アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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山盛りのご飯。
ボクからすればこれ以上ない贅沢なシチュエーション……
いずれみんなにもしてあげたいけど、今はまだ自分だけ。


ご馳走様まで遠慮なく

「むぐむぐ……まだまだあるね〜」

 

「でもこれすごいわね……いくらでもイケちゃうわ」

 

「夏のパワー、感じますね〜」

 

「ハナコは結構ゆっくりしてるけど、もっと食べなくていいの?」

 

「いえいえ〜、これでも食べている方なのですよ?」

 

 

時間をかけてだいぶん減ってきた海の家のごはん。

どれくらい時間が経ったのかとかもう考えてもないけど、まだまだ入ると思う。

いつもならもうお腹いっぱいになってるだろうから、これも海の力?

いや、夏のテンションがもたらしたものなのかなぁ?

 

どっちにしてもいつも以上に食べれることには違いないからいっか。

あ、だけど今日が過ぎた後に体重計に乗るのがちょっぴり怖いかも。

合宿場に備え付けてあったのに乗ったときは割と増えていたように思ったし。

 

みんなはもっと体重あった方がいいんじゃないかなとか言ってたなぁ。

ボクの体おっきいはずだからみんなよりあるはずなんだけどなんでそう言われるんだろ。

確か見てて不安になるとか、ポッキリ折れそうとかなんとか。

……そんなに痩せてたっけ?

 

いや、タンパク質とかはちゃんと摂取してたはず……なんだけど。

アリウスの食糧事情的に不安になるのもしょうがないのかなぁ。

その辺に関してはみんなも同じだけど……

 

 

「あ、お口直しもあるのでこちらもどうぞ〜」

 

「おくちなおし……えーと、これ?」

 

「はい、トマトとチーズのものですよ」

 

「う。 ……生のトマトってなんか食べにくいのよね〜……

ケチャップとかは全然大丈夫なのに、不思議よね……」

 

 

そんなふうに考えが逸れてたら、ハナコさんから一つのお皿が。

トマトとチーズ……確か料理本ではそういうサラダもあるって見たことあったなぁ。

硬めのパンと一緒に食べるのもなかなかいいらしいけど……

 

確かに海の家のがっつりご飯で口の中が結構どろっとしている感じがしてる。

美味しいのは美味しいけどちょっと重たくなっててあっさりした味がほしい。

そう考えると目の前のトマトとチーズはこれ以上なくいいものだと思うな。

 

 

「うん、ボクそろそろ味変えたいと思ってたしちょうどいいや」

 

「ご遠慮なくどうぞ〜」

 

 

それじゃあ遠慮なくぱくり。

ひとかけらのトマトとそれに付属したチーズを一緒に頬張る。

 

……う〜ん、これはシンプルながら奥深い味……

あっさりと塩胡椒、その上に若干濃口オイルで味付けされたトマトに、これまた濃すぎないように調整されたであろうチーズがちょうどよく噛み合ってる……

噛んだら流れ出てくるトマトの水分もチーズの風味と絡み合って口の中にあったくどすぎる味がどんどん流れていくみたい。

 

ある程度味わって飲み込んだら、すかさず冷たいお水を一杯。

爽やかな味と感覚を喉に通して、次の瞬間にはお口がすっきりさっぱり。

ヘビーなご飯中の中で、落ち着いたひととき……

 

 

「…………」

 

「……コハルちゃん、トマトは苦手ですか?」

 

「ん〜……いや、あんまり食べないな〜って思って……」

 

「あんまり好き嫌い……というよりさっき食べにくいって言ってたね。

多分今ならお口にあっさり入っていつもより美味しく感じるんじゃないかな?」

 

「あ、あー……それじゃあ試しに……」

 

「チーズと一緒にね、口の中に入れるんだよ」

 

 

その様子を見てたであろうコハルちゃん。

ハナコさんの質問でちょっとだけ目が泳いでいたような気がする。

食べたくないというより迷ってたような感じもするけど……

 

 

「あむ」

 

「いい食べっぷりだぁ」

 

 

それでもこの場においては勢いに任せた方がいいよねってことで。

ちょっと考えた後に勢いよくトマトとチーズを口に入れた。

目が若干きゅーって閉じてたけどすぐに緩んで、美味しそうな様子が見てとれる。

そうだよね、今のお口にはこれがすっごく効くよね。

 

 

「んんん〜〜〜〜〜〜〜っっっ」

 

「ふふっ……ころころ表情が変わる様子が可愛いんです」

 

「そばで見てると本当に転々と変わるなぁ」

 

「ええ、そうでしょうそうでしょう!

この様子で普段からいろんな姿が見られるから、ちょっといたずら心が……」

 

「むむ、ハナコさん。 やりすぎ注意だよ?」

 

「ええ、もちろん♡」

 

 

そうにっこり笑顔を見せるハナコさん。

なんだかお外には可愛い子に悪戯をしたくなるって言葉があるらしいけど……

本気でやりすぎちゃうとボクは嫌だと思うから本当にほどほどにね。

 

何よりいじわるばっかりだと本当にその可愛い子の心は離れちゃうと思うし……

そうなったらもう仲良くなんて出来ないと思うからね。

 

ところでハナコさんのお皿空っぽだけど足さなくていいのかな。

……いや、当人のタイミングでいいんだったね。

 

 

「それじゃあ残りもどんどんいっちゃうよ〜」

 

「むぐむぐ……」

 

 

さて、お口直し完了。

目の前にある、ある程度減り始めたご飯の山にもう一度突撃しよう!

これだけの量食べ切れるかどうかはいっそのこと考えないように、

ボク、できる限り残したくはないから頑張ろう!

 

 

---

 

 

「ごちそうさまでした……けぷっ」

 

「満足感とちょっと後悔が混じってるような気持ち……だけど全部食べれたわね」

 

「お二人とも、すごい食べっぷりでした〜」

 

 

勢いに任せて、時に手を止めて休憩しつつ食べ初めてしばらく。

気がついたら目の前のご飯の山は全部消えてて、食べ終わってた。

……お腹がいつもより膨らんでる気がする、いや多分気のせいじゃない。

この時に少しでも突かれたらうげーって気持ちになっちゃうかも。

 

 

「流石にお腹休憩……」

 

「そうね……休憩して、お手洗い行って……それから行きましょ」

 

「お水も飲みましょうね〜?」

 

 

気を利かせてこぽこぽとボクとコハルちゃんのコップに水を補充してくれてる。

あくまで自分のペースを守ってたハナコさんはボクら二人より余裕そう。

それでもいつもより満腹には違いないだろうけど……

 

 

「ハナコさん、お腹は大丈夫なの〜?」

 

「流石にお腹を休ませるべきだとは思いますが〜……動こうと思えば動けるとは。」

 

「え〜、ほんと〜……?

こっちはマジでパンパンなのに、やっぱりペース配分〜……?

もっとがっつかずにゆっくり食べればよかったかな〜……」

 

「だけどコハルちゃん、あんなたくさんのご飯ゆっくり食べてたら途中でお腹いっぱいにならないかなぁ」

 

「そうよね〜……けふ……」

 

 

……今動くと、なんかこう、爆発しそうな気持ち。

多分そんなこと起きないんだろうけど、気を抜いたらパーンってなりそう。

そんなくらいにお腹いっぱいになったことなんて初めての経験だなぁ。

 

というか、お腹いっぱいになれたのってお外に出れてからのような気がする。

なんでかな……満腹になっちゃいけないとか考えてたんだっけ……?

……それは……まぁ、今思い返すことでもないか……

 

 

「だけど、なんだかこんなにたくさん食べちゃってさ……

“先生”たちになんか悪いことしてる気分になってきたわ……」

 

「え、なんで??」

 

 

突如、コハルちゃんがつぶやく言ったことにボクはのんきに聞き返す。

ご飯食べてることはわるいこと……じゃないよね。

 

 

「いや……同じ場所で遊んでるはずなのに私たちだけここで食べてよかったのかなーって。

ご飯の場所を探す前に呼んだほうがよかったかな〜……」

 

「うーん……そうかもしれませんが、あちらの皆さんはあちらで探して食べるのではないでしょうか〜?」

 

「それもそっかぁ。別にここだけじゃないものね、食べるところって」

 

 

さっきコハルちゃんが言ったことも確かにもっともだけど……

きっと“先生”たちもお腹が空いた時は探しに向かうだろうしあんまり気にせずともいいように思うなぁ、教えに行こうにも、向こうもとっくに食べてましたじゃ遅いから……

 

それに、時間も時間だからもうとっくにご飯食べるところに入ってると思うし。

ボクたちのいる場所とどんな違いがあるのかなぁとかは確かに気になるけど……

少なくともたくさん食べた後でもう一回お店に入る気持ちになれないようにも。

お腹いっぱいだもんね。

 

 

「……様子見に行く?」

 

「ん……あ、あー……そろそろ見るぅ?

ずっと遊んでたけどさ、それだけじゃヒフミたちにも悪いしなぁ」

 

「では、もう少し休憩してからいきましょうか〜」

 

「「さんせーい」」

 

 

うんうん、食べ終わった後にずっと居座ってもダメだからね。

お水飲んだりお手洗い行ったり……体がスッキリしたら行こう。

それにしても、本当にぱんぱんになっちゃったなぁ……けぷー

 

 

---

 

 

結局お店から出るまで2、30分はかかっちゃった。

満足の裏で、お腹がたぷたぷしちゃっている気もするけど、今のボクは間違いなく幸福の中にいる。だから苦しいとかそういう気持ちはないね。

 

 

「こちらでしたよね?」

 

「うん、間違い無いわ」

 

「えーと、“先生”はどのあたり……

 

(ドォォォン……)

 

……かな……???」

 

 

探している間になぜか爆発音が聞こえてきた。

……おかしいなぁ、遊んでいる時になるような音じゃないんだけどなぁ。

一体みんななにやって……??

 

あ、向こうに“先生”見つけた。

でも何だか疲れているようにも見える……気がする。

あくまで遠くからぱっと見た感想だけど。

 

 

「“先生”、お疲れ様です」

 

“ん……ああ、三人とも。

みんな、今日は楽しんでいるかな?”

 

「ええ、数々の思い出をみんなでお作りしています♡」

 

「うん……ボクたちの方はのんびり楽しんでるよ」

 

 

こっちに気がついた“先生”は、すぐさま疲れた瞳を戻していつもの感じになった。

だけど、今日の朝一旦離れる前と比べてくたびれている感じがしている。

 

 

「えーっと……それで、ツルギ先輩とヒフミたちは一体どこいったの?

一緒にいるんじゃ……なんでここに一人で佇んでるのよ??」

 

“うーん……いや、そのね?

ちょっと先生にはあの勢いに乗ると邪魔になりそうだなって思って”

 

「あの勢い???」

 

 

「きひぇぇぇええええええ!!

あひゃはあははははははははははははははぁぁ!!!」

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁ!!!」

「ぎゃあーーーー!!」

「おべばぁぁぁ!!!」

「あ、あ、あべしっ!!!」

「たっ、わっ、ばぁぁぁ……!!」

 

 

その言葉と共にまた聞こえてきた轟音の方を向けば、ツルギさんが水着姿で暴れてた。

……うわぁ、人間ってあんなふうに吹き飛ぶんだ……上空にあんな高く……

海面の方にはおんなじように吹き飛ばされてしまったであろう生徒たち……コハルちゃんたちが不良って呼んでる子たちがぐったりしながら浮かんでる……

 

おかしいなぁ。

遊び場が、戦場になってるよ……

 

 

「……なんであんなことになってるのよ“先生”?

ツルギ先輩は遊びに来たんじゃなかったの……?」

 

“いや、私にもよく事情がわからないけど……

不良の子たちが、何かあるたびにツルギの方へ向かっていってね……”

 

「なんで?」

 

“さぁ……”

 

 

心の底から出てきた疑問に、“先生”自身も心から不思議そうに首を傾げてる。

他の不良さんたちだって普通に遊びにきてるはずなのに、

海を楽しむ以上にツルギさんの方へ向かう理由ってなんなんだろう?

 

不良さんたちには何かそうするだけのわけってあるのかなぁ。

……あの様子だとどうやってもお話なんて聞けそうに無いけど……

 

あ、そのそばでヒフミさんがアズサさんと一緒に泳いでる……

心なしか泣くように叫んでいるような気がしてきて、ちょっと哀愁を誘うような……

というか隣で暴れているなかよく泳げるね……

いや、ボクも多分泳いでいる時のテンションだと周りの撃ち合いなんて気にならないかもだけど。

 

 

「えーっと……お手伝い……」

 

「リエルさん、私たちに出来ること、あるのかなぁ……」

 

「……うーん……」

 

 

……水鉄砲ならまだしも、実弾と撃ち合うのはボク自身ないしなぁ。

しかも今のツルギさんの近くに行っても何だかみんな揃って弾き返されそう。

というか、今浮かんでる不良さんたちの仲間入りしそうで、近づけない。

 

遠くから眺めてるハナコさんも、冷や汗が少し出てる。

いつも余裕そうな姿を見せてても、流石にあんな暴走の嵐の前には見せられないよね。

 

 

「……皆さんには申し訳ありませんが……一度戻りこちらはこちらで遊びましょうか」

 

「そうだね……」

 

「……ん、しょうがないよね……」

 

“うん、気を遣わせてごめんね。

こちらは私の方で見守っておくから、あんまり気にせず遊んでおいで”

 

「「「はーい」」」

 

 

みんなで戻ることに異論はなかった。

アズサさんとヒフミさんを置いていくのは何だかもやっとする気持ちもあるけれど……

ふたりは今ハスミさんのお願いであそこにいるわけだから、こっちからその活動を変にいじるのも違うと思うから、何にもしない。

 

……でも、やっぱりなんだか後ろめたい感じがするなぁ……

なんでだろ……

 

 

“あ、さっきあちこちで小耳に挟んだけど”

 

「はい?」

 

“なんだか夜に誰かが花火を打ち上げるんだって”

 

「ほう、花火……!!!」

 

「はなび? ってなに?」

 

「えーっと……上に打ち上げて、すっごくきれいになるやつ……」

 

 

へー……打ち上げて綺麗になる……それ、見てみたい。

火の花って呼ぶから……火薬を使うのかな。

どんなふうになるのかなぁ。

 

 

「それ、いいですね……!!

綺麗にみられるスポットを今から探さなくては!!」

 

「あ、ちょ! 先いって……“先生”ごめん、また後でね〜!!」

 

「二人ともバタバタしてるなぁ……」

 

“まぁまぁ”

 

 

このままじゃ遅れちゃうから、”先生“にぺこりと頭を下げて、すぐに後を追った。

その後ろ姿を見てた”先生“は、右手をゆっくり振って。

穏やかな笑顔でボクたちを見送った。




【ツルギと戦う不良たちの声】
「チョコミント焼きそばってなんだよーーーー!!」
「冷やし中華に練乳なんざ合うわけねぇーーー!!」
「クソックソッ!まだ腹が痛む……ちくしょう!」

「にくい……うまそうな飯を食っている奴がにくいぃぃ!!」
「道連れだ……お前らの口にもあのゲテモノ料理突っ込んでやるぅぅぅ!!」


「ど、どうしてみなさんから怨嗟の声が聞こえてくるんですか〜〜っ!!?」
「ヒフミ、冷やし中華って美味しいのか?」
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