アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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ヴィクちゃんは落ち着くまでめちゃくちゃ時間かかった。
その間ずーっとしがみつかれた。
他の子もどうにか離れさせようとしてくれたけど……余計にもみくちゃだよ……


よんひきのおうまさん

「ごご、ごめんなさいっっっ!!!

見つけちゃったら、もう抑えられなくってぇ、我慢できなくってぇ〜……!!!」

 

「うんうん、大丈夫。

ぼ、ボクなら平気だから……」

 

「足元ふらついてるわよ……」

 

 

ヴィクちゃんの爆発的なエネルギーは相変わらずすごいなぁ……

医務室じゃ暴れないようにしてくれてたけど、訓練場がボロボロになってる時は大抵この子が暴れ回ってぐるぐる巻きにされてたっけ。

……その元気さが時に羨ましいとも思ったこともあったなぁ。

ボク自身ああなれるのかは置いといて。

 

白島ヴィクちゃん。

アリウスの中でも唯一と言ってもいいくらい、パワーに満ち溢れてる子。

機嫌の上がり下がりが激しくって、みんなにいっぱい迷惑をかけることもあるけど、

ボクと一緒にいる時は大抵機嫌がいいような気がする。

 

みんなはいつ暴れ出すか気が気じゃなくって怯えてるけど……

すごく甘えん坊なところがあるから、構ってあげるとすぐに落ち着いてくれるよ?

 

話してるとガマンするのが本当にいやなんだっていうのがわかるし……

して欲しいことをやってあげるとすぐに機嫌はよくなるし。

 

 

「ヴィクちゃん」

 

「ん!!なになにぃ??」

 

「久しぶり。よしよし」

 

「!!!!! え、えへへ〜〜〜〜」

 

 

こうして頭をなでなでしてあげるだけでも、すぐに落ち着く。

……教官たちがそうしたところは見たことないけど、教えようにもなぁ。

ボクは最初以外ほとんど医務室だったから、もう教官と顔を合わせてないんだよね。

 

 

「うわ、本当におとなしくなってる……あのヴィクが。

ここくる前も荒れに荒れてたのに……信じられないわ……」

 

「言ったろ、こいつは特に懐いてるタチだってよ。」

 

「……そうね……リエルなら、あり得なくはないとおもってた……けれど」

 

「半信半疑だったってか?

……ま、素直に信じられるよか健全な方だな」

 

 

そんな様子を見守っている赤い子と青い……独特な気配を感じる子。

赤い方は以前にも見覚えがあるけど……うーん……なんだろう……?

アリウスって閉じられた場所だから、出会ってないはずはない……と思うけど。

いまいち……思い出せない……

 

あまりに独特なものだからもし知り合いだったら絶対わかるような気がするんだけどなぁ。

……でも、よくわからないことをわかる気になってもしょうがない。

 

 

「えーっと……」

 

「……なによ」

 

「あなたは……池霧(ちぎり)クレナさん……で間違いない、よね?」

 

「!!……ええ、そうよ。

……ふん、アタシのこと覚えててくれたのね」

 

「ん、今……」

 

「なんでもないわ」

 

 

こっちの赤い子は、そう。クレナ……クレナさんだ。

以前に何か揉めて、それから檻に入ってることが普通になってたって……

一応大きな訓練の時には出ている時もあったみたいだけど、こうして常に檻の外に出してもらえるってことはまずなかった。なんでも危なすぎるからって話なんだけど……

 

それでいうなら不機嫌なヴィクちゃんの方がとんでもない気もする。

多分、ボクには想像もつかないところであぶないって感じなのかなぁ??

 

 

「えーっと……それで……そっちの……」

 

「ん……ああ、俺か」

 

 

こっちの子は……やっぱり、見覚えがない……

クレナさんとおんなじだと仮定するなら……檻の中にずっと閉じ込められている人がいるって話をいつか聞いたっけ……

もしそうなら、ボクも憶えていないのもしょうがないのかなぁ?

 

 

「はじめまして…………で、いいのかなぁ。

おなじアリウスにいた子だから、そんなはずないとは、思うんだけど……」

 

「……んー……まぁ、リエルがそう思うんなら、それでいいんじゃないか。

ああ、はじめまして。リエル」

 

「う、うん」

 

 

はじめましてで、いい?

……そんな適当な……でも、ボク自身そうだと思うのも事実だし。

すこし違和感のようなものを感じながらも、この人と向き合う。

 

パッとみた感じは、すごく綺麗な人だと思う。

薄く、それでいてハッキリと存在感を感じる……水色のような青い髪が。

長く、お尻とかそんなところまで伸びて……それを後ろでまとめてる。

お外の本じゃ。ああいう髪型をポニーテールって言うんだっけ?

 

サオリさんも綺麗だなと思うこともあったっけ。

そっちはカッコいいって感じの印象を受けたけど、こっちの子は細工もの?って感じの……

 

 

「どうしたんだ、俺の顔をじっと見て」

 

「あ、いや……きれいだなーって。」

 

「んん?……綺麗……?

なんじゃそりゃ、んなこと初めて言われたぞ」

 

「くくっ……アンタが綺麗??いやー、そんなやつじゃないでしょ……」

 

「うるせぇ」

 

 

ただ、そんな姿とは裏腹な性格みたい。

かなり攻撃的な口調で、ぶっきらぼうな感じの。

トリニティでも見た目とは裏腹にって人はたまーに見かけるけど、この子は結構……

えーと、こういうのをなんていうんだろう……ぎゃっぷ、だったっけ??

 

 

「んで、トリニティでの生活ってどうなんだ?」

 

「あ、うん。……想像していたよりも、遥かにすごかった」

 

「そうか、そりゃ……よかったな」

 

 

ボクにそう聞く姿はどこか穏やかに見える。

なんというか、明らかに元々アリウスにいた子たちと何処か違う感じが……

心の底に何かを隠しているような気がしてくる。

 

まぁ、他の子も向こうのみんなとは全然違うタイプではあるけど……

 

 

「あれ、ところでもう一人の子はお話に……」

 

「ん?そういや居ないな」

 

 

この集まりでお話している時、そう言えば最初に見かけたのは4人だったと思い返す。

白、赤、青ときてもう一人……そうだ。

黒い髪の子がこの輪に入ってない。

 

あの子も見覚えのある子で、アリウスではだいぶ変に思われてたような……

 

 

「……あー、アイツなら多分少し離れたとこで……」

 

「むぐ、むぐ……」

 

 

あ、いた。

隅っこの方で座りながらご飯食べてる。無表情で黙々と。

……うーん、平常運転。

 

 

「やっぱ飯食ってる」

 

「ありゃ……ルランちゃんも変わんないね」

 

 

あの子もよく目立ってたっけ。特に名前は一度見たら忘れないくらいに。

たしか、飢黎(うえくろ)って……医務室利用のところに名前書くの、自分でも大変って言ってた覚えがあるなぁ。その姿もちょっとほっこりしてたり。

 

ルランちゃんはいつもお腹を空かせてて暇さえあれば保存食を齧ってたっけ?

美味しい美味しくないとかはあんまり気にした様子もないけど……

ただ、教官は空腹のまま放置すると備蓄の物に手を出しかねないって話してたような。

だから与えるだけ与えてほったらかすようにしてるとかなんとか。

 

……それっていいの?って今思っちゃった。

 

 

「そこでおとなしくしてる白いのと比べりゃ可愛げもあるけどね……

なんせ、なんでもいいからメシ食ってりゃああして黙って食ってるからさ」

 

「むぐ?……なんでもは……いいけど、どうせなら美味しい方がいい。美食」

 

「うぉ、喋った!」

 

「うん、そうだよね。食べ物は美味しい方がいいよ」

 

「リエルはよくわかってる。感激」

 

 

だよね。

食べ物は美味しい方がやる気とかいっぱい出るよね。

……この分だと送った食べ物食べ尽くしてないかちょっと心配。

 

 

「ルランちゃんも久しぶり。やっぱりいつも食べてるの?」

 

「うん。食べてる。でも前に送られてきたのはみんなでたべた。我慢」

 

 

あ、ちゃんとみんなと分け合ってくれたんだ。

流石にみんなのためのものを独り占めはしなかった……ふぅ……

 

 

「でも久々にリエルのごはんたべたい。あの味が恋しい。要求」

 

「え、今!?……流石に道具も場所もないんじゃ……」

 

「そんな無茶言わない。欲しいと思い続けてるだけ……」

 

 

そ、そう……うん、流石にそうだよね……

眉がへこんでいるように見えるけど、残念に思っててもできないから仕方ないよ。

 

 

---

 

 

「それにしても、すごいメンバーだよね」

 

「だなぁ」

 

「アタシも同感」

 

 

爆発的なエネルギーに満ちた純真無垢なヴィクちゃん。

静かな気配で、その中には桁違いのご飯への執念に満ちているルランちゃん。

ツンツンとした感じでこっちもアリウスには珍しいクレナさんに……

独特の雰囲気の……ええと……

 

 

「ん?……どうかしたか?」

 

「あ、ごめん。ええと……」

 

「……アンタ名乗ったっけ?はじめまして、なんでしょ?」

 

「ああ、そうだったな」

 

 

うん、名前を聞いていなくて一瞬考えが止まっちゃった。

それを察してくれたのかクレナさんが素早く切り出してくれたのに心で感謝する。

 

 

「俺は……ペールっていう。苗字は……あー……黄泉原、でいいや」

 

「黄泉原でいい???」

 

「うん、それでいい。まぁ細かいことは気にしなくていいだろ?」

 

 

そ、そんな適当な……名前なんて本当に大切なものなのに。

少なくともアリウスでもトリニティでもみんな大切にしてるんだし……

まるで自分のことなんてなんでもいいような感じだなぁ……

 

 

「それで、さっき何か言いかけなかったか?」

 

「え?ああうん。すごい独特なメンバー構成で……よくまとまってるなーって」

 

「……そう見えるか?」

 

「いやー、見えないでしょ……」

 

 

……そういうクレナさんの発言を否定できなかった。

確かに、このメンバーが一緒にやっていけるのかなぁってすごく思っちゃう……

スクワッドのみんなは長い付き合いで、おんなじ時間訓練を一緒にこなして……

そんな積み重ねを何重にもやってきたからこそ、強固な纏まりになってた。

 

弱音を頻繁に口にするヒヨリさんであっても、裏切るなんてありえない。

そう確信できるほどに。スクワッドのみんなは深くつながっている。

 

でも、この4人はみーんな違う方向を向いているようで、ぱっと見はバラバラだ。

多分“マダム”が命令して新しく作られた部隊って感じで……

確か、トリニティで聞いた言葉で近い内容が……ええと、急造品っていったっけ?

多分、そういうものだという印象だ。

 

 

「えーーっっ、ヴィク達まとまれてないのぉぉ??

みんな一緒だからまとまって動けてるんじゃないかなぁーーー??」

 

「……それでいいとも思う。団体」

 

「それでいいの?」

 

「いいんだよ」

 

「え?」

 

 

そういうペールさんの目は確かな確信に満ちている。

纏まれていなくっても別に構わないって……それ、部隊として……どうなんだろう?

いざって時に大変にならないの?

 

 

「ここにいる四人にゃ共通の認識がある。それで十分だ」

 

「きょうつうのにんしき」

 

「ああ」

 

 

ペールさんのその言葉をきいて、他のみんなもしずかに頷く。

その認識が、これ以上なく大切で重要なものなんだと聞かずとも伝わってくる。

でも、いったいなんなのか思いつかなかった。

 

 

「それって……?」

 

 

だから、つい聞いてしまった。

それをボクも一緒に大切にしていきたいと思ったから。

どんなすごいことなんだろう、と期待していた自分もいたけど……

 

でも、返ってきた答えは……

 

 

「簡単なことだよ。

 

俺たちは、みんなリエルに助けられた。だから、俺たちもリエルの助けになりたい。

 

それだけのことなんだ」

 

 

なんてことのない、感謝の気持ち……その一つだった。

助けたいから助けた、それがあの時のボクの精一杯だったけど。

 

 

「そ、それだけ???」

 

「うん!!!そーだよぉぉー!!」

 

「そう」

 

「ええ、そうね」

 

 

それがボクに返ってくるなんて、考えもしてなかった。

……でも、なんだか嬉しくて。こういうふうに思ってくれたことが、嬉しくて。

ちょっと、ウルって……目に来るものがあったなぁ……

 

 

「……おい、そう泣くなって。そう不思議なことじゃないだろう」

 

「あー、ペールがなかせたぁー」

 

「泣かせたー」

 

「おいやめろ、言い方が悪いだろうが」

 

「ふふっ……やーい、なーかせたー!」

 

「お前まで……やめいやめい」

 

「……ふふっ」

 

 

目の前のやりとりが微笑ましくって、ついつい口から笑いが溢れちゃう。

あの内戦を経験して、マダムの手によって笑顔にもなれない訓練を受け続けて。

それでも、みんなは負けずにこうして笑い合えるようになれたのが、嬉しくて。

 

涙が出ているのに、自分の心は晴れた空みたいに晴れやかだった。

 

 

---

 

 

「ふぅ……すっきりした」

 

ひとしきり泣いて笑って、いろんなよくないものが出ていったような気がする。

泣くのも笑うのも、すっきりするんだなって思う。

 

 

「ああ、助けになりたいって話なんだがな。

リエルに助けられた連中は多いから、そいつらはみーんなそう思ってるだろうな」

 

「そうだよそうだよぉ!ヴィクもリエルちゃんに助けられてなかったら、今ここにはいないんだよぉ!」

 

「え、ここにはいない??」

 

 

そんなふうに思っていたら結構な爆弾発言が。

ボクが助けなかったらここにいないって……

 

 

「……アンタ、憶えてないの?

内戦時代に命の危険にあった子達を助けて回ったの……」

 

「……うー、あー、う、うん……憶えてる余裕とか、その時はなくって」

 

「がむしゃらにやってたって……まぁ、それもアンタらしいか」

 

 

……あの時代はなぁ……

本当にいつやられちゃうか怖くて、一箇所に引きこもって……

それで、近くに転がってた重症の子を匿ったりしてた……ことはあるけど……

 

あんまり、昔のことは考えないようにしてたから……怖くて……

 

 

「アンタの力になりたいのは何もアタシ達だけじゃないわ。

みんな、できればアンタのこと助けたいって思ってる。

だから……リエルは一人じゃないから。それは忘れないであげて」

 

「うん、わかったよ」

 

 

その強い言葉が、またボクに勇気を与えてくれる気がする。

両方の肩に、少し重いものがのしかかっているような感覚……

みんなの気持ちを背負っているのを実感できた。




【アリウスフォーホース】
アリウスの問題児4名からなる即興部隊。名目上のリーダーはペール。
それぞれの個性と性格の強さから一見まとまりがなく、当人らも団結できているとは思っていないものの、一つの共通認識の為ならいくらでも動けるであろうチーム。

なお担当者であるペール以外のリーダーの素養は壊滅的だという。
誰かに譲渡した瞬間チームが分解してもおかしくないとは現担当の談。
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