みんなが合宿場に帰る中、ボクはいつも通りに帰路へつく。
でも、その前にみんなから提案が……
「すっかり日も落ちちゃったねー」
「そうですね〜」
晩御飯を食べた後、もうほとんど真っ暗になっちゃった空模様。
ちらほら自分のお家や部屋に戻っていく生徒さんもちらほら見える。
みんなもホクホク顔でコレから合宿場に戻ろうかーって感じの気持ちなんだろう。
ところでお店の中でみんなアズサさんにやたらとご飯をあげてた気がする。
まぁアズサさんって結構軽い方だったはずだから心配になっちゃったのかなぁ?
すっごく遠慮してたけど最終的にはヒフミさんに押し切られちゃってたし、何よりあのままだと自分のお口にスプーンを押し込まれていただろうから……
向こうで染みついたものって簡単に取れないよね。
食べていいってなっても、気がつけばついつい節約しなくちゃって考えてしまう……
ボクももっと食べた方がいいって言われたけど一気に行っちゃうとうげーってならない?
たくさん食べれたとしても、詰め込むよりもゆっくり食べたいなぁ。
「それじゃそろそろ解散だね〜」
「あ。すごく馴染んでいましたが……そういえばそうでした」
「ん〜……」
あと数十分もすればこのあたりも真っ暗になっちゃうことだろう。
正直にいえば真っ暗闇でもその中で歩くの慣れてたりするから問題はないけど、明るいうちに帰れるに越したことはないから、ボクもそろそろ戻ろう。
そう考えてたら……
ヒフミさんがどうにも難しいような、何か考えてる顔をしてた。
片手にいっぱいモモフレンズの服とかを詰め込んだ袋があるのも気にせず。
うんうんと唸ってた。
「どうしたの?」
「あ。……うん、せっかくなら……
リエルさん。この機会にお泊まり会をしませんか?」
「おとまりかい?」
「はい」
お泊まり会……要するに、合宿場に来て欲しいってことかな。
確かにみんなと一緒にいるのは楽しいと思うけど、解散時間じゃないの?
「あら、いいですね!
今からお別れするのは寂しいと思っていましたし、せっかくなのでみんなで」
「う、うん。私も賛成、かも」
ボクから断ろうにもハナコさんもコハルちゃんもすごく目を輝かせて見てる。
この表情を断って歪ませるのも嫌だと思うし、何よりボク自身興味があった。
お泊まり会ってそんなに楽しいのかなって。
「ん……まあいいんじゃないか」
アズサさんもみんなの声に乗っかるように賛成してくれる。
こっちもお泊まり会がどうとかあんまりよく分かってないように思えるけど……
そこは大した問題でもないか、多分。
だってみんなで一緒に過ごすんだから。それ自体は変でもなんでもないし。
あ、でもお着替えとかどうしようかな。
ボクの服とかそういうのは全部いつものお部屋にあるし……
寝る時の服とか今日買ったわけじゃないから手元には……
“確かにアリじゃないかな。
確か、お客さん用の寝る服とかあったはずだから”
「へ?そうなの?……うん、そういうことなら大丈夫かも」
その懸念を“先生”が何気ない呟きで消してくれた。
お着替えあるなら大丈夫……だと思う。
今日体がおっきいって言われたから入るかどうか微妙かもしれないけど……
その時はその時で考えようかな。
「それじゃみんなで一緒にいようかな」
「は、はい!ではみんなで戻りましょう!」
それにしてもお泊まりかぁ……
想像はしにくいけど、みんなで集まったら何するか……
コレもまたお勉強、なのかなー?
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太陽もすっかり沈んで空が真っ暗になってしまった後。
みんな一緒に合宿場の同じお部屋に揃ってダラダラ過ごしていた。
何か特別なことをやるわけでもなく、思い思いの気持ちで過ごしてる。
アズサさんはこの伸び伸びとした空気の中でも自分の装備を整備してるし。
ヒフミさんは今日買って来たモモフレンズのグッズを眺めてる。
そういうボクは真っ暗になったお外をゆっくり眺めてた。
たまにボケーっとしながらお空を見上げたくなる時がある。
こう、何かしなくっちゃって気持ちがずっとあるのに、それが一瞬消えちゃって。
そんな時にふと見上げたら、なんか綺麗で落ち着いてくるんだ。
あの頃はそんな余裕なかったから、コレも新しい趣味の形なのかなぁ?
なんでも、空を見上げるための道具だってあるって話だから。
えーと、望遠鏡……だったっけ?
どんなものか見に行った時、その値段の高さに驚いちゃったっけなぁ。
そこまでしてお空を見たいと思ったわけじゃないし、見てただけで終わったけど。
「うーん、穏やかに過ごすのも悪くありませんが、コレではお泊まり会って感じがしませんね……うーん」
「でも、こういうのでもいいんじゃない?無理に何かするって違くない?」
「え、何かしなくちゃいけないの?」
「あ、えと。そんな意味で言ったわけじゃない、です」
そんな空気の中、ハナコさんがつぶやく。
どんなことを想像してのものかはわかんないけど、確かにコレじゃみんなで一緒にいるだけだなぁ、とも思った。それがいいとも思うけど……特別って感じはしないよね。
せっかくこうして集まったのなら、楽しいことをやりたい。
でもボクはその楽しいことをあんまりイメージできないのがね。
そういうの、みんなでお話しすることくらいしかやって来てなかったのが……
あれはあれでのんびりできて楽しい時間だったけど、進めるのは何か違うなーって思うし。うーん、楽しいこと……楽しいことかぁ……
「みんなで楽しめることって、なんだろう?」
「う、それは、その」
「……リエルちゃん、意外と難しい質問しますね……」
「ん、みんなも自分の銃を整備しないのか?こういうのは日頃の努力が……」
「あ、アズサちゃん。そういうことではなくてですね?」
ふとした呟きがみんなを困った顔にさせちゃった。
こんな中でもアズサさんはアズサさんだなぁ、と思いつつ。ボクもみんなとおんなじ様に悩んでる。実際こんな時にやることが銃の整備も絶対違うしなぁ。
みんな揃ってどうしよう、って思ってた時にコンコン、とドアからノック。
ここにいるみんな以外で合宿場にいるのは“先生”だけだから、多分“先生”かな。
その音を聞いたのと同時に、すぐヒフミさんがドアへ向かう。
「“先生”ですか?どうかしましたか?」
“ああ、合宿場に何かコレから使えそうなものないかなーって探してたらね。
昔使ってた子がいたのか、置いていったのかいいものがあってね”
「いいもの……?」
“今日のお泊まり会でも、みんなで楽しめそうだから持って来たんだ。
倉庫に眠ってたすごろくを”
「……おおぉ〜……確かに、それはいいものです……!」
すごろく?
ええと、なにそれ?
初めて聞くものだけど……少なくとも今まで聞いたことはないなぁ。
“それじゃあ、コレ。あんまり熱中しすぎて夜更かしをしない様にね”
「はい!」
「……すごろく……確かに、5人もいるなら楽しめそうです!」
「コハル、すごろくってなんだ?」
「う、えーと……(今までやったことないし説明しにくい……)」
ヒフミさんが“先生”から受け取ったものを持って戻って来た。
箱から、中身を出してベッドの合間……というか部屋の中心に置いて準備してる。
一見カラフルなものだけど、コレでどうやって遊ぶのかいまいち分かりにくい様な気がする。多分初めて見るからなんだろうけど、だからこそボクは興味深かった。
それで、コレがどんなものなのか軽く教えてもらったけど……
なんでもみんなでサイコロをふって、出た数字の分自分の選んだコマってものを動かして。それを一番最初にゴールへ運べた人が勝ちってものなんだって。
ただ、このすごろくには進んだ場所によっては何かイベント?ってものが書かれてて。
そのイベントに書かれてる通りにしないといけないって。
話を聞いただけじゃ分かりにくいからとにかくやってみようってことになって。
アズサさんも銃の整備が終わったみたいだからすぐにやって来た。
多分まだ整備するところあったら整備を続けてたんだろうなぁ、って思いながら。
それでもなんだかワクワクしてそうに見えるのは……アズサさんもコレに興味を持っているからなのかな、って思うな。
「えーと、順番ってどうするの」
「定番の決め方はじゃんけんとか、サイコロの出た目できそうとかですが……」
「う、ぅんと……初めてやる、アズサかリエルさんのどっちかからでいいんじゃ……」
「あー、ですね。コハルちゃんのいう通り、ここはお二人のどちらかから……」
どっちかからかぁ。
そんなんでいいのかな、と思いつつみんなの言うことだから大人しく聞いておく。
ボクは人のやってるところを先に見たいから、アズサさんに譲ろうかな……
「よし、ここはアズサさんから」
「よし、ここはリエルから」
「「え?」」
ほとんど同時に自分たちが譲る選択をしたから、互いにきょとんとした様に向き直る。こんなところで考えることが同じって、なんだかすごいことの様に思えちゃう。
でも、ここはアズサさんの様子が見たいから、やっぱり……
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、ここはアズサさんが先に……」
「いいや、まずはリエルがやるべきだと思う」
「いやいやここは」
「いや、ここは」
互いが互いに先にさせたいって気持ちはどうにも譲れないものみたいで。
こんな言い合いが何回も続きそう。
うーん、アズサさんとこうするなんて思いもしなかったけど、それでも……
ボクは後にしたいから、ここはアズサさんがお先に……
「ふふっ、二人とも仲がよろしいみたいで♡」
「ハナコ……そう言うこと言ってる場合?」
「お二人とも、リエルちゃんとアズサちゃんがああしている間にこちらも順番を決めてしまいましょうか」
「そうですね。……あ、私は最後で大丈夫ですので」
「ダメよそういうの、公平に決めるの!」
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「はい、それじゃあリエルさんがお先ということで」
「は〜い……」
「……り、リエルさんがあんな声出すの初めて見る……」
「いえいえ、誰でもそういう気持ちになることだってありますよ〜?」
結局互いに譲り合うのが止まらなくって。
見かねたヒフミさんがサイコロを振って決めましょうってことを決めて。
見事に6を出したボクがお先にやることになっちゃった。
ボクは後がよかったのに〜……
アズサさんはなんでか得意げな顔してるし……
くっそー見てろー、絶対このすごろく、アズサさんに勝ってやるからな〜……
なんて普段じゃ思わないこと考えながら、改めてサイコロを振る。
えーと、出た数字の分だけ進めばいいんだっけ。
それじゃ、ころころころ……
「あ、1か……」
「ふふ、幸先が悪いな」
「もう、アズサさんったら!」
出た数字は一番小さかった。うーん、ついていないなぁ……
その通りにボクの選んだコマを動かす。
ことん、と軽快な音が一回鳴って……ええと、なになに?
「このマスに止まった人は、隣にいる人のいいところを言う。
言えた場合は、自分のコマを前に3マス進めてもいい……だって」
「えっ!?」
「あら〜」
「……リエルさんのお隣といえば……」
「私か、コハルかだな」
こんなこと書かれてるんだ。
隣のコハルちゃんがビクッ!って肩をあげて驚いているのが気になるけど……
うん、ここに書かれていることができたら進んでいいんだよね。
それじゃあ、その通りに……
「えーと、アズサさんと言えば。
最初に会った時は冷たい人かもって思ってたけど、みんなのことを思って動けるし、誰かのためにいいことができる人だって思うな」
「ん……」
「それに、この前にもボクがちょっと……ダメになりそうな時に励ましてくれたし。
すっごく優しい人だと思ってる」
「そ、そうだろうか……みんなに冷たいって、リエルもそう思ってたんじゃ」
「いや、そんなことないよ。アズサさんは、いい子だよ」
「……んー……」
思う限りのことを言ってみたらちょっとアズサさんが俯いちゃった。
「おぉ……アズサが照れてる」
「えーと、コハルちゃんは頑張り屋さんで、毎日のお勉強も必死にやってる。
それに、周りのことをしっかりとみているし……」
「え!?わ、私も!?」
「り、リエルさん……みんなのことをよくみてるみたいです……」
「この様子だとヒフミちゃんのことも、私のことも言ってくれそうな勢いです……!」
せっかくだからコハルちゃんのことも思いつく限り。
言ってる間どんどんコハルちゃんがプルプル震えて頬を染めてる様に見えるけど……
ここに書かれていることをやれってことだから、我慢してねコハルちゃん。
【雅舞 リエル(4)】
言われたことは真面目にやるタイプ。
その上で全力を尽くしてしまう傾向がある。
なのでこう言う遊びになるとどんなことでも真面目にやっちゃう。
それでも嫌だと思うことは嫌だと言い切れる気持ちの強さも持っている。