アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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ひとしきり遊んでずぶ濡れになってお腹が空いてきた……
動けば動くだけパワーを使っちゃうからしょうがないや。
近くのお店、美味しいご飯たくさんあるかなぁ。


大盛り昼食タイム

「……びちょびちょ」

 

「まぁまぁ、海の水でいっぱいになったのなら一度洗わなくてはいけませんから」

 

「なら自分もちゃんと……もう浴びてる……」

 

「ふふっ、お二人だけというのも不公平ですし♡」

 

 

結局ホースを使った大放水には全く勝てなかったよ。

流石にやりたい放題すぎたから最後の方はハナコさん上に打ち上げて自分で浴びてたし。

どっちにしても体の塩を落とさないとダメだからこれでいいのかなぁ。

なんだかもてあそばれたような感じがしてならないけど。

 

 

「えーっと……今どのくらいだったっけ」

 

「あら……もうお昼ご飯どきです」

 

「もうそんな? 3、40分くらいしか経ってないんじゃなくって??」

 

「楽しい時間はあっという間と言いますからね〜」

 

 

確かに、楽しすぎて時間なんて忘れちゃってた。

ハナコさんのお昼ご飯という言葉でやっとお腹が空いていることに気がつくくらいに、

ボクは今まで生きてきた中で浮かれちゃってたみたい。

 

今までだったらお腹空いたらすぐに食べてたのにね。

これもまた遊びと海の力なのかな。

 

 

「で、この辺のご飯どころってどこなのよ?」

 

「ボク知らないよ」

 

「それはそうかもだけど、近くになんか見えないかなぁ」

 

「海のご飯と言えば、海の家が定番ですよね〜」

 

「うみのいえ???」

 

 

それって海の上にぽつんと家が建っているわけじゃない……んだよね。

ご飯どころって話だからそんなところにあってもどうしようもないよね?

……うーん、想像してしまうとなんだかそれはそれで綺麗なようにも……

 

えーと、それで定番っていうくらいなら近くにあるの?

……あー、そういえば。

 

 

「……砂浜と道路の境目あたりに何かあったよね」

 

「ん〜……確かにあるとすればそっちの方かなぁ」

 

「濡れ濡れになってしまった身体もある程度乾かさないといけませんね〜」

 

「誰のせいよ、まったく!」

 

 

怒ったように声を上げるコハルちゃんの表情は、楽しそうだった。

みんな海でのひと時を存分に楽しんでいるようで、こっちもいい気持ちになってくる。

だからこそ、もっと楽しむためにエネルギーが欲しくなるよね。

 

さぁ、お昼ご飯、お昼ごはん〜……

 

 

---

 

 

「あー……あれかなぁ?」

 

「はい、看板的にも間違いないと思います!」

 

「えーと……『海の家 大満』?? 変な名前ねー」

 

 

一旦浜辺から離れて少し歩いたところにその建物はあった。

すごく豪快な印象の看板が立ってて……なにかありそうな気配。

いや、物騒な感じはしないけど、ちょっと予感的なものがあるような。

 

 

「らっしゃい!!! 何名様ですかい!!!」

 

「3人ですよ〜」

 

「おうよ!!! 3名様ねっ!!! 席はお好きにどうぞっ!!!」

 

「は〜い」

 

 

わぁー、店員さんの声、すっごくおっきぃ〜……!

どっかーんって、押し寄せてくるような大声が響いてきてちょっと驚いちゃった。

コハルちゃんも同じく驚いたみたいでボクの後ろに隠れちゃった。

お顔の羽がぱたぱたとボクの背中に当たっちゃってるよ〜?

 

……それで、好きなところに座っていいって話だったけど。

ぽつぽつ、人も入ってるみたいで。

その中から好きな席で大丈夫って……おんなじ場所に座ってもいいってこともあるのかな。

いや、ハナコさんは普通に空いている席を選ぶだろうけど……

 

 

「とりあえずここにしましょうか!」

 

「ん? うん、ボクはどこでも」

 

「び、びっくりした〜……」

 

「豪快なお方ですよね」

 

 

ハナコさんの選んだ席に素早く3人で座って、ひといき。

お肉やお魚の焼ける音と香りが、ボクのお腹と鼻をさらに刺激してペコペコになってく。

それじゃあ早速何を頼もうかとメニューを開いて……

 

ん〜?

 

 

「……ビッグおにぎり、豪快肉串に、山盛り焼きそば……

たらふく海の幸コース、ドカ盛りバーベキューコースと、デラックススタミナセット……」

 

「え、いきなり何を読み上げて……」

 

「あら、リエルさん。 そちらはこのお店のメニュー……ですよね?」

 

「うん、どれもこれもたくさんボリュームあるご飯みたいだけど」

 

 

見本の絵からも全部がどかっと盛られているみたいで……

うわぁ、このデラックススタミナセットなんて絶対一人で食べ切れる量じゃないよね。

おひとり様の値段書いてるけど絶対複数人で……

 

いや、もしかしたら一人で食べきれそうな人もいるのかなぁ?

そうだとしたらとんでもない大食いの子だぁ……

 

 

「わぁ、すっごい多さ……こんなに食べられるかなぁ」

 

「ですが、たまにはこのようながっつりご飯も食べたいと思いませんか?

トリニティで普段食べているものは少々、物足りなく感じることもありますし」

 

「……うん、それは……

確かにね、没収物の倉庫整理した後のお腹には足りないけど……」

 

 

そんなふうに不安そうな言葉をよそ目に、二人とも目は輝いている。

お腹が空いてると、量がいっぱいあるご飯ってどれも天国に見えるよね。

すごくわかる。

 

 

「とりあえず頼もっか。

ボクは……ビッグおにぎりと山盛り焼きそばをまず頼んで……」

 

「よし、お肉の串焼きと……メガポテト!

食べきれないならみんなでわけっこすればいいからねっ!」

 

「ふふっ、コハルちゃんはもっとい〜っぱい食べるべきじゃないかと〜……

あ、私はこのたくさんプレート……でいいのでしょうか?

これにしようかなと思います」

 

 

しかし食べるとなったら頼まなくっちゃ始まらない。

だから思い思い、空いたお腹が求めているものを一通り頼んでいく。

できれば、食べ切れるくらいの量に抑えよう、とは思っていたけれど……

 

 

…… …… ……

 

 

「わぁ〜」

 

「こうしてみると壮観ねぇ……」

 

「すごいです……こんなおっきさ……!」

 

 

気がつけば頼み過ぎたのか、大ボリュームご飯を選んでしまったのか。

どっちにしても目の前に積み上がった山盛り、いやもう爆盛りご飯に圧倒されそうになる。

自分のお腹に正直になり過ぎちゃったかもしれない。

だけど不思議なくらいに後悔とかそういうのはなかった。

 

 

「ボクたち3人で取り囲んでも足りないくらいのすごいことになってる。

お腹空いてるからか、どれもこれも美味しそうに見えちゃって止まんなかったね」

 

「なんか、こんなご飯積んでる番組見たことあるわよね。

ほら、大食いの……」

 

「あぁ〜……ふふっ、今はさながら私たちがフードファイターのご気分ですね♡」

 

 

フードファイターってなんだろう。

食べて戦う人……うーん、言葉だけじゃわかんないことってやっぱり多いなぁ。

 

あと、これだけのご飯があったら一体何人向こうの子達のお腹をいっぱいにできるんだろうとか、今考えるべきじゃないことが頭に思い浮かんじゃう。

この時は一旦みんなのことを頭から置いておいて楽しむって決めたのに……

やっぱりこういう気持ちが自然と湧いて出てきちゃう性格なんだろうね。

 

それでも、どうか今日だけは許してねみんな。

ボクは今、食べ物を食べるマシーンになります。

 

 

「こんなに食べたら、私はち切れちゃいそうですね〜」

 

「だからみんなで食べるんでしょ?」

 

「うん。3人だったら食べ切れるんじゃないかな?

ボクも沢山運動しておなかぺこぺこだし、いっぱい入りそう!」

 

「私も今日はいっぱい食べれる……かも。

いや、うん……いける、イケる!!」

 

「おおっ、コハルちゃんの背中からたくさん食べてやるぞって気持ちが見えます!」

 

 

それになんだか、これだけの量があるにも関わらずボクにもいけるという気持ちはたくさんある。きっとこれまでの海遊びでたくさん動いてきたからその分体が食べ物を欲しがっているんだ。

それもいつものような量じゃなく、山盛りで構わないってくらいに!

 

コハルちゃんやハナコさんもおんなじかまではわかんないけど……

二人とも、ぜーったいにボクにも負けないくらいぺこぺこになってる気がするし。

何よりもう、目の前のご馳走に心が我慢できそうにないって叫んでるから!

 

 

「よぅし、食べるぞ〜!」

 

「うんうん、食べよ!」

 

「は〜い」

 

……それじゃ、みんなで!

 

 

「「「いただきまーーーす!!」」」

 

 

---

 

 

「はむ、はむはむはむ、はむ〜」

 

「むぐぐ、むぐぐぐ、むぐぐ」

 

「ふふっ……あーん」

 

 

みんなで一緒にいただきますして、もう話すのも忘れて食べ物の山に挑んでる。

最初に手に取ったボク注文の山盛り焼きそば……

焼き加減が豪快であちこちに雑さを感じる、量がいっぱい食べれればいいって感じの……

それでいて食べ応えのあるキャベツとお肉のハーモニー。

 

この合間にこれまた一緒に頼んだジャンボおにぎりを一つパクリ。

これまた塩味の効いた、繊細さをかけらも感じないような、豪快そのものの食べ物。

それらが互いにがつーんとお腹の中に入っていって……すっごく満たされる感覚がある。

 

こんな料理もあるんだなぁ……

なんだか、こういうのもたまには食べたくなるって感じの食べ応えがする。

 

味を変えるためにマヨネーズ……お外にある濃口の……調味料? ソース??

まぁそういうものをふんだんにかけて食べるのもとんでもなくおいしい。

ちょっとお腹に重い感覚もするけど、今のボクには大した重さじゃないや!

 

 

「おいひい、おいひい!!

この焼きそばとおにぎりのコンボ……たまらなく次から次へと口に入るよっ!!」

 

「はふっ、はふっ!

……この海の家のご飯、おいしい……いっぱいたべれる!」

 

「ふふっ……二人とも、気持ちいいくらいに食べますね〜」

 

 

コハルちゃんも、ボクとおんなじくらいにがっついた様子で、すっごいにこやか。

やっぱりたくさんお腹が空いてるから、どんどん入っていくよねっ!

ボクも見てて気持ちのいいくらいに、いい食べっぷり!

 

それで、ハナコさんも……ん。

 

 

「あれ?ハナコさんも、いっぱいあるんだからたくさんたべないの?」

 

「いえいえ。私は私でゆっくり食べますので…ゆっくり沢山食べて下さいね〜」

 

「む……まぁ、一気に食べなくってもいいけど……雰囲気楽しむならこっちでもいいんじゃないのっ?」

 

「うふふ……私はお二人の姿を見て楽しんでいますから♡」

 

 

うんうん、何もいそがなくたって食べ物は逃げないからね。

ボクは雰囲気に合わせてがっつりいっちゃってるけど食べ方人それぞれ。

自分たちの食べ方とかを押し付けちゃったらいけないからね。

 

 

「あ、コハルちゃん。

ボクの食べてる焼きそばってもう食べたの?」

 

「ん? ……ん〜、まだ食べてない。

こっちのお肉の串焼きも美味しくってこっち楽しんでた」

 

 

ふんふん……

ボクの楽しんでるのはコハルちゃんはまだ……

そしてコハルちゃんが楽しんでるのもボクはまだ食べてない……

 

 

「そういうことなら……食べさせ合いっこしよう!」

 

「ふえっ!?……えっと、その〜……」

 

「そうしたら、もっと美味しいと思うからねっ!」

 

「……うん……いいよ」

 

 

ボクの思いついた発言に一瞬すっごい驚いた様子を見せたけど……

コハルちゃんもすぐにいいよって言ってくれて、よかった。

 

後その言葉言った瞬間ハナコさんががたっ!って椅子から立ったような気がする。

その目は今まで見たことないくらいにキラキラ輝いてたような気もするけど……

いまは、コハルちゃんが先っ!

 

 

「それじゃ、あーん!」

 

「うん、あ、あーん……」

 

 

互いに食べ物を差し出しあって、同時に口へと頬張る。

……おぉ、このお肉……塩と胡椒のシンプルな味付けで……焼き方もしっかりしてる。

ちょっと硬いけど、このくらいの方がボク好みかも。

トリニティで高いお肉ってなんだか脂っこいのもあってね〜……

 

たくさん食べにくい脂っこいのより、これくらいのあっさりお肉がいいや。

噛んでみたらじゅわーって肉特有のお汁が広がっていくのも、また美味しい!

 

 

「おぉ〜……」

 

「おいひ〜……!」

 

 

コハルちゃんもボクの食べてた焼きそばも気に入ってくれたみたいだし。

美味しそうに頬張ってて、なんだか小動物みたいに見えて可愛い。

 

 

「お二人ともっ、仲間はずれはダメですよ〜っ!

さぁ、次は私にもお願いしますっ!!」

 

「あ、ごめん。

ボクたちだけやるのもダメだから、ハナコさんのおすすめもボクに食べさせてほしいなっ」

 

「ええっ!!

それでは〜……この、おっきくて太いフランクフルトを〜!!」

 

「むむっ、いいね!

それじゃ、いきまーすっ!!」

 

 

そう言って差し出されたおっきい棒状のお肉を一気にぱくりっ。

長いからちょっとお口からはみ出しちゃうけど、一気に噛んでなかでもぐもぐ。

……さっきのお肉とはまた違う。

簡単に噛んで小さくできて……食べやすさ抜群だっ!!

 

 

「ねぇねぇ、他にもやろうっ!」

 

「よし、では次は〜」

 

「あっ、ハナコ! 次私だからねー!!」

 

 

こんなに美味しい食べ物に包まれて、幸福がたくさん押し寄せてくる……

さぁ、もっとこの幸せを楽しんでいこう!!




【その頃の正義実現委員会 部室】

「…… …… ……」

「おや、ハスミ先輩。
そんな窓の方を見てどうかしたんすか?」

「いえ……この頃のコハルはしっかり食べているのか少々気になりまして……」

「う〜ん……食べてないってことはないと思うっすよ?」

「そう信じましょう……ああ、なんだかこちらもお腹が空いてきました……」

「ん、でもこの前にハスミ先輩ダイエ────」

「いえ、あれは食べ過ぎの量ではないはずなのです。
決してデザートのパフェを食べ過ぎたとかではない……はず……」
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