アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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しっかり休めたあと、かるーく復習をすることになった。
だけど、その時にかなりの変化が見れたように思える。
これも、みんなで遊んだから起こってることなのかな?


とある少女と、補習授業部 お休みの効果

「あぁぁぁ〜〜……」

 

体をぐいーっ、と伸ばして自分の調子を改めて整える。

お水をたくさん飲んで、お手洗いも結構行って……だいぶ調子が戻ってきた。

……ん、背中がグキって……別に痛くもないけど音が鳴るとビクッてなるよね。

 

 

「さて皆さん、今日はかるーく復習ですから新しい範囲はやりませんよ?」

 

「う、うん……」

 

「わかってる」

 

「はーい♡」

 

 

それで、今からみんなは今までやった場所を復習して回るんだって。

お勉強は何回もやっていったらより理解が深まるらしいから、こまめにやり直していけばその問題と解き方が憶えられて、すらすらできるようになる。

ボクは割と解き方憶えられる方なんだけど……確実な方法があるならそうすべきだよね。

 

それにしても、心配なのはコハルちゃん……

みんなで海行く前のこと引きずってたとこはだいぶピリッとしてたし。

実際同じベッドに入って落ち着くまで、穏やかじゃなかっただろうし……

 

一回スッキリできたはずだから今日も落ち着いてお勉強してほしいなぁ。

みんなと同様前に進めていると思うし、冷静に……

 

……と思っていた矢先、みんなが一斉にお勉強を始めた。

相変わらずハナコさんは教科書とノートを開いてるだけでカリカリという音さえ出さないけど、他のみんなのことを穏やかに見守っている。

 

……ハナコさんってみんなの見えないところでお勉強してたりするのかなぁ?

それでお勉強どきでもみんなのフォローに回ってて……

……あー、でもなんだかそんな感じもしないような……

本当に一回のことでほとんどわかっちゃってそこからもう一度やったら全部できるみたいな。そんな様子が頭の中に浮かんだ。

 

 

「……」

 

「んー」

 

 

……お勉強が始まってからはすぐみんなは静かになっちゃった。

真剣な表情で何かに打ち込めることはいいことだ。

だけどさっきまでの時間と比べると、しーんとしすぎてなんだかソワソワしちゃう。

 

ボクって静かなの苦手だったっけ。

一人で寝る時とかは静かな方が好きなんだけどなぁ……

 

 

「……」

 

 

……おや。

何気なしにみんなのこと見てたけど……なんだか鉛筆が流れるように進んでる。

アズサさん、ヒフミさん、コハルちゃん……みんな結構いいスピードだ。

ハナコさんは……そもそも鉛筆手に持ってないや。

 

みんな今日はだいぶ集中しているみたいで。

周りの小さな音なんて気にならないくらいに勉強へ打ち込んでる。

わからないところがあったら止まってしまいがちなコハルちゃんも全く止まらない。

 

なんだか、前見た時とは全然違う。

まるでみんな違う人になってるみたい。

 

 

「……んー……」

 

 

……だけどみんなこんな大真面目にお勉強やってる中ボク一人だけ後ろで座ってのんびりしてるだけってなんだか……奇妙な疎外感的なものを感じるっていうか……

いや、誰かのヘルプコールがあったら助けてねって話はわかるよ?

今日もそのためにここにいるんだし……

 

けどさ。

今の所ここにいる誰もお助けが必要なさそうな感じだよね。

それもたぶん、復習時間の間ずーっと。

うん、いいことだけど……そうなると、ボクここでじーっと座ってるだけになっちゃうなぁ。

 

……うーん……

お勉強を眺めるだけ……手持ち無沙汰だなぁ……

ボクも何かお勉強してみる? 最近は落ち着いてお勉強してなかったし……

 

……せっかくだからなんかやろっと……

 

 

---

 

 

「……あれ、もう終わっちゃった」

 

 

ボクも暇になって教科書開いてからものの20分くらい。

ふとコハルちゃんがそう呟いて、つられて顔を上げる。

 

いつもなら割と詰まってたり、悩んでたりする時間が多いコハルちゃんからそんな言葉が飛び出して、言った本人自身がすっごいキョトンとしてる。

自分のことなのにすごく驚いてる。

 

 

「コハル、見直しはちゃんとしたの?」

 

「う、うん……全部のページ見返して、それで答えてなかったりわかんなかったりする部分、もうないの。本当にぜんぶおわっちゃった」

 

「それはいいことだからそんなにびっくりしなくても……」

 

「いつもならもっと時間かかってるから……

あ、少ないから……でもない、かなぁ……?」

 

 

そんなおっかなびっくりみたいな話し方しなくてもいいんじゃないかなぁ。

むしろ喜んでいいんだよ?

……恥ずかしがってるそぶりもないから、本当に……

 

 

「もっと喜んでもいいと思うけどなぁ」

 

「あ、リエルさん……」

 

「あれ? リエルも勉強に混ざっていたのか?」

 

「暇だったからつい」

 

 

つい思っていることが口に出ちゃった。

その一言でみんながこっち見て……あ、そういえばリエルもいた……みたいな感じで。

いや、確かにボク自身ここにいる気配消していたようなものだけどそれはちょっと。

 

ちなみにボク自身は復習じゃなく他のお勉強してた。

いや、復習しようにもその内容が書かれてなかったからね……

ここでも変に疎外感感じるのはどうしてなんだろう?

 

 

「ところでアズサさんもヒフミさんも自分の分のお勉強は?」

 

「ん……ああ、あと三問でおわる、な」

 

「こっちは1ページだけでした」

 

「……みんな早いわね……」

 

「うふふ……」

 

 

ちょっと話題逸らしのために聞いてみたら、もうみんなほとんど終わってたみたい。

今日は軽くだから勉強量も少なめだって話だけど、それを加味しても随分早い。

……やっぱりみんなだいぶん補習の効果がでているんだね。

ボクが何かしたわけじゃないけど、なんだかホッとした感覚。

 

 

「じゃあ素早く終わらせて休もう。

海遊びの疲れはまだまだ残ってるだろうし、その後の時間が増える」

 

「うん、そうしましょう!」

 

「ボクはどうしようかなぁ」

 

「いや、リエルさん補習授業部じゃないからそんな無理してやらなくても……」

 

「そこはご自由に、でいいのではないでしょうか〜?」

 

 

みんな終わるタイミングに合わせて切り上げるでもいいけど、

今やってるところ全部終わらせたい気持ちもある……

うーん、こういうのって割とやめ時難しいよね〜……

 

 

---

 

 

「結局ボクが最後だったか〜」

 

 

流石に一つのお勉強全部と1ページだけの内容とじゃ終わる時間は比べるべくもなかった。

でも後悔はない、だってあのまま終わると中途半端だったんだもの。

こういうのはスッキリさせておきたいよね。

こう、後少しって時に時間が終わっちゃったらなんか後悔するし……

 

……今は合宿場の上の方にある屋外休憩スペースで休んでる。

日もすっかり沈んでお空は真っ暗……昼間は暑いこの頃だけど、夜中はそうでもない。

ずっとクーラーの効いているお部屋の中にいるのも気持ちいいけど……

寒いってなった時もあるし、ずっとお部屋の中にいるのもアレだし……

 

それにしてもこの合宿場は本当にいろんな場所があって知らない場所もまだあるなぁ。

元々4、5人で使うような場所じゃないらしいけど、そんなところをみんなだけで使ってる今の状況ってめちゃくちゃ贅沢だったりするのかな?

 

この辺に来る他の生徒もほとんどいないみたいだし……

いや、みんなで使う前は誰も来てなかったって話だからそれが普通なのかなぁ?

 

 

「……あ、そういえばこれもう取っていいんだっけ?」

 

 

考え事してたら、体にぺたっと貼っていた湿布の存在を今思い出した。

つけた時はあんなに気になったのに、気がつけば存在忘れてたって……

集中している間って他のこと頭の中から消えていっちゃうよね。

完全に忘れるのもダメなんだろうけど、これのベタベタをことを考えるとつけてる間は忘れるくらいがちょうどいいのかも?

 

 

「……ん〜……」

 

 

あー……背中のやつ、取りにくいなぁ……

元々みんなに貼ってもらったものだから届かない場所にもある……

というかそこが痛いよ〜ってボク自身が言ってたからそれも普通かぁ。

 

背中に頑張って手を伸ばすけど、ぜーんぜん届かなかい。

この姿、周りから見たらちょっとおまぬけな姿かもだけど、自分は真面目だし……

 

 

「あら、リエルちゃん。

その湿布、まだ取って……いえ、取れないんですね。手伝いましょうか?」

 

「あ、ハナコさん。お願いしていいかな」

 

「はい♡」

 

 

うんしょうんしょと背中に手を伸ばしてたら、ハナコさんがやってきた。

多分外の空気を吸いに来たんだろうけどいいタイミングだと思う。

背中にある届かない場所の湿布を取ってもらう……

 

……うーん、これ剥がす時もなんか独特の感触……

確かに楽にはなったけど、なんでこういうものなんだろう?

いや、接着剤的な感じでつけれないとこうして体に貼れないのはわかるんだけど……

貼った後ジワーって効いてくるあの感覚はどうやって出すんだろうね。

 

お世話になったのに、疑ってみちゃうなぁ。

 

 

「取れました〜」

 

「ありがと〜」

 

「いえいえ、この位置に貼ったのは私ですので、取るのも、ですよ」

 

 

あ、そうだったんだ。

貼る時はずっとうつ伏せだったし誰が貼ってるかとかは雰囲気だったけど……

……おぉ〜、なんだか体が軽い……すっごいスッキリ。

 

朝あんなに苦しんでたのに、綺麗さっぱり痛みがなくなってる。

不思議アイテムだ〜……

 

 

「ふー……」

 

「ふふっ、なんだか顔がふやけて……今すごく気持ちいいってなってる顔です」

 

「だって気持ちいいんだもん……」

 

 

こうして周りの目も気にせずぐったりしててもいいんだし。

体も心も今はすっごい落ち着いてて……風も音も、全部が気持ちいいんだもんね。

そりゃ、顔もふやけちゃうってものだよ……

 

 

「ハナコさんだって、気持ちよさそうにしてるんじゃないの〜……」

 

「ん……ええ、そうですね。

昨日の夢見心地な感覚がまだ残っていて……」

 

「ふーん……」

 

 

ボクもあの海で泳いでた時の気持ち、今でもはっきりと心に残ってるもんね。

……またみんなで行ってみたいなぁ、海……

 

 

「あ、ところでなんだけど」

 

「はい、なんでしょう?」

 

「今日のお勉強……なんでみんなあそこまでスムーズに進んだんだろうね。

あれもお休みの気持ちが影響しているのかな?」

 

 

……海の気持ちかそうじゃないのか、無性に気になる。

もしかしたらハナコさんにもわからないかもしれないけど、聞かずにはいられない。

だって、あんなの初めてだったと思うから。

 

 

「たしかに、みんな不思議そうにしてたと思います。

……だけど、なんとなくですが……その理由はわかるような気がします」

 

「そーなの? じゃあ、ちょっと教えてよ」

 

「ええ、いいですよ。 まぁ、仮説に近いかもですが〜」

 

 

ちょっと勿体なさそうなそぶりをしながらも、ちゃんと教えてくれるハナコさん。

なんというか、ハナコさんの癖に近いけど……

こう、大事でもない話でも大事な話でも若干溜めを作るのはなんだろう?

 

 

「まぁ、あの海でのことだって関係はあるのですが、それ以上に。

……今日のお勉強中はすごくゆとりがあってリラックスできていたからだと」

 

「え?」

 

「おやリエルちゃん、『それだけなの?』と考えていますね?

……それが重要なんです、その『それだけ?』と思われるようなことが、とっても」

 

 

……うーん、まるで呼吸するようにこっちの考えを見抜いてくる……

だけどゆとりがあってリラックスできている状態であることが補習のあの成果において大事なこと……って話されてもピンとこない自分もいるなぁ。

 

 

「そもそも、補習授業部の皆さんは文字通り補習のために集められたグループ。

これ、とっても悪い言い方をすれば……無理やりお勉強させられてるともいえます」

 

「うんうん」

 

「でも人は『無理やりやること』に抵抗を感じることも多く……

特にそれが苦痛だったり苦手なことだったりすると、モチベーション……

やる気がなくなる事も」

 

「あー……なんだかわかるかも」

 

 

その例え、すっごくしっくりくる……

確かにボクも銃持って戦えって言われても心のどこかでイヤだって思うもん。

……確かに、やりたくない事に対してやる気はでない。

 

 

「ですが、今日はみんなで息抜きをしたあと……その気持ちも抜けてない時。

いつもあるような『いやだなー』と思う気持ちが忘れられていました。」

 

「うん」

 

「イヤだと思う気持ちがなければ、当然抵抗感も生まれず。

リラックス中の穏やかな気持ちがお勉強をスムーズに進めてくれるんです♡」

 

「おぉ〜……そうなんだ」

 

 

なんだかすっごく納得できた。

イヤだと思うことがなければ抵抗はない、だからこそお勉強がイヤじゃなくなる……

逆にイヤだと思っている間はどんなことがあってもイヤだって気持ちが残って、

その気持ちが無意識の間でお勉強の邪魔をしちゃうんだ。

 

……これ、何にでも言えることかもしれない。

なんてことないように話してるけど、すっごく奥深い考えだなぁ……

 

……そう思うと、アリウスのみんなだって。

本当はトリニティに対するやり返しを……本当にやりたいって思っているのかなぁ。

心のどこかでどうしてそんなことを……って思っているのかな。

 

 

「イヤなことは、イヤ……」

 

「ん、リエルちゃん……?」

 

「……ん、なんでもない」

 

 

ふと、呟いたことが聞かれちゃった。

だけど、偽らない本音でもあったと思う。

誰もやりたくないって思うようなことなら、やらなくたっていい……

今までのお話から考えても、それは間違ってないと思った。

 

 

「ねぇ、ハナコさん」

 

「……どうしました?」

 

「ハナコさんにとってお勉強って、楽しいもの?」

 

「はい……?」

 

 

それで、ふと聞いてみたくなった。

 

お勉強というものへの意識は、補習授業部の子達それぞれ違うものだと思う。

ヒフミさんはフラットな感じで、好きでも嫌いでもなさそう。

アズサさんはお勉強が楽しいみたいで、覚えることが楽しそう。

コハルちゃんは苦手意識が目に見えててそんなに好きじゃなさそう……

 

じゃあ、ハナコさんは?

……そばで見てても、わかんなくて。

ついつい聞いちゃった。

 

 

「うーん、そうですね……

まぁ、みんなと一緒にやるお勉強は……楽しんでやっていますよ?」

 

 

そうやって、にっこりと微笑みながら答えるハナコさん。

……多分、この答えは嘘も偽りもない本心なんだろうなって、そう思った。




【その後の補習授業部小テスト】


“みんな100点!! 頑張ったね!!”

「す、すごいです! この調子なら、行けますよ!」

「ああ、みんなで合格しよう」

(わ、私がひゃくてん……!!
う、うそ……ゆ、夢じゃないよね……!!?)
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