アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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みんなで盛り上がったあとはぐっすり夢の中。
そして気がついたら太陽が昇っている。
いつもとは違う朝。それでも、次の動きはすぐそこまで……


とある少女と、伝言

「ん……」

 

気がつけば朝になっている日なんて、そうそうないけど。

今日に限っては、いつもとおんなじ太陽が全く別のものに感じる。

 

みんなはまだ合宿場のお部屋の中、お揃いで使っている寝室で眠っている。

一人一つのベッドを使ってぐーぐーと寝息を立てながら、体を休めている。

あんなにみんなで盛り上がっていたはずなのに、世界そのものが変わっちゃったみたい。

 

今日は今までの起床時間よりも随分早く起きちゃったみたい。

時計の針は早朝付近になってて、太陽がいつもの高さまで登りきってない。

その景色をいつもと違う場所で見ているから、別だって思ったのかも。

 

それにしても昨日は楽しかったなぁ。

アズサさんが悔しそうにもう一回やろうって言い出した時はアズサさんってそんな顔できたんだ……って思っちゃった。なんかごめんね。

もう寝る時間だからまた今度ってなった時の寂しそうな声も、ボクは知らなかった。

 

これが知らない側面を知るってことなのかもしれない。

たまには自分の思う人の姿を取り払って、改めて知ることも大事なんだろう。

 

さてと、せっかくだから外に出てお散歩でも……

 

 

「よ、リエル」

 

「ほへ???」

 

 

しようと思ったら、柱越しに声がかかる。

補習授業部の誰でもない声に一瞬戸惑って変な声出ちゃったけど……

聞き覚えのある声だったから、すぐに誰のものだったかを思い出す。

 

 

「……ペールさん?? ど、どうしてここに?」

 

「ああ、ちょっと伝えなくちゃいけないことがあってな。

本当は前みたいに拠点のポストに入れるつもりだったんだが……いないって聞いてよ」

 

「そ、それでわざわざここまで……危なくなかったの?」

 

「まぁ、危険だよな。だがこそこそ動くのは得意だろう、互いにさ」

 

「それはそうだけど」

 

 

ボクの心にある緊張とは対照的な、飄々とした声。

こっそりここまでやってくるのに体験した苦労を感じさせない感じがする。

 

 

「ルートに関してはヴィクのやつが勝手に近くまで行ったのを使った。

あいつ自身もここまでくるのに見つからなかったって話だからな」

 

「へ? それ……よかったの?」

 

「よくはないよな。……まぁ、こっちで叱っておいたから多めに見てやってくれ」

 

「……わかった」

 

 

ヴィクちゃんが来てたって……全然気が付かなかった。

いつ来たんだろう……あの子は寂しがりな節もあるし、久々にあった頃も別れる時にいやだいやだーって暴れていたっけなぁ。

我慢の限界なのも、まぁわかるけど……そこまでやってたんだなぁ……

 

 

「それで、伝えたいことって?」

 

 

ヴィクちゃんのことはおいといて。

ペールさんがここに長居するのも危険だし、もしもアズサさんに見られたら大変だ。

手早く、それでいて聞き逃さないようにお話を聞こう。

 

 

「ああ、次のアリウスとの接触が決まった。

明日の午後9時、場所はいつも通りの場所……今回はリエルとアズサ、どっちも揃ってもらうって話だ」

 

「ん……ボクと、アズサさんが一緒に?」

 

「来る順は別段なんでもいいらしい、アズサの方もなんか都合がありそうだしな。

んで、こっからが重要な話だから、よく聞いてくれ」

 

「重要な……」

 

 

次の接触……以前にフォーホースのみんなと出会って、もう?

間隔が近すぎるような気もするけど、一体……

 

 

サオリが来る(・・・・・・)

 

「!」

 

 

ボクとアズサさんと……サオリさん。

今まではアズサさんの方に集中して接触してたみたいだけど……ついに。

ボクの方にも会いに来る……

 

ただ、重要というには。

いずれ来ることだと思うし、そんなにしてまで伝えること……

 

 

「おっと、多分こうまでして伝えることじゃないとか思うだろうがな。

肝心なのはその先だよ」

 

「ん……」

 

「姫様がな、リエルにサオリのことよく見てあげてほしいってよ」

 

「え、姫様が?」

 

 

サオリさんのことを、見てほしい……

ずっと一緒にいるはずのサオリさんのことを、ボクに?

それって……

 

 

「ああ。今のサオリは無理してるから、リエルが必要だって。

……まぁ、本当かどうかはさておいてな。

惚気るように言ってたぜ、サッちゃんとか呼びながら」

 

「……あのー、それって。まさか仮面……」

 

「ん、取ったな。俺もアレにはちょっとびっくりした。

姫様ってあんな愉快な人だったのかって……」

 

 

ほ、本当に姫さまがそんなことを……ボクの前以外でもやるようにって。

“マダム”にバレでもしたら大変なんじゃないのかなぁ……

それにしても、姫さまがそこまで元気に色々やってくれてることが、とっても嬉しい。

やっぱりボク一人だと限界があるから、心強い限りだ。

 

ちょっと活発すぎるような気もするけど。

最初見かけた時は儚げな雰囲気を纏っていた静かな人だって印象だったのに、

今では元気いっぱいパワーを感じるような……

 

おかしいなぁ。

こんな感想が出てくる人って本当にお姫様って呼んでいいのかなぁ。

お外で聞く物語だと、守ってあげたくなる人って感じをみんなが持ってるけど、今の姫さまはみんなを守る人って感じに……

 

 

「おい」

 

「へあっ?」

 

「呼びかけても黙りこくって……一体どうした?」

 

「あ、なんでもない。姫さまに驚いてただけだよ」

 

「そうかぁ?」

 

 

──考えがそれてる間にペールさんが正面に来てた。

こうして顔を合わせると、やっぱり綺麗な顔をしてるなぁって気持ちが出る。

少し表情とか、目つきの部分もあって他の印象も出てくるけど……

 

 

「んで、だ。

サオリは今回接触時間よりも前に到着させるらしいが、できればリエルも先に行ってほしい」

 

「先に? えーと、それはいいけど……どうして?」

 

「姫様曰くだが、サオリは一対一で話したほうがいいと思う……ってさ。」

 

 

で、サオリさんのことに戻して。

……一対一、それって……前の姫さまとボクのような感じで?

確かに、医務室でもお話する時は一人づつが一番やりやすかったけど……

 

 

「アズサさんは?」

 

「そこは俺も気になって聞いといたが、多分アズサと一緒だとサオリから本心を引き出せないんじゃないかってさ。引き出したい本心とやらがどんなもんかまでは、言ってくれなかったが」

 

「本心……」

 

 

本心、要するに本音……

姫さまは、サオリさんからそれを引き出したい……

確かに、サオリさんはみんなのリーダーで、弱いところとかそういうのは見ないけど。

ボクにそれを聞いてほしいって……

 

 

「んじゃ、伝えた……ああ、そうだ。コレ」

 

「……ん、封筒」

 

「アズサに渡しといてくれ。ここにいるんだろう?」

 

「内容は、今聞いたこととほとんど同じなんだよね」

 

「ああ、接触の知らせ。 まだ当人にも連絡はいってないからな」

 

 

疑問は尽きないけど、やるべきことはわかった。

それによってサオリさんをどうしたいのか、今はわかんないけど。

多分、姫さまはいい方向に持っていきたいんだと、思う。

 

そう信じる。

 

 

---

 

 

「これ……サオリと、二人で?」

 

アズサさんと二人きりになれるタイミングは割とすぐに来た。

今日は朝起きてすぐ活動するんじゃなく、朝の自由時間が終わってから補習授業部の活動を始めるってことだから、その時間を使って。

 

 

「うん、ボクは一旦自分のお部屋に戻ってからいくつもりだけど」

 

「困ったな……ここからじゃ少し、集合地点から遠い」

 

「なら遅れるって言っておこうか?」

 

「ん……」

 

 

少し考え込むアズサさん。

アズサさんの今の目的はアリウスのやることをどうにか食い止めること……

ただ、サオリさんと今戦ったり敵になったりする理由はないはずだから。

こうして会い続けるのも大切だと思う。

 

当然アズサさんだってそこはわかってるだろうけど……

一回遅れるくらいならサオリさんは……うーん……

でも、厳しい時はかなり厳しい人なんだよね、サオリさんは……

 

 

「大丈夫、ボクに任せて」

 

 

と、胸を叩きながらアピールしてみる。

正直大丈夫な根拠とか一切ないんだけど、時には勢いだって大事だ。

やけっぱちになってもダメだけど……

 

 

「……なら、任せてもいいかな。こちらもできるだけ急ぐから」

 

「うん。でも、急ぎすぎて変なことになっちゃダメだよ」

 

「変なこと……うん、今までも大丈夫だったから問題はないと思う」

 

 

今までも大丈夫だった……う〜ん。

……う〜〜〜ん……

……大丈夫かなぁ、補習授業部が結成された時の衝撃は今でも忘れられないんだけど……

 

……いや、あの日が特別におかしすぎただけで、今では……

……いまいち気持ちが揺れてる気がするけど、アズサさんを信じよう……

 

 

グゥ~

「あっ」

 

「……リエル、今の音」

 

 

一通り話したらお腹が……

その音で、ボクとアズサさんの緊張が一気に解けていくのを感じる。

 

 

「うん、ごめん。お腹が鳴っちゃった」

 

「確かに、まだ朝ごはん食べていないからな。

今はみんなでレトルトカレーを用意してるから、一緒に食べて行こう」

 

「カレー! いいよね。今日のはご飯とパンどっちになるのかな」

 

「ご飯じゃないかな、そっちの方が用意も簡単だし」

 

 

この気持ちを次に持っていくのは夜にして。

今はしっかり英気を養おう。

それにしてもカレーかぁ、自分で作ると大変だって本には書いてたけど……

なんか、スパイスの調合とかなんとか。

 

でもレトルトカレーは初めから出来上がってる状態で保存してあるから手間暇かからず、

お湯と食器があれば食べられる優れものだ。

その上美味しいから、コレも調達して送ったりしてる。

流石にアリウスでもそのくらいはあるから、問題なく食べれるはず。

 

あ、ご飯は流石に難しかった。

レンジで温めると食べられる専用のものもあるみたいだったけど、レンジはないから。

そういう設備の違いも考慮して送ってあげないといけないのがもどかしい。

 

妥協案として買う時は必ずパンも一緒に入れている。

中にはカレー用のパン……ナンって言ったっけ?それを用意したり。

ボクには普通の食パンの方が食べやすかったけど、ものは試しで。

 

 

……コレ、サオリさんにも渡してあげようかな。

次会う時みたいに直接渡さないと自分で食べてくれなさそうだし。

……この前見つけたキャンプ用品、お外でも料理できる道具も持って行って……

 

……あ、コレアリかも。

 

 

---

 

 

「うんしょ、うんしょ……これ、大変だなぁ……」

 

翌日。

約束の時間……それよりもかなり早めの夜。

いつもとは違い、結構な重さを感じるリュックを持ちながら集合場所に向かっていた。

 

思い立ったがなんとやら、早速サオリさん用のご飯を器具ごと持って行ってるんだけど。

コレがまた大変だった。

重さはいつもの物資を運ぶのとおんなじか、それよりちょっと厳しいくらい。

でも、器具って意外と運ぶには大きくて、持ち運びのカバンが大きくなっちゃった。

 

この気持ちは、ヒヨリさんがいつも背負ってるリュックを持ってるような……

……今更だけど、あのリュックの中身にはどんなものが入っているんだろう?

覚えてる限りだと、外で活動する用の服に、応急手当用の救急箱。

趣味で集めてる拾った雑誌とか、飲み水入れる水筒とか、銃のマガジン……

あとは……確かサオリさんがスクワッドのみんなの為に予備の装備も入れてるって……

 

……そんなに色々詰め込んで、重いだろうに。

それをなんてことなく持ち運んでるんだよね。

……ん? そう考えるとヒヨリさんって意外と力持ち……?

 

……そんな感じには今まで見えなかったけど、コレも視野の違いなんだろうか。

なんていうか、自分の見えないものが見えるって……すごいね。

なんてことなくても、ハッとしちゃう。

 

 

今もリュックと物資入りの袋とで、階段を上る大変さの違いだって実感してるし。

手すりを持たないと後ろに転がっちゃいそうで怖い。

実際はそんなバランス崩れるようなこともないけど、重みが違うっていうか。

手に持って運ぶのと体全部でリュックを背負うのはやっぱり違うなぁ。

 

だけどこんな程度で根を上げてちゃアリウスは生き残れなかった。

体の中にある体力をしっかり使って上まで運んでいく。

 

そしていつも通りに、ポジションへ到達した。

前にヴィクちゃんが勢いよく開けてたからか、若干ドアが壁に当たった跡が……

そんなに勢いつけて、前みたいにばてちゃったりしてるんだろうなぁ。

 

 

さて、サオリさんがくるまではまだ時間がありそうだし……

準備をしよう。

後で持ち帰っても大丈夫なように、洗いやすい木のお皿とスプーン……

あと、持ち運び用のコンロとこのガス缶をセットして……

 

手持ちの鍋にお水セットして……あとはしばらく待てば、お湯ができる。

この中にレトルトカレーを放り込んであっためれば、食べれる。

 

……レトルトもすごいけどこのコンロもいいものだなぁ。

みんな火もお湯も苦心してるから、これ一つあるだけで……まるで革命だ。

 

実際の革命は起こっちゃったら大変だけどこのくらいならいいものだと思う。

ただ、取り扱いに気をつけてもらわないと……

 

 

カン、カン、カン……

 

「ん」

 

 

あ、来た。

今日ここにやってくる足音の正体は、もう知っているけど……

 

 

「……リエル?? その、何をしているんだ……???」

 

 

やってきたサオリさんは、その。

ボクが知っているものよりも遥かにいい血色の顔色をしてて。

トゲトゲしてる雰囲気を感じる状態じゃなく、穏やかな声で……

 

それでいて困惑した声で、ボクの方に語りかける。




【その頃の姫さま】
「ねぇ、みんな。お外……興味ある?」


「ん、ええ……ええっ!?」
「ひ、姫さま!!」
「ば、みんな声でか……」
「か、仮面……仮面を……!?(ヒソヒソ」
「い、一体どうして……え、おそと……??」


「ふふっ。
みんな、少し静かにして……私のお話を、聞いてくれる?」
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