だけど相手もやられっぱなしじゃない。
互いに攻撃しあうこの時間は、やっぱり長く感じる。
「ひぇぇ、”先生“相手ってなんでー!?」
「うーん、手強いです⭐︎」
「そんな余裕に話してる場合じゃないよ〜!!」
「流石ですわ。 ですが諦めるわけには参りません!」
激しさを増す銃撃戦。
美食研究会の人たちも追い詰められているのに、金髪の人と最初に”先生“とお話ししてた人は余裕飄々って感じでずーっと応戦してる。
赤い髪の子といろいろと大きいって雰囲気の子はパニック混じってるような気がするけど、
抵抗そのものはやめてくれない。
……慌てるくらいなら降参してほしいけどそうしてくれるならこんなことにはならないよね。
“正義実現委員会の包囲網は……”
“先生”の声を聞きながら今現状に集中する。
確かにボク達で捕まえるのが一番いいのは間違いないけど、だからと言って正義実現委員会の人たちが何もしないというのもおかしいこと。
だから備えは万全に、この周囲をぐるりと囲んで逃げ道を限定させてるとか。
全部塞がないの?とも思ったけど……
逃げ道がわかりやすくなってるなら先回りだって簡単にできるし、
美食研究会の人たちが得意とする逃げまわりにも対応できるってことだから。
この辺りの戦術はボクあんまり学んでないから大人しく任せておくとして……
その間ボクのやってる事といえば威嚇射撃くらい。
流石に撃たないのはまずいから腕の震えも無視してどうにか応戦してる。
……まぁ当たんないんだけどね。でも“先生”はそれでも大丈夫って……
……そういえばみんなに銃撃つところなんて初めて見せる……
いや、ボクの位置は遠いしみんな目の前の相手に集中してるしで、見てないか。
そういうのはあんまり考えないようにしよう。
「このー!!」
「げ、手榴弾ーっっ!!」
「いえ、あれは先ほど味方に投げ……あら?なぜこちらに」
「いや、爆発することには変わりないって!!」
コハルちゃんが投げ飛ばした手榴弾が、変わった爆発の音を立てながら炸裂した。
アズサさん達の応急処置のために投げてたものだけど、普通に爆弾として使えるんだ。
あれ、本当に便利だ……多分、普通の爆弾の方が強く攻撃できるんだろうとしても。
爆弾ってやっぱり味方を巻き込むのが一番の問題だからね……
「けほ……やっぱりぃぃ〜〜!!」
「あら……ゴールドマグロさんが揚げ物状態になってしまいましたわ」
「あちゃ〜……叩きとかお刺身にするってハルナが言ってたのに〜」
「これはこれで美味しそうではありますが⭐︎」
……自分たちの怪我より食べ物の心配してる……
痛みも恐れず目的を果たそうとするその姿勢だけは本当にいい姿に見えるのはなんでだろう。
やってること考えると感心してる場合じゃないのに。
「ここで仕留めに行く」
「続きますよっ!!」
「おっと……どうしましょう皆さん、どんどん追い込まれてしまっています」
「うーん、どうしましょうか〜?
この感じだと囲まれるのも時間の問題でしょうし」
相手の動揺を見逃さず、一気に前へと進むアズサさん。
それにヒフミさんもコハルちゃんも勇ましく続き、ハナコさんは様子を見ながら、
それでいて今この状況をよくしっかり観察している。
けど、向こうの人だって冷静そうな瞳でものを考えてる。
追い詰められているのは間違いない、けれど落ち着いてる。
……うん、確かにこれは厄介。 ボクだったらあの状況で落ち着いてなんかいられない。
「ば、バラバラに逃げたら生存確率上がるんじゃないっ!!?」
そして落ち着いてるってことは、ちゃんとした判断ができるってことで。
最初に声を上げた赤い髪の子が真っ先にびゅーんと車から飛び降りて、
「なるほど、いいアイデアですねジュンコさん⭐︎
では足の速さ次第ですが……弱肉強食ということで」
それに続き、金髪の人が銃を構える状態をやめてすぐ、赤い子の反対方向に駆け出し、
「そうですわね。
運任せとなりそうですが、それもまたスパイスのようなもの……それでは”先生“、失礼!」
さらにリーダーであろうハルナさんが最後に一発狙撃銃を放った後で、
また別の方向へ一目散。
「え!?!? ちょ、まって置いていかないで……ふぎゃ!!」
最後に残った一人が困惑したまま、だけど逃げようとしてすっ転んだ。
……うーん、綺麗なくらいに見事な逃げの速さ……
追いかけようとしたアズサさん達へ振り向くこともしないですたこらさっさ。
……あ、でもそこに一人残っている……
「置いていかないでってばぁぁぁーーーーー!!!
うわーん!! 覚えてなさいよーっ!!
いつかぜーったいに仕返ししてやるんだから〜〜〜〜〜っっっ!!!」
うわ、這いずりの状態からすぐに走る姿勢へ移行した!!
そしてそのまま適当な路地の方へ……あの状態からでも逃げれるんだ!
「く、想像よりずっと早い……追いつく暇もなかった」
「転んだ子はあのまま追いつけると思ったのにっ!?」
「あわわ、逃げられちゃいましたよ……!?」
確保に行ったみんなも面食らっちゃってる。
遠目に見てたボクでもあの状態はいけるって思ったから、みんなを悪くいえないけど。
ハナコさんと”先生“は驚かず、こっちも落ち着いたまま。
「”先生“、これは……」
”いいや、無理に追うより正義実現委員会のみんなと連携していこう“
「わかりました」
逃げられたことはもう割り切ってすぐに次の段階へ。
むしろここからだと言わんばかりに二人が気を引き締めてる。
その後ろから大勢の黒い制服の子達がわらわらとやってきた。
……こうしていっぱいいるの見ると、なんだか正義実現委員会の子達って似たような子ばっかりのような気がするなぁ、統一感があるというか……
みんな黒髪で黒い制服だから?
……ハスミさんもツルギさんも、マシロさんも……
たしか、前に会ったことのあるイチカさんって人も黒髪で黒い制服だったっけ?
……ん?
その中でコハルちゃんだけ髪の色が違って……
あ、いや。その方が逆にコハルちゃんってわかるからそれはそれでいいや。
「むんん〜〜〜……!!」
「ん〜………」
……それでなんだけど……
美食研究会の人たちがどこかに行った後もやっぱりうめき声のようなのが……
……誰か他にいるよね? たぶん……
「ねぇ”先生“」
”ん、どうしたの?“
「ボク、あの車をちょっと調べてもいいかなぁ……
さっきから、何か聞こえてくるような気がして……」
“何か聞こえて……?”
“先生”に声をかけてから、車の方へ一直線に向かう。
……ないとは思うけど、奇襲の可能性も考えて、そろーり、そろーり……
よし、車の近くまで来れた。
罠も、待ち伏せもなし……中には……美食研究会の人たちが置いていったマグロと……
「んんん〜〜〜………」
「……えっと……」
縄でぐるぐる巻きにされて口に猿轡もされてる、誰かがいた。
……や、やっぱり5人いたみたいだ〜……
---
「うぅ……どうしていつもこんなことになるの〜……」
「今、腕の縄を解くから動かないでね〜……」
「あ、ありがとうトリニティの人……」
猿轡をとって、縄をゆっくり丁寧に解いていく。
こういうのは切るのがいちばん早いんだけど、手元に刃物はないからなぁ……
こうしてゆっくり、あんまり痛くないようにしてあげるのが確実だ。
それでこの人は誰だろう?
美食研究会の所属生徒は4人って話だし……だからと言ってトリニティで見かける服装でもない。ツノもついてるし……この子も間違いなくゲヘナから来たんだよね?
だとしてもなんでぐるぐる巻きになんてなっていたんだろう?
“……フウカ??”
「え?」
ボクのやってることが気になってたのか。
それともやることをやって現状てが空いてるからか。
“先生”がこっちの様子を見にやってきて。
……フウカってもしかしなくてもこの人の……
「は……っっ!!
せ、“先生”〜〜〜っっっ!!!」
“ちょ……そんなに泣かなくっても”
「これが泣かずにいられますかぁー!!
有無を言わさずこんなところまで連れられてぇ!!
銃撃戦に巻き込まれて挙げ句の果てには置いていかれて〜……!!!」
「あはは……今日は、その。災難だったみたいだね……」
「うぅ、優しさが沁みるぅ……!」
あんまりもぞもぞ動かれると縄がほどきにくくなっちゃうんだけど……
フウカさんもいままで貯めてきた感情もあるだろうし、一概に動かないでっていえない。
泣きたい時に我慢するのって良くないって聞くし、このくらいはね。
あ、でもやっぱり手が滑って……縄から離れちゃう……
も、もう少し抑えて……いや、無理かぁ……
「今度あいつらにガツンと……ガツンと……言っても懲りるならこうなってないかぁ……
はぁ〜〜……もう、なんでいつも目をつけられるんだろう……」
“そりゃ、フウカは料理上手だからじゃないのかな”
「……そうですよね……」
「ん?」
料理が上手だからってこんなところに連れてきてどうするんだろう?
……このマグロさんを料理させるつもりだったとか?
うーん、美食を研究するっていうなら自分で料理しそうなものだって勝手に思ってたけど……
食べるのは好きだけど、料理するのは苦手だったり……?
「それで“先生”、フウカさんのことはどうするの?」
“ん〜……”
それで、今保護……いや捕獲?
……まぁ保護でいいや。
ここにいるフウカさんだって事情はどうあれトリニティの中へ勝手に入ってきちゃったのには間違いなくって。そういうことなら一緒にゲヘナの方に返さなくちゃいけないわけで。
……どうすればいいんだろう?
美食研究会の人たちみたいに暴れてたわけじゃないけど……
流石に何にもなしは無理だよね。
“リエル、一旦フウカと正義実現委員会の方へ向かってくれないかな?”
「あー……やっぱり?」
「うぐ……“先生”、その」
“いいや、悪いようにはしないけどこればっかりは……フウカごめん”
「はい……もしよろしければ今度また、手料理を食べにきてくださいね……」
当人もこの状況はまずいとちゃんとわかっているのか特に抵抗はしなかった。
その背中と目の表情が妙に悲しさを感じる……
---
一旦みんなと別行動をとって、フウカさんと一緒に夜の道をゆっくり進む。
その道中、がっくりとした状態で落ち込んでる姿が目に入って……
こう、この人は悪くないのに……って気持ちが湧いてくる。
なぜかボクまでなんだか落ち込んでしまいそうな感じがする……
「えっと……」
「うぅ〜……」
「その〜……」
とぼ、とぼ……という聞こえない音が聞こえてくるみたい。
こういうのを哀愁っていうのかな……
どうにかして励ましてあげたいけど、何話せばいいんだろう……?
流石に初めて会う子にそこまで気さくな感じに話しかけるのも……
「ね、ねぇ……普段は、その。どんなお料理してるの……?」
「ん……?」
そこで“先生”が料理上手がどうとかって話してたのを思い出して、話題にする。
その言葉を聞いて一瞬だけこっちを向いて、すぐにそっぽむかれた。
ダメだったかな……って思ったけど、少し雰囲気が変わって……
「……ゲヘナで、給食を作ってるの」
「きゅーしょく?」
「えっとね、学校のみんなが食べるご飯……」
「みんなって、どのくらい?」
「学校にいる全員……は流石に来ないけどそれくらいたくさん」
「ええ……!?」
普段のお仕事について軽く話してくれた。
学校にいるみんなのために……ゲヘナってキヴォトスでもおっきい学校らしいから……
少なくともトリニティとおんなじくらいの子たちがいると考えて……
……うそ、ちょっと想像しただけでも大変なのが伝わってくる……
「す、すごい……」
「そう……? 疲れるし辛いし、やりたくてやってるけど……
たまーになんでこんなことやってるんだろうって思うこともあるし……」
「……それで、美食研究会の人たちとなんで……」
「勝手に連れてこられたのよ……」
「ひぇ〜……」
勝手に……それはまた災難なって気持ちがまた湧いてくる。
本当に何にも悪くないことがわかるのにどうして……
そんな気持ちがひしひしと伝わってくる。
「ぅううう〜〜〜〜!!!
もう、いっつもこう、いっつも!!
今度目の前に来たらけちょんけちょんにしてやりたい〜〜……!!」
「ま、まぁまぁ……」
恨めしげに声を上げるフウカさんの瞳には涙が溜まっていた。
だけどそんな時に……
「あら、フウカさん。呼びましたか?」
「うひいっ……!!?」
「えっ」
近くの路地から突然ハルナさんが飛び出してきちゃった。
……いや、逃げてたはずなのにどうしてこんなところで出会しちゃうのかなぁ……?
【愛清フウカ】
ゲヘナ学園の給食部部長を務める少女。
手際の良さが大きな長所であり、日々山のような生徒の相手をしている。
日によっては4000人前の食事を用意することになるとか。
なおその腕前から美食研究会の黒舘ハルナに気に入られ付き纏われている。
頻繁にその身柄を拉致されては振り回されている。不憫。
もしこの作品の外伝出すならどんな路線がいい?
-
リエルの料理メインのほのぼの
-
アリウスメインのシリアスコミカルミックス
-
トリニティメインのギャグチック
-
それより他の作品の小説家はよ