いや、まだ食べてる途中なんだけどね。
ところで、ヒフミさんが言ってるアビドスってどこなんだろう?
「アビドス高等学校……?」
「はい、縁があって前にご一緒したことがあるんですっ!」
「へ〜……」
ラーメンを食べる……啜る?
まぁ、食べながらお話がてらどんな知り合いなのかヒフミさんに聞いてみたら、
トリニティとは別の場所にある学校の生徒さんたちだって。
そりゃ制服が全く違うからそうなんだろうとは思ってたけど、アビドス……
トリニティの中じゃあんまり話を聞かない学校だったからどこだろうって思っちゃう。
アズサさんも“当番”中にいろんな学校の生徒と関わっているみたいだけど、アズサさん曰く。
『あくまでおんなじことをするだけの、即興の部隊だしそこまで』ってことで。
周りの生徒さんたちのことはあんまり気にしてはなかったみたい。
それはそれでアズサさんらしいといえばらしいけど……
もうちょっとお外の学校のことを知ってもいいんじゃないかなぁとは思う。
確かに初めて会う人と何話そうかとかは……考えちゃうかもだけど。
「ん〜?
もしかしてお嬢さんはアビドスのこと知らない人なのかな〜?」
「えーっと〜……」
「どうなのどうなの、おじさんにちゃんと話してみなよ〜」
「ホシノ先輩、だる絡みやめてあげてください……」
そう言いながらボクの体にぽふーって体をゆっくり押し付ける桃色の子……
いや、さっきから先輩ってよく言われてるしもしかしたら年上なのかもしれない。
……アビドスの生徒さんたちの中で一番小さいような気もするけど……
うーん、なんだろう、この不思議な感覚……?
「それにしてもおっきいねぇ……このおっきいたわわも、うへへ」
「はーいホシノ先輩そこまでですよ〜♧」
「あっ、ちょノノミちゃん、もうすこし、もう少し堪能をあいてててて」
「綺麗な頭固めだ、接近すればこれだけで相手を制圧できるぞ」
「そんなこと言ってる場合なのかなぁ」
くっついてきてた桃髪の先輩……ホシノさんがひっぺがされてぐぐぐーって固められてる。
なんか、固めてる人の目がすわってる気がするんだけどなんでだろう?
「なんかごめんね、ホシノ先輩って時折結構ふざける人で……」
「いや、ボクはそんなに……」
「……その、胸に手をあてられそうになってそれって大丈……
ああっ、いやなんでもないわ!! 忘れて!!」
「???」
黒い猫の子はなんで頬を染めて顔を逸らすんだろう……
さっきのホシノさん、やっぱり普通にみても何か変だったりした?
でもあのくらいならスキンシップにでもなるんじゃないの?
……いや、初対面の相手にスキンシップはやっぱり攻めてるかなぁ。
やったら嫌がられそうな子もたくさんいるだろうし……
思えばボクが医務室にいた頃ってたまーに頭とか撫でたりしてたっけ。
その時になんかみたことない反応する子ばっかりなのは……
でもそのあと嫌がったりしないしなんならやって欲しそうな顔してたのはなんでだろう。
もう何が何やらわかんないね……
「それで、アビドスってどんなところなの?」
「……それは私も気になる」
「えっ……う、う〜ん……これ、私から話していいことなんですかね……?」
「ん〜……? おじさんたちから聞きたい〜?」
それで、話題に出た以上は学校のことをが気になってくる。
でもヒフミさんがなにか言いにくそうな様子で……
それをみたホシノさんはなんてことない感じだけど……
……これは……なにか、また変わった事情が飛び出してくるのかも……
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「しょ、所属生徒が5人しかいない???」
「そーだよ〜、ここにいる私、ノノミちゃんに、アヤネちゃんとセリカちゃん。
そんで、今ここにいない1人を合わせたので全員だよ〜。
ごめんね、全員集合してなくって〜」
「そ、それはまた……とんでもないな……」
流石のアズサさんも驚きを隠せないみたい。
なんとアビドスって学校はこの頃住みにくい状態になってしまってて。
昔はたくさんいた生徒も他所の学校に行ったりやめちゃったりして……
残った人はほとんどいないって状態……
ぼ、ボク……アリウスよりとんでもない場所なんてないって思ってたけど……
世界って……その……広いんだね……
いや、そんなところで比べたってしょうがないけど……思わずにはいられないって言うか……
「しかも、砂だらけって……」
「うん、自治区も砂漠化が進んじゃってさ〜……
大丈夫な場所があったとしてもそこもいずれは……って不安は出てっちゃった人たちには拭えなかったみたいでね〜」
「今でもどうにかがんばろーって私たちも思っているのですが〜」
「まぁ、苦しくないっていうのは嘘になっちゃいますよね……」
砂漠……って言う場所は見たことないからなんともいえないけど……
昼間は暑くて、夜中は寒くて……って感じで住むにはとっても苦労しそう……
けど、そのくらいなんとかなるんじゃないかなぁって考えちゃうのは……
あの時代と比べちゃうからなのかなぁ。
「それでヒフミさん、結局どんなふうに知り合ったのかは……」
「えっと……お買い物で縁がありまして〜……」
「そーそー、ちょっとお買い物を一緒にしてそこで気があってね」
「は、はいっ!! そうですそうです、ご一緒にっ!!」
……さっきからヒフミさん何かを誤魔化そうとしている気がするんだけど……
困ったような笑顔の中になんだか焦りを感じるって言うか……
あまりに不自然な感じがして……アズサさんもこう、眉をしかめてるような……
気になる、気になるけど……
隠し事はお互い様だから、あんまり言及はしなくてもいいや。
「それでヒフミちゃん、その子達は……」
「はい、今一緒の部活に所属している子と……お友達です!」
「部活? あれ、前は帰宅部って言ってなかったっけ?」
「帰宅部??」
「ん? いや、部活入らず学校終わったら自分のやりたいようにする人……
……あー、帰宅部っていざ説明しようとすると難しいわね……」
部活に入らない……確かに部活って入らなくってもいいって話だったっけ?
補習授業部はほとんど入ってねーって強制的だったから忘れてた。
いやまぁ、補習授業部が特別なだけだったね。
「えっと……事情があるんですよ……」
「どうしてそんなに気まずそうな表情を……?」
「ヒフミさんはテストをすっぽかして」
「わーっ!!?!?!?」
つい出ちゃった言葉に凄まじく驚かれちゃった。
……いや、でもボクはヒフミさんの所属理由に関しては本当にもうって思ってるし。
好きなのはわかるけどさ……“先生”もすっごい困った顔してたのを覚えてるから。
「て、テストをすっぽかし……?」
「えーっとぉ〜……その部活というのは〜……」
「補習授業部だ、みんなで楽しく勉強をしているよ」
「補習……って楽しいイメージないんだけど……」
「みんな楽しそうにしてるよ? ……ボクは入ってないから帰宅部?って扱いになる……のかなぁ」
一番楽しそうにしているのは多分ハナコさんだけど、なんだかんだみんな楽しそうなのは間違いないと思う。お勉強でもそれ以外でも何かとワイワイしてるし。
コハルちゃんは恥ずかしがったりむすーって顔してたりで最初の方はあんまり笑顔じゃなかったけど、最近はいっぱい笑顔を見せてるし。
「ヒフミさんがテストをすっぽかすとなると、やはりモモフレンズでしょうか?」
「む、やっぱりわかるのか?」
「ぅぅ〜……私、そんなにわかりやすいんですか……?」
「それ以外ないじゃん」
「知らない時ならともかく、今のボクでもヒフミさんはモモフレンズのためならなんでもするってイメージが強いけど」
「そ、そんなー!!」
だって今もグッズのお買い物帰りだし。
そばに置いてある袋いっぱいのグッズを見てたらそう思うし。
より親密に知ってたら……やるかぁ、とは思いついちゃうよね。
ヒフミさん、暴走もほどほどに……
以前の戦車うんぬんの話、ボク今でも驚きっぱなしなんだからね……?
「しっかし、トリニティか〜……みんなお金持ちって話本当なのかなー?」
「セリカちゃん、現金すぎますよ……」
「いやー、多分みんな考えるんじゃないかしら?
おっきい学校だと特にトリニティがお金持ってるんじゃないって話よく聞くからさー」
「ボクたち転校生だから沢山お金は持ってないよ?」
「そうだな……たくさんのお金がどのくらいなのかわからないけど、思うほどじゃない」
「あ、そうなんだ……えっと、なんかごめんね、変なこと聞いちゃって」
「別にいいよー」
学校自体がたくさんお金持ってるのは多分事実だと思うし。
普通の教室以外にも食堂とか、聖堂とか教会とか……なんなら今使ってる合宿場とかもあるし、ボクらが来る前はほとんど使われてなかったって合宿場も備品すごい整ってるし。
ティーパーティーの人達とかどれだけお金持ちなのか想像したこともあったっけ?
まぁ、少し前までお金どころじゃない生活してたボクにはお金持ちだと何できるのかあんまりわかんなかったけど。
きんきらな置き物とか、すごい豪華なご飯とか……
ふんわりとした印象でしかないけど、そういうのいっぱいありそう。
あとお菓子? ナギサ様ってお方がロールケーキをたくさん買ってたり食べてたりって……
……ロールケーキってお金かかるのかなぁ?
この前見た時はお手頃価格なお菓子だーって思ってたんだけど……
「……んむ」
「……あれ、ラーメン無くなっちゃった」
「話しながらでも減るもんだね〜」
お話がなかなかタメになったり楽しかったりで、そのせいでいつの間にか器が空に……
あとはスープがちょっと残ってるだけ……チャーハンもほぼ空っぽ……
いつもより食べるペース早かった? 美味しいものはついついもう一口がすぐに……
恥ずかしいわけじゃないけど、なんともいえない気持ちになる。
もう無くなっちゃって残念みたいな……いや、たくさん食べたしお腹いっぱいだけど。
「ラーメンのスープって飲むの?」
「それはお好みで構わないよ、無理に全部飲むと気分悪くなるって子もいるからね」
「大将のラーメンでそうなった子見たことないわよ?」
「おっと、褒めても何にも出ないぞっ?」
その辺は好みなんだ。
さっきも思ったことかもだけど、食べ方人それぞれだからね。
このラーメンのスープも単体で飲むのは結構辛いかもだから、確かに残すのもアリかも。
でもほとんど残ってないし、全部いただくって意味でも飲んじゃおうかな。
残すのは勿体無いって毎回思ってるから、食べ物は最後まで全部食べたい。
いや、今は冷蔵庫とかあるから昔みたいに無理に詰め込む必要もないんだけどね?
「んぐっ、んくっ……」
「おお、いった〜」
む、濃い……やっぱり濃いめ!
ラーメンって一つの料理のために作られてるスープだから、これ一つだけじゃ料理として完成しないという意味でも、他の麺や野菜と一緒に食べるためのスープってよくわかる。
だけど、美味しい……!
若干どろりとしているのは麺や野菜と程よく絡めるため……
うんうん、やっぱりラーメンは研究のしがいがありそうだね……!
「ごちそうさまでしたっ!!」
「おお、ありがとうね! いい食いっぷりだったよ!」
「はい、またきます!」
「おう、またいつでもいらっしゃい!!」
最後まで食べると同時に勢いで席から立っちゃう。
アズサさんやヒフミさんも食べ終わってるしお話も楽しんでたから何だか邪魔しちゃった感じがしちゃうけど、なんか立っちゃった。
それを見てアズサさんも立ち上がる、お腹をポンポンと抑えてるのはお腹いっぱいだから?
「ん、出発しちゃう?」
「あー、そうですね。いい具合に時間も過ぎましたし。
この時間帯なら電車もそこまで混んでなさそうです」
「あ〜……満員電車は避けたいよね〜。おじさんも気持ちわかるな〜」
「ゆーて私たちの乗る電車そこまで混んでる印象はないんだけど」
「それは言わない約束だよ、セリカちゃん?」
向こうの皆さんも引き止めたりはせず、素直に見送ってくれる。
ここご飯屋さんだから、いつまでも居るのは迷惑だろうしね。
他のお客さんだってやってくるから、食べ終わっちゃったのなら行かないと。
「んじゃ、ヒフミちゃん、またね〜。
リエルちゃんにアズサちゃんも、気をつけて帰るんだよ〜?」
「ありがとうございました〜」
「また」
お互い、気軽な感じでお別れを告げる。
心の中でお互い大変だけど頑張ろうって思いながら、ボクはみんなと一緒に帰り道についた。
「ん〜」
「あれ、ホシノ先輩……どうかしましたか?」
「ああ、なんでもないよ。 こっちもそろそろお買い物行こうか〜」
「あ、はい。それじゃあセリカちゃん、また後で」
「ええ、また後でね〜」
(……アズサちゃんとリエルちゃん、だっけ?
な〜んか今まで見てきた子達とズレがあるっていうか……引っかかるっていうか…
…でもその辺りに踏み込んでも私に今できることはなさそうだし……
あんまり気にしなくていいかな〜……)
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「ん……今日は誘いに乗ってくれてありがと、久しぶりにたくさん遊ぼ」
「ふふっ、シロコから誘うなんて珍しいこともあるじゃない。
今日はホシノ達の方、みんなでお出かけだったんでしょ?
そんな日にあたしと一緒なんてよかったのかしら?」
「確かにホシノ先輩達とも一緒に遊ぶのも楽しいけど、───はたまにしか会えない」
「そりゃ、あたしは普段アビドスにいるわけじゃないからね。
気分次第でアゲアゲでくるけれど。
……それで? 今日は何する? あたしはシロコに合わせるわ」
「それじゃ……一緒に走ろう、乗り物で」
「あら、あたしに挑む? それもいいわ……
さて、シロコ。ついてこられるかしら?」
「───こそ、追い越されて後で半べそかいても知らないよ」
「あら生意気。 いいわ、ぶっちぎってあげましょう!」
【アビドス高等学校】
砂漠化が進むアビドスという土地に存在する学校。
かつてはキヴォトスでも多大な影響力を持つ巨大な学区であったものの、地区の衰退と砂漠化の進行により大幅に弱体化してしまい、今では限界集落となっている。
しかしその分学内に所属する生徒たちは精鋭揃い。
特に現三年生の小鳥遊ホシノは非常に高い実力を持つ。
また、近頃赤い髪をした少女が一人砂漠にて目撃されているらしいが、
詳しい情報はあまり出回ってはいない。