アリウスに生まれたとある少女   作:ネコミミの小屋

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ここで過ごしているものをみんなにも知ってほしい。
ただ、今のボクにはそんな方法あるのかな、と思っていた時。
アズサさんから伝えられたことが活路になると思ったの。


とある少女と、ものあつめ

「向こうからの情報交換要員と、接触の日が近づいている」

 

「ん……向こうから……?」

 

どうにかしてアリウスに残ったみんなへ助けになれるようなことをしたいと思っていた時。

アズサさんが少しだけ目元を鋭くした雰囲気で語りかけてきた。

 

「それって……誰がくるの……?」

 

「特に誰かは伝えられてないけど……多分『スクワッド』の誰か……サオリになるんじゃないだろうか。

ただ、私とリエルは別々の場所で接触するって」

 

「え。……一緒に会うわけじゃないの?」

 

「そういうことだ。多分、リスク分散じゃないかな」

 

そ、それはボクとしては不安だなぁ……

ボクはアズサさんと違って戦いなんて殆ど、いや最低限くらいにはできない。

だから、もしこの学校の正義実現委員会というところに見つかってしまえばボクはひとたまりもないよ。

 

その辺りは慎重に動けばどうにかなるかもしれない。

でも万が一の場合もあるから、怖いよね。

 

……あれ、待って。さっき気になることが……

 

「ちょっと待って。別々の場所で会うなら……サオリさんがそれぞれの場所に来るの?」

 

「……推察になるけど、同時に接触する予定なら別の子が来るんじゃないか?」

 

別の子……うーん、サオリさんは多分アズサさんの方に行くような気がするから、ボクの方にやってくるのは……ヒヨリさんかなぁ?

ヒヨリさんはああ見えて隠密行動がとっても上手だし、スナイパーとして警戒・索敵能力も相当高いし……

 

それにヒヨリさんならサオリさんと違って結構ゆるゆるな感じだし、物を渡したらきっと喜んでくれると思う。

たまに教官にも食べ過ぎがバレちゃって叩かれたりもしてるっけ?

それでもちゃっかりともの拾ったりしてるから意外とバイタリティすごいよね。

……ことあるごとに医務室にやってきてたけど今どうしてるのかなぁ。

 

「わかった。……ボクもしっかり準備しなくっちゃ」

 

「ん……」

 

会うってなったらそれ相応の準備が大切だ。

ボクから向こうに助けられる貴重な機会、しっかりとみんなのためにできることをしたい。

お外にあるものを送ってみんなにもこの驚きを教えてあげたいな。

……でもヒヨリさんにあげたら独り占めしたりするのかな?

いや、そこまでは……う〜ん……やりそうだけど、やらないように言えば……うーーん……

 

 

(会うだけのはずなんだが、なんの準備をするんだろう……あんなに悩んで……)

 

 

---

 

 

というわけで、物資の調達にやってきたの。

なんでも、聞いた話じゃ……まーけっと?っていうものがあるらしくって。

そこなら食べるものとか飲み物とかいっぱい用意されているんだって。

 

無論、お金が必要だって情報も聞いているから、持てるだけ持ってきた。

人によってはお金を使う趣味を持っているって人もいるけど、ボクはまずご飯をいっぱい用意してあげたい。

それにお金がいる趣味なんてボクにはないからね。

……でも、お金使う趣味ってどんなのがあるのか、気になっちゃったり。

 

ああ、考えが逸れちゃった。

まずはアリウスにいるみんなの為の物資を集めなくっちゃ。

 

 

……その場所を探すのには意外と時間は掛からなかった。

元々人がいっぱい集まる場所だって聞いていたのもあるけど……地図があったのもね。

看板にこの辺りの場所が書いてるなんて、便利だなぁ……

 

「いらっしゃいませ〜」

 

というわけで早速入った。

まず驚くのはその賑わい、あちこちにボクと同じように買い物にやってきた人たちでいっぱいだ。

これだけの人がいたなら争いも起こったりしそうなものだけど……今日はその様子はなさそう?

 

「おいっ、それ私が先取っただろ!?」

「ああん?なんだぁ、やるのか!?」

 

……うん、そーでもないかぁ……

あの辺りに近づくのはあの騒動が治ってからにしよう。

ゆっくり外側から、のんびり並んでるものを見つつ足を進めていこう。

 

 

まず目につくのは、新鮮なお野菜。

向こうじゃ絶対にお目にかかれないもので、料理に使えば美味しそう。

特にこのじゃがいもっていうのはどんな使い方をしてもそこそこ美味しいって。

簡単な調理といえば、やっぱりお湯でコトコトすることだけどそれでも大丈夫かな?

 

それに、できればそのままで食べられるものも欲しいね。

料理するのも大変だから、その手間がない方が向こうのみんなからしたら助かると思うし。

……でも、そういうのは野菜とは別で探したほうがいいかな。

ここにあるものって多分、手を加えたほうが美味しいと思うから。

 

美味しそうなものといえば……お肉。

これを食べると病みつきになるっていうけど本当かなぁ。

焼いたり煮たりして食べるのが普通で、生で食べるのはやめた方がいいって話みたい。

ただ、お肉にもいろいろあって生でも頑張って食べられるものもあるんだって。

……うーん、今日買うのはやめておくけどいつかはみんなで食べたいな。

 

そう思いながらのんびり眺めてたら、耳にジュウ、と音が耳に聞こえてくる。

それに、なんだか香ばしい匂いが……

 

「ん……試食コーナー……?」

 

お肉を売ってる場所の近くに、何かある。

そこで店員さんが何か鉄板の前で……あ、お肉焼いてる!

……その近くに人が集まって、お肉を受け取って食べてる……

 

……よし。

 

「…あ、あの。ボクにもおひとつ……」

 

「おや、あなたもどうぞ!遠慮せずに〜」

 

せっかくだから、食べてみよう。

一口だけならお金をとってないのが周りの人から見てわかるし、これからのことにも役立つはず。

何より、ボク自身が食べたくなっちゃった。いい匂いすぎだよ〜……

これじゃヒヨリさんのこと変なふうに言えないなぁ……

 

それはそうと、受け取ったお肉を観察する。

しっかりと色が変わって中まで火が通っているのが一目でわかるし、味付けもされてる。

この味付けに使ってるものはアリウスにはないものだ。でも美味しそう。

なんというか、肉そのものを引き立ててるような感じがしてる。

 

 

「あむ………!!!!」

 

一口入れたら世界が変わった。

肉が口の中で弾けてる、引き締まって、それでいて柔らかい感覚がする。

ひと噛みしただけで暴力的な程に強い味がおそいかかってくる……すごく美味しい。

これ、パンと一緒に食べたりしたらもっとすごいことになっちゃいそう……

 

こ、こんなのお外に来てちょっと経ったボクでこんなことになっちゃうんだから、もしもみんなの口に入れちゃったら美味しさで気絶しちゃうんじゃ……

そんなことを考えてしまうくらいには、お肉が美味しい!

 

「うひぃ〜」

 

「あの子、すごい破顔しちゃってるわね……」

「大丈夫?魂が抜けてそうな……」

「ただあんな至福な表情をされちゃ邪魔するわけにもねぇ……?」

 

 

……気がついたら5分くらい経ってた。お肉パワーおそるべし。

こんなところで立ち止まってる時じゃないかもだけど、まるで動けなかった。

……また今度、アズサさんにも食べてもらおう……きっと驚くよ……

それにしてもなんだか視線をいっぱい感じるのはなんでだろう。

変なことをした覚えはないけど……ま、あんまり気にしなくていいか。

 

さぁ、買い物の続きをしなくっちゃ。

……お肉を買えないのは心苦しいけど、みんなにあげるものを買うんだから、我慢しなくっちゃ。

手が欲しい欲しいって訴えてきて伸びそうになるのも、抑えなくっちゃ……

 

 

自分自身の葛藤との勝負を頑張って制した後にやってきたのはお菓子コーナー。

ここにあるのはお腹いっぱいになるようなものじゃなくって、ちょっと食べたいなー、って思った時に口にできるような小さいものなんだって。

非常食とは違うみたいだけど、パッと見ただけで相当いろんなものがあるなぁ。

チョコレートとか、とっても美味しそうだよ。

 

この辺りは試食コーナーってものもないみたいだから、もし食べたいなら一旦買って持って帰るしかないみたい。

みんなの分とボクの分は別々に考えなくっちゃ、全部食べちゃいそう。

さっきの自分が美味しさで止まっちゃったくらいだし注意しなくっちゃ。

 

好き嫌いの問題もあるかもしれない……けど、今は考えなくていいかも。

正直言って向こうにいた間はそんなの考えてる暇なかったし、食べなくちゃ体がもたなかったし……ボクがそういうのあるのかなって思ってるくらい?

……うん、気にしなくていいもの考えてもしょうがないや。

 

とりあえず美味しそうなものを全部選んで……その中から厳選していこっか。

 

 

---

 

 

「お会計は1万になります〜」

「はーい」

 

買いすぎちゃった。

どれもこれも美味しそうに見えたから、どんどん手が止まらなくなっちゃって。

もう、抑えられなくってぇ……

 

これだけ買っちゃったら減らすのも大変かもしれない……

あ、みんなにあげる分は全員で食べるはずだからこれだけあっても足りないかも?

問題は、ボクが味見する分がありすぎるのこと……も、アズサさんと一緒にちょっとずつ……それでもあんまり減らなさそうだなぁ。

 

買い物用に使っていたカゴからもらった袋にお菓子を詰め込んでいく。

この袋もペラペラなのに意外といっぱい入るね。

流石にヒヨリさんが持ってるすごく大きいリュックサックには負けるけど……手軽さや持ち運びのたやすさ……いろんな面では劣ってないような感じ。

これがたくさん置いてあるんだからお外ってすごいなぁ。

 

さてと、早く引き上げて準備をしなくっちゃ。

なんでもお菓子の中にはずっと外に置いておくとダメになっちゃうものもあるみたいだし、お部屋にある冷蔵庫で冷やしておかなくっちゃ。

うんしょ、っと……うーんやっぱり買いすぎちゃったなぁ。重いや……

 

 

「お、おぉ……おぉ〜〜〜〜」

「ん、ナツちゃんどうし……わぁ」

「えぇ……すっごぉ……あの中身大体お菓子じゃない」

「……これは、いいことを思いついた……続け皆の衆〜〜」

「え、あれとおんなじことするの?ちょっと待って、お小遣い足りるの!?ねぇってばー!!」

 

 

---

 

 

「ず、随分と……集めたね……」

 

帰って一番のアズサさんの言葉が、珍しく驚いていることを伝えてくれる。

こう、特徴的な顔をしているような……それでいていつもの表情と変わらないような。

そんな不思議な表情をしてた。

 

「向こうから来てくれる子に、持って帰ってもらおうかな、って」

 

「そ、そう……」

 

まるで考えていなかった、って顔してる。

まぁ、それはアズサさんらしいと言えばらしいかも?

自分のやること最優先って感じの……サオリさんからの教えを守っているのが。

どっちが良い悪いはあんまり決める気はないけど、お土産くらい持って行ったほうがいいんじゃないかな……?

 

「それで、接触までまだ時間があるし……アズサさんも、一緒に食べよう?」

 

「えっ?……いや、いい……のかな?」

 

「いいの、いいの。ボクたちの分も別で用意したから、遠慮せずに食べて、ね?」

 

「お、あ……ああ……」

 

アズサさんがボクの近くに寄って、慎重に座る。

そして、あらかじめ分けてあるお菓子へと、恐る恐る手を近づけていっている。

困惑しているような、選ぶのに迷っているような……普段と違う姿を見て、アズサさんにもそういうところがあるんだって少し安心した。

 

「……」

 

少しして、適当に選んだんだろうメロンパンをつかんで、まじまじと観察している。

ボクも初めて手に取った時おんなじような感じで眺めたっけ。

メロンってなんだろうとか、パンがお菓子ってどういうことだろうとか……

いろんなことを頭の中に思い浮かべてうんうんと考える。

 

それから、ぴっという小さい音を鳴らしてメロンパンを袋から出して……

 

「……あむ」

 

思い切ってかぶりつくようにいった。

そこからアズサさんは、さらに驚いたような表情で、背中の羽をぱたぱたと羽ばたかせた後……

どんどんすごい勢いでメロンパンを頬張っていった。

 

その顔はどこか喜んでいるように見えて……美味しいっていうのが伝わってくる。

やっぱりアズサさんも美味しいものを食べたら嬉しいよね。

みんなだって、そうだ。

こんなに美味しいものを食べたら、きっと喜んでくれる……と思う。

 

「他にも、いっぱいあるから……ゆっくり、食べよう?」

 

「んぐ、………ああ!」

 

食べたパンのかけらを頬につけながら頷くアズサさんが、とっても身近に感じた。

ずっと遠くの人と思ってたけど……なんだか、今日はそう思うことはなかった。

 

 

それからボクはアズサさんと至福なひと時を過ごした。

チョコレートを食べたらちょっと溶けて口についちゃったり、

同じお菓子の違う味をそれぞれ食べあってこんなところが違うって言い合ったり、

食べている間に喉が渇いちゃって、お水を飲んで潤したり、

ポテトチップスの袋を大きく開いて中身を二人で分け合ったり……

 

アリウスではできなかったような時間をのびのびと過ごしてた。

ちょっと時間を忘れちゃって気がつけばそろそろ向こうの子と会う時間になっていた。

 

「も、もうこんな時間なのかっ?」

「あっという間に過ぎちゃったね……それで、別々に会うんだよね?」

「うん。……怪しまれないように別々にでようか」

「わかった」

 

アズサさんが先で、ボクは後。

そう決めた後早速出発したアズサさんの表情は、少し名残惜しいようにも見えた。

 

 

---

 

 

「ここでいいんだよね」

 

トリニティのはずれにある、古い建物。

事前にサオリさんが安全を確保している場所らしいけど、いつものお部屋と比べちゃう自分がいる。

少しお掃除した方がいいのかな。

 

「それで、ここでヒヨリさんを………………あれ?」

 

そんなことを考えて待っていたら後ろから物音。

早速向こうからの接触者がやってきたんだと思って振り向いた。

 

──そこには。

ボクが想像もしていなかった人がいたの。

 

 

 

「………アツコさま?」




アズサ
「あんなの暗い表情をしていたリエルがいきなりお菓子を持ってきた。
みんなに分け合ったりとか、一緒に食べようとか……
関わりが深くないからこういう人だって、知らなかったな……」(ᓀ‸ᓂ)
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