いつも通りのものに戻ったけど……
なんというか、ボクの体力がごっそり持っていかれちゃった気がするよ……
「あぁ〜……」
なんともお間抜けな疲れたボクの声が教室内に広がる。
午前の保健体育が終わった後、合宿場のお部屋を借りて一眠りしてきたけどその上でへとへと気分がとれてくれない。アズサさんはケロッとしてるけど……
あ、今は前にやったテストの復習をやってるんだって。
ボクが受けたのとは違う、補習授業部のためにわざわざ用意してもらった内容なんだって。
一回やらせてもらおうかなとも思ったけど、”先生“はボクなら簡単に解けるって言うし……何より見せてもらった時明らかに前受けたテストより簡単に見えちゃったから一旦ストップ。
みんなのやる気とか削りたいわけじゃないから……
今思えばボクもこっちに来るかもしれなかったのかなぁ?
転入してから勉強をほったらかしてたら……う〜ん、でも入学の時に受けたテストの時点で大丈夫って判定されてたり?
まぁ、決めるのはボクじゃないから考えてもしょうがないけどさ……
「う、うあー、うあー」
「コハルちゃん、しっかり〜」
「リエル、コハルは結局どうしてああなったんだ?」
「さぁ……でも、一旦そっとしておいてあげよっか」
お昼休憩が終わった後、コハルちゃんはずっとあの調子で治らない。
多分、保健体育の時間で最後の方にハナコさんが耳打ちしたことが原因のような気がするけど、本当に何を言ったんだろうね。ボクの位置からじゃ聞こえなかったし。
午後になって、いつも通り“先生”主導の補習授業部に戻ったけど……
ボク自身は午前の保健体育の気持ちが抜けていないような感じがする。
こう、ぽわぽわしたような変な感じが……
「手が止まっているけど、調子が悪いの?」
「あ……止まってた。うっかりうっかり」
「……珍しい。私よりテンポ良く進めてるのに、ぴたりと止まるのは」
「ボクもずっと止まってないことはないんじゃないかなぁ」
一人でお勉強している時とかは特に。
ボク自身こういうことはのんびりやりたいなーって思ってるし、今のペースだって自分がこのくらいはいいかなってスピードなだけなんだけど。
……もしかして、これって早い?
そんなことないと思いたいけどなぁ……
かと言ってアズサさんやコハルちゃんのスピードが遅いとも思わないし。
……えーと、こういうのを自分のペースって考えればいいのかな。
みんな自分に適したものがあって、その通りにしたほうがいいって。
そういうお話がいつか出てきたような気がする。
「ただ、これが終わった後のお買い物どうしようかなーって」
「どうするも何も、ハナコが買うという話だろう?」
「でも、自分たちで選べるようになっておかないといけなさそうだよ」
「ん……それは……」
そう、今手が止まってたのは考え事してたから。
本音をぶっちゃけてしまうとボクの意識はほとんどこの後の買い物に向けられてたから、どうにもお勉強に身が入りそうになかった。ここの内容何回も復習しちゃってるし、大体覚えちゃってて……大体わかるのが、そう思う理由なのかな。
サオリさんあたりには怪しまれそうに見られるかもしれないなぁ。
結構あからさまだったみたいだし、シャンとしないといけないや。
「だがおしゃれなんてわからない。リエルもそうだろう?」
「うん、わからない」
「じゃあ選んでもらうのが今は一番じゃ……」
「うーん、そうかなぁ?」
おしゃれはそれ専用の雑誌とかあるみたいだし、いくらでも学べそうじゃない?
ほら、確かヒヨリさんがそんなの持ってたような気が……
休憩時間で読みながらニコニコしてたの思いだした。
確か複数持ってたような……本当にどこから拾ってくるんだろうね。
ガサッ……
「ん?」
あれ、今なにか……窓の方から音がしたような気が……
「どうしたんだ」
「いや、今なにか聞こえた気がするんだけど……」
「ん?……コハルの鳴き声じゃないのか?今でもあの調子だぞ」
「うあー、うあー」
「うーん、どうしようかな……」
「あら、では私が一つ、コハルちゃんに素晴らしい……」
「よ、余計に悪化しちゃいそうですが!?」
確かにコハルちゃんの声が大きいね。
それに今は一番窓際の席に座ってるし、別段不自然にも見えない。
でもなんだか窓の外からだったような気もするけど……気のせいかなぁ?
「あ、リエル。この辺りなんだが」
「ん、はい。……あー、ここね。わかりにくいから一緒に進めていこっか。
えーと、ここをよくわかる為にやっておいた方がいい場所があってね……」
ヒョコ
「むむむ〜〜〜〜〜〜〜
一緒にあんなふうにいられていいなぁ〜……羨ましいなぁ〜〜〜〜〜〜
ヴィクも一緒にあんなふうにしたかったよぉぉぉ〜〜〜〜〜〜…………」
---
「それで、本当にみんなで来て良かったの?迷惑にならないの??」
「大丈夫ですよ♡ 今から行くお店は広いので〜」
「うへー、うはー」
「アズサちゃんどうしましょう。一緒に来てくれているのにコハルちゃんが戻りません」
「うーん……いっそ叩くか?」
活動の後の放課後っていうのは本当にすぐやってくる。
人によっては長いっていうけれど、ボクにとってはすごく短い。
今日の放課後活動の目的は、当然服屋さん。
行き来が楽だからって話だから、みんなでちょっと遠出してトリニティとキヴォトスの中心部……えーと、DUとか言ったっけ?の近くにある店がいっぱいある場所に来た。
一応付き添いで“先生”も一緒だけど、ボクたちと少し距離を置いて着いてきてる。
みんな一緒でも良さそうだけど、“先生”曰く……
“あんまりくっついて、私が邪魔になってもいけないと思うから”
だって。
ボクはあんまり気にならないけど……みんなは気にしているのかな。
少なくともここにいるみんなはそう思ってなさそうに見えるけど、どうだろう?
「あ、ここですよ〜」
「おお〜」
「でかいな……」
ハナコさんが指差した服屋さんは、本当ににおおきかった。
いつも買い物してるスーパーくらい、広々とした建物だ。
本当にこの建物の中、全部服屋さんなの?すごくない?
「あっ!?!?」
「ん、どうしたの?」
……さっきまでコハルちゃんの隣で様子を見てたヒフミさんが突然大声を。
いきなりボクたちの目の前に駆け出して、一つの板を眺めて……
大喜びしてる様子で、こっちに向き直った。
「見てくださいみなさんっ!!
ここ、モモフレンズのコラボ企画やってますっ!!」
「え?……こらぼ?」
「コラボってなんだ??」
「おや、これはまた……ヒフミちゃんには嬉しい偶然。」
……えーと、ヒフミさんがいうには。
コラボっていうのはそのお店と他の場所が一緒になって何かをやるってことみたいで?
このお店の場合は今だけモモフレンズの服とか帽子とかが売っているんだって?
ふーん……って感想が心に出ちゃう。
ヒフミさんはすごく嬉しそうにお店に入って行って、すぐにコラボコーナーってところへすっ飛んでいっちゃった。本当に好きなんだなぁ。
ボクも初めて見て、とっても気に入ったけど……
服になったからってそれが嬉しいかどうかまでは正直……
いつもの服がモモフレンズだとすっごく目立ちそうでうーん、って感じがね?
いや、ヒフミさんのことをダメだと言いたいわけじゃないけど。
自分で着て目立っちゃうと良くないよねって思っちゃうんだよね。
……もしかしたらかえってその方がよかったりは……しないか。
「とりあえず、入ろっか」
「ああ、ヒフミも行ってしまったからな……コハルはどうしよう?」
「コハルちゃんは私が引っ張っていきますね〜」
うん、目的を忘れないようにしなくちゃ。
ボクとアズサさんはあくまでも自分たちの下着とか、そういうのを買いに来たんだ。
なんか流されそうになったけど、ちゃんと目的は果たそうね。
コソコソ……
「んんん〜〜〜〜………???
なにここぉぉ??……気になってついてきちゃったけど……う〜ん??
……この中に入って近づいてみるの……いや、バレちゃうかも……ぅぅぅ〜〜〜〜」
---
「先にサイズを測りたいのですが……店員さんに頼んでメジャーを持ってきてもらって」
「前に測ったものじゃダメなの?」
「こういうのは買うたびに見てもらった方がいいんです」
「そうなのか」
中に入って早速……っていうわけにもいかず、最初に採寸から始まった。
ここに来る前にもやったけど……ハナコさんの言うことも最もだと思う。
前の状態より大きくなっているかもだし、その都度やっておいて損はないよね。
その言葉を聞いたコハルちゃんがビクって反応したのはもう置いておこう。
きっと似たようなシチュエーションになったら全部反応しそうだから……
いまだになんでかはあんまりわかんないけど、もうそういうものだって思おう。
「では、アズサちゃんから行きましょうか。
リエルちゃんは……そうですね、適当に見ていてくれれば……」
「服を?」
「はい、気に入ったのがあれば持っていてもいいですよ〜」
「はーい」
採寸は一人ずつやっていくんだって。
先にアズサさんで、ボクは後。どのくらいで終わるかは……まぁすぐ終わるかな。
長くてもそれはそれでなんでもないと思うし、適当に服を見てようかな。
……えーと、どれもコレも見たことないものばっかりなんだけど。
こんなに色々あるとどれがいいものなのかとかボクの目じゃわかんなさそうだなぁ。
でもキラキラしてたり、逆に色が一つだけで着やすそうに見えたり……
同じ服とは思えないくらいにいろんな感想が出てきて。
例えばこのジャージ?ってものはアリウスで支給された訓練服と似たような感じがするけど、あっちと比べて固そうじゃないし、それでいて動きやすそうに見えて……。
こっちの寝る時専用のパジャマはふわふわで、着てたら気持ちよさそう。
……アリウスじゃ寝る時も同じ服だったから、こんなのがあればどれだけよかったか……
あ、服といえば。
トリニティ総合学園の正式制服もたくさんずらりと並んでたよ。
ボクやアズサさんが持ってるのは入ってくる時、専用に用意してもらったものだけど……
こういったみんなが持ってるものだって持ってた方がいいかもね。
毎日おんなじ服着るのも、だいぶアレだと思うし……
……ところで下着置いてある場所ってどこかなぁ。
適当に服を見ておいてって言われたからそうしてるけど、目的のものを見ておくのも……
「リエルちゃーん、採寸ですよ〜」
「ん、はーい」
その前に呼ばれちゃった。
……まぁ後でも見れるしちゃっちゃと採寸終わらせちゃえばいっか。
それじゃいこいこー。
ジー……
「ああっ!!いっちゃったぁぁ〜…………
せっかくいい感じに見える位置だったのにぃぃぃ〜〜〜〜………
……でも、アズサと一緒に何してるんだろぉぉ〜〜〜………???」
---
「……え、えーと……コレだけの大きさは……正義実現委員会のハスミ様以来ですね……」
「な、なんとっ!! ハスミさん程!?」
「???……それってすごいの?」
「え、ええ……」
採寸した後なんか知らないけど驚かれちゃった。
ハスミさんの名前が出てきたのは一体どうしてなんだろう?
えーと、それだけ大きいと……何か大変だったりするの??
「それで、ボクの下着は……」
「え!?……は、すみません!!すぐにお持ちします!!!」
すっごく驚いた表情で固まってた店員さんがすぐに店の奥の方へと消えていく。
まるで消した電気をつけたような感じの……ううん、うまく表現できない……
ともかく、そんな感じですっ飛んでいった。
それにこの買い物の発端であったハナコさんまでびっくりした状態になってた。
普段はずっと余裕そうで、真剣な時でも時折いつもの調子に戻ってたりしたから、完全に驚いたまんまっていうのは初めて見るような気がする。
コハルちゃん?もう固まってる。凍ってる。
アズサさんが背中持ってなかったら多分倒れてそう。
まぁもうその辺は置いておいて……
ここでハスミさんの名前が出てくるってことは……ハスミさんもおんなじくらい、ボクみたいな苦労があったんだろうか。下着のサイズとかそういうの。
「お、お待たせしました……こちら、当店で一番大きいサイズとなります」
「え、そんなに?」
「はい」
へ、へぇ〜……い、一番おっきい……
そ、そんなになんだ。このお店で一番大きいものじゃないとダメなくらいなんだ。
……そりゃ今持ってるやつが痛いなーって思うわけだよね。
今つけてるのって確か大きさ的には……いやよく覚えていないけど、普通の大きさくらいだったわけで、それくらいの大きさしか用意できなかったとかなんとか。
「じゃあつけるね」
「は、ハイ」
……ところで周りからゴクリって生唾を飲む音が聞こえるような気がするんだけど。
一体なんでなんだろう?
確かにハスミさんのは大きいなーとは思ってたけれど、そんなにすごいのかなぁ。
この前体にぶつかっちゃった猫さんはなんかお胸に関して色々いってたのを思い出したけど……みんなそんなにコレが気になるのかなぁ……?
……うーん、アリウスでも感じたことのない感覚でなんかそわそわするなぁ。
こんな中新しい下着つけるのかぁ、落ちつかなーい……
「んしょ」
でも気にしててもしょうがないしとっととつけちゃう。
こんなのは素早くやっちゃえば大したことはないんだって以前学んだ。
……おぉ〜……全然違う。
軽い、体が広々としてる感じで動きやすい、何より痛みとかがない。
……確かにこれ一つだけでも全然違うなぁ〜……体験するとしっかりわかる。
「終わったよー」
「リエルちゃん早……ってもう上着てるんですか」
「え?だって着ろって……」
「あくまで試着ですよ〜」
あー……確かにまだ買ったわけじゃないから……うん、早とちりしちゃった。
---
「ありがとうございましたー」
そんなわけでその場で会計を済ませて値札を切ってもらって。
改めて着てから出てきた。
うん、本当に楽だ……自由って感じがして実に気持ちがいい。
「えへへへへへへ……」
「……ヒフミの笑顔がすごいアレなんだけど……」
「もー、コハルちゃんったら……さっきまでのあなたも相当変でしたよ?」
「う、うるさいっ!!」
ヒフミさんは鞄いっぱいにモモフレンズのコラボ服をたくさん入れ込んでた。
ボクたちと一緒に来てたはずなのに、なんか遠くにいたような……
でもお買い物ってこういうものだってハナコさんの言葉もあるからあんまり悪く考えるのはやめてあげよう。ヒフミさん本人が嬉しいならボクもいうことはないから。
あ、でも一つくらいボクも買った方がよか──
「ん?」
ふと視線を横にそらしたらなんだか白い影が目に入ったような……
うーん、一瞬すぎてわかんなかったけど……なんか見たことあったような気が……
「ではこのまま夕食に行きましょう♡
私この辺りだといい場所知ってるんです〜」
「へ、へんな店が近くにあったりしないよね……」
「確かにお腹すいたな」
「ハッ!!……す、すみませんなんだか……あ、リエルちゃーん!行きましょうー!!」
「あ、はーい」
……うん、一旦置いておこう。
多分気のせいだと思うし、みんなの前だからあんまり変に気にするのもね。
---
トテテテテ……
「ううううう〜〜〜〜〜〜〜〜…………
こ、こんなについてっちゃって、迷惑かけちゃったらどうしよぉぉぉ〜〜〜〜………
でもでも、ヴィク気になってしょうがなかったから、体がかってにぃぃぃ………」
“ねぇ、君。
ちょっと、いいかな“
「ひょえっっっ!!?」
”えっと、あまり驚かなくってもいいんだけど……
補習授業部のみんなのことずっと追いかけていたみたいだから、気になっちゃって“
「え、あ、え、そのぉぉ〜〜…………えーーーーっとぉぉぉぉ」
”……気になる子がいるの?
もし君がいいのなら、今から私が聞いて来て……“
「あっ、あああああああっっっっっ!!!
ごっ、ごっ、っごご」
”ご?“
「ごめんなさいでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!」ピュー‼︎
”あ、ちょっと!
……すごいスピードで行っちゃった……“
”一体あの子はなんだったんだろうか……“
【その後】
ペール「お前なぁ……」
ヴィク「ごめんなさいぃぃぃ〜〜〜…………」ズーン……
ルラン「あんまり怒っちゃだめ。不問」
クレナ「正直ゲンコツくらいはやってもいいと思うけど」