けど、心はどこか浮ついてて。
眠気とか、そういうのはどこかに行っちゃったみたい。
「すっかり日も暮れてしまいましたね〜」
「うわ、もう10時とかそんなだ」
「みなさん、軽くお風呂に入った後は大人しく寝ましょうね」
「ああ、わかってる」
「アズサさん、そう言って外に見回りに行くのはナシだからね」
全員で足並み揃えて、戻ってきました合宿場。
……真夜中でどこも明かりがついてないと、なんだかおっかないなぁ。
いつも使ってる場所のはずなのに、知らない気配を纏ってるみたい。
廃墟とかもボロっちくて夜になると真っ暗になる建物はよく見てきたけど、
そういうのとはまた違った、威圧感のような、怖さを感じる。
……不自然さ、それとも暗闇に佇む静かさからかなぁ?
「“先生”、今日は戻ってくるかなぁ?」
「あそこからだとシャーレの方が近いとも思いますが……」
「シャーレってその、住むようなお部屋ありましたっけ?」
「仮眠室があるらしいよ」
「あ、そうなんですか……」
今日は“先生”も戻ってこなさそうだし、みんなもどこか浮ついてるような。
いつもと違う時間のせいなのか、それとも疲れてるからなのか。
気持ちがどうにもふらついてしょうがないみたい。
「とりあえずお風呂でのんびりしよう、ボク疲れたよ」
「ですね……すぐに洗うので」
「せっかくだから個人用じゃなくって大浴場で入らない?
みんな一緒に、洗いっことかしながら……」
「おや、それいいですね! 洗うのもみんなでになりますが」
「あー……いや、そのくらいなら……」
みんなでお風呂。
それもそれで疲れが取れそうではあるけど、そんな大きいお風呂場は……
あー、確かにあったっけ……?
別のお風呂がちょうどいいサイズだからみんなそっち使ってたけど、今日はいいかも?
こうしてみんなでお掃除って前にもあったね。
あの時も水辺の掃除だったなぁ、アレほど大きくはないだろうけどみんなで入るお風呂もなかなか大きそう。
「お風呂……忙しい時はシャワーで済ませてしまう」
「アズサちゃん、お風呂はちゃんと入った方がいいですよ?」
アズサさん、確かに寮で二人暮らししてた時いつお風呂入ってたっけ……
あんまり覚えてない、むしろボクが一人でのびのびしてた記憶しかない。
……こういうの、好みの違いなのかな?
確かにここ来てからすぐはお風呂ってなかなか入るタイミング難しかったなぁ。
入ってすぐがいいのか、ある程度休んでからにするのか……
まぁ、結局入りたい時が一番だって思い至って自分の気持ちのまま入ってるけど。
「それじゃ、すぐ始めようか」
「いえ、その前に手持ちの荷物を置きましょうね?」
「あ、うん」
---
荷物を置いて。
みんなで一心不乱にお風呂場をゴシゴシして。
お湯が溜まるまでゆっくりストレッチしながら待って。
「あ“あ”あ“〜〜〜〜〜〜〜〜〜………………」
溜まりきったお風呂の中に入った瞬間、自分でも出したことのない声が出た。
恥ずかしいとか何これとか思うこともなく、凄い声出た。
……疲れの影響なのか、抑えようって気持ちは全くなかった。
隣でハナコさんとコハルちゃんが珍しいものを見たような目をしてる。
確かに自分でも珍しい姿を見せているような気がする。
それに、お風呂入ってる姿なんて普段から見ないわけだし。
「はぁ〜〜〜…………」
「うぁぁ〜〜〜〜〜〜」
ヒフミさんとアズサさんもボクとおんなじ感じになってる。
特にアズサさんなんて体から力を抜き切ってだらりと手を湯船に沈めている。
いっつもどこかに力を入れてるような過ごし方をしてたけど、やっぱりたまにはこんなふうにするのも大事だとボクは思う。その方が疲れも取れるから。
「大変だったなぁ」
「ですねぇ」
「おやつの後の腹ごなしにしてはなかなかハードだった〜……」
暖かいお湯が疲れ切った足腰を温めて癒してくれる。
じんわりと疲れが溶けるように消える感覚がなんだか癖になってくる。
このままお湯の中に入れる体の部位を増やして、全身を組まなく温めていく……
はぁ〜……生きかえるみたいな心地……
いや、生きかえったことなんてないけど、きっとこんな感じだろうなーって……
ほわー……
「むー……」
「ん〜……?
どうしたの、コハルちゃん……そんなにむすっとして……」
「んぇ? あ、いや〜……」
目を閉じてほっこりしてたら、なにかコハルちゃんが唸った気がして声をかける。
なんだか視線を左右に振ってみんなのことを見てるような感じだけど……
「その、変なことっていわない……?」
ん、コハルちゃんがわざわざ前置きするような話を……
普段はそういうこともなく割とストレートなタイプなんだけど、
何か気になることがあったのかなぁ。
「うん、ボクはどんなことでも変だーっていう気はないよ……?」
「そ、そう……それじゃ、その……えっと……」
安心させるために口にした後でもなんでか言い淀んでる。
こう、言っていいのかな、聞いていいのかなみたいな迷いが見える。
……何聞くつもりなんだろう??
「それで、なぁにー?」
「その、そのー…………リエルさんってさ……おむね、ってどんな感じに大きく……?」
「おっとコハルちゃんだいぶガッツリ聞きますね私も気になります」
「うえぇぇハナコぉぉ!!?」
あ、話題口にした瞬間ハナコさんがズイズイーってコハルちゃんに距離を詰めて……
案の定コハルちゃんの目がいつもの調子になってしまっちゃった。
に、しても。
おむね。
……ボクのおむね、かぁ〜……
「えっと、気がついたらこのサイズだったよ?」
「気がついたらぁぁぁぁーーー!?!?」
「え、本当です? こう、努力したり体操したりしたわけではなく?」
「ん、そんなのあるの?」
「いえ、言ってみただけですけど」
そんな驚かれても、なんかこうなってたとしかいえないんだよね。
アリウスにいた頃は自分で大きさ測るとかまるでしなかったし。
なんか重くなったかなぁとは思ったこともあるけど、どうでも良かったし……
……動きにくくなったかなぁ、で済ませてたあの頃のボクってなんか鈍かったのかなぁ。
いや、心が虚無だったからそんな感想になってただけ?
どっちなのか、今となってはわかんないけど……どっちにしてもそんな感想で済ませていいのかなぁ、とは後になって思った。
時折みんなも驚いてた……かもしれないし。
いや、お怪我してる時って割と周りのこと気にできる子少ないしもしかしたら?
……だけど気がつかないなんてことないだろうし、どうして誰も何も言わなかったのかな。
それとも心の中で思ってただけだったり?
「しかし、天然物ですか〜……凄いですね〜」
「ハナコさんだって大きい方じゃないの?」
「いえ、リエルちゃんには負けます、本当に」
「謙遜しなくていいのに」
「謙遜でもなんでもないです、はい」
そういうハナコさんの目は本気だった。
憧れとか、大きいことへの何かの気持ちとかではなく、事実を言ってる感じだった。
……なんか迫力がすごい。
大真面目にボクのほうがおっきいって伝えてる……その迫力、使うところここなの?
「で、なんでそんなこと聞いたの?」
「いや、浮いてるから気になって!」
「浮いてる……あ、本当だ。よいしょ」
「ああ、リエルちゃん……沈めるなんて勿体無い……」
「いや、なにが?」
ざぶんと自分のおむねをお湯の中に入れたらなんかイマイチな顔された。
あったまってない部分を減らすためにこうした方がいいと思っただけなんだけど。
勿体無いってどうして?
……なにか、みてて面白かったりするのかなぁ?
おむねが浮いてるのが?
……うーん、ボクは面白いとかそういう気持ちにならないなぁ……
その辺りは共感できそうにないや。
「浮くほど大きいことは利点なの?」
「アズサちゃん、それは別に聞かなくてもいいんじゃ……」
「ヒフミは……いや、聞く相手がちがうか……」
「むぅ、失礼なー!」
その横でボクたち3人の話題に見事なくらい引っ張られてるアズサさんとヒフミさんが。
……どうしてみんな揃っておむねの話で盛り上がるんだろう?
これが時折耳にする「深夜テンション」ってものなのかな……
「うぁ〜……何聞いてんだろ私……だけど将来おっきくなりたいなー……」
「大きくする方法といえば、好きな人にもんで……」
「それって本当の話なの? それともただからかってるだけなの?」
もむ……?
それって普通やっちゃいけないことじゃないのかなぁ。
お触りされるの、あまり好きじゃないって子もたくさんいるよ?
それにしても、おむねを大きくする方法かぁ〜……
気にしたことないけど、小さい子はやっぱりそういうの興味あるのかな……
アリウスにいるみんなも、そういうの知りたい子いるかな?
……いや、気にする以前のお話のような気もする……
---
「力加減はこのくらいで大丈夫?」
「あー……もう少し強くてもいいかも〜……」
「それなら、このくらいかな……ゴシゴシ」
「あー、あ、あー……それ、そのくらい〜……」
おむねの話は一旦置いといて。
疲れて汚れちゃった身体をしっかり洗っていく。
ボディーソープ、泡立てるのはちょっと時間かかっちゃうけど……
香りのいいものを使うとなんかスッキリするよね。
「……ねぇ、リエルさん」
「ん……コハルちゃん、強かった?」
「いや……大丈夫……いや、そうじゃなくって。
包帯巻いてもらった時のことなんだけど……」
む。
今でも気になってるかぁ。
でもボクのあの”ちから“って説明難しいんだよなぁ……
いろいろなことを置いてけぼりにしながら怪我を治しちゃうから。
流石にこっちに来てから怪我の治り具合に関してよくわからないくらい変なのは気付いてる。
だからと言って使わない選択肢なんてないけど……
やっぱり直接使っちゃうと本人には何か起こったってなるよねー。
……今思えばこの”ちから“、どういうものなのかもわかってない。
ただなんとなく、怪我が治っていいなぁー、って軽い気持ちで使ってたけど。
これってなにかとんでもないものだったりするのかな。
……いや、だとしても使うのはやめない。
だってあるものは使わなくちゃだし。
何より躊躇って目の前にいる助けられる子を見捨てるのは嫌だ。
「あー……ここだけの話にしてもらってもいいかな」
「うん」
「……生まれつきあるの、触った子が痛く無くなる変なパワー」
「……ふふっ、なにそれ」
色々端折った雑な説明だけど、これ以上ないくらいに自分で言える最大の説明。
それを聞いた途端、コハルちゃんは面白そうに笑った。
いくらこんなふうにいうしかないとしてもそんなふうに笑う〜?
そっちから聞いたことなのにー。
「けど、そっか。 リエルさんにもよくわかってない感じ?」
「そだよー。 調べようにも何を使って調べればいいかとかもわかんないよー」
「……そっか。よし、これ以上は聞かない!」
「ん。 それでいいの?」
「うんうん、リエルさんはリエルさんだから!」
……ボクは、ボク、かぁ。
なんだか……その言葉を聞いてホッとしたような感じがした。
思い返せばよくわからない力を振り回すのって怖いことに見えるかもしれないけど。
それを踏まえてもボクらしさだって言ってくれたみたいで。
……向こうにいた時みたいに積極的に使わなくなったからこそ、そう思ったのかも。
今でも向こうに残っていれば、毎日何回でも使ってたものだろうし。
それこそ、使いようによってはみんなの痛みを取る”ちから“だとしても、
悪用もきっと、誰かが思いついたかもしれない。
……ボクは、この力を、みんなのために使いたい。
痛い、苦しい……そんなふうに思わなくていいように、そう思ってる子に使ってあげたい。
それで誰かが助かるのなら、ボクはそうしたい。
「それでなんだけど」
「ん?」
「……そのパワー、私のむねに使ったらおっきくならないかなぁ、って」
「……その発想はなかった、そんな使い方もしてなかった。
だけど、できるかなぁ? できないんじゃないかなぁ……」
「そっかー」
鏡越しにしょんぼりしてるコハルちゃんが見える。
さっきまでのいい雰囲気がどこかに吹き飛んでいっちゃった感じがする。
……そういう”ちから“じゃないからね??
そんなふうに使ってもたぶん思ったようなことにはならないからね???
「コハルちゃん。そういうのはちゃんとした努力をしよう?
悩んでるかもだけど、その。ボクの持ってる不思議なパワーに頼るのは、その。
違うんじゃない?」
「そうよね。 ごめん、今の私なんか冷静じゃない。
お風呂上がったら忘れて、私もすぐ忘れる」
「そうしよっか、疲れて考えが変な方向にいってるんだよ、きっと」
「……お風呂上がったらすぐねよ……」
……この空気なんだろう……
別の場所で洗いっこしてるヒフミさんもなんか変な視線向けてるし……
ハナコさんなんてずーっとニコニコしてる……
コハルちゃんの真剣な悩み……なんだろうけど。
なんでみんな食いついてるみたいに気にするんだろうね……?
【おむねのサイズ】
(左が小 右が大)
アズサ<=コハル<ヒフミ<かなりの差<ハナコ<<リエル
もしこの作品の外伝出すならどんな路線がいい?
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リエルの料理メインのほのぼの
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アリウスメインのシリアスコミカルミックス
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トリニティメインのギャグチック
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