どうにかこうにか、騒動は終わりを迎えたみたい。
ふぅ……
「ねぇ……あのまま置いといてもよかったんじゃないのかしら……」
「そうかもだけど、捕まえたならちゃんと運ばないといけないよ?」
「あ〜……」
ハルナさんとツルギさんの戦闘……いや、戦闘になってなかったけど。
ともかくツルギさんが無力化してくれたハルナさんをおぶって、正義実現委員会の生徒たちが集まっている場所までゆっくりと向かう。
話し声がかすかに聞こえてきたし、もうそろそろ到着……
あ、見えてきた。あそこだね。
「正義実現委員会の皆さん、お疲れ様さまですー」
「あ……お疲れ様ですー」
「リエルさんですね、話は聞いていますよー」
「ゲヘナの子を確保しているとか」
「あれ。 一人って聞いてたんですが二人いませんかー?」
「ああうん、ちょっと色々あって……」
黒い制服の子達が、あわあわとてんやわんやに右往左往してる。
慌てているというより忙しいって感じの。
ここにある拠点も緊急事に使うものらしく、簡易的な設備しかないんだって。
それでも捕まえた子を閉じ込めておくくらいは十分にできるからその辺は問題なし。
本当はこういう場所、使わない方がいいって話も聞いたけど。
「それで、この人は……」
「こっちで連れて牢屋まで運んでおきますー」
「それで、えーっと……」
「ねぇ、隣にいるゲヘナの子はどうしようかな」
「悪いことはしてないし、被害者だって聞いてるけど……」
「うーん……」
「……そうよね、扱いに困るよね……」
ハルナさんを渡してすぐ、えっほえっほと二人かかりで運ばれていった。
まぁ、やったことがやったことだし、リーダーだって話だしで、牢屋行きは避けられないよね。ボクとしても庇うとか、そういうのはしない。
だけど……フウカさんについてみんな悩んでるのは。
……やっぱり立場が微妙だからなのかなぁ。
ゲヘナとトリニティの間で仲がよくないって話で、今回の一件もゲヘナの子達が何の前置きも予告もなく、勝手にやってきちゃったのが問題になってるわけで。
連れてこられたといっても、フウカさんだって勝手に入っちゃったことに違いはない。
けど、他の子と違って暴れてもいないのに牢屋へ入れるのは違くない?
そんな感じの空気が伝わってくる。
「牢屋にいれるまでじゃないなら、その。
普通のお部屋に入ってもらうのは? 誰かの監視付きで……」
「あ〜」
「ありかなぁ、いや、ありかも」
「空き部屋……どこにする?」
「適当に使ってないお部屋でいいんじゃないかなぁ」
「ああ、配慮が優しい……」
普通の対応のはずなのに、なぜか若干涙が見えるような……
きっと、普段からたくさんふりまわされているんだろうなぁ……
一応閉じ込めることには変わりないけど、落ち着いて過ごしてほしいね。
---
「どうにかなりました〜」
「お疲れ様です、リエルちゃん」
「う、うんお疲れ……」
ハルナさんを委員に引き渡し、お部屋に入るフウカさんを見送って数十分。
補習授業部のみんなが制服のあちこちをボロボロにして戻ってきた。
いや、銃撃戦が起こった後あたりからみんな服に煤とか付いてたんだろうけど。
今気になるのはそこじゃなくて……
「その、それ……なに……??」
なんかこう、ぺしゃんこに潰された何かを運んでる……
形からしてもとは……いや、なんかかんがえるの怖いんだけど……
「ええっと、ですね……」
「つ、ツルギ先輩が、その……豪快にやっちゃって……」
「一瞬の出来事だったぞ」
「わぁ……」
やっぱりそうだった〜……
ツルギさん、あの感じだと多分手加減とか苦手っぽいけど流石にこれは……
ちょっと、今目の前に見えてるあれって他の生徒とか“先生”に見せちゃダメなやつだよ?
えらいことになっちゃってるもん。
「これで3名捕まえたことになりますが、後一人はどちらにいってしまったんでしょうか?」
「おおかた迷子にでもなってるんじゃないか?
ゲヘナの生徒ということは土地勘もないだろう」
「う〜ん、そうなると逆にどこいるかわかんないなぁ……」
わ、適当に逃げる時の怖さが出てきてる。
敵も味方もどこにいるかわかんない状況がこういう時一番怖いんだから。
不意の遭遇には気をつけたいよね。
いや、もうボクはこの拠点から動かない方がいいんだろうけど。
他のみんなも注意してくれたら……
「ん、コハルちゃん」
「え、どうしたの」
「どこか痛めた?」
「ん……グレネードが飛んできた時に少し腕打った」
よく見たらコハルちゃんが結構きつそうにしてたけど、やっぱり怪我してたんだ。
うん、せっかくだしここはボクが……
「ちょっと処置しよっか、向こうで」
「……えーっと、できるの?」
「割と得意だよ、結構やってきたことだし」
「そ、それなら……お願いして、いい?」
怪我って自分で処置する時も多いだろうけど、ちゃんとしてあげた方が治りがいいんだよね。
向こうでボクのところに来るのを遠慮しちゃって自力で怪我の対処する子も結構いる。
だけど、なんだか痛々しい状態になって結局ボクの方から向かうことも多かった。
あの時変に顔が赤かったような気がするけど……
もしかして、触った時に痛むところへあたっちゃったのかなぁ。
---
「うぅ〜……怪我の対処のためとはいえ、なんか恥ずかしい……」
「服の下にできた時はどうしても脱いじゃった方が早いからね、しょうがないよ」
「うん、それはそうだけど……ハナコとかが除きそうでなんか……」
「鍵ならかけてあるよ?」
治療する時はできる限り他の子は入れないのがマナー。
直す時にボク自身も集中するためだから、コハルちゃんも安心してほしい。
……うーん、それにしても昔はそうでもなかったはずなのに、窓のないお部屋って落ち着かない。アリウスの医務室は窓なんてなかったし、それが普通だったからなぁ。
今じゃ窓のあるお部屋にばっかりいる気がする……
というか、窓のないお部屋そのものが珍しいって感じるようになった。
だって、ないんだもん。
合宿場の寝室、元々の宿舎のお部屋に、教室。
正義実現委員会の委員室にも、シスターフッドの大聖堂にも、食堂にも。
ほとんどのお部屋に、窓はつきものだった。
……そう思うと、なんであの医務室には窓がなかったんだろう?
医務室としてそれが普通なのかな、それとも別の理由だったのかな……
……うーん、考えても答えは出そうにない。
今はコハルちゃんの怪我に集中してあげなくちゃいけないからね。
「結構大きいね。アザがしばらく残るかも」
「うわぁ〜……どうりでジンジン痛むと思ったら……」
「大丈夫、このくらいなら痛みそのものはすぐに治っていくと思うし」
「本当?」
あまり刺激を与えないように傷口をゆっくり覆って、包帯を巻いていく。
……その合間に、こっそりボクのもつ“ちから”も使って痛みを消しておこう。
何気に使うの、久しぶりだけど……やっぱりこの“ちから”の使い方、体で覚えてるみたい。
本当は怪我もなくて、この“ちから”を使うことなく終わってくれるのが理想だけど。
銃撃戦が発生したならそんなことはいってられない。
不慮の攻撃が命中したり、相手の強さに押されたりするのが当然のように起こるんだ。
みんな怪我なく……というのがどれだけ難しいかなんて、分かりきってる。
だからこそ、終わった後にみんなが安心できるようにしてあげたい。
“ちから”に頼るだけじゃなく、普通の治療だってしっかり学んで出来るように。
一応これを使ってボク自身が疲労とかそういうのは今までなかったけど……
いつ、これが使えなくなってしまうのかも分かってないから、慎重に。
「……あれ……?」
対処が終わってすぐ、コハルちゃんが首を傾げてる。
そういえば、久々に使ったのもそうだけど……トリニティの生徒にボクの“ちから”使うのはセイアさんの一件依頼だったね。コハルちゃん、急に痛みがなくなって……嬉しいというより困惑してる。
「うーん……? なんか、急に楽になった……」
「そう、ならよかった。 けど、あんまり無理して動かしちゃいけないよ」
「わ、わかった……(いつも通りに動きそうな気がする……なんでだろ、もう治ったの?)」
「さてと、あとは合宿場に戻ってのんびりしてれば大丈夫」
「……?」
なんだか腑に落ちない表情してるような気がする。
当たり前のようにやってたことだけど、やっぱりこれ普通じゃないんだなぁ。
今回は完璧な処置したから消えた……ってことにしちゃダメ?
一応、これで痛みが再発しちゃったとか、悪い影響が出たとかは今までなかったし。
怪我した痕跡も綺麗さっぱり消えてるはず。
後遺症も大丈夫だから安心してほしいけど……
「それじゃあ戻ろっか」
「う、うん……」
なんだかモヤモヤしてる状態のコハルちゃんの手を繋ぎ、出口の方へ向かう。
その間もコハルちゃんはずーっと首を傾げてた。
---
「補習授業部のみなさん、今日はありがとうございました。
“先生”はこれからもう一仕事してもらわないといけないので、ここには居られませんが……
これで皆さんへの依頼は終了になります」
「任務完了か」
「疲れました〜……」
コハルちゃんとみんなの元へ戻って、ちょっとしてハスミさんが自体の終息を教えてくれた。
それと同時に体がどっと疲れちゃった気がする。
緊急時はできるだけ体が誤魔化すけど、終わったらその効果がなくなるって本当なんだなぁ。
今まで溜まってたものが一気に吹き出してきたような気がする。
ともあれ、無事に終わってよかった。
長引いちゃうとそれこそ大事だからね、終わりは早い方がいい。
しかし、夜のおやつタイムがとんだ事態になったなぁ……
せっかく食べたカロリーが全部なくなっちゃったような気がする。
もう一回……と言ってもこの時間だと閉まって……
いや夜遅く、なんなら0時回ってもやってるんだったっけ? あれ?
……どっちみちもう売り切れてるだろうし関係ないかぁ。
せっかくだから帰り道何か甘いもの買って帰ろうかなぁ。コンビニってところで。
ここも24時間営業してるから、なんか夜中に買いたくなった時とかよく使ってる。
「あ」
「? どうかしましたか、リエルちゃん?」
「いや、美食研究会の人たちって今からゲヘナの方へ送り返すじゃん」
「はい、それが一番丸く治りますから」
「それじゃあ、あの人たちの身柄を受け取るのって誰になるの?」
全部終わってからふと気になった。
ただゲヘナの方へ連れていくだけじゃ、どうにも収まりそうにない。
そこからまた逃げられる可能性もあるし。
「それはゲヘナ風紀委員の方になるのでは?
あそこにはヒナ委員長さんもいますから、問題は発生しようがないと……」
「ん、そのヒナさんって強いの?」
「ええ、嘘か本当か、ゲヘナ生徒の問題児のうち、7割を倒して回っているとか」
7割、ゲヘナの問題児全員のうち7割……
うん、何かおかしい気がするけどツルギさんみたいなことができるんだろうね。
もしかしたら強さの分類が違うかもしれないけど、それくらい強い……
自分で表現しててなんだけど、強さのベクトルってなんだろう……?
「それだけ強い人なら安心できるね」
「はい、私たちが何かを心配する必要もないかと」
まぁ、そういうことならこの話はこれでおしまいでいいね。
問題なく任せて、それで。
「ん〜……」
「あれ、アズサちゃん? 眠いですか?」
「……戦闘行動の後こそ、しっかりしないといけないと思うけど……ちょっと、疲れた」
「戦った後なんて誰でも疲れるでしょ」
コハルちゃんの言う通り。
気持ちも体力も使うんだからそりゃ疲れるに決まってるよね。
だけどそこから無茶をしようとするのもアズサさんって感じがするなぁ。
……サオリさんと言い、睡眠時間はちゃんと取っておいた方が……
「うわ、みんな時計見てよ」
「おや……わ、もう今日が終わりかけてます!」
「ん? もうそんな時間だったのか?」
「そりゃ眠くなるわけだわ……」
そんなこと考えながら時計見たらもう午後の11時半くらいだった。
みんなで戦ったりフウカさんを連れて行ったりしてる間にそんなに時間過ぎてたの?
いや、時計なんて見る暇なかったからびっくりしちゃったよ……
「“先生”もしばらく戻られないと思いますし、みなさんも一度合宿場に戻りましょう。
寮の門限もとうにすぎていますし、あまりここにいてもやることはもう……」
「あ、はい。すぐ行きますー」
「それでは、後はお任せしますね〜♡」
うん、これ以上ここにいてもしょうがないし、戻ろう。
“先生”がいま何してるかは気になるけど、心配はいらないよね。
みんなと一緒に、合宿場でお休みしよう。
【ゲヘナ風紀委員】
ゲヘナ学園の治安維持組織。 委員長は空崎ヒナ。
戦力そのものは整っているし、キヴォトス全体で見てもかなり統率の取れた組織だが、
いかんせん所属高校が混沌極まっていてどうにも追い込まれ気味にみえる不憫な組織。
なお、ヒナ委員長の強さがぶっちぎりすぎて他の面々が束でかかっても到底敵わないと噂。
弱くはない、だけど委員長が強すぎる。 そんな組織なのである。
もしこの作品の外伝出すならどんな路線がいい?
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リエルの料理メインのほのぼの
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アリウスメインのシリアスコミカルミックス
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トリニティメインのギャグチック
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