アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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なんとなく“せんせい”っていう人の言葉を聞いて、
正義実現委員会のお部屋にお邪魔させてもらったけど。
正直な話、全然落ち着いていない……。


とある少女と、集まる四人

入ってしばらく。

入り口付近で困り顔をしながら目の前の子を困り顔で見ている女の子と“先生”。

そんな二人をまるで警戒しているように、睨みつけるように見つめるコハルちゃん。

部屋の隅っこにある長い椅子に腰掛けるボク。

 

こう、数十秒くらい奇妙で静かな空間になってて変に気になっちゃうボクがいる。

 

なんだろう、この空気?

それぞれが様子見しながら、相手の動きを待っている……

いや、一体なんでそんなことをやっているのか、まったくわかんない。

普通に話しかければ終わる話なんじゃないのかなぁ?

 

 

「あっ、こ、こんにちは。」

 

「……。」

 

「あの…」

 

「…何?」

 

 

その空気に耐え切れなくなったからか、先生のそばにいる子がコハルちゃんに声をかけた。

対してコハルちゃんはじーっと警戒した目をしながら、そっけなく返す。

いきなり入ってきたことに訝しむ……と言うには何か上の空って感じもするけど……

やっぱりお話が苦手な子に見られる特徴が見え隠れしてる。

 

その手の子って【知らない相手】と話す時とか特に困りがちだよね。

話題に詰まる、声かけにくい、知らない相手は何かと身構える……理由は様々だけど……

とりあえず静かにしてるのはわかりやすい特徴。

たぶん、内心は困ってるんだろうねってところかなぁ……

 

……それにそわそわした様子でこっちに視線を送ってるのは……助けて欲しいから?

なんとも奇妙な視線で、感じたことのないようなそんな目線でチラチラと……

……もしかしたら何か別のこと考えてたりするのかもだけど、困ってそうだしここは一つ。

 

 

「こんにちは」

 

「あ……こんにちは」

 

 

挨拶で、重い空気を軽くしていこう。

お話しする時はどんな時でも起点になるものがとっても重要。

向こうの医務室でも入ってくる子たちは大抵、失礼します、と挨拶をしてくれるから、自然と。

お昼としては大分半端な時間のようにも思えるけど、あんまり気にしないように。

 

 

「今はお仕事中なの?」

 

「うん」

 

「そうなんだ、頑張ってる?」

 

「……う、うん」

 

 

あ、照れてる……

あまり褒められ慣れてない……でも他のこと関わりにくい子ってどうしてもそうなるかも。

 

どっちにしても話に慣れないのは間違いなさそうだから、色々助けた方がいいかな。

ええと……

 

 

「えーと、そっちの……えーっと?」

 

「あ、初めまして……ですよね。私はヒフミと言います」

 

「うん、ヒフミさん……だね。

それで……えっと、ヒフミさんと“先生”は、ここに何か用があるの?」

 

「えと、はい。探している人がいまして……」

 

 

探している人……?

ならなんでこんな場所に来たんだろう??

 

 

「……はぁ!?何それ、正義実現委員会に人探しを……」

 

「コハルちゃん。そんなに人に強くでちゃお話しできないよ?

一旦最後まできいてあげたらどうかな」

 

「う、それは……でも私も暇じゃないし…」

 

 

その言葉になぜか噛み付くように声を荒げたコハルちゃんの勢いをすぐに抑制する。

会話で無意味に声を荒げても自分にとってそんなことが多いから、ダメだと思ったならすぐに止めてあげるのがいい。

 

この辺りは初めの方、人を信じることができなかったアリウスのみんなから学んだっけ。

人との会話に不慣れで何をすればいいかわからないから、暴走しちゃうこともあった。

相手に舐められて下に見られるのがいけないことだと思ってた子もいたっけ……

 

コハルちゃんも多分、そんなタイプなんだろう。

それでもここまで話慣れしてない子もそうそう見かけない気もするけど……

 

 

「えー……とぉ、探して欲しいとか、そういうのではなくって。

ここに閉じ込められていると聞いてやってきたんですが……」

 

「はぁ??」

 

 

そんな様子をみて間違いを正すようにヒフミさんが補足する。

……ここに閉じ込められてる……それって……

 

 

「さっきの人混みの中にいた、あの人??」

 

「え“っ……そ、それって……もしかしなくても……」

 

 

「こんにちは。もしかして、私のことをお探しでしたか?」

 

 

コハルちゃんが頬を染めて、嫌な予感がと言いたげに表情を歪めた矢先。

入ってきてのとは逆の方にあった扉が開いて、中からさっきの薄着の人が出てきた。

 

それを見たヒフミさんと“先生”は言葉を失ってしまったみたいで、呆然としている。

あの姿、みんな見てからまるで変なものを見てるふうにしてるけど……

そんなに変な姿なのか、イマイチボクには計りかねてる。

 

だってお外の格好の普通があんまりわかってないし。

確かにあの人の姿、他の人がやってるのはまだ見たことないけど……

アズサさんやみんながつけてたガスマスクだってここからしたら奇妙な姿に見られそう。

 

……少なくとも、あの格好が変なものっていうのは伝わってくるけど……

 

 

「ま、待って!!その格好で出歩かないでよ!?ちょっとぉ!!」

 

「いいじゃないですか……ほら、涼しいですよ〜?」

 

 

で、あの人が出てからコハルちゃんが興奮したようになってるけどアレ大丈夫かなぁ?

すごい勢いで冷静さを失ってるし、ヒフミさんも困り顔だ。

“先生”も今動きにくいのか、静かに様子を見ているし……

 

ボクが何かした方が……

ただ、さっきと違ってコハルちゃんだけの問題じゃなさそうなのがね。

どう声をかけるべきか、悩むなぁ……

 

 

「学校の敷地内であるプールでは、皆さん普通に……」

 

「ばっ、バカじゃないの!?着るに……!」

 

 

それにもうボクはあの話について行けそうにないし。

プール?プールってなんだろう??トリニティにある場所か何か?

そしてあの服に着る着ないが発生することがあるの?

ちゃんとした場所で着ればみんな変に思ってた姿でも変じゃなくなるの??

 

う、うーん。

……とりあえずボクも、様子見で……

 

 

「と、とにかく早く戻って、早く!そろそろ先輩たちが来ちゃうから!」

 

「あら、でもこの方々は私に会いに──あ」

 

 

座り直してじっくり眺めようとしてたところ、その人と目が合った。

……今気づいた、そんな感じだった。

 

……そうなってから。なんだか様子がおかしく……

体の手足が少しプルプル震え、目が見開いて……あ、頬が少し赤くなってる。

さっきまで飄々とした風にコハルちゃんと話してたのに。

こう、どんどん余裕がなくなってるような……

目に見えて狼狽えているような感じで……なんで??

 

 

「あー、えーっと、その〜……

……すみません、一旦戻ります。そちらの方々、また後ほどお会いしましょうね?」

 

「えっ??……えっ???」

 

 

あ、出てきた扉の方へ自分から戻って行った……

こう、明らかに動揺した様子のまま……一体どうしたんだろう?

 

コハルちゃん置いてけぼりになってるし。

さっきまであんなに吠えるような感じで騒いでいたのに、困惑しちゃって静かに……

そしてヒフミさんと“先生”はもっと置いてけぼりだ。

多分あの人に会いにきたんだろうけど、もっととんでもないものを見てしまったような。

 

 

「………………ほえっ!!?

あっあああっ!!かかかっ、鍵かけるからね!?!?」

 

 

また奇妙な沈黙が数秒続いた後、我に返ったコハルちゃんが扉の方へ駆け出して。

さっきの人を追うように扉の中へ入っていった。

 

鍵……ああ、ダメなことやった人を閉じ込めるためのお部屋が向こうに……?

それでうっかり鍵を閉め忘れてさっきの人が……あぁ〜。

向こうじゃまず大目玉って感じのポカでコハルちゃん大丈夫?って思っちゃう。

もう少し、落ち着いた方が……いや、多分落ち着けないタイプ……?

 

 

バタンッ‼︎

「はぁーっ、はぁーっ、はぁーっ……!!」

 

 

あ、戻ってきた。

なんかさっきよりもさらに落ち着きがなくなって興奮してるような気がするけど、

あそこまで心を乱すなんて、ちょっと揺れすぎてないかなぁ……

 

コハルちゃん、なんだか見てて不安になっちゃう。

大丈夫?嘘をつかれたりして、あっさり騙されたりしないよね??

 

 

「えっと……ハナコさんはこの後どうなるのんですか?」

 

「そんなの当然死刑よ!エッチなのはダメ!死罪!」

 

 

今も興奮しすぎて物騒すぎる言葉が飛び交っているみたいだし……

死刑って……あんなくらいでそんなことしちゃダメだよ〜……

いやそもそもそんなこと絶対に起こっちゃいけないと思うけど……

 

……あ、目元に涙が……悲しんでるとかそういうのじゃなく昂りすぎて……

あそこまでいっちゃうと落ち着かせるの大変なんだよね……

向こうでもヒヨリさんが叫んだりした時はなかなか落ち着くことなかったっけ。

 

最もヒヨリさん、ご飯食べたりしたらすぐに静かになっちゃうけど。

そんな姿をみてサオリさんが「単純だ……」とボソッて呟いてたなぁ。

 

……流石にそんなヒヨリさんでも見ず知らずの人からご飯あげるって言われても……

ついて……行きそうな、そーでもないような……

どっちもアリウス……じゃなくって、どっちもありうるような気がする。

 

 

……変な単語が頭の中に出てくるあたりボクもまだ混乱してるなぁ……

 

 

“これからどうする?”

 

「い、今はちょっとハナコさんとお会いするのは難しそうなので……一旦次のメンバーに会いに行きましょうか……」

 

 

せっかく目的の人と会えたけど、今はそれどころじゃないのがあって。

他の人探しに移る……というか、探しているのは一人じゃなかったんだね。

えーと、さっきの人はハナコさん、ハナコさん……

 

 

「えっと……もう1人は……白洲アズサさん。」

 

「へ?」

 

 

さっきの人を覚えようとしていた矢先に口に出された知ってる名前。

ハナコさんを探しているように、アズサさんを探してるのかな。

……一体なんでだろう?

 

 

「あなたたちは、アズサさんも……探してるの?」

 

「え?……お知り合いですか?」

 

「……あ〜……ええっと……その……」

 

 

知り合い、なんだけど。

今向こうのほうで爆弾使いました、なんて口にしたら絶対なんでって思われるよね……

つい反応しちゃったけどこれってまずいのかな。

誤魔化した方が……

 

 

「ただいま戻りました」

 

「ふぅ〜、任務完了です!現行犯で、白洲アズサさんを確保しました!」

 

 

「はい……はいぃっ!?」

 

「ぶっ……」

 

そんなこと考えてたら黒い制服の人たちがとんでもないこといいながら入ってきた。

アズサさんが?現行犯で?連れてこられた???

うん、早すぎない???

というかなんで捕まってるの??ボクたちの立場ってなんだったっけ??

 

 

「シュコー……シュコー……」

 

 

しかもガスマスクまでしっかりつけちゃって!!

もう色々ツッコミどころがありすぎて叫びそうになるけど、その気持ちごと必死に抑える。

息を必死に飲み込んで、耐える。

 

ああ、でもなんでこんなことに……

どんなところでも大きい勢力相手に一人で挑むなんて無謀だよぉ……!!

そもそも向こうの黒い制服の人たちところどころ制服汚れちゃってるし!

そしてアズサさんは縄でぐるぐる巻きにされてるのに目立った怪我もないし!!

 

もー、本当になにしたのぉ……

 

 

「……惜しかった。気が緩んで狙撃警戒ができてなかった。あのタイミングで来るなんて。

あそこで倒れなければ、もう少し多く道連れにできたのに……

いいよ。好きにして。ただ、拷問に耐える訓練は受けてるから。私の口を割るのはそう簡単じゃないよ」

 

 

……口割るの簡単じゃないとか言いつつ何やっててきたかは言うんだ……

きっとサオリさん仕込みのゲリラ戦術で暴れ倒しちゃったんだろうなぁ。

正義実現委員会の皆さん、アズサさんが迷惑かけてすみません……

でもアズサさん無意味に暴れるタイプじゃないからきっと何かがあったと──

 

 

「ん……あ、リエル。」

 

「え」

 

 

今声かけられると思ってなかったんだけど。

しかも、こんな状況で。

 

あ、周りの人たちの視線が一気にボクの方に向いてる気がする。

すごいプレッシャー。ボクの体がいまプルプル震えそうな気がする。

アズサさんはいつも通りの表情だけど今ボクの表情どうなってるんだろう。

 

 

「なんでこんなところにいるの?」

 

「それボクの……というか、なにやったの??」

 

「一人の生徒をよってたかって変な風にする奴らを爆破したらこの黒い制服の生徒らが」

 

「えぇ……」

 

 

そ、それでアリウスから持ってきた爆弾を使ったの……?

いや、アズサさんならうまい具合にバレないようにすることもできそうなんだけど。

どうしていきなり爆破なんて??

 

 

「ふむ……マシロ。

確保したアズサさんをそのまま牢屋まで」

 

「了解しました!」

 

「ちょ、私はリエルと話を……あぁ〜」

 

 

もう少し聞きたかったけど、正義実現委員会の生徒の中でも一際大きい人の命令でアズサさんがハナコさんのいる方の扉へ、引きずられるかのように連れて行かれた。

それを確認したのちに、大きい人がボクの方へ向かって近づき、ボクに向かって話し始めた。

 

 

「……初めまして、ですよね」

 

「……あ。はい。はじめまして」

 

「私は正義実現委員会にて副委員長を務めている羽川ハスミと申します。

今後ともどうかよろしくお願いします」

 

「ええっと、雅舞リエル、です。」

 

 

大きい人……ハスミさんがとても丁寧に、名乗りながら挨拶をする。

ボクもそれに倣って、名前を名乗って挨拶を返した。

その様子を見てこほん、と咳払いをした後に、ハスミさんは続ける。

 

 

「さて……先ほど確保したお方、白洲アズサさんのことですが。

今の様子を察するに、あなた方はご友人であるのですか?」

 

「……はい」

 

 

それは、一緒にやってきたんだからまずそういう扱いで間違いはない。

本当はもっと深い繋がりがあるけど。

……ああ、でもハスミさんの聞き方からなんか嫌な予感がひしひしと……

 

 

「今回の一件、参考になるお話が少ないのです。

……申し訳ないのですが……少しお話を伺ってもよろしいですか?」

 

 

ううっ……!!

こ、これは……まさか、俗にいう尋問ってやつなんじゃ……

これは、まずいことになっちゃった……

でも、こんな状況で逃げたら逆に不自然になっちゃう。

ここは……

 

 

「わかり、ました」

 

 

受けるしか、ないよね……

……うう、ボクただここにはなんとなく見たいな気持ちできただけなのに。

どうしてこうなっちゃったの……!?




【シャーレの“先生”】
キヴォトスの外からやってきたという人間の大人。
いわゆる原作の“視点主”という立ち位置であり、プレイヤーでもある。
時折人間離れすることもあるが身体能力は普通の大人相当らしい。

なかなかのエキセントリックさが目立つ人でもあり、生徒らに負けず劣らず変なやつ。
つーか周りのスペックがおかしいから目立たないだけで、十分に超人側の存在である。
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