アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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お腹いっぱいの幸せに包まれて眠ったあと、
ボクの方にまた接触の話が舞い降りてきた。
……でも、前に聞いた時とアズサさんの様子が違うのはなんでだろう。


とある少女と、アリウスの姫 ふたたび

少し前。

リエルがミラクル5000獲得のために四苦八苦している頃……

 

以前、接触の場として指定された場所に佇む人影が一つ。

瓦礫の上に腰掛け、側につけることを義務付けられた仮面を置き、割れた窓から空を見る。

 

「………………」

 

言葉も、音もない空間で一人。

アリウスの姫は物思いに耽る。

その瞳の中には、強い意志が宿っているように見えることは、他の誰にも知りようのないことだ。

 

 

---

 

 

「むにゃ……」

 

目をこすりながらベッドの上で目覚める。

時計を見たらなんだか変な時間……起きるには早いし、寝るには中途半端……

というか頭がなんだかふわふわしてて、気だるさが強いなぁ……

 

ケーキの余韻のせいかなぁ……本当に、すごかったからなぁ……

 

 

「あ、起きた」

 

「ひょえ……?」

 

 

隣から突然声が聞こえて、なんだか気の抜けた声が出ちゃった。

内心驚いたまま振り返ると、アズサさんが同じベッドの上で腰掛けていた。

 

「ん、あ、なにかあったの……ごめん、ボクねてたみたいで」

 

「いや、それはいいんだ……

急ぎの話じゃないし、のんびりしてたから……」

 

「へ?そんなにのんびり……」

 

……してたね。

ケーキ食べてぐぅぐぅ寝るなんてのんびり以外のなんでもないや。

ちょっと変な気持ち……。

 

 

「……ん、んんっ。

で、今大丈夫そう?頭はしっかり起きてる?」

 

「うん、それは問題ないよ。それで、どうしたの?」

 

「アリウスから、接触の話。明日、リエル単独で行って欲しいと」

 

 

ん、単独?

今までも、ボクとアズサさんの接触に関しては個別だったはずなんだけど……

 

 

「どうして今回はボクだけって指定を?」

 

「さぁ……でも、私は今回の接触はナシだと聞いている」

 

「ふぅん」

 

 

あんまり意味はわかんないけど、そういうことならそう動くべきだよね。

わざわざアズサさんにそう指示するのも奇妙だけど、やることは変わんないし。

 

 

「わかった。行ってる間アズサさんはどうするの?」

 

「待機しておく。そろそろ、装備の整備をしておきたかったし」

 

「……ん……」

 

 

装備の整備……あぁ〜……

そういえばボクこっちにきてから銃ほとんど触ってないじゃん……

整備なんてせずにほったらかしだし……これは流石にダメだよね。

 

ボクも戻ったら、自分のを整備しよう。

保健室の中でも整備くらいしかしてなかったけど……うーん、やり方忘れてないよね?

使うことないけど、それはそれをおろそかにする理由にはできないしなぁ。

 

 

 

「何か考え事?」

 

「ん、いや。なんでもないよー。

えーと、それで会う場所っていつものところでいいの?」

 

「そこで大丈夫らしい。最も、隠密性の高い場所を選んでいるからそうそう変わらないと思う」

 

「それもそっか」

 

 

元々その辺りは向こうのほうもとっても考えてるはずだしそうそうバレないよね。

黒い制服の子達もあの辺りには来ないし、普通の生徒たちも見かけたことはない。

行く時に見つからないようにさえ気をつければいくらでも会える……かも。

 

サオリさんはこういう時『絶対はないから気を配るんだ』って言ってたっけ?

訓練で聞いた話は時折忘れちゃうから、時折思い出さないと……

 

 

「それで、いつ頃に行けばいいの?」

 

「明日……いや、もう今日か。夜中の20時ごろだよ」

 

「はーい」

 

接触はいつも夜中だ。

その方が危険も少ないし、帰りが遅くなっても今使ってる建物は自力で帰ってくれば自分たちでお部屋の鍵も開けられるから、大丈夫。

 

それにしても、明日の夜中に来る子……

ちょっと、その子に悪いことをしちゃった気がして、モヤっとしちゃう。

ミラクル5000、分けられないのが……でも、食べ尽くしちゃったことに後悔がないのがなぁ。

 

ボクはちょっぴり、悪い子になっちゃったのかもしれない……

 

 

---

 

 

そうしてまた一眠り、朝日が昇っておはよう時間。

ベッドから出て、身支度をして……今ボクはスーパーの前にいます。

 

“マダム”のいうことにはもう従えないけど、ボクはみんなのことが大事だ。

やったことはみんなにとって裏切りかもしれないけど、だからと言って物集めと仕送りはやめられそうにないや。

だって、みんなだって美味しいものを食べたいし、お外のこと知りたいはずだから。

 

以前は結構お菓子とかそういうの買ったけど、ここには保存の効くものもたくさんあるって聞いた。

ボクが持って行ける量には限りがあるけど、そういうものだったら何回に分けて持っていくのも大丈夫そうかな。

えーと、どのあたりにあるんだろう。ちょっと探さないと……。

 

 

ちょっとあちこち回ったらそれらしいところが見つかった。

前はお菓子中心であんまり見て回ってなかったけど、こうして改めて来てみればたくさん種類あるね。

お肉、お魚、甘い果物に、お米なんてものもある。

 

それらがずらりと並んだ棚の反対には、レトルト食品って物がいっぱいある。

なんでもお湯であっためたり、お椀の中に入れてお湯を注いだりするだけで食べられるんだって。

他にもレンジ……寮の調理室やお部屋にあった四角い機械を使ってあっためることも。

食べ物ひとつでこれだけ便利になってるなんてお外すごすぎるよ〜……

 

特に保存の効くものの中でも、お椀を用意しなくても入れもの自体がお椀の代わりになってるカップ麺なんて、とんでもない代物だ。

軽くて持ち運びやすいし、種類も豊富で……もう、これがいっぱい用意できればみんなお腹すかせることないんじゃないかな、って思えるものだった。

 

 

あ、それはそれとして同じものばっかりは飽きるよね。

ボクも向こうでもらった配給品、飽きたりしてたっけなぁ……

あれは美味しくないから、たまにご飯担当した時は美味しいもの作るよう頑張ったっけ。

みんなのためのお料理もまた頑張りたいけど、今はこれくらいしか……

 

よし、できるだけたくさんの種類のものを集めて、バラバラに買おう。

被りは多少出ちゃうけど、いろんな子が食べることを考えればそうそう同じものを食べ続けるなんて起こらない……はず。

たまに同じものを食べたがる子もいるけど、そういう子は我慢してもらおう。

その辺りはしょうがないって割り切るしかないよ。

 

 

「……そういえば……」

 

選んでいる最中に、ふと本で見た内容を思い出す。

なんでも食べ物を食べるときは栄養バランスというものが大事だって……

 

初めて見た時はなんだか贅沢な考え方だなぁ、とか思ったけど……

ボクが持っていくものも少しは意識して行った方がいいのかなぁ?

……多分、みんなそんな考えないから考えるだけ無駄かもしれないけど。

 

「お野菜の缶詰って、あんまりないなぁ……」

 

だからちょっとだけ、ほんのわずか……片隅程度の意識に留める。

多分、こんな保存食で完璧な栄養バランスなんて作れないだろうし……

 

うーん……何かないかな……

キョロキョロと自分のいる棚の内容をじっくり、ゆっくり見渡していく。

コーン缶、おまめの煮物、トマト……

意外と探せばあるものではある、けどみんな食べてくれるかな。

 

アリウスでもお野菜そんなに好きじゃないって子、いそうだし……

あ、でも食べ物の好き嫌いが出るような場所でも……

 

……なんかそんなこと考えてると悲しくなってきたなぁ……

みんなにもっといいものを食べさせてあげる方法、何かないものかなぁ……

 

 

---

 

 

「ありがとうございました〜」

 

「はい」

 

あれからお野菜に関してさがしてたら、これいいかもってものを見つけた。

野菜ジュースってものらしいんだけど、この缶の中にいろんなお野菜で作った飲み物がいっぱい入っているんだって。

美味しいのかどうかは飲んでみないとわかんないけど、いい選択だと思う。

 

それにしても、液体をいっぱい持つと重いなぁ……

リュックサック全部これで埋まっちゃうと本当に歩けないようになっちゃうんじゃないかな?

当然そんなことあんまり起こらないだろうけど、うーん。

 

ともかく、今日もみんなのための物資を運んでいこうか〜……

にしても、前同様買いすぎちゃって動きにくいや……

 

 

 

「なぁ、あの子来るたびにたくさん買ってくけどさ……」

「ん?ああ、ビニール袋も背中のカバンもパンパンになってますね」

「あんだけの量……自分一人で食べてるのかなぁ……?」

「えぇ〜……?あ、でもあの体の大きさはたくさん食べて作られたものなんでしょうか?」

「だとしたら、恵まれた体格を超えた体格だなぁ〜……そうおもわん?」

「もう、くだらない事言ってないで、業務戻りますよ〜?」

 

 

---

 

 

「ふぅ〜」

 

ちょっと疲れちゃったけど、なんとか接触場所の前まで来られた。

物資が多いからどうにも時間がかかっちゃって……すっかり暗くなっちゃった。

いや、このくらいの時間がちょうどいいんだけどね。

周りに人もいないし,この時間帯になったらみんな自分のお部屋に帰ってるし。

 

それにしても、ボク一人単独指定ってなんでだろうね?

いつも通りなら別々に会ってるからそんなこと明言する必要ないような……

……まぁ、考えても仕方ないからゆっくりいこう。

あんまり待たせすぎちゃうと、きてる子にも悪いからね。

 

 

古びた建物の階段をゆっくり登って、途中で休憩して。

それを繰り返して自分のペースで上にゆっくり登っていく。

持ってきたものを落とさないように、バランスを崩さないように慎重に。

 

そして、いつものように接触する階の扉をゆっくり開く。

 

「お待たせしまし……た? あれ?」

 

……中には誰もいない。

いつもなら向こうから来た子が待っているのに、誰の気配もしない。

おかしいなぁ……日にち間違えたかなぁ……?

 

でも、後から来るかもしれないからのんびり腰掛けながら待って───

 

 

「ばぁ」

 

「わぁ!?」

 

 

気を抜いたボクの背後から、聞き覚えのない声。

優しく、柔らかい……そしてイタズラものっぽいような明るい声。

突然何か、と振り向いた先には……

 

 

「ふふっ、大成功だね」

 

「え、あっ……ひ、ひめさま……!?!?!?」

 

 

マスクを取って、美しい笑顔を浮かべたボクたちのお姫様……

アツコさまが、いた。

 

「そ、それっ、いいんですかっ……??!」

 

ボクはその姿を見て困惑と衝撃が止まらなかった。

だって姫さまのマスクは、“マダム”から取ることを許可されていない……

みんなの前でもずーっとつけてて、外しているところなんて……

 

 

「誰も見てないならよくない?」

 

 

そんな疑問に、あっけからんと答える姫さま。

いや、確かにここでなら他の子の目もボク以外にないけど……えぇぇ〜……??

 

 

「いいのかなぁ」

 

「いいの。……さ、そんなことより……リエルの今までのお話、聞かせて?」

 

 

……その短い言葉と、期待のこもった眼差しがボクを捉える。

今まで、言葉を話せなかった分……溜まっていたものがあるだろうし、なにより。

こんなに綺麗な笑顔で一緒にいてくれる姫さまにずっとあれこれ言うのも違うと思った。

 

 

「わかりました……ゆっくりで、大丈夫ですか?」

 

「うん、ゆっくり話そう?時間はたくさんもらってきたから」

 

 

……もらってきた……

もしかして、この接触って姫さまが仕組んだのかなぁ?

一体どうやってとかは、効く必要もなさそうかな……すごいことしてそうだけど……

 

 

---

 

 

それから、ボクは姫さまにトリニティに入ってからのことをたくさん話した。

 

転入初日にテストを受けてたくさん焦った話に、

それより前にとっても可愛らしいけど、変な感じで、でもいい子に出会ったこと。

前と今回用意したような物資がたくさん置かれているお店の話とか。

それに、入ってからお料理したりお菓子を食べたり……そんな。

 

重要じゃない、なんてことないお話を、のんびりと。

 

その話を姫さまは、とっても楽しそうに、興味深そうに。

ゆっくりと、うんうんと頷きながら静かに聞いてた。

……そんな笑顔が本当に綺麗で、思わず見惚れてしまいそう。

 

その中で、急にずいっとボクの方に顔を近づけて、つぶやいた。

 

 

「お外って、色々なことがあって、綺麗なものもたくさんあって。

お話を聞くだけでも、リエルがたくさんいいものを見てきたって、よくわかった」

 

「え、あ、はい。喜んでくれたなら、ボクも……」

 

「それでだけどね。お話聞いて、私こう思ったんだ。

──私、お外の景色、この目でゆっくり見て回りたいって」

 

「え?……それって……」

 

 

……それいいの?

ボクたちが裏で色々動いているの、トリニティにバレちゃったらまずいわけで……

いくら夜中のなか、他の生徒たちが少ないといってもその中に姫さまを連れていいのかなぁ。

危なくない?

 

 

「大丈夫、言ったでしょ?時間はたくさんもらってきたって。

……私は、見てまわりたいって思ったからこんなことしたんだよ?」

 

「ほへ……」

 

「だから、遠慮なんてしなくたって大丈夫。」

 

 

そ、そんなのなんかずるいような……

でも、ボクは今姫さまの言葉に逆らえる気がしない。

大丈夫かどうかは、後で考えればいい……そんなふうに姫さまが視線で伝えてきてる気がして。

 

 

「ちょっとだけ、悪い事しよう?」

 

 

そんな、妖艶な誘いの声に。

……ボクは、うん、と惚けながら答えるしかなかった。




【秤 アツコ(2)】
アリ夏ではグーで殴るを忌避しないどころか率先して行ったり、
個別メモロビでも超絶積極的だったり、花の世話や保健体育等の話を自分から聞きに行ったり、
他の面々と比べてもとんでもなくアグレッシブな性格が素である。

正直、なんかのきっかけさえあれば普通に女傑として覚醒してたであろう少女。
それだけにエデン条約編4章の行動は覚醒前だと普通にわかっちゃう。
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