「長姉様!!長姉様!!」
中指末妹が騒ぎ立て、近づいてくる。それを見た私は、末妹を宥めながら事情を聞く。
「どしたー?そんなに慌てて、サンタクロースにでも会った?」
冗談混じりに会話をするが、末妹の顔はそれを気にも留めないくらいに気が動転しているようだった。
「そんなこと言ってる場合ではありませんよ!!南部の中指の組織が次々に潰されて、また一つ潰されてしまったんですよ!」
それを聞いた途端に私もそれが緊急の要件だとすぐに理解した。
「…やった奴は例の特色か?」
末妹は壊れた機械のように首を縦に振る。
「恐らく、黒い沈黙の仕業かと思います。」
やはりか、と頭の中で考える。つい最近、都市で発生したねじれとか言う物のせいだろう。多くの輩はそれをピアニストと呼んでおり、なんでも人を血肉に変え、それをピアノの弦や鍵盤にして音を奏でる怪物だったとか。
しかし、それは黒い沈黙によって討伐されたとも耳にした。…それからだ、黒い沈黙があちこちで暴れ回っていることも耳にしたのは。
「奴は一体何を考えてやがるんだ…」
…分からないことは考えても仕方がない。家族がやられたなら、仕返し帳簿に書いてあることに従って死んでも報復する。ただそれだけだ。
よく見ると、末妹が不安なのか少し震えている。都市ではこう言う人間は真っ先に死ぬだろう。しかし、それは”ある意味”私も人のことは言えないのだ。
「大丈夫だ!私が長姉だから、お前達下の連中は全力で守る。」
それを聞いてか、末妹は少し表情が明るくなる。
「…はい!ありがとうございます!長姉様はやっぱり優しいお方です!」
「えへへ、褒めても何も出ないよー?」
後輩との他愛のない会話をして雰囲気を和ませる。心なしか周りにいた中指構成員も活気が出てきた。うちの組織は割とフランクに接するからな〜。…親指でこんなノリやったら速攻で死ぬんだろうけど。
「とりあえず、黒い沈黙に警戒しつつ、今日もやって…」
ゾゾッ!!
急な悪寒が背筋を伝う…周りを見るが、誰も気づいている様子はない。
「おーい、リカルドーいるかーい?」
「はい!なんでしょうか?」
こいつはリカルド、普段からずっと自分のヘアスタイルを気にかけている新進気鋭の末弟である。彼のヘアスタイルは気にしてるだけにかなりかっこいいと個人的には思っている。そして、何より強い。誰にも聞こえないようにリカルドに耳打ちをする。
「嫌な予感がするから、お前にこの拠点の警戒を頼みたい。何か異常があったらすぐに知らせろ。」
「分かりました。では、行ってまいります。長姉様。」
杞憂で終わればいいんだけどね…っと考えるがそうはいかなかった。
-夜-
「敵襲!敵襲だー!」
悲鳴混じりの怒声と共に私は叩き起こされた。
「相手は誰だ!」
「黒い沈黙です!何故か姿がはっきりと捉えきれませんが、間違いありません!」
「チッ…私が出る!他の奴らは下がれ!」
よし。ようやく、家族達の仇が取れる…そう確信し、報告のついでに聞いたフロアまで移動した。そこには、家族…末弟、末妹達の骸が無惨に転がっていた。
「…ッ!…野郎!」
その時、私の首筋に冷たい感覚が押し寄せる。咄嗟に身を屈め、地面を素早く蹴り距離を取る。首筋から出血しているが傷は浅い。
「お前が中指を殺しまわっている黒い沈黙か?いやそうだろうな。見た目の特徴が随分一致している。」
全身黒ずくめのスーツに黒い仮面に黒い手袋間違い無く奴だ。
「…お前らはピアニストについて何か知っているか?」
黒い沈黙が凄まじい怒気のこもった声で口を開く、流石は特色、このくらいの威圧感を感じたのはいつぶりだろうか…
「家族を殺しまわっているお前に答える義理はない。第56条4項F4、中指に手を出し、殺しをはたらいたものは、”出来るだけ苦しませてから残酷に処刑されなければならない。”」
「言わないなら、お前に用はない。」
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「グゥ…はぁ…はぁ…」
私は完全に踊らされていた。初手で背後を取られ、首筋を浅く切られ、その次は腹を貫かれ、片目も潰された。これが、特色…なんて強さだ。
ザンッ!!
「グッ…ガハ!?」
さっきまでとは別次元の速さで腕を切断され、体勢が崩れた瞬間に胸を蹴られ、そのまま地面に踏み倒される。
「もう一度聞こうか…ピアニストについて何か知っていることは?」
また懲りずにこいつは…もう…私は助からないな…だったら、最後まで意地を見せてやる。そうして、私は血を吐きながら、不敵に笑って答えた。
「フ…くたばれ…このイカれ野郎…」
その言葉を発した瞬間、私の視界が反転する。全身の感覚が無くなっていく。思考ができなくなっていく。そして、私は静かに、闇の中に意識を手放した。
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身体が寒い…まるで氷のようだ…普通に震えがしてき……ん?私なんで死んだのに震えているんだ?
「…は!!」
目が覚めるとそこは、自分のいた中指の拠点ではなかった。あたり一面を見ると、夜の砂漠で寝ていたことがわかった。まず自分が何故生きているのかは置いておこう。問題はこの場所がどこであるかだ。1番最悪なのはここが都市の外、つまり外郭だった場合だ。
そうならば命が幾つあっても足りない。翼の実験による失敗作や都市の不純物と判断された廃棄物が多くうろついていたりするからだ。それより、私の妹弟達は無事なのであろうか…特に心配なのはリカルドだ。拠点の門近くでの見張りだから、接敵した可能性が高い。
「まずはここがどこか把握しないと!」
私は闇雲に砂漠を駆け出した。幸い、強化施術に影響はなく、フルスピードで砂漠を駆け抜けていける。10分ほど走っていると、砂漠で人影を見つけた。情報を聞こうと思ったが、明らかに挙動がおかしい。そう思った瞬間にそいつは倒れてしまった。
「ちょ、マジ?大丈夫!?」
急いで駆け寄ったが、反応は芳しくない。
「……だ……れ…?」
倒れた女性は力のない声で返答する。脱水症状だろうか?どちらにしろ、このままでは命が危ない。
「意識が混濁している、不味いな。」
とりあえず背負って、人の気があるところまで全力で走った。意外にも街は近くにあったようで、集合住宅と道路が見えてきた。
「そういえば…私何か持ってるかな?」
改めて自分の持ち物を確認すると、いつもの服装とネコちゃんシールがたくさんついた仕返し帳簿しか持っていない。おっと、ここで都合の良いような自販機があるじゃないか?
えっ?お金持ってないだろって?壊せば良いんだよ?
「よいしょっと!」
ガッシャーン!!
自販機を殴ってぶっ壊すと同時に無数のペットボトルが転がってくる。それの一つを取り、意識朦朧の女性の口の中に流し込む。
(ゴク…ゴク…ゴク)
「さっきまで倒れていたとはいえ、エグいスピードで飲み干してくなこの人。」
そんな独り言を言っている内に、意識がはっきりたのか私の腕から女性が飛び起きる。
「は!!…こ、ここは?」
「おっ気がついた。」
そう言うとこちらを見た瞬間に少し驚いたのか、一瞬口を紡ぐ。しかし、直ぐに話し始めた。
「えっと…私はどうしてここに?」
「砂漠でぶっ倒れたてたからねー、普通に助けた。」
「え!?そうだったんですか?…実は記憶が少し曖昧で…」
本当に大丈夫かなこの人?
「えっと、助けてもらったので何かお礼を…と思ったけど私今何も持ってないんだよなぁ…」
「なら、私の質問にいくつか答えて欲しいんだよね。」
正直、この場所に来てから全くと言って良いほど情報がない。それに、何故外郭にこのような住宅、ましてや砂漠で倒れ込む人まで出てくるのか理解できない。
「まず、翼って呼ばれる企業、指という組織、フィクサーについてどれかでも聞いたことはあるかな?」
「いえ…ないです。」
やっぱり、ここは私のいた都市ではないようだ。しかし、困ったな、よく見たらなんか目の前の子、天使の輪っかみたいなのついてるし、これ本当に死後の世界?だったら過酷すぎるでしょこれ。
「とりあえず、貴女の名前を教えてくれない?できれば所属も。」
「はい!アビドス高校3年生生徒会長!梔子ユメって言います!18歳です!」
……え?18?マジ?…はぇ〜何がとは言わないけど、随分立派なものをお持ちで、20歳くらいだと思ってたわ。
「えっと、貴女の名前とか聞いても良いですか?」
ユメからそう言葉がきた。まぁ、先に自己紹介してもらったからこっちもしないと失礼だよね。
「あぁ、私はアマリア、所属は中指の…」
バンッ!
突然聞こえた銃声に咄嗟に振り返った後、鎖を巻きつけた腕部分で銃弾を払う。そこには、ピンク髪で左右綺麗なオッドアイを持つ超絶小柄な子供が散弾銃を構えてこちらを睨みつけていた。
「お前…ユメ先輩に何をしているんだ!?」
中指の設定はあまり詳しくないから間違っているかも。ブルアカの設定とかでも間違っているものがあったら、じゃんじゃん指摘してくれると嬉しいっす。ちなみにリカルドについてですが、ピアニストが出た直後に入ったというのは自分の勝手な妄想です。だから、勝手に末弟としてます。黒獣おファウはつおい。後、帳簿の何条とかも勝手な妄想です。