学校内で定期的に行われているらしい集合テストの終わったあと。
のびのび過ごしている頃に、ボクはそれを見た……
ピピーっ、と大きな笛の音が鳴り響く。
その音に驚く人、無視する人、やり過ぎなくらいに反応する人……多種多様に分かれる中、ボクはやり遂げた感覚を噛み締めていた。
今日はテスト。
転入した時にやったのとは別の、小さい規模のものみたいだった。
それを迷うことなく全部の問題を埋める事ができて、達成感がかなりあった。
以前は一問一問にあんなに時間がかかったのに……勉強の力はすごい。
「今日のテストどうでしたか?」
「うーん、余裕でしたわね」
「細かいミスで点数を引かれることは悔しいです」
「そこは……もう自分を信じるしか」
「すべての問いを埋め切った後の時間あまりが退屈になりがちです」
一緒の教室でテストをやった子達がまばらに教室から出て行っていく。
こうして人が集まる時に実感するのは……やっぱり人がいっぱいいることかな。
向こうでは“マダム”の指令で全員集合する時くらいしか多いと思わないのに。
今いる教室以外の場所も、ぱんぱんに埋まっているんだからすごいよね。
それで、潜入中とはいえせっかく新しいところに来たからには同じ場所にいる生徒さんたちとも仲良くするべきなんだろうけど……
今、ボクはあんまり他の子たちとあんまり話さずにいた。
うん、別に尻込みしているとか怖いとかそういうのではないんだけど。
遠目から見ていると……ところどころトゲがあるような子もいて。
はばつ?がどうとか、私たちの方が上だ、とかなんとか……
……そういう姿見てるとなんだか、近づきにくいっていうか……
ともかく。
せっかくの機会があればなぁと思っていたのにその機会がくる気がしないの。
自分から声をかけようにも、いきなり話しかけるのも何か違うし。
仲良さげな集団の中に割って入るのも、意外と勇気がいるものだからね……
……友達になるなら、裏表とかない関係がいいっていうのは要求高すぎなのかな。
ボク自身、この学校から見たらとんでもない隠し事しているし。
でも、せっかく一緒にいて楽しい気持ちになるならそういうのとは無縁がいい。
その方が、のんびりできると思うから。
「ん、んぅ〜〜〜っっっ!!!」
……それにしても、テスト中の緊張感からか肩凝っちゃったなぁ。
体を思いっきり伸ばしたら体からポキって聞こえちゃった。
たまには体も動かさないと、あちこちから変な音が聞こえてしまいそう。
さて、今日も一日頑張った……向こうで飲み物買ってこようかな。
それにしても自動販売機ってすごいよね。
冷蔵庫の中においてるみたいに冷たいのもあれば、ホカホカになってるのもあったもんね。
今日はあったかいの気分だったから、そっちを。
ピッ、という軽快な音の後に、ゴトンという重ための音。
これにもすっかり慣れちゃった。最初は本当にびっくりしたからね……これも成長?
それじゃ、早速飲んで──
ヒソヒソ……ザワザワ……
……?
なんだか向こうが騒がしいような気がする……
テスト終わりの人たちが集まって何か話してたり……
「あ、あれは何ですの……?」
「何の意図があるか知りませんが、なんというはしたなさ……」
「しゅ、淑女としてあるまじき様ですわ……」
「そんな……あのような奇行が許されていいんですか……!?」
「これもう正実呼んだほうがよろしいのでなくって??」
耳に入ってくる言葉から感じ取れるものは……困惑、かなぁ。
変なものを見て反応に困っているっていうか、目の前のものが信じられないというか。
ともかくそんな感じ。
……ボクとしてはそんな集まる姿も遠目から見てたら奇妙に見えちゃうけど、それはボクがあんまりお外の世界に慣れていないからなのかなぁ?
……それにしても、トリニティの子達でさえ困惑するものって何だろう。
少し気になったボクは、その人混みの方へ向かって遠目から“あれ”を見ようと近づく。
「……んん……??????」
なにあれ?
最初に思ったのはそれ以外なかった。
だって……
「うふふ……♡」
あんなに堂々とした、とんでもない薄着姿の人なんて初めて見るんだし……
すごい、あの服……服?だよね?……は布一枚で出来てて、その下は素肌だろうし……
あんなにうすーい生地じゃ銃弾を少し掠めただけで破けてしまいそう。
……寒くないのかなぁ?
向こうじゃ夜は冷えるし、布ないと眠りにくいから配給装備が分厚め……
いや、ここと向こうじゃ全然違うけどそれでもあんな格好してるの見ると、なんだかブルってこっちがなっちゃう。
一体、どういう気持ちであんな……??
ううむ、気になる。
聞いてみたくなってきた、あの姿にどんな意味があってなんでそうしたいと思ったのか……
遠巻きに見ている人たちがどうして近づかないのかも。
ええと、こっちからなら人も少ないから……
ザワ……ッ‼︎
「えっ……あ、あの方は……なにを……」
「あっ、あぶな……い、のかしら……?」
「止めた方がいいのでは……で、ですが」
「あなたあれに近づく勇気あります?私にはありませんわ」
「と、とにかく様子見……それが安定です……!」
なんであの人に近づいてるだけで周りのみんなは息を呑んでいるんだろう?
……そんなに変?こんなことするのが……
こんなの向こうで暴れる子を鎮めるのに比べたらなんてことないのになぁ。
「……あら……?」
あ、薄着の人もこっちに気づいたみたい。
……近づいたのはいいけど、独特の空気になってきた。
きたはいいけど、いざこうやって向き合うと緊張しちゃうなぁ……
「えーと……」
「ふふ……私に何か、ご用でしょうか……?」
その人は、何か意味ありげな微笑みを浮かべたままこっちをじーっと見ている。
……いままでお話してきた中でも相応に異質な感じで、どうするべきか悩んじゃう。
何かを期待しているようにも、特に何にも考えてないようにも見えるその視線は……初めて感じるものだったから。
「こ、こんにちは」
「こんにちは。もしかして、私に声をかけましたか?」
「あ、はい……」
言葉に迷っちゃって、無難に挨拶から切り出す。
向こうの様子は全く変わらない、変わらず微笑んでる。
……ただ、なんとなーくではあるけど……こっちを拒んでいるような感じがするのはなんでだろう?
わからないけど、そんな感じがしている……たぶん……
「その……あなたはなにをしてるのか、気になって……」
……あれこれ悩むより前に聞いてみる。
もとより誰もが気になっていることだろうし、ボクも気になる。
どういう気持ちでこんな姿しているんだろうって……それは聞かなきゃわからないと思う。
ただ……
「なにを、ですか?
うふふ……私はただ『ありのまま』を見てほしいなって思いまして。あなたもそう思いませんか?こうやって『全て』を曝け出して……表現しているんです……」
「……ん、ん〜……???」
「あら、せっかくですし……あなたもいかがですか?ここで一緒に……そうすれば、皆さんのを『感じられます』よ……?」
「……ううん……??????」
聞いてわかるかまでは、別問題……
少なくともボクにはまーったくわからない……こう、どんな気持ちで言っているのか……
本当の気持ちなのか、それとも自分の気持ちとは別のことを言っているのか……
イマイチ、伝わってこない……だから、思いっきり首を傾げちゃった。
……ただ、こうして向き合っていると……腕が僅かに震えているのに気がついた。
やっぱり、こんな薄着だから、寒いのかな。このままじゃ体を悪くしちゃいそう……
とは言っても……できること、あるかな?
向こうじゃ寒い時は上着をたくさん持ってきて、被ればすっごくあったかくなる。
あれがあれば、どんな寒さでも凌げるけど、今は持ってない。
そもそも、拠点に隠してるアリウスの上着なんて持ってこれないし……ボクが潜入してるスパイってことが、バレちゃう……
……あ、でも……
確か、お腹があったかくなれば自然と体はあったかくなるって話を聞いたような気がする。
それなら、この手に持ってるこれがよさそうかな……
「えっと……その格好だと、お腹冷やしちゃうよ……?」
「??……いえ、私はこのままでも大丈夫ですが」
「……ん。これ、あげる……」
「???」
さっき自動販売機で買ったあったかい飲み物。
ラベルにはホットレモンって書いてるのに、今気がついた。
あったかいものが飲みたくてその文字だけ見てたから、どんなものなのか意識してなかったけど。
レモン……たしか、酸っぱいものだった気がする。そして、体にいいって。
どこがどういいのかはまだ知らないけど、それよりもあったかいのが今はいい。
「あ、あら?これは……」
「ホットレモン。あったかいよ……」
「あら、あら……ど、どうも……ありがとうございます……???」
この人は、さっきまでの表情がなくなって。
かわりに何が何だかよくわからない、というような……戸惑う様子を見せてる。
さっきと違って、気持ちがストレートに伝わって……とんでもなくわかりやすい。
ずっと異質な微笑みを見せてたのが嘘みたいだけど……どうしたんだろう?
……ホットレモンがそんなに変だったのかなぁ?
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薄着の少女……浦和ハナコは、現状に頭が混乱しまくっていた。
先に説明するが、浦和ハナコは超がつくほどの天才である。
才色兼備にして、聡明叡智……トリニティ総合学園の中でも並び立つものはいないほどの驚異的な頭脳と、才能。
その気になればこの学園全てを支配してなお有り余るほどの……怪物と評するべき英智に溢れた少女。
それが彼女、浦和ハナコだ。
しかし、浦和ハナコという天才は、その感性まで常人を逸脱しているわけではなかった。
お嬢様が集まる場所では、どろどろとした暗闘が水面下で何度も起こり、
気に入らないものの排除のために、薄汚れた所業に手を染めるものも出る。
いくつもの学校が集まった故に形成される“派閥”の争い。
自分たちこそが頂点に立つべき、という傲慢さに溢れた思想など……
トリニティ総合学園という華麗な箱の裏側……『闇』を何度も直視していた彼女は……端的に言えば、嫌気がさしていたのである。
誰も彼もが自分のことをただの駒として見て、その才能しか求められていない……
まるで道具のように扱われる未来を想起し、そうなりたくないと奥底から思っている。
だから、考えた。
そんな扱いをされないためにどうすればいいのか。
出た答えは単純明快。
誰もが自分を馬鹿にするような視線を向けるようになれば、利用など考えはしない。
むしろ見下されるレベルに自分の存在を貶めてしまえば、誰も近づくことなんてないだろう。
もしもその意図に気づけるようなら、その人になら手伝ってあげてもいい……
山のように降り積もった失望と、ほんのちょっぴりの希望を胸に。
彼女は盛大にバカをやることにした。
それが、現状。
トリニティ総合学園の生徒が集まる中で、肌着レベルの格好でうろついていたら。
彼女はリエルと出会ったわけなのである。
ちなみに、リエルが薄着と思っていたものの正体は学校指定の水着である。
水着を見たことのない彼女が、ただ薄着だと思っていただけの事だ。
さて、話を戻して。
今の浦和ハナコは、とても戸惑っていた。
というのも……
(ほ、ホットレモン??
それに。この子の表情は、裏表も何もない??
た、ただの善意でこんなことを、一体どうして?!?)
優しくされると思っていなかったからだ。
もう一度言うが、彼女は盛大にバカにされるためにこんなことをしている。
その目論見は成功し、遠巻きに見ているトリニティの生徒たちは全員が全員ドン引きしているのだ。
そんな中、なんのこともなく普通に接近して。
わざわざ誤解させてドン引きさせるための、意味深なセリフも意に介さず。
あろうことか、困っている人に手を差し伸べるように自分のものを差し出した。
今までの経験から、若干擦れてしまった彼女の精神に、優しさは刺激が強すぎたのである。
善意には裏がある、その根底が覆されたような気持ちになる。
「あ、あら?これは……」
「ホットレモン。あったかいよ……」
「あら、あら……ど、どうも……ありがとうございます……???」
お礼なんて言う気もなかったのについ口に出てしまう。
なんだろう、この気持ち……そんなことを思っていたら。
「それじゃ、ボク行くね。あんまりお腹冷やしちゃ、ダメだよー……」
「へ??あ、その」
止める間もなく言ってしまった。
困惑が止まらず、さっきまでドン引きさせるために口走っていた言葉が全くでてこなかった。
「な、なんだったんでしょう」
「すごいものを見てしまった気がします……」
「い、いきましょうか……」
「ええ、いきましょう……」
「……うーん、釈然としませんが……」
彼女が去ったのを契機に、群衆が解散する。
残ったのは彼女一人、ある意味では望んだ結果そのものだが……
「……ひゃぁぁ……………」
なぜか。
浦和ハナコの胸の内には。
恥ずかしさだけが残っていた。
【浦和 ハナコ】
トリニティ総合学園の生徒。
凡人でありたかった天才。
だが、その才能はどれだけ愚者になろうとしても全く錆びつかない。
なおこの頃はまだ割り切ってないから、恥という感情は全然残ってる。
四馬(リエルの他に出てくるオリジナルな子たち)のお話、見たい?
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本編(リエル)優先でお願いします
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どちらかというと本編かな
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余裕あればで大丈夫です
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早く書いてよ!役目でしょ!!