アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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ひとしきり泳いで、一旦海の中から出た最中。
休憩中にキヴォトス定番のビーチスポーツをやっていると聞こえてきた。
浮かれた気持ちのまんま、それがなんなのか確かめにいくと……


キヴォトス流行りのビーチスポーツ

「ふぅー」

 

ひとしきり泳いで潜って。

海から一旦上がって一休み。

ボクはあんまり疲れたって感じがしないけど、コハルちゃんとハナコさんはそうでもないかもしれないし、何よりどんなものでも休憩は大事だからね。

 

 

「綺麗だったなぁ」

 

「この3人での素晴らしい思い出、ですね♡」

 

「うん、本当にすごかった」

 

 

ビーチのあちこちに置かれている傘の下にある椅子にみんなで座る。

……ボクのよく知ってる椅子とは違ってずいぶん長いよね、このあたりの椅子。

一応座ってると表現してるけど、気持ち的には寝転んでる感じがするなぁ。

 

 

「ところでさ、ハナコ……何回か海の底で止まってたみたいだけど……」

 

「あら、海の底の景色が雄大で……時間をかけてみたいと思っただけですよ?」

 

「ふ〜ん……」

 

 

海底散歩はみんなちゃんと楽しんでくれたかな。

確かにハナコさん何度か立ち止まってる姿見てたけど、景色を楽しんでたっていうのは本当じゃないかなぁ。色々考えてそうだから気になるかもだけど、遊びの時くらいは大目に見てあげてもいいと思うよ、ボクは。

 

コハルちゃんって結構ハナコさんのこと気にしてるから気持ちもわかるけどね。

普段通りにしてるだけと言われたら多分そうなんだろうし……

 

 

「うーんと、これからどうしようかな」

 

「……もう一回泳ぐ?」

 

「ボクはそれでもいいけど、せっかくの海だからいろんな海の遊びがしたい」

 

「海の遊び……はい、確かに泳ぐだけが海ではありませんから」

 

 

こんなに泳ぐのが楽しかったんだし、他のものもきっと楽しいはずだよね。

そういう確信があるのにただ一つの遊びに集中しちゃうのも勿体無い。

無論、さっきまでの浮かれて楽しんでた時間も最高だったけど。

ここまできたのなら全部の最高を楽しみ尽くしてから帰りたい。

 

理想を語るならアリウスのみんなでこの楽しさを分かち合いたい。

だけど、今はまだまだそこまで行くのは夢のまた夢だから。

最初はここにいるボクが、精一杯楽しむことにする。

 

そして、この楽しい気持ちを持ち帰っていかなくっちゃ。

そうすれば何かが……ってこともないかも知れないけど、何もないよりずっといいから。

 

 

「では……海の外で、定番のお遊びをしましょう♡」

 

「ていばんっ! うんうん、そういうの欲しい、そういうの!」

 

「リエルさん食いつきすご……で、何するの?」

 

「ほら、コハルちゃんもわかる定番のアレですよ! あ・れ!」

 

「……ん、あ、ああぁ〜〜〜……あれね」

 

 

ほぅほぅ、ハナコさんもコハルちゃんも知ってるようなものなんだ……

うん、みんな知っているならそれだけ面白さが広まってるってことだよね。

これは、たくさん期待できるかも。

 

 

「うん、それにしよう!」

 

「う、うん」

 

「では、もう少し休憩してから取りにいきましょうか〜」

 

「ん、取りに行くって?」

 

「遊ぶために必要なモノを、ですよ」

 

 

---

 

 

「うーん……う〜〜〜〜〜〜〜〜ん……」

 

「リエルさん、どうしたのかな?

さっきまであんなにはしゃいでたのに、今はずっと悩んでる表情してる」

 

「たくさん種類があるので、悩んでいるんじゃないでしょうか?」

 

 

ハナコさんの言うビーチスポーツのために必要なものを取りに来てたけど……

そこにあったものが。ボクの気持ちを楽しい気持ちから少し離してしまった。

 

いや、当然ハナコさんだってボクを悩ませるためにそんな提案したんじゃないし、

むしろ楽しいことだってお話してくれたから悪気とかそういうのはない。

単純にボクの気持ちの問題、それだけ……なんだけど……

 

 

「銃かぁ〜……」

 

 

それは見たことないものだけど、見覚えはたくさんあるものだった。

だって、ねぇ? 形がもうおもむろにそれなんだもん。

アリウスでも……なんなら今でも全然使ってない銃を使ったスポーツ……

いや、予想もつくけど抵抗感があるというか。

 

本音言っちゃうと、苦手っていうか……

あんまり好きこのんで撃ちたくはないっていうか。

楽しい気持ちに水をさすような感じがして言うのはヤだけど、なんともなぁ〜……

 

……あ、でもなんか見た感じ実弾は込められない……

というか、中からジャブジャブ聞こえてくるのは一体??

 

 

「リエルさんが銃使ってるのは確かに見たことないけど……

これ、水鉄砲だよ? スポーツ用の……」

 

「みずてっぽう……?」

 

 

水鉄砲……お水を撃つ……?? えーと、それってどんな?

イメージしにくいんだけど……銃でお水……なんかもったいない気持ちが……

 

 

「どうして悩んでいるのかは分かりませんが……とりあえず撃ってみては如何ですか?」

 

「あ〜〜……そう、だね? ちょっと、お試し……」

 

 

……実際に銃弾を撃たないのなら……大丈夫、なのかなぁ……

いや、でも……う〜ん……とりあえず、引き金を、引いて……

 

 

「……それっ」

 

「おお〜……勢いがすごいです〜♡」

 

「変な風に言う必要ないでしょ……普通に撃ったって言えないの……」

 

 

ぴゅ〜、という気の抜ける音と一緒に、前の方へ勢いよく飛んでいくお水。

銃特有の大きすぎる発砲音すらこれからは聞こえてこない……

 

うん、これ姿形は銃そっくりだけど全然別物じゃん。

ならびくびくしなくてもいいように思えるね。

……で、撃てるってなったらもう一つ問題が出てくるわけで……

 

 

「これ、どれがなに?? 見た目じゃわかんないや」

 

「あ、確かに」

 

「ですねぇ」

 

 

ボクが得意な銃の種類に合わせたものを選ばないと、扱えないって……

いや、言ってて悲しくなるけど、ボクの得意な銃の種類ってないんだけどね……

どれもこれもまともに撃てなかったんだもの、しょうがないじゃん。

 

あまりにできなくて訓練から外されたから医務室担当になったわけだし。

いや、医務室が嫌だとはこれっぽっちも思ってないけどね?

 

 

「えーっと……リエルちゃんは普段の銃種は何を持っているのですか?」

 

「ん、それは確か……アサルトライフル、だった気がするなぁ」

 

「だった気がするって……」

 

「なら連射の効く、長く押して長く発射できるものがよさそうですかね〜」

 

 

ハナコさんが選んでくれてる裏で、なんだかうーんって顔してるコハルちゃん。

……うん、コハルちゃんが訝しむのもしょうがないなぁとか思っちゃう。

トリニティで見かける生徒たち大体銃持ってるし使ってるもんね。

自分の持ってるものの種類が曖昧なんて子はボクくらいなんだろうなぁ。

 

 

「これとかどうでしょうか?」

 

「とりあえず使ってみないことには何とも言えないなぁ」

 

「まぁ、遊びだからダメで元々でもいいんじゃない?」

 

「そーだね、難しく考えるより楽しむべきだよね」

 

 

でも、そう言う細かいことは今はいいか。

あれこれうじうじ言ってても時間が過ぎるだけなんだし、とにかくやってみよう。

それでもダメなら、ボクの射撃がダメダメだったで済む話なんだし。

 

 

---

 

 

「それそれっ!」

 

「ふふっ、お上手ですがまだまだ〜!」

 

「簡単にはやられないわ!」

 

 

最初にちょっとだけ練習して、ついに水鉄砲の撃ち合い合戦が始まった。

こうして本格的に戦っていると銃撃戦してるような気持ち……というか、弾丸が水になってるだけで普通に銃の撃ち合いになってるけど……これが全く怖いと感じることがない。

 

いつも聞いてきた銃と何もかも違いすぎて、気持ちも全然違ってる。

それに、水だからこそのやり合い方もあって駆け引きがまた面白い。

普段なら当たらないところでも上からお水が降ってきてかかっちゃうなんてこともあるみたい。

 

最初こそ不安があったけど、これはこれで!

うん、怖がらずにやってみてよかったって思えるくらいに楽しいねっ!!

 

 

「ようし、ここから攻め込んで──」

 

「隙だらけよリエルさん!!」

 

「え、みゃあああああああ!!!」

 

 

飛び出した瞬間に、ボクの顔目掛けて水の突風が吹き抜けて……

うわぁ、びっちょ濡れだぁ……よくもやったなぁ〜っ

 

 

「むぅぅ、やられっぱなしじゃいられないっ。今度はボクの番……!」

 

「後ろがお留守ですよ〜♡」

 

「えっ、わ”ぁ“ああぁぁ〜〜!!」

 

 

反撃しようとしたら突然後ろからお水、つめたぁい!!

ハナコさんがいつの間にか後ろに回り込んで……うぅ、まずいっ。

このままじゃ挟み撃ちにされてひとたまりもなく……

 

 

「それそれーー!!」

「うふふ……♡」

 

「うわぁぁぁぁーーーーーーーー!!!」

 

 

ジャブジャブ、バシャバシャと無情にもボクへと発射される水の雨あられ。

ろ、ろくな抵抗もできないっ、動けない〜っ!!

 

 

「や、やめてぇぇぇぇぇ〜〜〜!!」

 

「これも勝負の世界だからっ!」

 

「悪く思わないでくださいね〜?」

 

「むえぇぇぇぇぇぇぇ〜〜〜!!!」

 

 

うひゃあ〜、これじゃやられたい放題だよぉ、訓練の時のボロボロ具合思い出すよぉ〜!

でも、何でかこんなザマでも全然悔しいとかそういう気持ちが出てこない〜!

むしろ、冷たくって気持ちいい時もあってさっぱりするぅぅ〜〜!!

 

あー、でもこのままじゃ何にもできないよ〜!!

やめてぇぇぇ〜〜〜〜!!!

 

 

---

 

 

「ひえ〜……ずぶぬれ〜〜……二人ともひどいよぉ、一斉に狙うなんてぇ」

 

「ごめんね?でも、そういうスポーツだもんね」

 

「ふふっ……そんな中でも抜け目なくこちらにもたくさんお水を飛ばして……

コハルちゃんったらいけない子ですね〜……♡」

 

「だからそういうスポーツでしょ!?」

 

 

結局やられたい放題されちゃった。

やっぱりボクって銃撃戦よわいなぁ……ざんねん。

せっかくの機会なんだからもうちょっとできることもあったように思うけどなぁ。

 

でも、コハルちゃんって元々正義実現委員会で、戦う立場の子だから動けるのが普通だよね。

アズサさんやサオリさんに勝てるか……って聞かれるとうーんって思っちゃうけど……

二人ともしっかり強い人だからね敵わなくてもしょうがないとは思う。

 

それにコハルちゃんってボクより年下みたいでまだまだ伸び代がたくさんありそうだから。

いずれはツルギさん……のようになるには努力だけじゃ足りなさそうだし、せめてすごく戦える人くらいに成長してほしいなぁって思う。

 

それにツルギさんの強さって想像上だけでもなんだか真似できなさそうだし。

怪我をした次の日にはもう治ってるって噂本当なのかなぁ……?

 

 

「うーん。

何とかやれたけど、やっぱり先輩たちみたいにいかないなぁ」

 

「ねぇコハルちゃん、正義実現委員会の先輩たちってどのくらいすごいの?」

 

「おや、リエルちゃん……お話は聞いていないのですか?

同じ学校内の生徒ですし、噂はたくさんありますが……」

 

「それもあるけど、本当かウソなのか分かりにくくってね」

 

「あ〜……確かにね、側から聞くと本当って思っちゃうわよね」

 

 

あ、やっぱりコハルちゃん自身もそう思うことあるんだ……

だってねぇ?

車に轢かれてもへっちゃらって話とか、取り締まった生徒が潰れた空き缶みたいになってたなんて話とか……やばすぎて本当であって欲しくない話もちらほら……

 

流石にそんなことになって平気な生徒はアリウスにもいないし……

 

 

「私から言えることは……ツルギ先輩の噂は9割くらい本当だってことかなぁ」

 

「え、ほんとうなの???」

 

「ええ、まぁ……ツルギさんですから……」

 

「うん、ツルギ先輩だし」

 

 

……ツルギさんだからで済ませていいのかなぁ。

当の噂になっているツルギさん自身、そんな風に扱われて嫌じゃないのかなぁ……?

……まぁ、触れないでおいた方がいいのかな……一旦ね。

 

 

「あ、コハルちゃんにリエルちゃん。

せっかくなのでもう一回だけ勝負しませんか?」

 

「……今度は集中狙いしないでね?」

 

「いえいえ、しません……しませんから♡」

 

「……なんか怪しい……けど、今度も勝つのは私だからねっ!!」

 

 

……さぁ気持ちを切り替えていこう。

ハナコさんの提案でもう一度水鉄砲合戦をすることになった。

ただ、何だかとてもハナコさんがにやりと笑っていて、企んでる感じがする……

 

でも、気持ちでもやる気でも、楽しむ気持ちでも負けてないっ!!

さー、今度は負けないぞ〜!

 

 

---

 

 

と、意気込んだはいいんだけど……

 

 

「ほらほら〜、涼しいですよ〜……?」

 

「ハナコぉ!! はんそく、反則よぉぉ!!」

 

「うひぃぃぃ〜〜〜!!!」

 

「そーぉれ〜!!」

 

 

まさかのハナコさんがホースを直接持ち出してこっちに向かってフルパワー放出するなんて!

物陰に隠れたはいいけどこのままじゃ動けないよぉ!!

コハルちゃんと一緒にここで留まっているのが精一杯……!

 

というかあんなのいつの間に見つけたの〜!

ちょっとずるいよ〜!!

 

 

「ほらほら、まだまだたくさんありますから、遠慮せずに水浸しになってくださいね〜♡

そぉれ、上からばしゃばしゃ〜」

 

「ひー、雨みたいにふってくる〜!」

 

「暴走よ、暴走よー!!」

 

 

ボクたちは水鉄砲のお水で戦わなくっちゃいけないけど、ハナコさんは大量に使ってくる!

これでどうやって戦えばいいんだろう!?

 

 

「うわぁぁ〜〜〜、“先生”〜〜!! アズサさ〜ん!!

たーすーけーてーーーーーー!!!」

 

「後で覚えてなさいよ〜〜〜〜!!!」

 

「うふふ〜……!!」

 

 

みんなでワイワイするためなのにこの状態じゃハナコさんだけ楽しそうに見えないかなぁ!!

それはそれでいいけど、たまったもんじゃないよ〜!!




【その頃のヒフミチーム(2)】

「ヒャッハー!! 今が正義実現委員会委員長を倒すチャンスだ〜!!」
「攻め込め〜!!」
「うぉぉぉ〜〜〜!!」

「8時の方向から敵多数です!」
「よし、この要塞で迎え撃つ。 手伝ってくれ」

「きひひひひ………きゃははははははははははははははは!!!!!」

「うわぁぁぁ!! どうしてここにきてこんなことがーーーー!!」
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