舞う。
怪物は四メートル以上先のノイズへ、まるで矢のように一直線に飛び込んだ。
振り抜かれた拳が、風を裂く。
次の瞬間、ノイズは何の抵抗もなく、塵と光の粒へと砕け散った。
一撃。
それだけで、絶対的な災害を無に帰す。
なぜノイズが倒されたのか。
どうして、この“化け物”がノイズに触れられるのか。
――隊員たちの脳裏に、当然の疑問が浮かぶ。
だが、それを説明してくれる者など、どこにもいなかった。
ノイズに“意思”というものは存在しない。
だが、たった一撃で同胞を粉砕されたその光景が、彼らの行動に影響を与えたのか。
それとも、単なる偶然か――。
ノイズたちは、まるで統率された群れのように、次々と“それ”へ波状攻撃を仕掛けていく。
だが――。
「…………。」
怪物は無言のまま、静かに膝を落とした。
極限まで無駄を削ぎ落とした、微細な予備動作。
そして、跳ねた。
爆発的な跳躍――だがその動きは柔らかく、しなやかだった。
あたかもその装甲が金属ではなく、弾力を備えた特殊素材で構成されているかのように。
それに気づいた者は、ほとんどいなかった。
空中で身体を捻る。
旋回するような動きで、怪物はノイズたちの突進をまるで“読む”かのように避けていく。
その姿はまるで、殺意の奔流を舞うように躱す、影の狼。
怪物は最も後方にいたノイズを蹴り飛ばし、距離を取った。
その腰――異形のベルトの“口”が、低く光を灯す。
次の瞬間、赤と黒に彩られた、巨大な大剣がそこから吐き出されるように出現した。
無機質で機械的。まるで兵器のようなその剣を、怪物は静かに手に取る。
そして――再び、躍るようにノイズへと突っ込んだ。
大地を蹴り、風を裂く。
振るわれる剣は、赤い残光を引きながら空を切り、ノイズを次々と塵へと還す。
ノイズは、基本的に鈍足だ。
液状化して高速で動く個体も存在するが、それさえも怪物の速度と反応には敵わない。
戦場は完全に、あの“化け物”の支配下にあった。
そして、ノイズが動きを変える。
一体のノイズが不気味な唸りをあげ、隣の個体へと絡みつく。
粘性を帯びた身体が次々と他のノイズを飲み込むと、瞬く間にその姿を変えていく。
黒い肉塊が脈動し、膨張する。
無数の触手を備えた、巨大な“合成個体”が地鳴りを立てながら完成した。
ノイズが、勢いよくその異形の身体を叩きつけた。
怪物は大剣を構え、防御の構えを取る――が、誰の目にも明らかだった。
あれでは、防ぎきれない。
そして、ノイズの身体が怪物に触れた。
ムニュッ。
それは、単なる擬音ではなかった。
似た音が鳴った。だが、そこで起きたのはもっと異常な現象だった。
怪物の装甲が破裂する。
そこから弾け飛んだのは、まるで小型のグミのような、弾力のある半透明の粒子。
それらは空中に拡散しながら、ノイズの衝撃を受け止め――殺した。
まるで衝撃吸収材のように、音も衝撃もその粒子が飲み込み、分散していく。
その瞬間。
まるで誰かのゲーム画面に、イベントが発生したかのように。
空中に、紫色に彩られた「ムニュ」の文字が浮かび上がった。
その瞬間、怪物が再び跳躍する。
そして、さらにその文字を足場に――もう一段、空へと飛び上がった。
ガチャリ、と音が鳴る。
怪物が手に持った大剣、その柄にあるボタン――《ブレイポン》が押し込まれる。
途端に、ロック調の激しい音楽が鳴り響き、赤いエネルギーが刀身に奔る。
「――ハアッ!」
空中から響くその声は、あまりにも少女のものだった。
異形に似つかわしくない、透き通った、そしてどこか痛みを滲ませる――人の声。
赤く光る刀身を振り下ろす。
「ヤァぁぁああああッッ!!」
一閃。
凄まじい衝撃と共に、ノイズは真っ二つにされ――爆散した。
『Imyuteus amenohabakiri tron』
呆然と立ち尽くす自衛隊員たちの耳に、静かに、けれど確かに響き渡る別の声。
それは、奇跡を呼ぶ呪文――
青い光が駆け抜ける。
その軌跡を追うように、刃がノイズへと振るわれる。
姿を現したのは、一人の戦士。風鳴 翼。
特異災害対策機動部二課――ノイズに対抗するため、秘密裏に活動する部隊の一員であり、数少ないシンフォギア適合者でもある。
本来、ノイズが消えた今、戦いを続ける理由は無い。
だが――風鳴 翼にとって、それは関係のないことだった。
「貴様……なぜ、その手にガングニールを……!」
怒りと驚愕に震える声。
剣を構え、翼は目の前の“怪物”に斬りかかる。
「――ッ!」
怪物は無言のまま、大剣でその攻撃を受け止めた。
赤い大剣と、青い刃が交差する。
激しい火花が飛び、戦場に金属音が鳴り響く。
斬撃が何度も交差するたび、翼の瞳に宿るのは疑念と困惑。
――なぜ、ガングニールの波動を感じる。
ーーそれは、奏の力なのに
「アーマー・パージ」
低く、機械的な音声が発せられる。
次の瞬間、怪物の紫の装甲が弾け飛んだ。
爆ぜる光と破片が視界を覆い、翼は思わず反射的に目を閉じる。
――その一瞬の隙に。
怪物は後方へバックステップで距離を取り、再び沈黙したまま構えを取った。
その佇まいには、明らかに戦士としての“意志”が感じられる。
「ここまでです。」
それは――初めて怪物が発した、明確な“言葉”だった。
「なに……?」
驚愕する風鳴 翼の視線の中で、怪物は無言で腰の口状ユニットに、何かを装着する。
candy!
軽快な電子音とともに、風を切るような輝きが地面を走り抜けた。
その光の中から現れたのは、ピンクと水色に彩られた一台のバイク――それは、仮面の戦士にふさわしい、異様な存在感を放っていた。
「お前は……何者なんだ――!」
ビュウゥ……と戦場を切り裂くような強風が吹き荒れる。
舞い上がる砂煙の中で、怪物はバイクに跨がり、風の中にその姿を溶かすようにして去っていく。
ただ一人、呆然と立ち尽くす翼。
彼女の問いに、答えが返ってくることはなかった。
*
郊外の廃工場。
使われなくなった鉄骨の建物に、派手なエンジン音が響き渡る。
ブレーキが軋みを上げ、カラフルなボディのバイクが滑るように停止した。
そのシートに跨がっていた異形の戦士は、何も言わずにバイクから降り立つ。
装甲のブーツが、鉄の床を**コツ、コツ……**と静かに鳴らす。
誰にも見られない夜の帳の中、少女は仮面を外すように、無言で腰のユニットを操作する。
――カチ。
紫の装甲が霧のように消散し、その下から現れたのは、どこにでもいるような、一人の少女の姿だった。
けれど、その表情には年相応の輝きも、温かさもない。
「……今日も、ひとつ守れたってことにしとこうか」
どこか自嘲するような声が、廃墟に虚しく響く。
視線を落とし、彼女――立花 響は呟いた。
「私は……まだ、生きてる。
誰かを守るために。戦うために。」
拳を握る。指先に、かすかに残る戦いの余熱が残っていた。
だが、その瞳はもう、かつての少女であった頃のそれではない。
「だけど――私はもう、“普通の立花響”じゃない」
夜の闇が、少女を優しくも冷たく包み込んでいく。
その背中に灯るのは、希望か、それとも……呪いか。
少女は静かに背を向けたまま、月明かりの中に消えていった。
「……驚異的な力だ」
紫色の装甲に身を包んだ少女――いや、“怪物”の姿が、モニターに映し出されていた。
それを凝視しながら、赤いシャツの巨漢・風鳴弦十郎は思わず呟く。
複数の監視カメラや現場の映像から、辛うじて繋ぎ合わせた映像。その中で、少女は圧倒的な力を振るい、ノイズを殲滅していた。
「ただ強いだけじゃない……技術も経験も、戦闘能力も、すべてが桁外れだ」
隣で機器を操作していた、茶髪に眼鏡の研究者・櫻井了子も、腕を組んで画面を見つめる。
「シンフォギアに似ているけど、まったくの別物ね……謎の女の子。最近はこの子の話ばかり」
「なんとか接触できればいいんだがな」
「エージェントを何人も投入してるけど、成果はゼロ。接触どころか、名前すら分からないんだから」
その少女が初めて現れたのは、約一年前。
突如としてノイズの災害現場に姿を現し、圧倒的な戦闘力で敵を殲滅。そして、何も語らずに立ち去る――その繰り返し。
政府や二科が独自調査を進めるも、正体は依然として不明。
映像は荒く、顔さえはっきり映っていない。
「アプローチの仕方、変える必要があるかもね」
「そうだな……だが、どうするか」
「せめてもう少し、顔がわかればなぁ」
それでも、弦十郎と了子はあきらめなかった。
少女が何者で、どこから来たのか。そして、なぜ戦いに身を投じるのか。
真実を知ることが、新たな犠牲者を減らす鍵になると信じているからだ。
「あのちからは一体……」
弦十郎が漏らしたその言葉に、了子がふと視線を向ける。
モニターに映る少女に、熱っぽい眼差しを向けながら、不気味な笑みを浮かべた。
「さて……“あの男”が言っていた力、本当にどれほどのものか。確かめさせてもらいましょうか」
その声は弦十郎には届かない。
ただ二人は、仮面の怪物の姿に心を奪われたまま、沈黙の中に立ち尽くしていた。