アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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話は一旦リエルたちの元へと戻る。
噂に聞いた合宿場にやってくる機会を得たのだが。
そこは思っていた通りのところとそうでないところがあった……


とある少女と、合宿 お掃除

ひゅうう、という風の音がやたらと大きく聞こえてくる。

人の気配そのものが感じられない建物は、向こうの廃墟を思い出すような雰囲気を出していて、少し寂しい気持ちになる。

無論、向こうよりかは断然綺麗なんだけど、気持ちだけは……

 

 

「リエル、さん。その……本当に手伝ってくれるの?」

 

「うん、ボク自身お願いしますって”先生“に頼んじゃったくらいだし」

 

「あら〜、リエルさんったらお優しいんですね♡」

 

「ヒフミ、掃除用具は本当に中にあるんだろうか」

 

「一通りのものはお先に入っている”先生“が確認してくれているはずですっ!」

 

 

でも、一緒にやってきた補習授業部の陽気な様子でそんな気持ちは吹き飛んじゃう。

一緒にお勉強した時からなんとも一緒にいて居心地の良さを感じている。

友達って、いいものだよね。素直にそう思う。

 

 

「しかし、本当に使っていないんだな……勿体無い」

 

「元々、トリニティの生徒は寮を使ったり自分の拠点が区内にあったりしますので。

この手の施設の必要性が薄いんですよ」

 

「へぇ〜……初耳」

 

「ですが、今の私達はここを使う理由があるわけなんですが」

 

「はいっ。補習授業部の合宿先として……」

 

 

そう、ボクたちはいまトリニティ総合学校の合宿場にきています。

どんな場所かなとは思っていたけど、想像してた3倍くらい大きくって驚いてる。

何と言ったって、泳ぐところや大きなキッチン、お部屋もたくさんあるみたいだし。

こ、こんなところを全く使ってないなんて……アズサさんのいう通り勿体無い……

 

本当、おっきいな〜……これならボクの考えてること実現できるかも。

使ってもいいよって許可降りたらではあるけど。

 

 

「それじゃあ早速始めましょ!!」

 

「コハルちゃん、まずは中の”先生“にご挨拶ですよ〜」

 

「これだけ広いと掃除も大変そうだ……」

 

「一旦使うところだけやるんじゃないのかなぁ」

 

 

使っていない場所だから、まずは使うため綺麗にしようね。

あ、ボクは本来ここ使う人じゃないからいなくとも問題はないけど……

ちょっと要請を受けてご一緒させてもらってるよ。

 

ん、その時の様子?そうだねー……

 

 

---

 

 

あれはお昼ご飯食べようとしてた時だったかな。

久々に食堂を使うことになって適当な定食を選んでたっけ?

 

椅子に座って食べようとしてた時にね?

 

 

”前、座っても大丈夫かな?“

 

 

って、先生がやってきたの。

ここトリニティ総合学校の生徒さんが使う食堂だけど、”先生“もナギサさまから許可を得て時折食べていってるんだって。

 

ボクはそのままいいよーって。

そもそも食べる時周りに誰かいてもボクはあんまり気にならないし……

それに“先生”からは別に嫌な感じとかはしないから別に。

 

ただ、周りから視線を感じるような気がするけど……

いろんな人から頼られてるみたいだし、やっぱり“先生”って人気なのかなぁ?

 

 

まぁボクに向けられていないしいいかとそのままご飯を無心に食べた。

ボクも“先生”も綺麗にぺろりと全部食べた後に、改めて話をしてもいいかなと聞かれる。

 

ボクは素直にいいよーって答えたけど、なんのこと話すんだろって呑気に構えてたなー。

 

 

“補習授業部の合宿中、ちょっとだけみんなのことをサポートしてあげて欲しいんだ”

 

「サポートっていうと?」

 

“合宿場が広すぎてみんなだけじゃ持て余しそうだなって思って”

 

「へー」

 

 

“先生”からみても大きすぎるんだ……

そんな建物を4人で使っても管理に手が回らなさそうとか、結構使われてない場所だからお掃除しないといけなくて、自分を含めたとしてもとんでもなく大変なことになるとか。

 

 

「いいですよ。ボクも時間を持て余すよりかはいいかなって。

それにアズサさんのこともあるし、ボクからもお願いしたいです」

 

“ありがとう。えーと、集合の日は4日後なんだけど大丈夫かな?”

 

「はい。意外と暇な日も多いから……」

 

 

以前はその暇な日を使ってトリニティ内の施設を覚えるのをがんばったっけなぁ。

側から見ればお散歩しているだけだし、実際そうなんだけど。

実際歩いてみると意外な発見が多いから侮れないよね。

 

自分の足を使って探すというのも、あの頃から大事にしていることだから。

 

 

「あ、ところで合宿場ってどのあたりなんですか?」

 

“えっと、本校舎からはだいぶ離れた……”

 

 

それはそれとして事前に場所は聞かなくちゃ。

何にも知らないで適当に向かったら絶対迷子になっちゃうだろうし。

 

 

---

 

 

「おー……広い」

 

そして、今につながる。

ボクは今、合宿場の中にある炊事場にいます。

 

明らかに多人数で使うことを想定された広さで、隣に食堂もある。

お水もちゃんと出るし、機材も揃ってる。火も問題なく出るみたい。

誰も使ってないからちょっと埃っぽい気もするけど、それはしょうがないや。

今からお掃除すればすぐにその問題も無くなるんだし。

 

「よし」

 

早速、窓を開けて空気を入れ替える。

……ここもだいぶ汚れてる気がするなぁ、後で拭かないと。

 

えーと、床をお掃除する時は掃除機ってものを使うと早いみたい?

モップとかそういうのもあるけど、探せば見つかるかもって今ヒフミさんがあちこち探してる。流石に入ってすぐの場所でものがどこにあるかまではわかってないみたい。

 

まぁしょうがないか。

見つかるまではモップを使えばいいんだし、それで終わったならそれはそれでいいでしょ。

 

「あとは……確か上だったっけ?」

 

キッチンの上の方にあった棚のドアを開いてみた。

その中にはお皿、コップがずらりと整列。

別の場所にはフライパンとかお鍋とかの調理器具が丁寧に置かれてる。

 

うん、こっちも一通り揃ってるみたい。

後でこれ全部洗ったりしないといけないと考えると、少し疲れそう。

綺麗な方がもちろんいいけど、今ここにいるのはたったの6人。

使い切れそうにないよね、たぶん。

 

「それにしても綺麗だなー」

 

適当なお皿を一枚手に取って、素直な感想が口に出る。

スプーンもフォークもしっかりとした素材で作られてるって一目でわかる。

向こうで見つけるものって大抵ボロボロだったり汚れてたりしてたっけ?

一応洗えば綺麗になったけど……ここまでにはならなかったなー……

 

多分その辺も環境の違い?

向こうには洗剤なんてなかったし、お水も綺麗なものは稀だったし……

いや、綺麗なお水の確保は死活問題だったからボクはひーこら言いながら取ったけどさ。

あんな大変な思いしなくてもいいからこの辺はすごいよね。

 

「……これだけ綺麗なら洗ったりするのは後でいっか。数も多いしね」

 

今は他に優先すべき掃除箇所も色々あるから。

特にコンロ周りは埃が溜まってると大変だって話だから念入りに。

そういうのが燃えちゃったりしたら一大事だから、雑巾を使って丁寧に拭いていこうね。

 

あ、水に濡らすんだっけ?

濡らしたらそんなに綺麗になるのかなぁ。

そんなふうに使ったことないからわかんないや。

 

 

---

 

 

「すっごい取れてるー」

 

うん、違った!

コンロ周り全体をお掃除しただけで雑巾の拭いた面が真っ黒黒すけだぁ……

こんな綺麗になったというより、よくこんなに溜まってたなぁって気持ち〜……

 

 

「お、お疲れ様です……って何を見てるの?」

 

「ん、ああコハルちゃん。水に濡らした雑巾は汚れがよく取れるなーって思って」

 

「え……あ、いや。汚れてるの見てたの??」

 

 

掃除用具を手に取って、頭に頭巾を被ったコハルちゃんだ。

頭巾の下にある羽が狭そうにぱたぱた動いてる気がする。

うーん、こじんまりしててかわいい。

 

 

「今みんな上でお部屋お掃除してるよ?行かないの?」

 

「そーなんだ……ここのお掃除に夢中になってたよ」

 

「……確かに、キッチンのあちこちが輝いて見えるかも……」

 

 

そりゃ、頑張ってあちこち拭いたもんね。

コンロ以外の汚れもガンコで大変だったよ?

特にほら、もともと水が流れてたであろう場所とか。

こういうところこそ変な汚れができると大変だって書いてて、実際そうだったなー。

 

おかげで拭いた後ちょっと手が痛くなっちゃったし……

いや、銃で撃たれる痛みに比べたらなんてことないけどじんじんと残っちゃうんだよね。

自然と消えるまで割と長いし、その苦労分綺麗になってくれないと困るや。

 

 

「それじゃあ行こっか。

今どのお部屋にいるの?」

 

「今は…4人で使うお部屋の……301号室……だったっけ」

 

「たくさんお部屋ありそう。301、だねー。

……うん、こっちをしっかり片付けてから向かうよ。呼んでくれてありがとね」

 

「う、うん……それじゃあ、戻ってるから!」

 

「はーい」

 

 

あー……コハルちゃんを見てるとなんだか顔が綻んじゃうな〜……

今を一生懸命生きているって感じがしてるし、仕草ひとつひとつもなんだかほっこりしちゃう。

手のかかるようで、そうじゃない……そんな感じ?

 

自分一人でもなんとかなる!って言い聞かせてるようにも見えるけど……

別にそんなふうに考えるなくてもいいと思うな。

困った時はみんなに頼るのも、近道だし悪いことじゃないんだよ?

 

……よし。

お片付けも終わったしみんなの元に行こっか。

 

 

---

 

 

「このシーツも洗うのか」

 

「さ、流石にそのまま使うのは……」

 

「割と綺麗に見えるけど、ダメなんだろうか?」

 

「まぁまぁ、洗い立てのシーツは気持ちいいですよ……?」

 

 

今はベッドの毛布とかを整理している最中みたい。

そういえばアズサさんのベッドってそこまで綺麗にしてた印象が……

使えるならばそれでいいって感じで、たまに上の毛布がぐちゃぐちゃになってたっけ?

 

寮のお掃除担当がたまに替えてくれるって話だけど……

あんまり頼ったことはないなぁ。

お部屋に入れるのもちょっと危ない気もするし……

 

 

「お疲れ様です〜」

 

「あ、リエルさん!ずっと下にいたようですが、今まで何を?」

 

「キッチンを綺麗にしてたよー」

 

「あら……リエルさんのお手で綺麗になったキッチン、楽しみです!」

 

「結構綺麗にできた自信あるから、楽しみにしててね〜」

 

 

お部屋の大きさもそこそこだ。

ここにいる4人以外のベッドもあるみたいだし、たくさんあるのがいいね。

 

……うーん、お掃除に来たのに頭の隅っこでみんなのことを考えちゃう……

今は余計だと思ってもついつい。

キッチンの掃除中もいつか来る時のために綺麗にしたいな、とか思いながらやったっけ。

 

……ちょっと甘すぎるかなぁ……

そのいつかがまだまだ予想もついていないのに。

 

 

「みんな、洗濯機の電気ついたわよ!」

 

「分かりました。では、みんなでシーツと毛布を運びましょう!」

 

「使わないベッドの分も、となると結構な量になるね」

 

「あ、ボクも一緒に運ぶから大丈夫だよ」

 

「手分けしてやりましょうね〜」

 

 

みんなで一緒ならたくさんのものを運ぶのだって簡単だ。

それに急がなくていいんだし、ゆっくり丁寧に運ぼうね。

 

それじゃ、早速両手いっぱいに毛布を抱える。

数が嵩張ると意外と持ちにくい、重くはないけど大きくてバランスを崩しそう。

 

 

「おーい、誰か反対から支えてー」

 

「う、うん!」

 

 

念の為支えを頼んだら、コハルちゃんが来てくれた。

さりげなくコハルちゃんの手がボクの手と重なってる。

小さいけど意外と力のある感じがして、これなら問題なく運べそう。

 

 

「いくよー」

 

「はーい!」

 

 

コハルちゃんと一緒にせっせと運ぶ。

場所と移動する方向に気をつけて、埋もれて見えるコハルちゃんの顔を気にしながら。

わっせわっせと洗濯機に運んでいく。

 

特に階段は下も前も見ないといけなくて、大変。

後ろからアズサさんも見てくれてるけど、転んだら怪我しちゃうからね。

急ごうとしちゃうコハルちゃんをよく抑えながら、丁寧に一段ずつ降りていった。

 

 

「洗濯機は一斉に動かすから、全部入れても閉じちゃダメよっ!?」

 

「うん、わかったー」

 

 

到着したら手前の洗濯機から順番にシーツを詰め込んでいく。

それにしてもたくさんの生徒が使うための場所なだけあって洗濯機がずらりと並んでいる光景がまたすごいと思える。

1台くらい分けてくれないかなぁ……って向こうにいた時なら思ったかも。

 

もっとも分けてくれたとしても動かせないと思うけど……それでもほしいと思うだろうなぁ。

 

 

“洗剤を持ってきたよ。

他に欲しいものって何かあるかな?”

 

「あ、“先生”。柔軟剤ってありましたか?」

 

“柔軟剤だね、ちょっと見てくるよ”

 

「先生、後で使いたいから掃除機をもう一台持ってきて欲しい」

 

“わかった”

 

 

それぞれがそれぞれの役割をやっていって、シーツと毛布運びも順調に進んでいく。

全部運んだ頃には洗濯機が半分くらい埋まってた。

せっかくだから使う部屋に置いてあったもの全部持ってきたんだって。

……もし全部のお部屋にある分洗うってなったらどれくらい時間がかかるんだろうね。

 

 

「流石に全部運ぶと疲れるね……一旦休憩したい」

 

「では、一旦お掃除したお部屋に戻って休憩しましょう!

給湯室でお茶も入れて、皆さんの持ってきたお菓子もいただいて!」

 

「えっと……私が持ってきたのチョコしかないけど大丈夫?」

 

「私色々ありますから!

ペロロクッキーとか、モモフレンズのチップスなんてものも!」

 

「ヒフミ、あんたお菓子までそういう……」

 

 

ふと時計を見たらやってきてからだいぶん経ってる。

確かにボクも少し疲れてきたし、一旦休もう。

 

 

「えーと、この後はどこお掃除するんだっけ?」

 

「この後は……プールですね」

 

「プールのお掃除……」

 

「えー!?水に濡れるのはちょっと……」

 

「まぁ、大丈夫ですよ?」

 

 

顰めっ面になっちゃったコハルちゃんに、にんまりとした表情で答えるハナコさん。

それを見て嫌な予感でもしたのか、コハルちゃんが特徴的な目をしてる。

 

ヒフミさんやアズサさんも謎に思ったのか、ハナコさんをじっと見る。

その反応を待ってましたと言わんばかりに、宣言した。

 

 

「皆さんのサイズの水着なら、私がしっかり持ってきましたので♡」




【合宿場】
トリニティ総合学園内にある施設。
普通の学校ほどの大きさ、宿泊部屋あり、プールありの充実した合宿場。
相当大きく、間違いなく4人以上で使うことを想定されているが、今はあまり使われていない。

むしろこんなすごい場所を使わなくなるくらいにトリニティは充実しているのかもしれない。
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