サオリさんからは怠ってはいけないと言われていたこと。
……正直に言えば、忘れてました。
補習授業部でのあれこれが終わった後の、夜中。
周りが寝静まるより少し前、自分のいるお部屋を最大限明るくして向こうから持ち込んだ荷物を全部広げていく。
真新しいアサルトライフル、触ってすらいないガスマスク、新品同然のクリーニング棒。
……装備点検をサボっている証拠がこれでもかというほど飛び出してきた。
アズサさんに見られたら驚かれること間違いなし、もしサオリさんがここにいたらお説教タイムが始まっていることだろう。
「でも、使わないからなぁ……」
本音を言うなら持つのもあんまり好きじゃない。
でもキヴォトスで生きているみんなは大体持っているものだし、どんどん使うから逆に持ってないなんてことは避けるべき。
その言葉はわかるけど、どうしても抵抗感が……
その点はアズサさんの方がずっと慣れてることだろう。
サオリさん仕込みの戦闘技術もあるし、時折整備してる姿を見るし。
ただ、今はお勉強を優先して欲しいかな。
多分、ここだと整備以上にそっちの方が大切で、重要なことだと思うし……
「……そんなこと思ってても、始まんないかぁ。うん、やろっか」
気の乗らない自分自身をどうにか納得させながら、クリーニング棒を利き手に持つ。
えーと……最初は、銃口の中をふきふき……
「あれ」
い、意外と中に棒が入んない……というかやり方これであってたっけ……?
前に整備した記憶があやふやで、まったく思い出せない。
思えば医務室でみんなを治すようになってから銃なんてほとんど触ってなかったし。
何より整備も向こうの訓練備品とかは専用のチームがあったし。
これ……思ったよりずっと時間がかかる?
やり方を改めて思い出しながらやらないといけなさそうで、それが出てこなくて。
でも銃のお手入れなんて雑にやっちゃいけないわけで。
……どうしようかな。
えーと、こんな時は……アズサさんに……いや、今はお勉強のことに集中して欲しいし。
「こんな時は……あ、確か」
トリニティ内で使うために調達してきたっていうタブレット端末……っていうもの。
えーと、スマホっていうんだっけ?
これを使えばいろんな情報が出てくるって話だったから……
ねっと?だったっけ?
それを立ち上げて、知りたいものを書き込めばいいんだったっけ。
この白い枠の中に……ええっと、『銃の装備点検』……でいいのかな。
ぽちっとな……お?
お、おおぉ〜……一瞬でいろんなものが出てきた。
細かい豆知識付きって書いてあるものまで……だれが作ったんだろう、こんな便利な機能。
「うん、ありがたく使わせてもらおう」
こんな機能まであって、それがこんなにお手軽気分で使えるなんて。
やっぱりお外の世界ってすごいんだなぁ。
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えーと、銃身の中は銅ブラシを活用して、汚れをしっかりと浮かせて……
その後除銅剤をしっかり塗ってから、寝かせて……
3、40分から、1時間程度このままに置いておく……
うん、調べられるのは便利ではあるけどやり方見て、その通りやってを繰り返すと時間かかるなぁ。初めてどのくらい経ったかは時計よく見てないからわかんないけど。
すごい長い間やってる気がする……あんまり進んでる気がしないのに。
本当に触っていないのがよくわかるなぁ……
みんなは躓くことなくやってるし、サオリさんとかとんでもない速さだったっけ。
あと姫さまも……他の子にやってもらえる立場だけど大体自分でやってたなぁ。
「整備中?」
「ん……アズサさん、戻ってきてたの?」
「ついさっき帰ってきた。今から荷物を纏めるから、うるさくなったらごめん」
「……荷物をまとめる??」
いつの間にか帰ってきてたアズサさん。
整備に夢中になってたからドアの開く音も気にしてなかった……いや、それより。
いきなり荷物をまとめるって、なんで?
帰還命令……があるなら流石にボクにも通達が来るはずだよね?
それにアズサさんはわざわざそんなこと隠さないだろうし……
「それってなんで?」
ついつい聞いちゃったボクの判断は間違ってないと思う。
その上で帰ってきた返答に、さらに疑問が深まっていった。
「合宿が決まったから、しばらく合宿場に住み込むことになったんだ」
「……がっしゅく??」
「うん、合宿」
合宿……多分トリニティ内でやることなんだろうけど、一体なんだろう?
言葉は聞いたことないけど、なんとなく意味はわかる……その上でなんでそれをやるんだろう?
しかもこんないきなり……あ、まさか。
「それってアリウスのことじゃなくって、補習授業部の方かな」
「リエル……ここではアリウスの名前は出さない方がいい」
「あ、ごめん。つい」
「まぁ、それは置いておいて……うん、補習授業部の方でやることになった」
やっぱり。
そもそもアリウスの方で聞いたことのないモノだからそっちだよね。
それにしても、合宿場に住み込むって補習授業部のみんなもそうなのかな?
……ハナコさんやコハルちゃん、ヒフミさんと一緒の生活……
すごく愉快な空間になりそうだと思うのは……なんでと思う必要もないかもね。
「しばらくここには戻ってこれないけど、大丈夫?」
「あ、そうなんだ……でも、今はボクのことはあまり気にせず、補習授業部の方に集中した方がいいと思うなぁ」
「……本当に大丈夫?」
「普段から別々に動いてるし……」
合宿に行ってからしばらくはお部屋が広くなって寂しくなるかもしれない。
でも、もともと保健室では一人で過ごす時間の方が多かったし、なんとでもなると思う。
……どっちかといえば合宿所でアズサさんが変なことしないか心配かな……
前の爆破の記憶だってまだまだ新しくて忘れていないし。
「ところで、合宿ってどこでするの?
時折何か支援した方がいいかもだし、知っておいた方がいいかなって」
「場所……確か、結構外側の方にある合宿用の施設らしい。
かなり広くて色々と設備があるから罠が仕掛けやすくて、籠城にもってこいだ」
「うん、そういうのを聞きたいんじゃなくて」
やっぱり心配……根本的に物騒な一面がもうこれでもかってくらいに見えてる。
アズサさんの得意なこと、ゲリラ戦術だからなぁ……
トリニティでも銃撃戦が普通に起こるから、ある意味正しい考え方なのかもしれないけど……
で、色々と設備があるって……
それってキッチンとか、シャワールームとかあったりするのかな?
合宿……みんなでお泊まりできる場所だし、あってもおかしくない……
それにかなり広い、かぁ。
……みんなを連れてきて、お世話するならそういう場所が欲しいかも。
探して、確保して……色々と準備を……
「そんな真剣な表情で、考え事?」
「ん……いや、なんでもないよ?」
……うん、考えが先走りすぎた。
それを実行に移すためにはまだ足りないものが多すぎる。
必要なものだって全然用意しきれていない状態では、何をしても失敗する。
だからこそ、この発想は忘れないように、かつ急ぎすぎないように。
何せ、ボク一人でやっていることなんだから。
本当に信頼できる人がいるなら手伝ってもらうべきではあるけど、今はまだそこまでボクと向こうの問題を共に解決して欲しいと言える人がいない。
信じられる人はいる、でもまだ早い。
目先の容易なチャンスに手を伸ばすよりも、やるべきことがある。焦っちゃいけない。
「それで、ここからは完全に出ることになるの?」
「他のみんなはそこまでじゃない、でも私はここに荷物を置いていってもしょうがないから。
手持ちのものを全部持っていって向こうに移るつもり」
「わかった」
どうやらここはボク一人で使うことになるみたい。
お部屋が広くなる……元々ここが二人用のスペースだから、片方が空くと尚更。
「ただ、すぐ行くわけじゃないから。
もしかしたら、やらない可能性だってあるし。」
「あ、そうなんだ」
確定じゃないんだ。
でも、どっちみちアズサさんたちは合宿に行くことになる気がするなぁ。
あくまで直感だけど、決定してると思う。
「行く日の前になったら出発するって改めて言うから」
「わかった。それでアズサさん」
「どうしたの?」
「そのー……銃の整備マニュアルって、持ってたりする……?」
「…………そ、それは……ダメなんじゃないか……??」
行く前にこれだけはどうしても聞きたかった。
アズサさんの目は少し動揺して信じられないものを見ているようだった。
だってボク、忘れちゃったんだもん……
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「な、なんとかできた〜……」
アズサさんとのやりとりが終わった後もネットの力を借りて、どうにか終わった。
パーツのお手入れ、手元の調整、詰まっていないかどうかのチェック……
一つ一つの磨きもしっかりやって、少し光ってみえる。
銃はこれでバッチリ。
あと、整備するべきものは……
「あとは、この上着のお洗濯……だけど」
アリウスから持ってきた、全員に支給される上着。
持っていると怪しまれそうでずーっとお部屋にしまって隠してたもの。
これを洗う以外の整備は全部終わった……けど……
「こんなの表で干してたら間違いなく怪しまれちゃうなぁ」
この上着は白を基調とした服、遠くからでもすごく目立つ。
当然トリニティにはない服だからあること自体おかしいし、持っているのもボクとアズサさんだけ、もう怪しんでくださいと言っているみたいな持ち物。
……うーん、これどうしよう。
夜中に洗って昼までお外に干してたとしてもまず誰かに見られちゃうと思うし、
意外と持ち運ぶには大きいしそこそこ重たいしで、どうにも……
いっそ洗わない?
でもアリウスから持ってきた日以来、お掃除してないから汚れが気になる。
全然着てないけど、カタコンベを通ってきた時についたものとかもあるし。
「……うーーん……」
考えがまとまんない……
本当にどうしよう。捨てるにも捨てられないものだし。
いざって時に役に立つものでもあるから……
生半可な銃弾とかはしっかりガードしてくれる防弾仕様だし、
寒い時間帯とかではあったかいし、とっても丈夫で長持ちするし……
せめて、後から作り直すことができたなら目立たないように改造してってこともできるけど。ツテもないし、ボクにそんなこともできない。
悩みばかりが増えていく。
云々唸ってもしょうがないのはわかってるけど、それでも唸りたい。
「……一旦しまおうか……」
結局これと言っていい解決策が思いつかなかったボクは一旦クローゼットにしまった。
問題を先送りにしただけなんだけど、思いつかないんだししょうがないよね。
さて、そろそろ眠くなってきたしベッドに入って──
「リエル、シャワーが空いてるよ」
「あ、つかうー」
眠る、前に。
湯を浴びてスッキリしておこう。
制服を脱いで、適当にその辺に置いておく。
あとでたたむけど、疲れちゃったし今は雑でも大丈夫だよね。
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「ふー」
ジャー、という水の流れる音を耳に入れつつ、シャワーが体にかかる。
あたたかく、綺麗なお湯がボクの身を綺麗にしてくれる。
シャワー……アリウスではなかなか使うことができない設備。
人によっては使うことすら許可されないもの。
トリニティではシャワーは生徒たち全員に用意されている上、お湯をいっぱい使ったお風呂なんてものまであるから、本当にすごい。
当然、ボクらのお部屋にもお風呂用の浴槽、シャワー付きだ。
本当にトリニティってすごい。
最初見た時はなにこのおなべ?とか思ったこともあったなぁ。
使い方を知った時はそんな贅沢許されるのって戦慄走った。
だって、そんな使い方絶対できなかったし。
そして実際お湯をいっぱい入れてお湯に浸かった時の快感とくれば。
手足から力が抜けて、吹き出してきた疲れすら心地良くなって。
頭がどうにかなっちゃいそうだったなぁ。
それからお風呂が好きになって、今では入りたい時はまず入るようにしてる。
体にもいいし、寒い時には最高の気持ちになる。
髪の毛を洗うためのシャンプーってものは今でも慣れてないけど、いい香りしてるよね。
「さてと、それじゃ今日もお湯を溜めて入ろうっと」
時計はすっかり午前0時。
もう明日になっちゃていて、通りで体がへとへとになってるわけだと思う。
今日も一日お疲れ様と、自分を労って。
今日もお風呂の中でゆっくりしよう。
【支給品のアサルトライフル】
リエルがアリウスから出る時に支給されたもの。
一応手に入るものの中では一番高性能のものらしいが、本人は全く扱いきれていない。
というか、新品同然である。
タイチョーやダンボールにゃんこ(作者のお手製キャラ)、見たい?
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これはリエルの物語だから……
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どちらでも大丈夫です
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是非ともお願いします
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作者の子かわいいね♡ 出せ(豹変)