アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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補習授業部、結成の瞬間を見届けて。
ハスミさんの疑いも全てなくなったみたい。
これでようやく一息つけそう……


とある少女と、一息

「ふ〜……」

 

激動の時間を乗り越えて、正義実現委員会の部室から出た後。

ボクは広場のベンチで大きすぎるため息が漏れ出るのを抑えられなかった。

 

あの後大人しく補習授業部の活動をやる場所へ行ったアズサさんは最後の方でもこっちをじーっと見てたの、アレよくないように思えるのは気のせいじゃないよね。

あ、コハルちゃんはハナコさんにホールドされてた。

最初はあんなに抵抗してたのにどんどんおとなしくなっていって……

 

ところでコハルちゃんの頬が赤かったのはなんでだったんだろう?

最初に会った時もあんな感じだったような……よくわかんないけど。

 

とにかくボクには、二人とも頑張ってとしか言えなかったよ。

お手伝いしようにも、ねぇ?

ボク自身誰かに教えられる自身あんまりないし……

以前よりは賢くなったとは思うけど、まだまだ経験不足なのは否めないから。

 

 

『心配ならご一緒してもいいように思いますが……』

 

”名簿にない子を勝手に連れていって、いいのかな”

 

『はい……それに、無理してまで混ざるのも違いますし……』

 

 

話を聞いただけでもアズサさんの暴走具合を危惧したのか、

心配そうにしてたボクを気遣ってくれたのか、一緒にくるか考えてたけど。

“先生“たちはまず補習授業部の四人だけでやっていくんだって。

 

もし何かあったらいつでも頼ってね、と先生は言ってた。

……最初に一目会っただけなのにもう色々と“マダム”と違いすぎて、驚いちゃった。

なんというか『大人』として、何個も上にいるって感じがして。

こういう人がいてくれたら、って思えるような人だったなぁ。

 

……後から調べたら変な話もあるらしいけど、どんな話かはあんまり。

でも足に関して、何かがあったって……足をどうしたんだろう?ケガ??

詳しくはわかんないけど、今度様子を見てあげた方がいいのかなぁ。

 

 

「で、これからどうしよ」

 

 

頭の中の考えとか問題がなくなっていったからか、現在のことにやっと目を向ける。

正直に言っちゃうとこれから何やりたいとかそういう考え全部吹っ飛んじゃってこれからどうしようかとか、そういうのが宙ぶらりんになっちゃった。

 

うん、本当にこれから何やろうかな……

時間も全然あるからやりたいこと何でもできそうだけど、だからこそ迷っちゃう。

向こうにいた頃じゃまずなかった発想だからかな。

 

自由ってなんだか難しいなぁ。

どんなことでもできるって、そんなこと言われても思いつかないや。

……道を歩く生徒たちは趣味がどうのっていうけど、そんなのないよ〜……

 

探せば見つかるものだとも言ってたけど本当かなぁ。

簡単にできてそれがずっと続けられるもの……う〜ん……

 

 

「お料理は趣味……にはいるのかな?」

 

 

ふと今までやってきた中で、一番記憶に残っているものを引っ張り出す。

みんなのために必死になって、自分なりのやり方で覚えていったものだけど……

ここなら、もっとすごいものを作れるって確信がある。

 

いずれみんなのためにできることがあるなら、それをしたい。

今はきっとみんなの元に届けられないかもしれないけど……

もっともっと美味しいものを食べさせてあげたいって気持ちは昔からあるから。

 

いつ始めたかは思い出せないけど、もう一度お勉強するのもいいかも。

腕を磨いて、誰かに食べてもらって……それも趣味のかたちなのかな?

 

 

「でもお料理を趣味にするとして、味見するのは自分だけっていうのも寂しいな」

 

 

お料理、元々はみんなのためにやり始めたものだし……

あの時代じゃ色々と余裕なくって焼いただけのものも食べてたっけなぁ。

そのときに食べたアレ(・・)はあんまり美味しくなかったけど……

アレ(・・)もしっかり環境整えて調理すればそんなこと感じないのかもね?

 

いや、トリニティで手に入る食材使った料理に勝てる気はしないけど。

 

 

「そろそろいこっか」

 

 

考えごとしてる間に心も落ち着いてきた。

とりあえずお散歩を続けて……フラフラしながらこれからのこと考えればいいや。

……ふと時計を見たら、あんまり時間は経ってなかった。

 

 

---

 

 

と、のんびりフラフラしてみたものの。

意外と時間の経つスピードって遅くって……まだまだお昼時になったばっかり。

あんなことあったのに……不思議だなぁ……

 

 

クゥ~……

「ん……」

 

 

激動の時間を過ごしたからか、自然とおなかが覚えているのか。

気の抜けるような音がボクのお腹から響く。

 

そういえば朝ごはん少なめにしたんだったっけ……

時間も良さそうだし、ここいらでお昼ご飯にしてもう一息ついていこう。

えーと、お店の並びがある場所ってどっちだったっけな。

毎日行く場所はすぐわかるんだけど、いまだに迷っちゃいそうになる。

 

トリニティ総合学園、とんでもなく広いし。

アズサさんはあちこちスムーズに行ってるみたいだけど、ボクはそこまで素早く動けるようになれる自信はあんまりない。どっちかというとその場に止まってること多かったし。

 

だからかお部屋の中にいるのが心地良くって……

多分家具とかベッドとかが揃っているからなんだろうけど、なんか落ち着く。

 

 

っとと、そんなこと思ってるうちに着いちゃったみたい。

いろんな食べ物屋さんが並んでいるストリート、普段食堂を使う子もたまにここで何かを食べていくって話もよく聞く。なんでも『あじへん』ってことがしたいらしいよ?

 

毎日同じような食べ物を食べると飽きちゃうから、別のものでって話だけど……

うーん、美味しいならそれでいいようにも思っちゃうなぁ。

この辺りは……あそこ出身だからなのかもしれないけど。

 

それで、今日は……

あ、そうだ。

トリニティ総合学園内では『カフェ』ってお店がいいんだってよく聞く。

あのお店のあの紅茶がおいしい、なんて話を耳にしない日がないくらいに。

 

ボクはまだ行ったことないし、今日はカフェに入ってお昼にしよう。

軽く食べるような場所みたいだけど、あんまりお腹空いてない時はちょうどいいかも。

今ははらぺこなんだけどね。

 

 

「いらっしゃいませ〜。お一人ですか〜?」

「はい、おひとりです」

「はーい、ご自由な席におすわりくださ〜い」

 

 

からんからん、と独特な音が鳴り響くのを耳にして目についたお店に入る。

中は静かで程よく、そして眩しくない程度の光が灯っていて目に優しい。

夜中見かける電灯、すっごい眩しく感じる時あって……

色もまた温かみのある橙色の電球……いや蛍光灯だったっけ?

……どちらにしても、疲れちゃった体にはちょうどいい色で。

 

適当に座った一人用の椅子と机だって、程よい大きさだから邪魔にならない。

ごちゃごちゃしてるとものを無くしそうになるボクからすると、自分のお部屋もこれくらいのこじんまりとしたスペースにしたいな、という気持ちになる。

 

それと、こういうカフェでは音楽も楽しむものだって聞いた。

今流れている静かでいて、ハッキリと聞こえてくる音がそうなんだろう。

ボクはその知識がからっきしだからなんとなくで楽しもう。

ふんいきを感じるんだ、って話だし。

 

 

さて、そろそろお昼ご飯何にするか決めなくっちゃ。

えーと、どれどれ……ここのおすすめお昼は……パスタとパン、スープのセットかぁ。

多いのか少ないのかはともかく、はらぺこの体にちょうどいい量だと思う。

これと……あとは店員さんにおまかせして紅茶を選んでもらおうかな。

 

自分で選ぶべきなんだろうけど、何が何だかわからない。

オレンジペコとか、ダージリンティーとか、ローズマリーとか……

どれが、なんなのだろう?イメージができなくって……

 

なんとかわかるのはアップルティーとミルクティーくらいなんだよね。

その二つも今すぐ飲みたいな〜、って気持ちでもないし……

ここはお勉強も兼ねて、ね?

 

 

「すみません、このお昼セットをください。」

「はーい。紅茶はいかがしますか〜?」

「そちらの、おすすめを」

「お……かしこまりました〜!」

 

 

ん、どうして店員さん意表を突かれたみたいな表情したんだろ?

ボクの注文珍しいものだった……って思うにはお昼セットは普通に聞いてたし……

……あ、トリニティって紅茶よく飲む人ばかりだから、これって決めてる人ばっかり?

そうだとしたら、ちょっと納得しちゃうかも。

 

 

「お待たせしました、お昼のパスタになりまーす」

「ありがとうございます」

「は〜い、紅茶はもう少しお待ちくださいね〜」

 

 

しばらく待っていたらすぐにパスタがやってきた。

 

パスタってソースがたくさんあって、今日はどれにしようかなみたいな選択の楽しさがあったりして、作るのも簡単みたいだから今度練習するときにはぴったりかも。

 

今日のソースは、豚肉とトマトをふんだんに使ったクリームパスタ。

まろやかさの深いクリームに、新鮮なトマトのシャキッとした食感とお肉の強めなかみごたえが見事に組み合わさって、とっても美味しい。

 

パスタに絡んでるソースはパンの上にかけても美味しいみたい。

かけられない時は、上からパンを持ってって掬っていくみたいに付けるのも。

やったことない食べ方だけど、これもまたやっていいことなんだって。

 

一緒に運ばれてきたスープはコンソメスープ。

なんでもお外の世界じゃスープの素になってくれる塊があって。

それにお湯をかけるとあっという間にスープに早替わりするって聞いて驚いた。

これもそうだったりするのかなぁ?

 

厨房の向こうでお湯の音が聞こえるから煮込んでいるんだろうけど。

 

さて、このコンソメスープだけど、だいぶん濃いなぁって感想が出てくる。

それが悪いとか言う気はない。単純にボクは薄口の料理をよく作るからそう思うだけ。

濃すぎると顰めっ面になっちゃう子もいるからなぁ。

 

ただコンソメはいろんな人が料理で使ってるものみたい。

なんでも調味料として万能で、スープに使っても味付けに使ってもいいんだって。

調味料、本音を言うとあんまり縁がなかったからいまいちピンとこないけど、そんなにすごいものならボクもぜひ使ってみたいね。

 

 

「紅茶お待たせしました〜」

「はーい」

「えーと、こちらダージリンティーのファーストフラッシュね!」

 

 

ダージリンの、ふぁーすとふらっしゅ??

紅茶初めてに近いし。詳しい種類なんて言われてもピンとこないや。

……でも、すごく綺麗なお茶だ。

 

金色にぴかぴか輝いているような水面に、強すぎない香ばしい匂い。

しっかりと温められた湯気が頬をつたって、冷たい体によく効きそう。

 

早速いただく……前に、紅茶を飲む人はよくティーカップを顔の近くに寄せて、香りを楽しんでから一口つけるのを見かけたっけ?

ボクもそれに倣って、ゆっくりと慎重にティーカップを持って……

 

 

「あ、お皿で下を支えたほうがいいよ〜。

両手を使って楽しもうね〜」

 

「ん……店員さん、どうも」

 

「ごゆっくり〜」

 

 

うっかりしてた。

熱い紅茶が入ってるティーカップって熱いから、ちゃんと落とさないようにしなくちゃ。

もし落としちゃったら危ないし、割れちゃったら大変だ。

店員さんにお礼をしつつ、最初の一口を……

 

 

「あちちっ」

 

 

うん、入れ立てはあついや!

でも、いい味でおいしい。

くどくなくあっさりしてて、喉にすんなり入ってくる。

紅茶ってものによってはだいぶん渋いものもあるって聞くけど、これなら大丈夫。

 

このあっさりしたお茶の味が、パスタソースの濃厚さを流していって……

少し遅れ気味になったフォークの進みを戻してくれる。

パンでちょっと乾いちゃった口の中を潤していってくれる。

 

 

「うん、おいしい……」

 

「お客さん、デザートの方いかが致しますか〜?」

 

「ん、もう考えていいの?食べ終わってからじゃ……」

 

「先に頼んで、食後に持ってくるってこともできるので〜」

 

 

なるほど。

そういうのやっていいんだ……

それじゃあゆっくりしながらこのあと紅茶といただくデザートも考えておこう。

 

濃口のパスタが出てきたからあっさりした風味のものにするか……

くどさを程よく流してくれる紅茶に合わせた、重たいものにするか……

うーん、今から迷っちゃう。まだ食べてるのに!

 

けど、急がなくたっていいんだ。

時間はまだたくさんあるんだし、少し迷ってもバチは当たらないよね?




【雅舞 リエル(3)】
食の好みは薄口、甘味、あっさり風味。
逆に辛口、苦味はそれほど得意じゃなく、珍味もそこまで好まない。

しかし、それ以上に『みんな』と一緒に食べられる時間が好きらしい。
また、自分で作る時はあんまり好みを意識しないように作る。
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