アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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暗い、暗い迷宮を超えて光差す世界へと足を踏み出す。
目に見える全てが、初めてで、新しくて、輝いていて。
……ボクは、今までと全く違う世界にただ圧倒されてしまった。


とある少女と、登校初日 あとマンホール

トリニティ総合学園。

かつてこの場所にあったたくさんの学校達が絶え間なく続いた紛争の果てに行われた「第一回公会議」にて、一つになることを決めた集まり。

 

……みんなが、その会議こそボクたちが苦しみに堕ちる原因になったって、口にする。

今までボクもそう思うようにしていたけど……心のどこかでは、疑問に思っていた。

本当に、そうなのかな……って。

 

「そろそろ地下墓地(カタコンベ)を抜けるよ。結構歩いたけど、疲れてない?」

 

「……うん。大丈夫だよ……」

 

アズサさんはボクよりも大荷物が入ったリュックサックを背負って軽々と前を歩く。

あの大荷物、中身は聞いてないけど……アリウスからの支給品なのかな。

ボクは大したもの持って来れなかったけど……別に大切なものなんて持ってないし。

何より身軽な方が動きやすい、ってこともあると思うから……

 

「むこうが出口だ。……たぶん、すごく眩しいから気をつけて」

 

「……そんなに、かな?」

 

「ああ。もし目が痛いならガスマスクをつけるといいかも。

支給されたものに入っているはずだ。ある程度の光ならカットしてくれる。シュコー」

 

……いつの間にかまたつけてる……

そんなに気に入ったのかな。ボクも似合ってると思うけど……

 

「……えーっと、すごく目立っちゃうからはずそう?」

 

「……やっぱりだめか?似合っていると言ってくれたけど」

 

「それとこれは、別だよ……」

 

「そうか……」

 

素直に外してくれたけど、声から残念なのは伝わってくる。

潜入するなら目立っちゃいけないから、どれだけいいものだとしても任務中は外そうね……

 

「それで、ええと……トリニティ総合学園へは、出たらすぐなのかな……?」

 

「人目につかないところから出て、そこからまた少し歩く。

地下墓地(カタコンベ)の出入り口を目撃されないようにするための軽い手間だ。」

 

「……それも、そっか」

 

地下墓地(カタコンベ)……正直なところ、ボクはここ好きじゃない。

今でこそ、この地下迷宮をするすると進んできたけど、本来は歩いて抜けるなんてできるわけない。

時間が過ぎるほど変わり続ける無限の迷路、堅牢な守りにして、檻。

もしアズサさんと一緒にいなければ、前を見失って、永遠に彷徨ってしまいそうで……

 

「出るぞ」

 

そんな暗い考えを遮るようにアズサさんが先へ進んでいく。

光の差す表の世界への道を、恐れずに。

……出遅れてしまったような気持ちになって、急いで後を追いかける。

 

 

「……ん……!!」

 

 

……眩しい。

瞳の中に、まるで洪水みたいに輝きが押し寄せてつい身体がひるんでしまう。

それに釣られて身体が一瞬こわばってしまうけど、それはすぐにおさまる。

……次第に波が引いていったように、光に慣れた瞳をゆっくりとひらいた。

 

「……きれい」

 

素直な感想が、思ったことがそのまま口に出る。

青く澄んだ空と、光を遮らずなめらかに過ぎ去っていく雲。

ふと足元を見ると瓦礫と煤で汚れていない大地を踏みしめているのがわかる。

 

ここが、アリウスのお外。

トリニティ総合学校のある場所なんだと、すぐにのみこめた。

 

「ん……やっぱり、少し眩しいな。でも、問題ない。

それで、ええと……事前に協力者からもらった情報だと……ここから歩いて2、3分くらいいったらトリニティの生徒たちが使用する通学路に出るはずだ。」

 

「……いきなり、そんなところを通って大丈夫なの……?」

 

「下手にコソコソするより堂々と生徒として向かった方が怪しまれない、とサオリは言っていた。

協力者側からも転入手続きは全て終わっているから大丈夫、だとも聞いてる」

 

へー、そうなんだ……と思ってるボクは多分呑気な子なのかもしれない。

ともあれ、その方が問題ないならそうした方がいいんだろう、とすぐに納得する。

 

「ともあれ、だ。ここで立ち止まっていてもしょうがない。迅速に通学路まで行こう」

 

「……ゆっくりでいいような気もするけど……その方が、通学してるかんじ?が出るんじゃ……」

 

「そうだろうか?」

 

「……うん、きっと、そうだよ……」

 

 

---

 

 

「ごきげんよう」

「ええ、ごきげんよう」

 

「おはよー」

「うん、今日も天気いいねぇ」

 

……へいわだ。

行き交う生徒たちの雰囲気の違いで、淀んでいない空気で。

元々暮らしていた場所(アリウス)とあまりに違うことが伝わってくる。

 

気さくに声を掛け合って、同じ校舎へと向かっていく子たち。

ボロ切れじゃない、どこか物々しいような訓練着でもない、白い服……

あれが学校の服ってものなんだなぁ、綺麗だなぁ……あそこじゃ見られない景色に驚いちゃう。

 

……おっとっと……ずっと驚いてばっかりもいられないや。

さっそく、行動を始めないと……まずは……

 

「アズサさん……これからボクたちの行き先は…………あれ?」

 

到着後にやることを確認するためにアズサさんの方を向いたはずだった。

でも、そこには誰もいなくって……

……な、何の前触れもなくボク置いていかれちゃったの……??

 

「……ど、どこいったの??

あ、アズサさーん……?」

 

探しに行きたいけど、こんな初めて来たところをうろうろしてると迷子になっちゃう……

大きい声も出すの苦手だし、どうしようと途方に暮れてしまいそう……

 

 

ザワザワ……

 

 

「ん……?」

 

そう思ってたら、向こうから何か人の話し声が聞こえてくる。

 

「……あの子はこんな朝から一体なにをしているんでしょうか?」

「四つん這い?……なにもないところで、どうして??」

「というか、見かけない子ですね?」

 

……まさか、アズサさん……ここに来ていきなりなにかとんでもないことをやっているんじゃ……

今日が潜入一日目のはずなのに、なにをしているんだろう……??

……向こうに行って確認した方がいいのかな、でもそうするとボクまで……で、でも……

 

いや、やっぱりボク一人じゃ不安……すぐに声をかけて、やってる事を中断してもらわなくっちゃ……

 

……まず、深呼吸して落ち着こう……スー、ハー……

……よし、行こう……

 

 

「……あ、アズサさん……?いなくなったと思ったら……なにをしてるの……?」

 

「あ。……すまないリエル。放置してしまったな。今、緊急脱出用の経路確保をしているんだ。

もしもの時のため、リエルの安全も確保できるよう、ルート把握は欠かせない」

 

「そうなんだ……うん……ありがとう……」

 

アズサさんと比較して動きが素早いとはいえないボクを心配してくれてるのは伝わってくる……

その心遣いは、確かに嬉しい……うれしいけど……

もしもの時のためなのはわかるけど……今じゃなくてもいいよね……?

ボクからみて今のアズサさん、とても目立ってるよ……

 

「で、でも……周りにいっぱい人が集まってるよ……」

 

「?……どうして私の周りに人が集まるんだ?別に珍しいものがあるわけじゃないのに」

 

いや、多分アズサさんの行動自体が珍しいものなんじゃないかな……

そんな不思議そうにしてると余計に目立っちゃて───

 

 

「こ、こらーーーーーーっ!!!」

 

 

「わっ」

「ん、なんだ?」

 

突然こっちに向けて発したのであろう大きな声にびっくりしちゃう。

その声を出した子の方を向くと、ピンク色の髪と小さい翼が特徴的な、他の子達とは違う黒い制服の子が急ぎ足でボクたちめがけて走ってきていた。

 

「あら、正義実現委員会のお方ですわ」

「まぁ、大変です!もしツルギ様がいらしたらとんでもないことに……」

「いえ、一人のようですが……あの子はどなたでしょう?」

「さぁ……新人でしょうか……?」

「どなたかは存じませんが……正義実現委員会の生徒が来たなら任せてもいいでしょう」

 

黒い制服の子を見かけたことに安堵したような、そうとも言えないような空気を出しながら、

アズサさんの近くに集まっていた生徒さんたちが元の通学路の方へ戻っていく。

……結果的に言えば助かったけど……正義実現委員会……なんだか、やばそうな響き……

もしかして、新しい危険がやってきちゃったのかな……

 

「そこの二人、朝からこんなところで何やってるのー!?」

 

「……なんだ、相手は一人じゃないか。私なら余裕だな」

 

「あわわ……!いきなり戦ったりしたらまずいよ……!

ま、まずは、その……お話からでも、いいんじゃ……」

 

「ちょっと、こっちを無視しないのっ!!わっ、私の前で素行不良とか許さないから!!」

 

そこーふりょうって……アズサさんはともかくボクはそんなことするつもりもないのに……

というか、結局アズサさんがやってることってなんだろう?

脱出経路の確保になんで四つん這い……あ。

アズサさんが今触ってるフタのようなものって……

 

「なにをやっているって…… 私はこのマンホールがいいなと思っただけだ」

 

アズサさんがあっけからんと見せびらかせて答えた……

ま、マンホールって……たしか、お外の世界で地下に入るための穴に蓋するやつだったっけ……?

確かに、それを使って地下に退避するのは、いいかもしれないけど……

それって今やるべきことそれなの……絶対違うよね……??

 

「まっ、マン、ホール………!?」

 

そしてその言葉を聞いて走ってきたピンク色の髪の子の頬が赤くなっていってる……

一体何で??今の言葉って別段特別な意味なんてないんじゃ……

 

「この大きさがとてもいいな。

すっぽり入れそうな大きさだ。

こんなに、綺麗に整った穴はあまりみたことがない」

 

(おっ、大きさがとてもイイ!?!?

す、すっぽり入れられそう……!!?!?

そっ、それに整った綺麗な……………!!!???)

 

気にせずアズサさんが説明を続けて、どんどんピンクの子が真っ赤っかになっていく。

多分、アズサさんはこの穴が逃げるのに最適だと思ったからその良さを口にしてるだけだけど、

ボクにはよくわからない、別の誤解がどんどん加速していっている気がするのはなんでだろう……

 

と、とにかくお話しよう。

このままアズサさんに任せても、こう……ずっと変な方向に向かいそうな気がする……

 

「ね、ねぇ……い、いいかな……」

 

「へぇ……あ、ひぇっ………!?!?!?」

 

……なんでか驚かれた……

ボク、普通に声をかけただけのはずなのに……いったい、どうしちゃったんだろう……?

 

 

(おっ、おっおおおおっ、おっきいぃぃ………

からだがっ、いっぱいおっきいっ………!!!

はっ、ハスミ先輩…………よりはっ、ひくいけど……おおきいっ……

そっ、それにぃ……いろいろ……えっちだぁ………!!!

上を向いたら、おっおおっ……おむね、が…………しせんいっぱいにぃぃぃぃ…………!!!!)

 

 

……さっきとは比べ物にならないスピードでお肌のあちこちが真っ赤に染まっていってる……

それに、目が……こう、睨んでるような、どこかをじーっとみているような……

この子の中で一体なにが起こっているんだろう?

 

「ねぇ、どうしたの……?だ、だいじょうぶ……?」

 

「ぴ、ひ、えぇぇ!!?

だっ、だだだっ、だっ、だめぇぇぇぇ!!!

えっち、えっちぃ!!しっ、しけぇぇぇぇぇーーーーーーーーー!!!!」

 

 

……??????

えっ、えっち……?

どうしよう、何を言ってるかわからない……えっちってなに?何かの合図……?

顔もすっごくあかくなって……もしかして……暑くて混乱しちゃってるのかな……??

 

「ひぃ、ひぃ!!だめなのぉ!!えっちなのはだめぇぇぇぇ!!!」

 

ああ、もう目を回して……めちゃくちゃになってる……

とにかく、このままじゃ通学どころじゃない……

時間がかかってもいいから、どうにかして落ち着かせよう……ゆっくりと……




アズサ
「この大きさが(逃げるのに)とてもいいな。
(リエルの体の大きさでも)すっぽり入れそうな大きさだ。
(アリウスでは穴掘りの道具はスコップになるから)こんなに、綺麗に整った穴はあまりみたことがない」
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