アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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同じ“好き”を見つけて通じ合ったボクら。
でも、ここにきた理由と本分を忘れちゃいけない。
それで、静かに眺めてた”先生“からもある提案が。


とある少女と、補習授業部 お勉強たいむ

「そ、それでですねっ!!」

 

「ふんふん……」

 

「へー」

 

補習授業部の教室に衝動的な乱入をしちゃってから数分。

ヒフミさんがすごい勢いで目の前にあるぬいぐるみたちの紹介をしてくれた。

 

ボクもアズサさんも興味津々に聞いていたけど、飽きが来ないのがすごい。

お話としてはしっちゃかめっちゃかでまとまりがないというか。

ただ感情のままに思ったことを全部吐き出しているような感じに見えるんだけど。

 

だからこそ、本気でモモフレンズのことが好きなんだなぁと言うことが伝わる。

その熱量を肌で感じて、のんびりお話を聞いてたわけなんだけど。

 

 

「あ、ヒフミさん」

 

「へ?……あ、どうしましたか?」

 

「コハルちゃんとハナコさん、置いてけぼりだけど……」

 

「あ“っ……す、すすす、すみませんー!!?」

 

 

ふと思ったことを言ったら、我に帰ったように二人に頭を下げた。

後ろに振り返ると、すごく変なものを見つけたみたいにヒフミさんを睨んでいたコハルちゃんと、いつも通りの微笑みを向けていたハナコさんが何にも言わずに座ってた。

 

特にコハルちゃんの視線が結構痛い。

こう、「なにしてんの?」ということをずーっと訴えているような感じで。

付き合ってたボクもボクだけど、それだけヒフミさんが暴走してたってことかなぁ。

ほら、さっきまでキラキラしてた目が戻っているみたいだし。

 

 

「いや、いいんだけど……その……」

 

「こ、コハルちゃん……うぐ」

 

 

ああ、視線がトゲのように突き刺さって……

コハルちゃんもどう言葉にだそうかって迷ってる気配がする。

さっきまでの熱を帯びた雰囲気から一点、なんとも微妙な空気になっちゃった。

入ったボクにも一因はあるんだけど。

 

 

「ああ、そうだリエル」

 

「ん?どうしたの?」

 

 

それを他所目に、さっきまで一緒に話を聞いてたアズサさんがいつも通りの様子でボクに声をかけた。切り替えが早いなぁ。アズサさんらしいけれど……

 

 

「せっかくここに来たなら一緒に勉強していこう。私もアレから色々新しい発見が多くて、勉強するのが楽しいんだ。」

 

「ん……」

 

 

一緒にお勉強。

アズサさんが、みんなとおべんきょう……

その言葉がすっごく新鮮に思えてしまうのはどうしてだろう?

 

心の変化というのもあるんだけど、アズサさんが常に一人でいたからかなぁ……

ずーっと一人ってわけじゃなかったけど、その時間が多すぎるっていうか。

一緒に過ごしてたのなんてそれこそスクワッドのみんなくらいだったし……

 

 

”それじゃあ、リエル“

 

「あ、はい”先生“」

 

”アズサのお勉強を見てあげてほしい“

 

「へ?」

 

 

今までの事態をを静かに見ていた”先生“からいきなり提案が上がった。

ボクがアズサさんのお勉強を、見る……

確かに、悪いことじゃないと思うけど。

 

 

「どうしていきなり?ボクもそんなに頭がいいとは思って……」

 

”いいや。私はそう見えないな。

それに、教える立場になってみれば、新しい発見だってあるかもしれない“

 

「はぁ……でも、教えるのは”先生“の役目なんじゃ」

 

”生徒同士で教えあっちゃいけないなんてルールはないから大丈夫だよ”

 

 

そ、そうなんだ……

“先生”がいるなら、全部先生に教えてもらうものだと勝手に思ってた……

でも確かに普段のトリニティ生徒たちだってずっと“先生”に教えてもらっているわけじゃないんだし、それが普通なんだよね?

 

補習授業部の様子を見てた中でも、わからないところがあったら一緒に考えて。

アズサさんやヒフミさんが一人で頑張っている時とかは見守っていたっけ?

あと、コハルちゃんに対しては結構様子を見てたりしてたような気もするなぁ……

 

ハナコさんは……えっと、笑顔が素敵だなって。

……手元の参考書を開いてるだけで、ペンをあまり触ってないのが気になるけど……

 

 

「えーと、アズサさんはそれで大丈夫なの?」

 

「問題ない」

 

「そ、そうなの」

 

 

改めて確認を取ると、ふんすっ、って感じの顔で了承した。

やっぱりアズサさんって自信に満ち溢れてて、すごいなって思う。

 

ただ……以前やったテストでもこんな感じで、結果が残念なことになってたけど……

その時も、こんなふうに自信満々状態だったのかなぁ……?

 

 

---

 

 

かりかり。かりかり。

アズサさんの手に持つペンの走る音が軽快に耳へと入ってくる。

 

アズサさんがここがわからないと聞いてきて、ボクはそれをゆっくりと返答していく。

二人で一緒に学んでいって、よりボクも深く理解できていく。

その感覚がとっても気分よくって、楽しい。

 

質問の頻度はとっても多い。

最初の問題がわからない、そこができたら次も一緒に、そのまた次も。

ほぼ全部の内容を質問すること、それについてはアズサさんから。

 

 

「わからない時は聞くのが早い、その方が効率的だ。

補習授業部で勉強している中で、学んだこと」

 

 

だって。

それ聞いた時は確かに……ってすごく思った。

わからないなら、わかる人に聞く。

ボクとしても、そういう人がいたら頼るべきだよね……って素直に思った。

 

お勉強やり始めた時は本当に苦労したのを思い出して……

最初に問題集を開いちゃったから、なにこれの連続だったっけ。

後からBDとか教科書とかがあるのに気がついて、そこからは早かったなぁ。

今となってはあの苦労も得難い経験……ってことになるのかな。

 

 

「ああ、次はここなんだが……」

 

「ん……ああ、ここだね。よし、まずはこの文に書いてることを細かく解読して……」

 

 

それにしても、アズサさんは勤勉な子だなぁ、ってお勉強の様子を見てて思う。

学ぶことに関してとっても意欲的で、わからないところがあったら聞きまくって。

わかるようになってからは参考の場所を見なくても解けるようになっていって……

 

間違えたら間違えたでどこが違ったのかを自分で分析したり、わかりにくい場所だった時は一緒に確認してほしいってボクに声をかけてくれるし。

何よりそんな姿がまた、見ているこっちも楽しくなって。

 

しばらく時間を忘れて、お勉強に熱中してた。

何より、教えることがとっても充実したひとときだったのもあって。

 

 

「ところでリエル、そっちはテスト大丈夫だったの?」

 

「うん、大丈夫だったよ。いい点数取れた」

 

「そうか、なら私も負けないようにしないと」

 

 

……そういえば前にテストのことでソワソワしてたの見られてたんだっけ。

いや、同じ部屋で生活しているんだし見てないわけないんだけど。

あの時は本当に落ち着けなかったなぁ。渾身の出来だったのに、不安でしょうがなかった。

やってた途中は落ち着いてたのに、本当なんでだろうね?

 

あ、お勉強といえば。

アズサさんは向こうでもこんな感じでいっぱいお勉強してたのかな。

向こうで学んだこと……といえば……あれ、いまいちピンとこない……

 

えーっと……怪我した時の応急処置、包帯の巻き方を医務室に入る時に教えられて……

“マダム”の配下として爆弾や銃の扱い、整備とか詰まった時の対処……

 

あ、向こうから持ってきた支給品の銃、まだ一回も整備してない!

全然使わないからたまに受け取ったこと忘れちゃうよ……戻ったら整備しないと……

 

ええと、他に教えてもらったことって……

訓練、訓練、また訓練……??

うーん……思いつく範囲で学んだことってなんだか物騒なことばかりだなぁ。

そりゃ、トリニティのテストが恐ろしく難しいものに感じたわけだよ……

 

 

ここでやるお勉強なんて本当にしていなかったんだもんね。

 

 

だからこそ、もしみんなも一緒にテストを受けることになったら……

その先に待ち受けるものが想像できて、嫌な汗をかいちゃいそう……

 

みんな絶対今のアズサさんみたいなことになっちゃうよね。

 

 

「?……どうしたんだ、さっきから私の顔を黙って見て……」

 

「ほえ?……あ、ごめん。気が散っちゃうよね」

 

「いや、構わないけど……さぁ、次の問題を見ていこう」

 

「おっけー」

 

 

いけない、どうにも心配事があったり考え事をすると黙っちゃう。

みんなのお勉強は、今のボクじゃどうにもできない。

だからアズサさんのお勉強に集中しなくっちゃ。

 

 

「よしっ。ペース上げて大丈夫かな?」

 

「ん……構わないけど、ちゃんとわからないところを教えてほしい」

 

「それはもちろん」

 

 

……補習授業部の乱入はいい機会なのかもしれない。

アズサさんに教えた分だけ自分も賢くなって、かつ“教え方”を勉強できるんだ。

この経験は絶対、これから先役に立つ場面が出てくると思う。

みんなのために使えることだと思う。

 

初めてのことではあるけど、次に繋がるなら全力で。

気合を入れて頑張ってみよう、そう思える。

 

 

---

 

 

「次のテストでやる分はここまでなんだけど……」

 

「え、もう終わり??」

 

 

夢中になって教えてたらいつの間にかそんなところまで行ってたみたい。

ページ数的にはそこまで多くはないけど、教科書をたくさん進めたような……

そんなに勢いよく進んでたの?いや、確かにペース上げるとは言ったけど。

 

 

“早く終わるのはいいことだと思う。その分復習も簡単だからね”

 

「あ、先生」

 

“それと、さっきチャイムがなったけど……”

 

「え、ほんと?」

 

 

も、もうチャイムなったって……ぜーんぜん気が付かなかった……集中しすぎちゃったかなぁ。

ってことは、今日の活動はもうおしまい?

ひえー……はっやーい……時間の流れが、早すぎる〜……

 

 

「リエル」

 

「ん、アズサさん」

 

「とても、とってもわかりやすくていい勉強になった。ありがとう」

 

「……うん。」

 

 

なんてことないように、お礼を告げるアズサさん。

ちょっと頬が赤くなって、口元が緩んで見えるのは、きっと気のせいじゃない。

嬉しい時は、嬉しいって思っていいんだからね。

 

 

「もし、また来るならお願いしたいくらいだ」

 

「へ?……それっていいのかなぁ?」

 

「“先生”も行ってたでしょ、“ 生徒同士で教えあっちゃいけないなんてルールはない”って。

今日みたいに、お手伝いに来ることも問題ないはずだよ」

 

 

あ、そういう考えたもありなんだ……

ボクとしても教える方法を学ぶ機会としてみると、とても魅力的な場所だ。

ボク自身、今日得た手応え確かにあるんだし。

 

 

「……そういうことなら、時折時間を作ってきてみようかな」

 

「うん、それがいい。

……それじゃ、そろそろ。私はこれから夕食の調達にでもいくけどそっちは?」

 

「ボクは……出たらまっすぐ帰ろうかな」

 

 

特に寄りたいところも思いつかないし、じっくり教えてたからとても疲れた。

今日は帰ったらすぐに寝ちゃいそうだなぁ。

……今も目がしょぼしょぼしている感覚あるし、早く戻ってしまおう。

 

 

「それじゃあ、また後で」

 

「うん、またお部屋でね〜」

 

“お疲れ様”

 

「はーい」

 

 

教室のみんながそれぞれここを出る支度をする。

ふと外が見える窓の方を見ればすっかりお日様が傾いて、空が赤くなってた。

ここからどんどん暗くなっていく、学校の活動が終わる時間だ。

 

すぐに廊下へ出て、きた道を戻ろう……

 

 

「ね、ねぇ」

 

「ん?」

 

 

としたら、後ろからたどたどしくこっちを呼ぶ声がする。

この声は、コハルちゃん?

 

 

「どうしたの?」

 

「え、えーと。その、あの。……リエル、さん……って結構変わった人なのね」

 

「ん?ボクそんなに変わってるの?」

 

「え、だってあんな変なぬいぐるみ可愛いって……ち、ちがっ、そうじゃなくって!!」

 

 

んー……話したいことと思っていることがまざっているような感じが……

お話が苦手な子にありがちな、頭の中の考えが口に出た時言い方を考えてるみたいな。

整理してない状態の言葉の群れを放出しているみたい。

 

コハルちゃんと初めて出会った時もずーっとこんな感じだったかなぁ。

静かにしていることも多かったけど……

 

 

「えっと?」

 

「……補習授業部の活動中、見てた。

リエル、さんって……教えるのがすごいうまいなって、思って」

 

「うん」

 

「……またきた、時。その、私にも……いろいろ、お勉強。教えて、くれる……?」

 

 

その提案をした時のコハルちゃんはどこか不安そうで。

まるでこっちの様子を慎重に伺っているような……怯えているような目で見てた。

 

どうしてそんなふうにみるのかは、正直わかんない。

けど、コハルちゃんがお勉強を、本気で取り組んでるのは教室に入る前からわかってる。

なら、ボクの答えも当然決まっているよ。

 

 

「うん、いいよ」

 

「!!!……ほ、ほんとう!?」

 

「本当だよ」

 

「う、あ……そのっ!!……あ、ありがとう……」

 

 

返事を聞いてから、コハルちゃんの頭の羽がパタパタ動いている。

目が結構挙動不審にあちこち向いているけど、心から喜んでいるのが見てわかる。

……こうしてコハルちゃんを見てると、すっごく可愛いっておもっちゃうなぁ……

 

 

「こ、今度もまたきてよねっ!?約束よっ!!」

 

「あはは、約束……うん。また来るよ」

 

「……そ、それじゃ……またね……」

 

「うん、また」

 

 

約束を交わしてすぐ、コハルちゃんは踵を返してボクとは正反対の方向へ走り去っていく。

その後ろ姿から見える背中の小さな羽が、大きく動いているのが印象にのこった。

 

背中の羽と頭の羽、嬉しい時に動いちゃうんだなぁ……

そんなほっこり気分を残してくれて。

 

 

---

 

 

「……雅舞 リエルさん……

トリニティ総合学園らしからぬ(・・・・・)部分ばかりのあの子……

 

あの子はどうしてこの学校に来たんでしょうか……?

たしか、転校してきたとか……アズサさんと一緒に……

 

……気になります……すごく……」




【下江 コハル(2)】
見栄っ張りなお年頃で、人を素直に頼れない性質のつんつん乙女。
でも、リエルにはなんでかある程度素直になれるみたい。
その理由はどうにも本人にもわかっていないようだ。


けっして、その大きさと豊満な部分が理由じゃないよ。
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