このお話は現状公開されているストーリーよりもある程度未来のお話となります。
その辺りご了承の上、閲覧してください。
ここはシャーレ本部。
普段“先生”が日々キヴォトスに発生する問題や一般業務に追われている場所。
今日、ボクことリエルはシャーレにやってきてお手伝いをする“当番”の役目だ。
普段からとんでもない量のお仕事をこなしている“先生”……
今は休憩中で備え付けのソファーに座って、魂が抜けちゃったみたいにぼーっとしている。
毎日、いろんな人たちと時に協力して、たまに怒られたりしながら。
それでいていつも周りにいる生徒はどこか楽しそうな様子でお仕事をしてる。
ボクはみんなのようにワイワイするより静かに過ごす方が好きなんだけど……
だからと言ってみんなと一緒に何かをするのはいいことだなとも思う。
でも“先生”だってみんなと同じく、疲れが溜まる。
普段の様子ではそんな風に見えないように振る舞っているけど……
たまにしんどそうにしてて、無理をしているようにも見える日がある。
特に今日はあっちこっちに行ってきた後だから尚更。
ボクはお昼からの担当だったのでそうでもないんだけど……
やってくるなり弱々しい声で、
“やぁ、おつかれさま……”
って声をかける“先生”の姿が、なんというか居た堪れない感じがする。
おつかれしてるのは“先生”だよねって……
補習授業部の担当をしている時は結構凛々しいなーとか思ったりしたけど……
へとへとにくたびれた姿は、どうにも……
こう、嵐の後って言うか。なんだか哀愁が漂っていると言うか……
“……なんだかお腹空いてきたなぁ”
「ん……」
そんなふうに思いながら溜まってるお仕事を消化していってると。
ふと、ボソリと”先生“が呟いた気がした。
……確かに、これだけ忙しいとちゃんとご飯食べてるのか不安だなぁ。
机の上に置いてあるのはジュースの缶……っぽいものばかりだし。
妖怪MAXってものらしいけど、一体なんだろうね。
ボクが手に取っても……
”これは君には必要ないものだから……“
って、意味深な呟きをするばっかりで教えてくれないし。
他のみんなに聞いてもよくわからなかった。
みんな知らないみたいで……ハナコさんもあるのは知ってるけど買ったことないって。
……そんなことより。
お腹が空いてる上にへとへと……これは大変だ。
このままじゃ”先生“が昔医務室にやってきてた子みたいにぐずぐずになっちゃう。
ああなると立ち直るまで、長くなっちゃうんだよね……
よし。
なら、ボクが”先生“をお助けしなくっちゃ。
「”先生“、お腹空いてるの?」
”え、聞かれてた?
……まぁ、そうだねぇ……今日は朝も食べてないから。余計に……“
「うん、わかった。
ちょっとだけそこで休んでて。すぐに戻るから」
”……ん、何しに……“
「いいから休むの」
立ちあがろうとしてた”先生“を制して、少しシャーレのお部屋から離れる。
初めてきた時は広くてちょっと迷いかけちゃったけど、今はどうにか覚えてる。
えーと、キッチンルームは……あ、あったあった。
たしか冷蔵庫の中には生徒のみんなからの差し入れ食材とか、
お仕事が長引いた時用の自炊用食材がたくさん保存されてるって聞いた。
それじゃ、今からここにあるものを使って適当になにか作っちゃおう。
どれどれ、冷蔵庫の中身は〜……っと……
うわぁお、すっごい大きな大根が丸ごと入ってる!
誰が持ってきたんだろう、こんなの……
半分に切られているのをスーパーとかで買うのが普通なんじゃないのかなぁ?
確かにこれだけあったらみんなでいっぱい食べられるけど、これ一つだけで冷蔵庫のスペースをだいぶん取ってるなぁ……買ってから簡単に切ったりした方が良さそう……
衝撃的な大根にびっくりしちゃったけど、他のものは……
お豆腐に、おあげさん……あとは、上にある味噌が目に入った。
これらを使った簡単なスープ……えーと、百鬼夜行風の料理、お味噌汁……だったっけ?
それができそうだね。
初めて見た時はボク好みの料理だし、作り方も知っていたら簡単。
材料を切って、お味噌と一緒に一通り煮込むだけで作れちゃう。
しかも時間もかからないとなっては、覚えない方が損だよね。
……よし、それじゃあすぐに作って持っていかなくっちゃ。
---
「おまたせ〜」
”い、いい香り……
これは、味噌汁とご飯……!“
ささっと作ったお味噌汁と、置いてあった炊飯器にあったご飯を持って。
先生の元まで戻ってきた。
溢さないように慎重に、丁寧に何も置いていないテーブルへ配膳する。
パソコンとかの近くにあったら大変だっていうから、わざわざお掃除したんだ。
紙とかも水がこぼれたらえらいことだからね。
”ありがとう、すごく助かるよ……!
では、早速いただきます!“
「うん、ゆっくり召し上がれ。おかわりもたくさんあるからね」
手を合わせて念じるようにする、食べる前の独特な行動のあと。
がっつくようにお味噌汁を口にする。
”……ぅんまぁぁぁぁ〜〜〜〜〜〜い!!!!“
「あはは……ありがとね」
ちょっとオーバー気味なリアクションだけど、喜んでくれて何より。
お味噌と塩、スープの素とかで味をゆっくり整えたお味噌汁。
自分で味見した時も結構いけるなぁ、って思ってたけど。
やっぱり食べてくれる人が美味しいって言ってくれるのは、いいことだよね。
”あー、五臓六腑に沁みる……毎日のエナジーバーがあまりにもショボく感じる……
こんな美味しいお味噌汁なら毎日食べたい……“
「うーん、毎日は流石に無理だよ。
ボクの当番になった日なら喜んで作るから、それで我慢してね?」
”……そうだね。感動のあまり変なことを……“
ちょっとうるっとした表情で”先生“がまだ欲しそうにしてた。
美味しい食べ物は毎日食べれるのなら、それは嬉しいことだけどそんなにすごかった?
まぁ、時折本当にそれご飯なの?ってものを食べていることもあるらしいし。
実際すっごく喜んでくれてるから、それでいいのかな。
……あー、”先生“の言うエナジーバーとアリウスで配られてた『配給』と、どっちがマシなのかなとか考えちゃった……そういうのを比べるのは良くないよね。うん。
”ごちそうさまでした“
「うん、お粗末さまでした……でよかったっけ?」
”うん、それで問題ないよ“
教えてもらったばっかりの食後の返しをしっかり行う。
いただきますとごちそうさまは大事だってよく言う。
ご飯を食べる時の感謝の言葉だから、忘れないようにって。
その余裕もない時ばっかりだったから、ボクはたまにすっぽ抜けてしまうけど……
日々のごはんは確かに生きていく上で絶対必要なものなんだ。
……食べれるってことの感謝の気持ち、そういう考えもあるんだなぁ。
”さて、と。
元気もいっぱい分けてもらったから今日は仕事が捗るぞ〜!“
「元気が出てよかったけど、ちゃんと休憩も挟もうね?」
”そうだね、無理はしないように!”
……空っぽになった食器を片付けて、ボクと“先生”はお仕事に戻った。
その日に溜めてたお仕事はその日のうちに全部やり切ることができたけど……
あんなたくさんのものが一気になくなったのは、ご飯の力だったりして。
---
「ええっと……リエル、さん……?」
「ん、どうしたのコハルちゃん?」
それで。
お味噌汁を作ってあげたその後のお話なんだけど。
オドオドした様子のコハルちゃんがやってきて……
「そ、その〜……”先生“にお味噌汁作ってほしいって言われたって……本当??」
「んー……あー、確かにそんなことを言った気もするなぁ」
「えっ!?」
「でも、毎日は無理だよーって返したけど、それがどうかしたの?」
「あ、そうなんだ。……うん!ならなんでもない!
……ふぅ、杞憂だよね……リエルさんがそんな考えで作るわけないわよね……」
「んー……???」
「うん! リエルさんはそのままのリエルさんでいてね!!」
「えーと、わかった、よ???」
なんて、変な一幕があった。
その後、シャーレでお味噌汁作ったことがなんでか噂になっちゃったんだけど。
ただつくっただけのことがなんであちこちで噂されることになるんだろう?
キヴォトスって不思議だなぁ……。
毎度ご閲覧いただきありがとうございました。
製作者のネコミミです。
エイプリルフール特別短編、『とある少女のお味噌汁』。
いかがでしたでしょうか。
この短編、構想そのものは結構前からあったんですが、エイプリルフール特別短編のネタを脳内で複数思いついてしまい、直前まで悩み通した結果、前話公開からたったの一日で仕上げる羽目になってしまいました。
正直もっと事前にアンケートか何かで決めときゃよかった。
でも書いてる時は楽しいからちくしょう。
さて、次回からは原作における夏イベでのお話。
『夏の章 雅舞リエルとはじめての海遊び』編へと移行していきます。
時にシリアス、時にコミカルと行ったり来たりが続く本作ですが、夏イベ期間はいつもより遥かにゆるく、それでいて青春真っ盛りのお話が繰り広げられるので、お楽しみに!
それでは、製作者ネコミミより とのことでした。