アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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翌朝変な空気になったけど、気を取り直して。
コハルちゃんのお誘い……新しい水着を探そうって。
スクール水着でよくないの?ってわけにもいかないみたいで。


水着を買いに行こう

「それで、結局海に行く準備ってどんなことすればいいんだろう?」

 

朝。

合宿場のお部屋の一角。

コハルちゃんと二人きり、のんびりとした空間でふと呟いた。

 

なんで今ボクが合宿場で寝てたのかはあんまり覚えていないけど。

きっとコハルちゃんにお願いされたのかなぁ、って思うことにする。

その割にはずっとソワソワしてるようにも見えるけど、この辺りはもうコハルちゃんだからってことにしておくことに。根っこがどうにも恥ずかしがり屋さんみたいで。

 

それで。

さっきの一言で、コハルちゃんが少し首を傾げて……

 

 

「ん?……えーと、リエルさんって海は……」

 

「初めてだよ」

 

「そ、そうなんだ……へぇ〜」

 

「だから今からお買い物行くんでしょ?」

 

「うん、そうね」

 

 

海に必要なもの、よくわかんないし。

泳ぎに行くんだから水着を持って行くくらいしか……

それ一つだけというのも違うだろうし、こういうのは知ってる子に聞いた方がいいや。

 

 

「で、さっきハナコさんが『気合い入れて選ばないと〜』って言いながらお外へ向かったのを見たんだけど……ハナコさんも買い物に行ったのかなぁ」

 

「そーじゃない? みんなで遊びに行くための水着かなんかを……」

 

「ん、スクール水着じゃ」

 

「それはダメよ! 遊びに行く時の水着はちゃんと選んだ方がいいと思う!」

 

 

そう大きめの声で叫ぶコハルちゃんの目は本気だった。

手元にあるものでいいんじゃないかなぁとボクは思ってたけど、ずいっとボクの近くまでやって来てそう主張するコハルちゃんに少し押され気味になってしまう。

 

でも、これを機会に自分の持ち物を少し増やして行くべきかも。

ボクのお部屋にある荷物、アズサさんが合宿場に移ってから半分以上減ってる気がするし、ボク自身持ち物増やさなくていいやとか考えちゃうタイプで。

 

いや、あんまり物を持ちすぎたら動きにくいって思っちゃって。

これもアリウス時代のクセになったことなのかなぁ。

 

 

「で、それを今から買いに行くわけなんだけど」

 

「うん」

 

「リエルさん、お店とかいい場所わかんないでしょ?」

 

「まぁ、行ったこともないし……」

 

 

水着のお店なんてものに行く理由もなかったからなぁ。

当然詳しい情報なんてあるわけもなく、よくわかるわけもない。

この辺は今日一緒にお買い物してくれるというコハルちゃん頼りだ。

 

アズサさんも条件は同じだけど、そっちにはヒフミさんがついてくれてるらしい。

何か変なトラブルがありそうな予感もするけど、ヒフミさんが止めてくれる……よね?

勢いのあるアズサさんを止めるの結構大変そうな気もするけど……うん。

 

その辺はもう信じよう。

それしかないや。

 

 

---

 

 

と、いうわけで。

今、絶賛水着のお店を回ってる最中なんだけど……

 

 

「お客さん待ってください!せめて、せめてこの水着を試してから〜!」

 

「横がはみ出ちゃうじゃない……」

 

「よこがはみでる??」

 

「いや、気にしないでいいよ!」

 

 

「お客さんにはこのマイクロビキニを」

 

「そ、そういうのはいいです」

 

「まいくろびきに……?」

 

 

「あ、あなたには……特別にこの牛柄を」

 

「ストップ!次行きましょ」

 

「う、うん」

 

 

コハルちゃんが次々といろんな店を乗り移ってるみたいに進んでいく。

ボクが店員さんにおすすめされた水着を受け取る暇すらなく、スピーディに。

ちょっと頬が赤くなってる気もするけど……

 

 

「なんでさぁ、みんなこう、安直なセレクトをするのよ……

見てわかるえっちさに走ろうとするの……そういうのじゃないの……

もっとこう、健全で見ててほんわかする姿にしたいっていうか……」

 

 

あと店を回るほどにコハルちゃんのぶつぶつ声が加速していってる。

ボクの水着を選んでくれてるのはありがたいけどなんでそんなに気合入っているのかなぁ。

ずっと着る物じゃないはずだから適当じゃ……

 

あ。

適当じゃ後で苦労するってこの前ハナコさんから教えてもらったばっかりだよね。

そういう気持ちを切り替えられるようにしないと。

 

 

「えーと、それで次のお店どのあたり?」

 

「ん……次は……あっちかな」

 

 

これでお店を切り替えて入るのは4回……いや5回目だったっけ。

ボクは数えてないけどコハルちゃん覚えてるかなぁ。

いや、そういうのはどうでもいいと言えばそうなんだけど。

 

次はいい水着あるといいなぁ。

今の所コハルちゃん任せだし、そろそろ自分自身で選んでも……

……うーん、どんなものがいいのか……

 

水の中に入るのならやっぱり動きやすくて体を邪魔しないものがいいなぁ。

いつもの服を着たまま水の中に入っちゃうとすっごく動けなくなるらしいし。

飾り物でキラキラするのもいいけど、やっぱり出身が出身だからか動けるかどうかが最優先の考えになっちゃうなぁ。こういうのを機能性重視っていうみたいだけど。

 

 

「いらっしゃいませ〜」

 

「あ、すみません。この人の水着を探してるんですけど……」

 

「えーと、こちらのお方ですか?」

 

「こんにちは、お願いします〜」

 

 

ただ、今まで巡ってきたお店は大体見た目が派手なものをお勧めしてた。

遊びに行くんだし、機能性云々より着てて楽しい方がいいのかも。

その割にはコハルちゃんがすっごい止めてるんだけどね。

 

反応もハナコさんの近くにいた時だったり真顔だったりで……

らしいといえばらしい反応をし続けているけど、その反応を店員さんにするってどうなの?

お客さんとして来て、失礼じゃないのかなぁ。

 

……無論止めるだけの理由がコハルちゃんにあるんだろうけど。

 

 

「……ううむ、これは難しい……オーダーはどのようなものですか?」

 

「ん。えーと……おしゃれなものならなんでも」

 

「ほう、なんでも……なおのこと難題ですが、見繕ってみましょう」

 

「あ。あんまり見ててうわぁ、ってならないデザインでお願いします」

 

「かしこまりました」

 

 

うわぁ……ってなるデザイン……

要するに見てて変だ、とかすごい、とか思っちゃうものなのかな。

……そういうのって驚かすって意味じゃ割とありなのかもしれないけど。

流石に自分でそういうの着るのはなぁ。

 

目立ちまくるのは、その。

あんまり気持ちのいい感覚がしないから。

 

 

「ううむ、サイズ的に結構……ですが、頑張りましょう!」

 

「ほ、本当にお願いよ……?」

 

「むむ」

 

 

あ、サイズのこと忘れてた。

そうだよ、前にもブラジャーのサイズでかなり苦労した記憶があるのに。

確かにボクの体に合う大きさが見つかるかどうかは正直わかんない……

やっぱりみんなよりおっきいってことを深く自覚してから見方も変わるなぁ。

 

なかったら……また次に行くしかないけど。

できればあちこち回るよりここで決めてしまいたい気持ちが大きいや。

そろそろお店を入って出て回ってはちょっと疲れてきたし。

 

ここで全部決める!

って気持ちで選んでいこうかな。

 

 

---

 

 

「う、ううっ……」

 

「ねぇコハルちゃん、また変えなくちゃダメなの?」

 

「そ、その……」

 

 

はい、コハルちゃんが再び水着を着ては変えてくださいってやり始めて……

かれこれもう10回は着替えているよ。

……流石にやりすぎじゃない? こんな調子じゃいつまで経ってもきまんないよ??

 

ボクもあんまりわかんない状態だったからコハルちゃん任せにしてたけど……

ここまできまんないとなると、ちょっと話が変わってくるなぁ……

 

 

「えーと、何かのこだわりがあるのもわかるけど……このままじゃ決まんないよ」

 

「そ、それはわかってる……け、けど」

 

「けど?」

 

「……むぅぅ……」

(だ、ダメ……!!

こう、どんな水着を着てもなんだかえっちに見えちゃう……

立派な上の部分だけじゃなく下の部分までおっきいなんて、すごい体ぁぁ……!!)

 

 

あ、なんかコハルちゃんの目元がいつもの猫さんモードに……

あの姿になると、どうにも考えが変な方向によってる気がするんだよね……

いつもならおでこを突いて声かけてあげれば割とすぐに戻るけど、今はなんかずーっと悩んでるみたいだし、考えの邪魔をするのはちょっとしたくない気持ちもある。

 

でもこのままじゃ永遠に水着選びしてるだけだ。

遊びに行く手前でこんなことしてたら、それこそ本末転倒じゃないかな。

 

 

「えーっと、店員さん。他の候補ってまだありますか?」

 

「はい。残りは……あと三つほどです。

お客様のサイズに合うとなればかなり少なくなってしまいますが……」

 

「大丈夫です、他の子たちより大きいってよく言われるから」

 

「確かに……いえ、失礼しました」

 

 

ぺこりと頭を下げる理由がいまいちわかんないけど、新しいのをすぐ持ってきてくれた。

最初の方に着てたのはちょっとくるしかったから、そう伝えたらより慎重に水着を選んでくれて、とっても助かってる。

 

ゆったりとして、それでいて身体に対して密着してくれる……

よくよく考えると難しい注文だよねとか考えて、それでもベストを尽くしてくれてる。

でもこれでいいんじゃないかなって時にコハルちゃんのストップがかかる。

 

その時の、

 

 

「み、みみみみえてるっ、みえてる〜〜っっっ!!!!」

 

 

って叫びが大きくて。とんでもない剣幕だったのが。

その一言で店員さんがあ……って表情してたのは……

ボクにはよくわかんないけど、いったい何が見えていたんだろうね??

 

……まぁ、きっとダメなことなんだろうけど。

コハルちゃんと店員さんにその『みえてる』状態にならないものを選んでもらおう。

 

 

---

 

 

下江コハルは戦慄していた。

たかが水着選び一つにここまで苦労するとは彼女さえ思っていなかった。

 

最初に選んだお店は、すっごい紐タイプの水着ばっかりで。

見ていて周りも自分も集中できなさそうなくらいのオープンすぎた。

 

二つ目に入ってみたお店は、その。

リエルさんにとっては大人すぎるような、そうでないような。

でも着せるのは何か違うと思うタイプばっかりだったから、咄嗟に離れた。

 

三つ目はもう論外だった。

明らかに、その。えっちだったし。

 

だからこの四つ目のお店がすごく真っ当なところでホッとした矢先。

ふっつーにサイズが合わなくて苦労することになるなんて!

わかってはいたけど、本当にすっごいボディだ……とプルプル震えてた。

 

補習授業部で一番ナイスバディーなハナコさえも足元に及ばないその姿は、

まさしく水着を弄ぶ我儘な身体だったのだ。

 

 

「このままじゃ、リエルさんのこと周りがよくない目でみちゃうよぉ……」

 

 

元々コハルが水着選びに勤しんでた大半の理由……

というか根底にあるものはこれ以外なかった。

なお元々近くにリエルをも上回るとんでもない肉体の持ち主がいたはずなのだが、

どうにも彼女自身にその発想はない。 どういうことなんだろうか。

 

 

「あの、あのっ!! ほ、他には……」

 

「うーん、あとはもう、ダボっとしたものしか残ってないよ。

……あ、でも逆にその方がサイズが合うかもしれないね……試してみる?」

 

「もうそれでもいいから持ってきてくださいっ!!」

 

 

もうこのお店にある候補もそこをつき始めてきている。

ここまで来たらもう片っ端から試してみるしか無くなってくる。

しかし、ダメだった時は……その時は……

 

 

(ダメ……あんな、ハナコでも着るか分かんないようなバカ水着……!!)

 

 

理性的に、かつ本能的な部分も含んだ場所で精一杯に拒否をする。

しかし着ている姿を想像せずにはいられなかった。

その脳内がどうなっていたかは、わざわざ語るまでもないだろう。

 

 

「お客様、あとはこのようなものが……」

 

「んー……あ、この感じならちょっと余裕ある感じで着れるかも」

 

「では、他のものをお下げしますね」

 

「お願いしますー」

 

 

そんな彼女をよそに、リエルは渡された水着に好感触な言葉を乗せて着替えの部屋に入り直す。何回も着替えるという単調な行動を繰り返しているにも関わらず、その着脱自体はスムーズで迷いがない。この早着替えもいつかの日に産まれた土地で学んだことだ。

 

がさごそ、と静まり返った店内に着替えの音がかすかに響く。

元々はあまり音を出さないように着替える癖もリエルにはあったものの、今では安心できる状況も増えて、そういう癖がどんどん失われていっている。

 

本人にとっては嬉しいのかダメなのかはさておいて。

すぐに着替えが終わり、着替え部屋のカーテンをゆっくりと開いた。

 

 

「おぉ〜……」

 

 

彼女自身の感嘆のため息がコハルの耳にやっと届く。

普通の人は着ればかなりだぼっとしたであろう、ゆったりとした胸元の布。

それがこの子のガードは任せておけ、と言っているような見事なほどのフィット感。

 

下もスカート状になっているのが功を奏して、ダメなところをしっかり防御。

肉体を水の中に入れても大丈夫な、肌身離れることのない完璧なちょうど良さ。

 

当然その感覚は、当人もすぐに気にいる。

 

 

「……うん、これにしようかな」

 

「かしこまりました。それで、予備などはいかがします?」

 

「うーん、一日遊ぶため……また使うかもしれないけど、替えはいいかなー」

 

「わかりました、ではお会計を始めましょう」

 

 

今おいてけぼりになってるコハルちゃんには悪いけど、これにしよう。

リエルはその自分の感覚を信じてすぐに行動へと移す。

見た目もよく、着ていて楽だから、それでいい。

 

機能性と見た目を無意識に両立していたその心は、とっても晴れやかだった。

 

 

「あえ……」

 

 

一方置いてけぼりにされたコハルは、その。

包み隠さずに言えば、見惚れてしまっていた。

その姿の完成度の高さと……コハルの謎基準、えっちさの絶妙さに。

 

しかも当人はすぐにそれを気に入り購入に入った。

これはもう、あの姿で行くしかない。

彼女はすぐにそれを認め──

 

 

ピロリン♩

 

「…………ひゅいっ?!」

 

 

自分のポケットから響いた音で我に帰った。

こんな日に何かな、と思い中につっこんでいたスマホをすぐに手にもつ。

 

その画面には、メールを着信したと写っている。差出人は……

 

 

「あれ、ハスミ先輩??」

 

 

……前に補習授業部の活動が終わるまでメールしないって話をしたような……

自分自身の活動も全面休止してたし、送られる理由にも心当たりはない……

 

久々のメールで嬉しいものとは言え、訝しみながらメールを開くと……

 

 

「…………………………………………!?!?!??

 

え、ちょ、え、あの!?

ヒフミ、あいつなにやって……!?!?」

 

 

今までのお楽しみ時間の気持ちを全て吹っ飛ばす、衝撃の内容が届いていた。




【一方その頃】
ヒフミ「アズサちゃん……本当に海は初めて……?」

アズサ「ああ。いっぱい水があって飲んだら辛いんだろう?
今まで行く理由もなかったし、何より行く方法も……」

ヒフミ「そ、そうですか………………わかりました。

アズサちゃん、ここは私にお任せください!!」


アズサ「なにをだ???」ᓀ‸ᓂ
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