文章に粗が目立つと思いますが、上達次第修正していこうと思います!
現実
僕にとって『楽しい』とはなんだろう。
友達と話すことは楽しいし、ゲームだって楽しい。
けれど結局毎日同じことの繰り返し。
それって本当に楽しいのかな。
退屈だとは思わないけどどこか物足りなさを感じていた。
趣味だってあれだけ熱中していたのに、熱が冷めたらだんだんどうでも良くなってくる。
新しい楽しみを見つけることもないのに趣味に飽きて楽しみが減っていく一方。
なにか新しいことがしたい。
なにか楽しいことがしたい。
なにか。
ベッドの上で眠る僕の願いが叶いますように。
幻想
目が覚めると僕は見知らぬ森の中で倒れていた。
重い腰を上げて周りを見渡しても誰もいない。
暗い空はまもなく日が登るのか下の方は明るくなり夜の終わりを告げている。
―確かに昨日は自分のベッドで寝たはずだけど……。
自分の服装を見ると見ず知らずの薄汚れた服を着ていたうえ裸足、まるで脱走してきた病人だ。
僕の脚の裏に細かな石が刺さり鈍い痛みが広がる。
誰かに助けを求めようとポケットに手を突っ込んでみても携帯もない。
―このまま助けを待ったほうがいいのかな?いやこんなところに人が来るのかな?
こんな場所に留まっていてもどうにもならないだろう。僕は足の痛みを我慢して山道を歩き始めた。
歩き始めてから一時間は経ったか。いやニ時間か。もしかしたら三十分しか経っていないかもしれない。
こんな山道を一人で歩くなんて初めての経験だった。
だからなのか、同じ景色が永遠と続くこの森で時間の感覚が狂ってゆく。
時間が経つごとに濃い霧が出てきてだんだん憂鬱になってきた。
―足が痛くてもう歩けないよ。
僕は力無く地面に座り込んだ。
足の裏を見てみると、真っ黒に汚れてしまい微かに血も出ている。
自分で足をマッサージして少しでも痛みを和らげていると、遠くの方から微かに音が聞こえた。
―ドドドドドドッ!!
音はだんだん近づいてくる。
―なんの音だろう?
徐々に大きくなっていく音の方を目を凝らして見ると、馬車のようなものがこちらに近づいてくるのが見える。
―助かった。
ようやく人の気配を感じることができた僕は慌てて馬車の方へ駆け出した。
side ホープ
ここ最近の疲労感は尋常じゃない。
数日前から仕入れのためにわざわざ隣の国まで来たのに何度もぼったくりに会ってしまった。
―あの国の奴らは平気で値段をふっかけてくる。目当てのものは買えたが手痛い出費だ。
北の国で仕入れを終えた俺達は故郷の西の国へ馬車を走らせていた。
「ホープさん、やりましたね!ファイヤーオークの薪はいっぱい買えましたし、しばらくうちの国の火は安泰ですね!」
そう言って隣で微笑むのは俺が営む店、『ホープの雑貨屋』で最近雇ったばかりの店員見習いのアーシャだ。
「そうだな。結構値段はしたがファイヤーオークは火がつきやすいうえ、長時間燃えてくれるからな。うちの大人気商品だ」
俺は仕入れに行くためにしばらく店を閉めていたので少しでも早く帰りたいと思い馬車を飛ばした。
この辺の森は行方不明者も多くでる魔の森だ。
深い霧も出てきて視界も悪く、慣れている人でさえ少しでも早く抜けたいと思うほど不気味な場所。
しばらく走り続け空が明るくなり始めた頃、遠くの方から人の気配を感じた。
「……アーシャ。誰かいる」
俺は慌てて馬車を止めた。
俺達の間にピリッとした空気が張り詰める。
「例の盗賊でしょうか?」
アーシャは不安そうに俺をチラリと見る。
最近国を問わず盗賊による追い剥ぎが多発しているらしい。
もしかしたら俺たちもターゲットにされているのかもしれない。
聞こえてきた足音はだんだん大きくなってくる。
霧の中で近づいてくる足音の正体を確認しようと俺は馬車を降りた。
幻想
僕が馬車の近くへ行くと一人の男の人が降りてきた。
ズカズカと近づいてくるその人はかなり大きい。
僕は高校でもそこまで身長が高い方ではなかったが、自分と比べると降りてきた男の人はかなり大きすぎる。
その男の威圧感は翔一に恐怖を与えるには十分だった。
しかし男はこちらに敵意をむけることはなく、むしろ怖がらせまいと振る舞った。
「怖がらないでくれ!ほら!」
その人はなにも武器を持ってないと示すため手を広げ腕をぷらぷらふった。
「嬢ちゃん。俺は君になにもしないよ。」
その人はしゃがんで僕と目線を合わせ、落ち着かせようとしている。
「嬢ちゃん?」
―誰のことを言ってるんだろう。
自分は生まれも育ちも男だ。確かに小学生の頃は女の子に間違えられることも多々あったが高校生になった今、自分はどこをどう見ても男だった。
しかし周りを見渡しても誰もいない。
話しかけてきた男は僕のことをしっかり見つめている。
そういえばいきなり森にいたせいで気が動転していたが、冷静になって考えれば身体に違和感がある。
ふと自分の身体を確かめてみると違和感の正体に気付いた。
股間あたりにあるべきものがない。
―どうなってるの……。
間違いなく僕は、いや私は女の子の身体になっていた。
「俺はホープ。嬢ちゃん、名前を聞いてもいいかな?」
ホープはとても優しそうな声で話しかけてくれたが、 私はそれどころじゃなかった。
―自分はどうなったんだろう。
夢にしてはかなり現実味がありすぎる。
―もしかしたらもう自分は死んでいて生まれ変わったのかな?
ホープの問いかけに対する答えを私は見つけられなかった。
「……わかんない」
「じゃあここでなにをしてるのかな?」
「…………わかんない」
「どこからきたのかな?」
「………………わかんない」
何一つ分からないの一点張りで我ながら酷い答えだと思ったが、生憎これ以外答えようがないからしょうがない。
ホープは少し考える素振りを見せると後ろを振り返えり馬車の方へ声をかけた。
「アーシャ!ちょっと馬車から降りてきてくれ。」
アーシャと呼ばれた人が馬車から降りてホープのもとへやってくる。
アーシャはボロボロの私の姿を見ると驚いた。
「どうしたんですか?ってこの子ケガしてるじゃないですか!」
「どうやらこの嬢ちゃん記憶喪失みたいで名前もどこからきたのかも分からないんだ。」
―えっ?記憶喪失だと思われてるの?……いや全部わかんないって言ってたらそうなるか。
アーシャはホープと同じように私と目線を合わせるためにしゃがんだ。
「こんにちは。私はアーシャって言います。」
優しそうなお姉さんに声をかけられ気恥ずかしくなった。
「……こんにちは。」
私はなんだか照れくさくて小さな声で挨拶する。
「あなたが歩いてきた方向的に私たちと同じ西の国の子かな?」
「ニシノクニ?」
聴き馴染みのない『西の国』という地域に私は戸惑った。
「えっとあなたがどこの国からきたのかなって聞きたくて。」
―ニシノクニって西の国か。聞いたことない国だな。
「日本。」
「ん?」
私の答えにアーシャが首を傾げた。だけどそれも仕方ないのかもしれない。
どう見てもアーシャは外国の人っぽい。
会話ができているので『日本』くらい通じると思ったのだが、どうやら言い方を変えた方がいいらしい。
「ジャパン。」
「んん?」
しかしアーシャには伝わらなかった。
―えぇっ!ジャパンも通じないの?
私は学校でも英語が得意なわけではなかったので発音が悪かったのかもしれない。
だけど自分の中では頑張って発音したつもりだったので、あれで通じない以上うつ手がない。
「じぱんぐ?」
「んんん?」
ジパングで伝わるわけはないと分かっていたが、どう頑張っても伝わりそうにないためちょっとだけふざけてしまった。
しかしホープには聞き覚えがあったようでキッとこちらを睨みつけると大きな声でこちらに問い詰めてきた。
「おい!ジパングを知ってるのか?!」
思わず私の身体がビクッと震える。ホープは両手を私の肩に置き、まっすぐこちらを見つめている。
「ちょっと!ホープさん!この子がびっくりしてますよ!」
アーシャが咎めるも、その声はホープに届いていないようで私を睨みつけている。
「ジパングを知ってるんだな?!」
かなり険しい表情で少女に詰め寄る大人の男。
客観的に見るとかなり怪しい構図だが、ホープにとってそれほどジパングについて聞かなければいけない理由があったのだろう。
でもなんて答えればいい?
ジパングなんて口から出まかせで言っただけだ。
ジパングなんて学校じゃほとんど習わないし、知っていることは全てが黄金でできているとか言うイかれた財力を持ち、日本がモデルとされる幻の国、実在はしないが名前だけは結構有名ってことくらいの浅い知識だけだった。
「……えっとジパングは……黄金の……でも……幻で……存在しない……。」
なるべくサラッと答えるつもりだったが、鬼気迫る表情のホープに威圧されてしまったからか、口から出た言葉はかなり小さくボソボソとした答えだった。
「なんなんですか?そのじーぱんぐぅ?ってやつ。」
ジパングの名前をだした瞬間態度が豹変したホープと違いジパングを知らないアーシャは首を傾げる一方だった。
ただ私だってなんでこんなにホープが怒った様子なのか全く心当たりがないので私も首を傾げた。
「ジパングだ。かつて東の国に拠点を置き、各国で勢力を広げていた組織の名前だ。奴らは人身売買を繰り返し莫大な資金を得ていた。噂では一国の資金をも上回ると言われ、黄金の組織と呼ばれていたんだ。その資金は人間を進化させるなんていう頭のおかしな人体実験に使われるものだったんだが、結局研究員が捕まりその実験は幻に終わった。その後芋づる形式で次々と逮捕。組織は解散しもう存在しないってわけだ」
全く聞き覚えのない、ホープの話すジパングの説明。普通に考えればあり得ない話だが、鬼気迫るホープの説明には妙な説得力があり到底嘘だとは思えなかった。
ずいぶん危ないことしてたんだなぁ。
私はジパングについて薄い知識しかなかったので、とりあえずホープの話を信じることにした。
ただこの状況はちょっとおかしいかもしれない。どこの国から来たかの話で私はジパングから来たことになっており、ホープの言うにはそのジパングはかなり最低な組織だという。
―変な組織から来た人だと思われてる……。
幸い少女の姿のおかげで危険人物とは思われていない様子なので、しばらくはジパングから来た可哀想な少女でいようかな。
「なんにせよほっとけないな。乗りな。嬢ちゃんは俺と一緒に来てもらう。」
「……ありがとう。」
何故自分が少女になり、森の中にいるのか全くの謎だが今はホープ達についていくしかない。
私はホープやアーシャと一緒に馬車に乗り込んだ。
すると早速馬車の上でホープからの質問攻めが始まった。
ホープにとっては私は今はなき組織であるジパングを知る謎の少女。
少しでも事情を把握したいと思うのは当然のことだろうが生憎私は組織としてのジパングなんて知らない。
「ジパングから来たと言っていたが君はいつからジパングにいたんだ?」
「……産まれた時から。」
「君の両親は今どこにいるんだ?」
「……知らない。」
「ジパングは今どこにあるんだ?」
「……わかんない。」
「ジパングで君はどんなことをしていたのかな?」
「…………わかんない。」
なにか話でボロが出ても嫌なのでとりあえず分からないの繰り返しで答えておく。
するとラチが開かないと思ったのかホープは質問するのをやめ、一人考え込んでしまった。
ホープが考え事をしている間することのない私は、脚をぷらぷら揺らしてみたり、手をグーパー握ったり開いたりしてみた。
―まだこれが自分の身体という実感が湧かないな。
手足も短く目線が低いため、何歳かは分からないけど大体小学生くらいかもしれない。
隣にいたアーシャが私の顔を覗き込んで話しかけてきた。
「ねぇねぇ!」
控えめに言ってアーシャはすごく可愛いと思う。
私はアイドルとかには詳しくないが、それでもテレビに出ている子達よりも花があると思ったくらいだ。
突然目の前に美少女の顔が現れてすごく緊張する。だけどこれはアーシャと距離を近づけるためのチャンスだ。
「……なに?」
なるべく明るく返事をするつもりだったのだが、口から出たのはかなり無愛想な返事。
だけどアーシャは気にする様子もなく明るく声をかけてくる。
「名前決めてもいいかな?あなたのことなんて呼んだらいいのか分からないしね。名前ってとっても大事なものだし一緒に考えたいの。」
いま私は自分の名前も分からない小さな女の子だ。だけど本当はすでに親から翔一という名前をもらっている。
なのに自分の名前を考えてくれると言われても私はすぐに返事できなかった。
「どんな名前がいいかお姉さんに教えてくれる?」
アーシャはこちらの意見を聞きたいそうだが、私は何も浮かばなかった。
―女の子っぽい名前ってなんだろう。
それにもし、ここで名前を決めても今向かっている『西の国』とやらでは馴染みのない名前で周囲から浮いてしまうかもしれない。
―こうなったらアレを言うしかない。
『なに食べたい?』の返事でお馴染み、自分で考えるのが面倒くさいとき、相手に決定権を与える私の最終奥義を繰り出した。
「……なんでもいい。」
これも明るく言うつもりだったがやはり口から出るのは冷たい言葉。
―なんでもっと楽しそうに答えれないのかな……。
だんだん日も上り温かな日差しが私たちを包むが、私の心は真っ暗な夜の森のように冷め切っていた。
だけどそんな私と対照的にアーシャはずっと明るい声だ。
「そっか。じゃあお姉さんが考えてあげるね」
アーシャはしばらく考えると手をポンっと叩いた。
「じゃあレイちゃんっていうのはどう?」
どう?と言われても西の国の『いい名前』の基準がわからないので、私はホープの反応を見ようとチラリと隣を見ると、目が合いホープはふわりと笑った。
「お嬢ちゃんが決めていいんだよ」
―まぁきっと変な名前だったらホープが止めるか。
「……いいと思う。ありがと」
私が抑揚のない声で相槌を打つとアーシャは嬉しそうに微笑んでくれた。
―とりあえずこの場では私はレイだ。
新しい名前をもらった私はは目を閉じて頭の中で自分の名前を何度も繰り返し記憶する。
しかし馬車の揺れが心地よくて気づけば意識はそのまま沈んでいた。
誤字・脱字等あれば教えてください